読んでも頭に入らない人の「3Rシート」と記録表。読む・思い出す・確かめるの研究から作った使い方

テキストを最後まで読んだのに、閉じた瞬間に何も言えない。読み直しても、また同じことになる。そんなときは、読む時間を増やすより、読み終えた後の「数分の使い方」を変える方が近道かもしれません。この記事では、読む→本を閉じて思い出す→見直す、という「3R」の研究をもとに作ったシートと記録表を載せます。資格のテキストや専門書を読むときに、そのまま使えます。
3行でわかる
- 大学生の2つの実験で、読む→思い出す→見直す(3R)は、読み直しやノート取りより、1週間後も多くの内容を思い出して書けた。
- ただし「思い出す練習」だけでは、内容から推論する問題の点は上がりにくかった。「ここから何が言えるか」を自分に問う一手を足すと、推論の点も上がった。
- この記事の表1で読み方の手順を決め、表2に1行ずつ記録し、2週間後に表3で読み方を見直す。
01 悩みの正体読んだのに頭に入らないのはなぜ?
文字を追うことと、内容を自分の頭から取り出せることは別の作業だからです。読み直しは「わかった感じ」を強めますが、取り出す練習にはなりにくいのです。
本を開いて読んでいるあいだは、答えが目の前にあります。だから「読める」と「覚えている」の区別がつきにくくなります。文章を使った実験では、読み直しをくり返すと「覚えられた」という自信は高まりました。それなのに、2日後や1週間後に思い出せた量は、思い出す練習をした場合より少なかったのです[5]。
そこで役に立つのが、本を閉じて思い出す時間をはさむことです。この記事の表は、その時間を毎回の読書に組み込むための道具です。読書中に気がそれる悩みには読書中の「心ここにあらず」の立て直し方、読む前に問題を解くやり方は事前テストの研究にまとめています。
02 科学的にわかっていること読んだ後に思い出すと、本当に残る?
大学生の実験と、教室での222研究のメタ分析で、思い出す練習の効果がくり返し確かめられています。一方で、推論の問題には効きにくいこと、効果が出なかった実験があることも報告されています。
McDanielら(2009)[1]
大学生の2つの実験で、読む→思い出す→見直す(3R)を、読み直し・ノート取りと比べた。3Rは、事実を扱う文章の自由再生(手がかりなしに思い出して書くテスト)で、直後も1週間後も他の2つを上回った。工学の長く複雑な文章を使った実験2では、選択問題と問題解決の問題で読み直しより点が高く、ノート取りとは同じくらいだった。3Rはノート取りより勉強時間が短かった。
対象: 大学生 / 限界: 1回の勉強と1週間後のテストの実験で、何か月も続く独学とは条件が違う。
NguyenとMcDaniel(2016)[2]
それまでの研究では、3Rは自由再生を伸ばすが、推論の問題ではノート取りを上回らなかった。そこで、ブレーキやポンプの仕組みの文章で、3Rに推論についての自己判定(推論の問題にどのくらい答えられそうかを見積もること)を足した。この判定を足した3Rだけが、ふつうの3Rより推論と問題解決の成績を上げた。
対象: 大学生の2つの実験 / 限界: 機械の仕組みの文章での結果で、ほかの分野でも同じかは確かめられていない。
SternとHalamish(2023)[3]
イスラエルの大学生72人(ADHDのある36人と、ない36人)が、200〜250語ほどの短い文章を3つ学んだ。読み終えてからまとめて思い出すと、2日後に思い出せた割合は平均45%。節ごとに思い出すと37%で、まとめて思い出す方が高かった。節ごとの方が練習中は多く書けた(81%対54%)のに、2日後には逆転した。読み直し(42%)との差は、どちらも統計的にはっきりしなかった。
対象: ADHDのある学生とない学生で、結果の傾向は同じだった / 限界: 1人が3つの条件をすべて行う方法だったため、思い出す練習の効果が他の条件に移った可能性を著者ら自身が挙げている。事前登録のない研究。
Yangら(2021)[4]
実験室ではなく教室で行われた222の研究(48,478人分のデータ)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。小テストで思い出す練習をすると、成績は中くらい上がった(効果量g=0.499)。効果の大きさは、答え合わせ(正しい答えを示すこと)の有無や、くり返しの回数などで変わった。
対象: 学校・大学の授業での研究 / 限界: 先生が出す小テストの研究が中心で、独学で自分にテストする場合とは条件が違う。
思い出す練習の効果は多くの研究で確かめられていますが、SternとHalamishの実験のように、読み直しとの差が出なかった研究もあります[3]。また実験の多くは、大学生が短い文章を1回だけ学ぶ形です。働きながら長いテキストを何週間も読む独学とは条件が違うことを前提に、自分の記録で確かめながら使ってください。
03 使える表読むときに、何をどう書けばいい?
表1の4つの手順で読み、区切りごとに表2へ1行書きます。2週間たったら表3で、区切りの長さや見直しの仕方を調整します。
表1 3Rシート(読むときの手順)。研究の手順を、独学のテキスト向けにこのサイトがまとめたものです。時間はこのサイトの目安で、研究で決められた数字ではありません。
| 手順 | やること | 目安 | もとになった研究 |
|---|---|---|---|
| 1 読む(Read) | 見出し2〜3個ぶんを1区切りにして、ふつうに読む。線は引かなくてよい | 10〜20分 | 3Rの「読む」[1] |
| 2 思い出す(Recite) | 本を閉じ、覚えていることを白紙に書き出す。順番がばらばらでもよい | 3〜5分 | 3Rの「思い出す」[1]。区切りが細かすぎると2日後の成績が下がった実験がある[3] |
| 3 推論を問う | 「ここから何が言える?」「なぜそうなる?」に答えられそうか、1〜5で判定して書く | 1分 | 推論の判定を足すと推論の点が上がった[2] |
| 4 見直す(Review) | 本を開き、書けなかった点と間違えた点だけに印をつけて読み直す | 3〜5分 | 3Rの「見直す」[1]。答え合わせの有無で効果が変わる[4] |
表2 3R記録表。1区切りにつき1行書きます。紙に書き写すか、メモアプリに同じ列を作ります。
| 日付 | 読んだ範囲 | 思い出せた要点の数 | 見直して足りなかった点 | 推論に答えられそう(1〜5) | 2日後に思い出せた数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 例 10/13 | 例 3章1〜3節 | 例 4 | 例 例外の条件を忘れていた | 例 2 | 例 3 |
右端の「2日後」の列は、次に同じ本を開く前に、前回の範囲を本を見ずに1分だけ書き出して数えます。2日後のテストは、上の実験[3]で使われた間隔に合わせたものです。
表3 2週間後の見直し表。記録を並べて、当てはまる行から1つだけ選んで変えます。
| 記録に見えたこと | 次の2週間に変えること |
|---|---|
| 思い出せた要点が毎回1〜2個しかない | 区切りを短くする(見出し1〜2個ぶん)。それでも少なければ、読む前に章末の問題を1問解く |
| その場では書けるのに、2日後の数が大きく減る | 区切りを少し長くし、読み終えてからまとめて思い出す[3]。2日後の書き出しを毎回続ける |
| 推論の判定が低い(1〜2)ことが多い | 見直しのとき、「なぜ」「どうなる」を1つ自分で問いにして答える[2] |
| 見直しを飛ばす日が多い | 思い出しの時間を3分に減らし、その分を見直しに回す。答え合わせを省かない[4] |
| 特に目立つ傾向がない | 今のやり方を続け、2日後の書き出しを1週間後にも1回足す |
04 続けるためのコツ3Rシートを面倒にしないには?
書くのは要点の数と短いメモだけにし、思い出しの時間は3分から始めます。うまく書けない日があっても、それ自体が練習になっていると考えます。
- 白紙1枚で始める。きれいなノートは作らない。思い出した内容の紙は捨ててもよく、表2の数字だけ残す。
- 手ごたえで判断しない。思い出す練習は、その場では読み直しより点が低く出やすい[5]。2日後の数で判断する。
- 読み直しをゼロにしない。見直しは3Rの一部で、書けなかった所を確かめる時間です。答え合わせなしで思い出すだけにしない[4]。
- 単語の暗記には別の表を使う。英単語のような1問1答の暗記には、英単語の復習スケジュール表の方が向いています。
05よくある質問
思い出すのは、声に出すのと書くのとどちらがいい?
この記事で取り上げた研究では、声に出す場合と書く場合の比較は報告されていません。この記事の表は、あとで見直せるように書く形にしています。電車の中など書けない場所では、頭の中で言うだけでもかまいません。
節ごとに思い出すのと、最後にまとめて思い出すのはどちらがいい?
短い文章を使ったイスラエルの大学生72人の実験では、節ごとの方がその場では多く思い出せましたが、2日後の成績は最後にまとめて思い出した方が高くなりました[3]。ただし1つの実験で、文章も短いものでした。長い章では、見出し2〜3個ぶんを1つの区切りにする形から試してください。
思い出せたのが少なくて落ち込みます。やり方が合っていない?
思い出す練習は、その場では読み直しより点が低く出やすいことがわかっています。文章を使った大学生の実験でも、5分後のテストでは読み直しの方が上で、2日後と1週間後に思い出す練習の方が上回りました[5]。書けた量の少なさは、失敗の印ではありません。
出典
- McDaniel, M. A., Howard, D. C., & Einstein, G. O. (2009). The read-recite-review study strategy: Effective and portable. Psychological Science, 20(4), 516–522. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02325.x
- Nguyen, K., & McDaniel, M. A. (2016). The JOIs of text comprehension: Supplementing retrieval practice to enhance inference performance. Journal of Experimental Psychology: Applied, 22(1), 59–71. https://doi.org/10.1037/xap0000066
- Stern, P., & Halamish, V. (2023). Free-recall retrieval practice tasks for students with ADHD: Whole-text versus section recall. Frontiers in Psychology, 14, 1301726. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1301726
- Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399–435. https://doi.org/10.1037/bul0000309
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x


