問題集の答え合わせは、1問ごと?まとめて? 研究でわかった答え合わせのタイミングとやり方(フィードバックの研究)

問題集を解くとき、1問ごとに解説を見ていますか。それとも10問まとめて解いてから答え合わせをしますか。「すぐ確かめないと間違いを覚えてしまう」とも、「まとめた方が本番に近い」とも言われます。研究から見ると、すぐでも後でも答え合わせをすれば記憶に残ります。タイミングより大事なのは、間違えた問題と自信のなかった正解を必ず確かめることです。
3行でわかる
- 答え合わせをするかしないかの差は大きい。単語の実験では、間違えた後に正解を見せると、1週間後に覚えていた量が494%増えた。
- すぐ答え合わせをするか、後でまとめてするかは、どちらでも記憶に残る。後でまとめた方が良かった実験もあるが、条件をそろえると差が消えた実験もある。
- 独学では、①1回分を解き切る ②その日のうちにまとめて答え合わせ ③間違いと自信のない正解だけ解説を読む ④根拠と間違えた理由を書く ⑤数日後に印の問題を解き直す、の5つが研究に沿ったやり方。
01 悩みの正体答え合わせは1問ごとにすべき?
1問ごとでなくてかまいません。研究では、すぐ答え合わせをしても、少し後にまとめてしても、答え合わせをしない場合より記憶に残りました。迷うべきなのは「いつ」より「必ずするか」と「どの問題を丁寧に見るか」です。
答え合わせのように、自分の答えが合っているか、正解は何かを知らせることを、研究では「フィードバック」と呼びます。
1問ごとに解説を読むと安心できます。一方で、問題を解くたびに流れが切れ、本番のように続けて考える練習になりにくい面もあります。後でまとめると、間違いが頭に残るのではと不安になります。
研究は、この2つのどちらかが大きく勝つとは言っていません。はっきりしているのは、答え合わせをしないことの損と、間違いと自信のない正解を確かめることの得です。
02 科学的にわかっていることすぐ答え合わせと後で答え合わせ、どちらが残る?
どちらも、答え合わせをしない場合より残ります。後でまとめた方が良い実験はいくつかありますが、大人の単語学習では条件をそろえると差が消えました。間違えた問題と、自信のなかった正解に答えを示すと、記憶が大きく伸びました。
Pashlerら(2005)[3]
258人がルガンダ語(アフリカの言語)と英語の単語の組を覚えた。2回見た後に何度かテストを受け、正解を見せるかどうかを人によって変えた。間違えた後に正解を見せると、練習中の成績が上がっただけでなく、1週間後のテストで覚えていた量が494%増えた。一方、正解した後に正解を見せても、自信の有無にかかわらず、ほとんど差はなかった。
対象: 258人の単語学習の実験 / 限界: 単語の組を覚える課題。文章や計算問題でも同じ大きさとは限らない。
Butlerら(2008)[4]
一般知識の選択肢問題を解き、1問ごとに答えへの自信を記録した。半分の問題に答えを示すと、間違いを直せただけでなく、自信がないまま正解した問題を後で覚えている割合が、答えを示さない場合の2倍になった。著者らは、答え合わせは記憶の誤りと「わかっているのに、わかっていないと思う」誤りの両方を直すと述べている。
対象: 2つの実験の参加者 / 限界: 一般知識の問題での結果。単語の組を使った[3]では、正解後の答え合わせの差は小さかった。
Butler・Roediger(2008)[2]
文章を読んだ後に選択肢のテストを受け、正解をすぐ見る・時間をおいて見る・見ない、のどれかに分かれた。正解を見なかった場合に比べ、すぐ見ても時間をおいて見ても、後の記述のテストで正答が増え、選択肢の誤りを答えてしまう間違いが減った。
対象: 実験室で文章を読んだ参加者 / 限界: 短い文章を使った実験。
Butlerら(2007)[1]
280〜300語の文章12本を読み、6択の問題を解いた。問題によって、答え合わせをすぐ見せるか、後で見せるかを変えた。後のテスト(手がかりから答えを書く形式)では、後で答え合わせをした問題の方が成績が良かった。正解を見せるやり方と、正解が出るまで選び直すやり方では差がなかった。著者らは、後の答え合わせが間をあけた復習の役割をしたためと考えている。
対象: 2つの実験の参加者 / 限界: 実験室の一般知識の文章。何百問もある資格試験の範囲で同じ差が出るかはわからない。
Metcalfeら(2009)[5]
小学6年生が学校で習う単語を覚えた実験では、後の答え合わせが、すぐの答え合わせより良く、どちらも答え合わせなしより良かった。大学生が難しい英単語を覚えた実験でも、後の答え合わせが良かった。ただし、最後の答え合わせからテストまでの間隔をそろえると、大学生では差がなくなった。
対象: 小学6年生と大学生 / 限界: 「後の方が良い」結果の一部は、テストの直前に答えを見た近さで説明できる。
Corralら(2021)[6]
架空の実験の説明を読み、それが正しい実験かどうかを判断する練習を3つの実験で行った。全部の問題を解いた後にまとめて答え合わせをした場合と、1問ごとの場合では、実験1と2では新しい問題の成績に差がなかった。答え合わせを2日後にした実験3でだけ、後の答え合わせが有利になった。
対象: 3つの実験の参加者 / 限界: 「すぐ」と「同じ日のまとめて」の差はほぼなかった。差が出たのは日をあけたときだけ。
Wisniewskiら(2020)[7]
435の研究(6万1千人以上)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。フィードバックは学びに中くらいの効果があった(効果量 d = 0.48)。ほめる・叱るだけのものは d = 0.24、正誤と正解を伝えるものは d = 0.46、それに加えて自分の進め方の見直しにつながる情報まで含むものは d = 0.99だった。答え合わせのタイミングについては、これまでの研究の結果が一致していないと述べている。
対象: 学校教育を中心とした研究 / 限界: 研究どうしの違いが大きく、効果の数字は目安。独学の資格試験そのものを調べたものではない。
ここで紹介した研究の多くは、実験室の短い課題や子ども・大学生のものです。社会人が何か月も一人で問題集を解く場合に、同じ大きさの差が出るかは確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩問題集の答え合わせは、どうすればいい?
1回分を解き切ってから、その日のうちにまとめて答え合わせをします。解説を丁寧に読むのは、間違えた問題と自信のなかった正解だけ。理由を書き直し、数日後にその問題だけ解き直します。
1回分を、解説を見ずに解き切る。自信のない問題に「?」をつける
10問や1単元など、区切りを決めて続けて解きます。答えに自信がない問題は、正解かどうかにかかわらず「?」をつけます。後で丁寧に見る問題を選ぶためです[4]。
所要 1回分 20〜40分
その日のうちに、まとめて答え合わせをする
すぐでも少し後でも、答え合わせをすれば記憶に残りました[2][6]。翌日以降に持ち越すと忘れて終わりやすいので、独学ではその日のうちを決まりにします。
所要 10問で5〜10分
解説を丁寧に読むのは「×」と「?」の問題だけ
間違えた問題は正解を見ると伸びが大きく[3]、自信のない正解も答えを確かめると残りやすくなりました[4]。自信を持って正解した問題は、解説を飛ばして時間を浮かせます。
所要 1問につき1〜3分
正解の根拠と「なぜ間違えたか」を一言書く
正解の記号を写すのでなく、根拠を自分の言葉で余白に書きます。間違えた問題には「読み落とし」「覚え違い」「知らなかった」のどれかも書き添えます。正誤だけより、自分のやり方を見直す情報まで含む答え合わせの方が効果が大きかったメタ分析[7]を参考にした工夫で、書くこと自体の効果を確かめた研究ではありません。
所要 1問につき1分
2〜3日後に、「×」と「?」の問題だけ解き直す
日をあけて答えに触れ直すと残りやすいことは、後の答え合わせが有利になった実験[1][6]とも合います。次の復習日は復習日の計算機で決められます。
所要 15〜30分
手順2で答え合わせを「その日」にしたのは、独学で続けやすいことを考えた工夫です。答え合わせ自体を2日後にした方が有利だった実験[6]もありますが、条件をそろえると差が消えた実験[5]もあるため、日をあける部分は手順5の解き直しで取り入れています。
04 続けるためのコツ1問ごとに確かめないと不安なときは?
1問ごとの答え合わせでも、損は大きくありません。不安なら、初めての単元は1問ごと、2周目からはまとめて、と使い分けます。答え合わせを飛ばさないことの方がずっと大事です。
- 初めて習う単元で、1問目から解き方がわからないときは、例題と解説を先に読む(例題学習のやり方)。
- 選択肢の問題の解き方は四択の問題集の解き方、まとめて間違いを直すやり方は間違えた問題の直し方も参考にする。
- 「?」と「×」の数を、回ごとにノートの端に書いておく。減っていく様子が、次の回の手がかりになる。
05よくある質問
1問ごとに答え合わせしないと、間違いを覚えてしまいませんか?
その日のうちに答え合わせをするなら、心配は小さいと考えられます。選択肢の問題の後に、すぐ正解を見ても、時間をおいて見ても、誤りの選択肢を答えてしまう間違いは、正解を見ない場合より減りました。困るのは、答え合わせをしないまま次へ進むことです。
正解した問題も、解説を読むべきですか?
自信がなかった正解は読みます。一般知識の選択肢問題の実験では、自信のない正解に答えを示すと、後で覚えている割合が答えを示さない場合の約2倍になりました。自信を持って正解し、理由も言える問題は飛ばしてかまいません。
答え合わせを何日も後にした方が覚えられるのですか?
そういう結果の実験もありますが、決まりとまでは言えません。大人の単語学習では、最後のテストまでの間隔をそろえると差が消えました。答え合わせを先送りするより、答え合わせはその日にして、数日後に解き直す方が独学では続けやすく、間をあける効果も取り入れられます。
勉強法の早見表で「答え合わせは解き切ってから、その日のうちにまとめて」の判定を見る
ほかの勉強法も57種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Butler, A. C., Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2007). The effect of type and timing of feedback on learning from multiple-choice tests. Journal of Experimental Psychology: Applied, 13(4), 273–281. https://doi.org/10.1037/1076-898X.13.4.273
- Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2008). Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition, 36(3), 604–616. https://doi.org/10.3758/MC.36.3.604
- Pashler, H., Cepeda, N. J., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2005). When does feedback facilitate learning of words? Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31(1), 3–8. https://doi.org/10.1037/0278-7393.31.1.3
- Butler, A. C., Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). Correcting a metacognitive error: Feedback increases retention of low-confidence correct responses. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 34(4), 918–928. https://doi.org/10.1037/0278-7393.34.4.918
- Metcalfe, J., Kornell, N., & Finn, B. (2009). Delayed versus immediate feedback in children's and adults' vocabulary learning. Memory & Cognition, 37(8), 1077–1087. https://doi.org/10.3758/MC.37.8.1077
- Corral, D., Carpenter, S. K., & Clingan-Siverly, S. (2021). The effects of immediate versus delayed feedback on complex concept learning. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 74(4), 786–799. https://doi.org/10.1177/1747021820977739
- Wisniewski, B., Zierer, K., & Hattie, J. (2020). The power of feedback revisited: A meta-analysis of educational feedback research. Frontiers in Psychology, 10, 3087. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.03087


