似た用語やルールが頭の中で混ざってしまった。どう立て直す?並べて比べ、混ぜて解く「見分ける練習」の研究

1つずつなら説明できたのに、問題になると「これはAとBのどっちだっけ」と迷う。似た用語、公式、制度のルールが混ざるのは、覚えた量が足りないからとは限りません。研究からわかるのは、似たものは1つずつ覚え直すより、並べて比べ、混ぜて解いて「見分ける練習」をした方が立て直しやすいことです。ただし、混ぜると逆効果になる場面もあります。
3行でわかる
- 種類の違う例や問題を交互に混ぜる練習は、59研究のメタ分析で、まとめて練習するより平均で中くらいの効果(g=0.42)があった。似たものどうしほど効果が大きかった。
- ただし単語ではまとめて覚える方が良く(g=−0.39)、説明文でも効果ははっきりしなかった。混ぜるのは「見分けにくい似たもの」に絞る。
- 立て直しは、①混ざったペアを書き出す ②並べて違いを1行にする ③問題を混ぜる ④解く前に「どっちか」を答える ⑤数日後に確かめる ⑥似ていないものは混ぜない、の6つ。
01 悩みの正体似た用語やルールが混ざるのはなぜ?
1つずつ覚えると、それぞれの中身は頭に入っても「どこが違うか」を比べる機会がありません。違いを比べていないものは、問題になったときに見分けられず混ざります。
教科書や問題集は、たいてい単元ごとに並んでいます。「この章はAの問題」とわかっていれば、どれを使うかを考えずに解けます。
ところが試験では、AとBの問題が区別なく出ます。そこで初めて「どっちを使うのか」を決める場面になり、迷います。数学の練習を調べた研究者も、この点を指摘しています[2]。
単語どうしが混ざる場合は、少し事情が違います。英単語の場合は似た単語が混ざる理由の記事にまとめました。この記事は、用語・公式・ルール・問題の種類が混ざったときの立て直しに絞ります。
02 科学的にわかっていること混ぜて練習すると、見分けられるようになる?
似たものどうしなら、混ぜて練習した方が見分ける力がつきやすいと、多くの実験とメタ分析が示しています。効く理由は、時間をあけることより、違う種類を続けて見比べられることにあるようです。
BrunmairとRichter(2019)[1]
59研究(158の参加者集団、238の効果量)をまとめたメタ分析。種類の違う例を交互に混ぜる練習(交互練習)は、まとめて練習するより平均でg=0.42(中くらい)上回った。絵画ではg=0.67、数学の問題ではg=0.34だった。種類どうしが似ているほど、効果は大きかった。
対象: 主に実験室の研究 / 限界: 単語ではまとめる方が良く(g=−0.39)、説明文と味の研究では効果がはっきりしなかった。著者らは単語と説明文では慎重に使うよう述べている。論文の要旨で確認。
Rohrerら(2014)[2]
中学1年生(7年生)140人が、9週間にわたり数学の問題を「同じ種類ごと」か「種類を混ぜて」練習した。2週間後の予告なしのテストでは、混ぜて練習した問題の平均点が72%、まとめて練習した問題は38%だった(d=1.05)。問題の見た目が似ていなくても差が出た。
対象: 教室で行った実験の中学生 / 限界: 数学の授業での結果で、大人の資格試験の勉強で同じ差が出るとは限らない。論文の要旨で確認。
Birnbaumら(2013)[3]、CarvalhoとGoldstone(2014)[4][5]
チョウや鳥の写真を使った3つの実験で、混ぜた種類の間に時間をはさんで「続けて見比べる」流れを切ると、効果が弱まった。別の実験では、インディアナ大学の学生178人(分析は113人)が作られた図形の種類を学んだ。似た種類では混ぜる方が最もよく、似ていない種類ではその差がかなり小さくなった。24時間後のテストでも、時間をあけたことによる上乗せは見られなかった。
対象: 大学生などの実験参加者(図形の実験は米国の大学生) / 限界: 写真や作られた図形を見分ける実験で、文章で覚える用語とは違う。研究者らは、効く理由は見比べることだと結論づけている。
02 混ぜない方がいい場面混ぜると、逆に覚えにくくなることは?
あります。違いのはっきりした、似ていないもの同士では、1つずつまとめて学ぶ方が良い結果も出ています。混ぜる練習は、見分けにくいものに絞って使います。
ZulkiplyとBurt(2013)[6]、CarvalhoとGoldstone(2014)[4]
見分けにくい種類では混ぜる方が良く、見分けやすい種類ではまとめる方が良かった。似ていない種類では、まとめて学ぶ方が良いという結果も出た。また参加者は、どちらの条件でも「まとめる方が効果的だ」と判断していた。見分けにくい種類では、実際の成績は逆だった。
対象: 実験参加者 / 限界: 実験室の短い課題。論文の要旨で確認。
Nohら(2016)[7]
はっきりしたルールを考えて見つける種類(ルールで分けられる種類)では、まとめて学ぶ方が良かった。いくつもの特徴を合わせて感覚的に見分ける種類では、混ぜる方が良かった。どちらが良いかは、学ぶものの性質しだいで入れかわった。
対象: 実験参加者 / 限界: 人工的な図形を分ける実験室の課題で、勉強の内容への当てはめには推測が入る。論文の要旨で確認。
まとめると、「何でも混ぜれば良い」わけではありません。研究の多くは、絵・写真・図形・数学の問題を使った実験です。法律の用語や制度の比較で同じ大きさの効果が出るかは、まだ確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩混ざってしまった用語は、どう立て直す?
混ざったペアを書き出し、並べて違いを1行で書きます。次に、そのペアの問題を混ぜて解き、解く前に「どっちの問題か」を答えます。確認は数日後のテストで行います。
混ざったペアを、間違えた問題から書き出す
「AとBを取り違えた」と答え合わせで気づいたものだけを書きます。頭で考えるより、実際の間違いから拾う方が確実です。最初は3ペアまでにします。
所要 10分
2つを並べて、同じ点・違う点・見分ける一言を書く
下の表のように、同じ紙の左右に並べます。時間をあけて交互に見るより、続けて見比べることが大事だと考えられています[3][5]。最後に「どこを見ればわかるか」を1行で書きます。
所要 1ペア5分
そのペアの問題を集め、順番を混ぜる
AとBの問題を各3〜5問集め、カードや番号でシャッフルします。章ごとに並んだ順で解くと、どれを使うかを考えずに済んでしまいます[2]。
所要 10分
解く前に「これはAかBか」を先に答える
問題文を読んだら、解き始める前に「A」「B」と書き、その理由になった言葉に線を引きます。試験で必要なのは、この「選ぶ」力です。外れたら手順2の表に戻ります。
所要 1問1〜3分
2〜3日後に、混ぜた問題で確かめる
混ぜて解くと、練習中は正答率が下がり、手ごたえも悪くなりがちです[6]。効いたかどうかは、練習中ではなく数日後のテストで判断します。間をあけた確かめ方は分散学習の記事も参考になります。
所要 15分
似ていないもの・まだ覚えていないものは混ぜない
違いがはっきりしているもの同士は、混ぜても効果は期待しにくく、まとめる方が良い場合もあります[4][6]。中身をまだ覚えていない新しい単元は、まず1つずつ学びます。単語の取り違えは似た単語の記事のやり方を使います。
所要 判断に1分
| 書く欄 | 書き方 |
|---|---|
| 同じ点 | 2つに共通することを1〜2行で書く(例: どちらも一定の期間がたつと権利が主張できなくなる) |
| 違う点 | 違いを、同じ観点で並べて書く(例: 期間の進み方を止められるか、当事者が主張する必要があるか) |
| 見分ける一言 | 問題文のどの言葉を見れば決まるかを1行で書く |
| 間違えた問題 | 取り違えた問題の番号を書き、手順3で混ぜる問題に使う |
例の中身は、使っている教材で正確な定義を確かめてから書いてください。表の形は研究の手順を元にした、この記事での整理です。
04 続けるためのコツ見分ける練習を、無理なく続けるには?
ペアを増やしすぎず、間違えたときだけ表に足します。混ぜた問題の正答率が下がっても、それだけでやめません。
- 見分け表は1冊のノートにまとめ、間違えるたびに1行足す。新しいペアは1日3つまで。
- 過去問や問題集を解き直すときは、章の順ではなくシャッフルした順で解く。過去問の使い方は過去問の記事にまとめています。
- 混ぜた問題で迷っても「効いていない」と決めない。練習中の手ごたえと実際の成果はずれやすいことは勉強法を変えたのに手応えがない記事で紹介しました。
- 何度やってもまた混ざるペアは、見分ける一言が問題文の言葉と結びついているかを見直す。
05よくある質問
似た用語が混ざるのは、覚える量が足りないからですか?
量だけの問題とは限りません。1つずつ覚えると、それぞれの中身は頭に入っても「どこが違うか」を比べる機会が少なくなります。混ぜて練習する研究では、種類の違う例を交互に見ると、種類どうしの違いに目が向きやすくなると考えられています。
どんなものでも混ぜて練習すればいいですか?
いいえ。59研究をまとめたメタ分析では、絵や数学の問題では混ぜる方が良かった一方、単語では1つずつまとめる方が良く、説明文では効果がはっきりしませんでした。混ぜるのは、見分けにくい似たものどうしに絞ります。
混ぜて解くと正答率が下がり、効いていない気がします。
練習中の手ごたえは悪くなりやすいです。ある実験では、参加者は1つずつまとめる練習の方が効果的だと判断しましたが、見分けにくい種類では混ぜる方が成績が良くなりました。判断は練習中ではなく、数日後の確認テストで行います。
出典
- Brunmair, M., & Richter, T. (2019). Similarity matters: A meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin, 145(11), 1029–1052. https://doi.org/10.1037/bul0000209
- Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Burgess, K. (2014). The benefit of interleaved mathematics practice is not limited to superficially similar kinds of problems. Psychonomic Bulletin & Review, 21(5), 1323–1330. https://doi.org/10.3758/s13423-014-0588-3
- Birnbaum, M. S., Kornell, N., Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2013). Why interleaving enhances inductive learning: The roles of discrimination and retrieval. Memory & Cognition, 41(3), 392–402. https://doi.org/10.3758/s13421-012-0272-7
- Carvalho, P. F., & Goldstone, R. L. (2014). Putting category learning in order: Category structure and temporal arrangement affect the benefit of interleaved over blocked study. Memory & Cognition, 42(3), 481–495. https://doi.org/10.3758/s13421-013-0371-0
- Carvalho, P. F., & Goldstone, R. L. (2014). Effects of interleaved and blocked study on delayed test of category learning generalization. Frontiers in Psychology, 5, 936. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2014.00936
- Zulkiply, N., & Burt, J. S. (2013). The exemplar interleaving effect in inductive learning: Moderation by the difficulty of category discriminations. Memory & Cognition, 41(1), 16–27. https://doi.org/10.3758/s13421-012-0238-9
- Noh, S. M., Yan, V. X., Bjork, R. A., & Maddox, W. T. (2016). Optimal sequencing during category learning: Testing a dual-learning systems perspective. Cognition, 155, 23–29. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2016.06.007


