絵に描いて覚えるには?書き写すより残る「描いて覚える」やり方(描画効果の研究と限界)

用語集を何度書き写しても、翌日には定義が出てこない。そんなとき「絵に描いて覚える」という方法があります。研究の答えは「単語や用語の定義では、書き写すより、意味を絵に描いた方がよく思い出せる。ただし自分の言葉で言い換えても同じくらい残り、図の多い教材では効果が出なかった」です。効く条件に絞って、描き方を手順にしました。
3行でわかる
- 7つの実験で、覚えたい単語を絵に描いた方が、書き写すより多く思い出せた(Wammesら 2016)。大学の教科書の用語の定義でも同じだった。
- ただし定義を自分の言葉で言い換えた場合も、描いたのと同じくらい残った。効いているのは「意味を考えて形を変えること」と考えられる。
- やり方は「図を写さず、意味を自分で絵にする」「内容と関係ない落書きはしない」。図や動画の多い教材では、描くより言葉でまとめる方がよかった。
01 悩みの正体書き写しても覚えられないのはなぜ?
そのまま書き写すと、手は動いていても、意味を考えなくても作業が終わります。覚えるには、内容の意味を自分で処理し直す一手間が必要です。
ノートにきれいに書き写すと、勉強した手ごたえがあります。しかし書き写すだけなら、文字を目で追って手でなぞるだけで終わります。
定義を絵にしようとすると、そうはいきません。「この用語は何を表しているのか」を考えないと、絵の形が決まらないからです。研究者は、この「意味を考えて別の形に置き換える」過程が記憶を助けると考えています[2]。
絵に描く方法は、思い出す練習のような有名な勉強法ほどは知られていません。ここからは、どんな条件で効き、どんな条件で効かなかったかを見ていきます。
02 科学的にわかっていること絵に描くと、書き写すより覚えられる?
単語や用語の定義では、書き写すより描いた方がよく思い出せる結果が続いています。ただし言い換えと同じくらいで、図の多い教材から描いた実験では差が出ませんでした。
Wammesら(2016)[1]
7つの実験で、単語を1つずつ見せ、絵に描くか、書き写すかを指示した。後で思い出せた単語は、描いた方が多かった。覚える時間を短くしても、単語の数を増やしても、描く効果は残った。
対象: 7つの実験の参加者 / 限界: 覚えたのは単語のリストで、勉強の教材ではない。比べた相手は「書き写す」という覚え方。
Wammesら(2017)[2]
大学の教科書から取った用語と定義を覚える3つの実験。定義を絵に描いた方が、そのまま書き写すより後でよく思い出せた。もともと知っている用語かどうかを考えに入れても、架空の用語にしても、結果は変わらなかった。ただし定義を自分の言葉で言い換えた場合は、描いたのと同じくらい残った。
対象: 3つの実験の参加者 / 限界: 言い換えと同じくらいだったため、著者らは「意味を考えて置き換えること」が効果の大きな理由だとまとめた。
Meadeら(2018)[3]
若い大人と高齢者が、30個の名詞を絵に描くか、くり返し書き写した。思い出せた単語のうち描いた単語の割合が高く、その差は高齢者の方が大きかった。物の特徴を書き出す覚え方よりも、描く方がよく残った。
対象: 若い大人と高齢者 / 限界: 単語のリストでの結果。年齢が上がっても描く効果が残ることは、大人の学び直しには明るい材料。
Meadeら(2019)[4]
単語を聞きながら、内容と関係ない落書きをする・単語の絵を描く・単語を書く、を比べた。落書きをした単語は最も思い出せず、描いた単語が最も思い出せた。決められた図形を塗りつぶす作業は、書くのと同じくらいだった。
対象: 3つの実験の参加者 / 限界: 耳で聞く単語の実験。授業中の落書きが一般に悪いとまでは言えない。
NamiasとHuff(2025)、Huffら(2024)[5][6]
単語と絵を見せる実験で、見せた絵をそのまま写すより、自分で違う絵を考えて描いた方が描く効果がはっきりした[6]。また、描く項目と書く項目を同じリストに混ぜると効果が大きく見え、その一部は「書いた項目の成績が下がった」ためだった[5]。
対象: 単語と絵を使った実験の参加者 / 限界: 全部を描く・全部を書くで比べる形の実験では、描く効果が出ないこともあると著者らは書いている。この研究では出たが、混ぜた場合より小さかった。
LawsonとMayer(2024)[7]
温室効果ガスについての動画の授業で、大学生に、場面ごとに絵を描かせた。描いた人の成績は、何もしない人とはっきりした差が出なかった(直後の203人の実験で効果量0.23、1週間後の130人の実験で0.11)。一方、言葉でまとめた人は、何もしない人より成績が良かった(0.48と0.54)。
対象: 米国の大学生 / 限界: 練習なしで描かせ、人数も十分ではなかったと著者ら自身が書いている。文章中心の教材では、描くと28研究中26研究で効果があった(効果量の中央値0.40)という以前のレビューも紹介されている。
条件ごとに比べると、次のようになります。
| 覚え方 | 研究でわかったこと |
|---|---|
| 意味を絵に描く | 書き写すより多く思い出せた[1][2][3] |
| 自分の言葉で言い換える | 描くのと同じくらい残った[2] |
| 見せられた絵を写す | 自分で考えて描くより効果が弱い[6] |
| 内容と関係ない落書き | 最も思い出せなかった[4] |
| 図や動画の多い教材から描く | 何もしないのとはっきりした差なし。言葉でまとめる方が良かった[7] |
ここで紹介した実験の多くは、大学生が短い時間で単語や定義を覚えたものです。資格試験のような長い期間の独学で、どれくらい点数につながるかはまだ確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩絵に描いて覚えるには、どうすればいい?
文章で説明された用語や仕組みを選び、教科書を閉じて、意味を表す簡単な絵を自分で考えて描きます。絵が浮かばない用語は、自分の言葉で言い換えます。
描く対象は「文章だけで説明された用語や仕組み」にする
効果が確かめられたのは、単語や用語の定義、文章で読む内容です[2][7]。すでに図が載っている箇所は、描き直しても効果が出にくい可能性があります[7]。今日覚えたい用語を5個選びます。
所要 3分
定義を読んだら、教科書を閉じてから描く
見ながら写すより、自分で形を考えた方が効果がはっきりしました[6]。「この用語を知らない人に1枚の絵で伝えるなら」と考えて描きます。
所要 1つ1〜2分
上手さより「意味が入っているか」を確かめる
棒人間や矢印で十分です。描いた後に教科書を開き、定義の大事な部分が絵に入っているかを確かめます。抜けていたら書き足します。
所要 1つ30秒
絵が浮かばない用語は、自分の言葉で言い換える
抽象的な用語は、無理に描かなくてかまいません。定義を自分の言葉で書き直すと、描いたのと同じくらい残りました[2]。
所要 1つ1分
翌日、絵を見ずにもう一度描いてみる
描画効果と思い出す練習を組み合わせた研究は、今回の出典にはありません。ただ、思い出す練習は読み返すより記憶に残ることが多くの研究で確かめられています。思い出す練習の記事を参考に、用語だけを見て絵と定義を再現できるか試します。
所要 5分
04 続けるためのコツ描いて覚える方法が向かないのはどんなとき?
図や動画が中心の教材、計算の手順、量の多い暗記には向きにくいと考えられます。描くのは時間がかかるので、覚えにくい用語に絞って使います。
- 図や動画の多い教材では、描くより言葉でまとめる方が成績が良かった[7]。要約の研究は要約しながら読む記事で紹介している。
- 関係のない落書きは、かえって覚えにくくした[4]。描くなら必ず覚えたい内容の絵にする。
- 用語どうしのつながりを1枚にまとめたいときは、図にまとめる学習(マインドマップ)の記事の研究も参考になる。
- 語呂合わせやイメージで覚える記憶術とは別の方法。記憶術の研究は語呂合わせとイメージの記事にまとめた。
- 年齢が上がっても描く効果は残り、高齢者ではむしろ大きかった[3]。「年だから覚えられない」と感じる人も試す価値がある。
05よくある質問
絵に描いて覚えると、本当に記憶に残りますか?
単語や用語の定義では、書き写すより描いた方がよく思い出せた実験が続いています(Wammesら 2016・2017)。ただし比べた相手は「そのまま書き写す」という弱い覚え方で、自分の言葉で言い換えた場合とは同じくらいでした(Wammesら 2017)。描くこと自体に特別な力があるというより、意味を考えて形を変えることが効いていると考えられます。
絵が下手でも効果はありますか?
今回の出典では、絵の上手さが効果の条件として確かめられてはいません。大事なのは、見た目の美しさより、内容の意味を正しく表しているかです。文章から描く研究では、内容を正しく表した絵を描いた人ほどテストの成績が良い傾向がありました。
教科書の図を写すのも効果がありますか?
写すより、自分で考えた絵を描く方が効果が大きい結果が出ています(NamiasとHuff 2025)。また、図や動画の多い教材から絵を描かせた実験では、描いた人の成績は何もしない人とはっきりした差が出ませんでした(LawsonとMayer 2024)。図がすでにある教材では、図を言葉で説明し直す方が向いている可能性があります。
暗記カードや思い出す練習とどちらがいいですか?
描画効果と思い出す練習を直接比べた研究は、今回の出典には含まれていません。描くのは「覚える最初の一手」として使い、後日、絵を見ずに描き直したり内容を思い出したりする練習と組み合わせるのが、研究に沿った使い方です。
勉強法の早見表で「覚えたいことを絵に描く」の判定を見る
ほかの勉強法も54種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2016). The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 69(9), 1752–1776. https://doi.org/10.1080/17470218.2015.1094494
- Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2017). Learning terms and definitions: Drawing and the role of elaborative encoding. Acta Psychologica, 179, 104–113. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2017.07.008
- Meade, M. E., Wammes, J. D., & Fernandes, M. A. (2018). Drawing as an encoding tool: Memorial benefits in younger and older adults. Experimental Aging Research, 44(5), 369–396. https://doi.org/10.1080/0361073X.2018.1521432
- Meade, M. E., Wammes, J. D., & Fernandes, M. A. (2019). Comparing the influence of doodling, drawing, and writing at encoding on memory. Canadian Journal of Experimental Psychology, 73(1), 28–36. https://doi.org/10.1037/cep0000170
- Huff, M. J., Namias, J. M., & Poe, P. (2024). The drawing effect: Evidence for costs and benefits using pure and mixed lists. Memory & Cognition, 52, 1408–1421. https://doi.org/10.3758/s13421-024-01551-6
- Namias, J. M., & Huff, M. J. (2025). Generating drawings enhances the drawing effect relative to replicating drawings. Memory, 33, 1242–1252. https://doi.org/10.1080/09658211.2025.2562002
- Lawson, A. P., & Mayer, R. E. (2024). Generative learning activities for online multimedia learning: When summarizing is effective but drawing is not. Frontiers in Psychology, 15, 1452385. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1452385


