記憶・覚え方

身ぶり(ジェスチャー)をつけて英単語を覚えると忘れにくい?体を使う暗記法の研究でわかったこと(効く・効かないの判定)

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古いラテン語辞書の挿絵(細長い小箱)
Photo: AnonymousUnknown author / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

英単語がなかなか覚えられない。それなら、意味に合わせて手を動かしながら覚えたらどうか。「体を使うと忘れにくい」という話は、語学の勉強法としてよく紹介されます。研究を調べると、意味に合った身ぶりをつけた単語は、読んで聞くだけの単語より思い出しやすかった実験がいくつかあります。ただし、多くは実験用に作られた言葉を20〜30人ほどで覚えた研究で、効果が出なかったテストや実験もあります。判定は「条件しだい」です。

3行でわかる

  1. 判定:身ぶりをつけて単語を覚える方法は「条件しだい」。意味に合った身ぶりでは、読んで聞くだけより思い出しやすかった実験が複数ある。
  2. 意味と関係のない手の動きでは効果が弱かった。効いているのは「動き」より「意味と結びついた動き」と考えられている。
  3. 7件の実験・309人をまとめたメタ分析では、自分で身ぶりをしても、人の身ぶりを見るだけでも、差はほとんどなかった。

01 通説の中身身ぶりをつけると英単語を覚えやすいって本当?

実験室では、意味に合った身ぶりをつけた単語の方が思い出しやすい結果が多く出ています。ただし研究の多くは同じ研究グループによるもので、作られた言葉を数日だけ覚えた実験です。

たとえば「飲む」という単語を覚えるとき、手でコップの形を作って口に近づける。このように、単語の意味を表す手の動き(身ぶり)をしながら覚える方法です。

研究では、絵を添える方法や、読んで聞くだけの方法と比べられてきました。単語に音・文字・動きなど複数の情報を結びつけると、思い出す手がかりが増える、という考え方が背景にあります。

絵や図をかいて覚える方法も、似た考え方の勉強法です(絵をかいて覚える方法の記事)。

02 科学的にわかっていること身ぶりで覚えた単語は、本当に忘れにくい?

意味に合った身ぶりで覚えた単語は、読んで聞くだけの単語より思い出しやすかった実験があります。ただ、外国語の単語そのものを書けるようになる効果は、はっきりしない結果もありました。

Mayerら(2015)[1]

外国語の単語を、身ぶりをしながら覚えると、絵を見ながら覚えるより効率がよく、どちらも言葉だけで覚えるより成績がよかった。後の論文では、身ぶりで覚えた単語は、学習を終えて数か月後も絵で覚えた単語より残りやすかったと紹介されている[2]。

対象: 成人(1つの実験につき22人。後の論文[2]の記載) / 限界: 実験用に作られた言葉「Vimmi(ヴィミ)」を数日で覚えた実験。脳の働きを調べるのが主な目的だった。

Macedoniaら(2011)[3]

同じ人が、意味に合った身ぶりで覚える単語と、意味と関係のない手の動きで覚える単語の両方を学んだ。意味に合った身ぶりの単語の方が、時間がたっても覚えていられた。

対象: 同じ人が両方の覚え方で学ぶ実験 / 限界: 要旨で確認した内容。効いているのは手を動かすこと自体ではなく、意味と合った動きだと著者らは考えている。

Repettoら(2017)[4]

20人が、抽象的な意味の単語30個を「読むだけ」「絵と一緒」「身ぶりと一緒」の3通りで覚えた。身ぶりで覚えた単語は、母語の意味を思い出すテストでよく覚えていた。一方、外国語の単語そのものを書き出すテストと、母語から外国語に訳すテストでは、3通りの間に差がなかった。

対象: イタリア語が母語の17〜47歳の20人 / 限界: 1回の短い練習の直後だけを測った。著者ら自身も「部分的に」支持された結果だとしている。

Macedoniaら(2019)[5]

大学生31人が、30個の単語を「読むだけ」「読んで聞く」「さらに人の身ぶりを見る」の3通りで覚えた。直後のテストでは、身ぶりを見た単語の方が思い出しやすかった。約45日後には、どの覚え方でも思い出せた割合は約2〜22%と低かった。

対象: オーストリアのグラーツ大学の学生31人(ドイツ語が母語) / 限界: 練習は脳の検査装置の中での1回だけ。45日後の差は、数字の傾向として示されたもの。

Oppiciら(2023)[6]

自分で身ぶりをする覚え方と、人の身ぶりを見るだけの覚え方を比べた7件の実験・309人をメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)した。2つの差はほとんどなかった(効果量 0.05)。研究によって結果のばらつきが大きかった。

対象: 主に大学生などの成人(7件中6件)、平均20歳 / 限界: 「身ぶりなし」と比べた分析ではない。著者らは、もっと長い期間・多い人数での研究が必要だとしている。

効果が見えにくかった実験もあります。Repettoらは、似た実験で行動の成績にはっきりした差が出なかった研究を紹介し、課題がやさしいと身ぶりの効果が見えにくくなると考えています[4]。また、この分野の研究の多くは、身ぶりの効果を提唱してきたMacedoniaらのグループによるもので、2025年のレビューも同じ研究者が書いています[7]。

これらは、実験用の作られた言葉を、数日以内の短い練習で覚えた研究がほとんどです。何か月もかけて英単語を何千語も覚える、実際の独学で確かめた研究ではありません。

03 今日からできる小さな一歩身ぶりを英単語の暗記に取り入れるには?

形や動きを表せる単語に絞り、意味に合った身ぶりをしながら声に出して覚えます。そのあと身ぶりなしで思い出す練習をして、覚えたかどうかを確かめます。

1

身ぶりで表せる単語を選ぶ

今日の単語から、動作(throw, climb)や物の形(ladder, bowl)を表す単語を5つ選びます。意味を動きで表しにくい単語は、ほかの方法に回します。

所要 3分

2

意味に合った身ぶりをしながら、声に出す

単語を言いながら、意味を表す動きを2回くり返します。意味と関係のない動きでは効果が弱かったので、意味に合う動きを自分で決めます。

所要 5分

3

身ぶりなしで思い出せるか確かめる

日本語を見て英語を書きます。研究では、外国語の単語そのものを思い出す力には差が出なかった実験もあるので、書けるかどうかを必ず確かめます。

所要 5分

04 続けるためのコツ身ぶりのほかに、組み合わせるとよい方法は?

身ぶりは、思い出す練習と日をあけた復習に足す「上乗せ」として使います。身ぶりだけで覚えた気にならないことが大切です。

  • 人前で動くのが恥ずかしいときは、身ぶりを見るだけでもよい。メタ分析では、見るだけでも自分でするのと差がほとんどありませんでした。
  • 声に出して読むことも組み合わせる。声に出すと覚えやすい現象は、別の研究で確かめられています(音読の記事)。
  • 復習の日を決めておく。英単語の復習スケジュール表で、思い出せたかを記録します。
  • 単語の覚え方全体は、英単語の覚え方の記事にまとめています。

05よくある質問

身ぶり(ジェスチャー)をつけて英単語を覚えると効果がある?

条件しだいです。意味に合った身ぶりで覚えた単語は、読んで聞くだけの単語より思い出しやすかった実験が複数あります。ただし多くは実験用の作られた言葉を20〜30人ほどで数日覚えた研究で、外国語の単語そのものを書く力には差が出なかった実験もあります。

自分で体を動かさないと意味がない?

そうとは言えません。7件の実験・309人をまとめたメタ分析では、自分で身ぶりをしても、人の身ぶりを見るだけでも、成績の差はほとんどありませんでした(効果量0.05)。

どんな単語に向いている?

動作や物の形のように、意味を動きで表しやすい単語です。抽象的な単語でも試した実験はありますが、効果は意味を思い出すテストの一部に限られました。意味と関係のない手の動きでは、効果が弱かったと報告されています。

勉強法の早見表で「身ぶりをつけて単語を覚える」の判定を見る
ほかの勉強法も57種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Mayer, K. M., Yildiz, I. B., Macedonia, M., & von Kriegstein, K. (2015). Visual and motor cortices differentially support the translation of foreign language words. Current Biology, 25(4), 530–535. https://doi.org/10.1016/j.cub.2014.11.068
  2. Mathias, B., Sureth, L., Hartwigsen, G., Macedonia, M., Mayer, K. M., & von Kriegstein, K. (2021). Visual sensory cortices causally contribute to auditory word recognition following sensorimotor-enriched vocabulary training. Cerebral Cortex, 31(1), 513–528. https://doi.org/10.1093/cercor/bhaa240
  3. Macedonia, M., Müller, K., & Friederici, A. D. (2011). The impact of iconic gestures on foreign language word learning and its neural substrate. Human Brain Mapping, 32(6), 982–998. https://doi.org/10.1002/hbm.21084
  4. Repetto, C., Pedroli, E., & Macedonia, M. (2017). Enrichment effects of gestures and pictures on abstract words in a second language. Frontiers in Psychology, 8, 2136. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.02136
  5. Macedonia, M., Repetto, C., Ischebeck, A., & Mueller, K. (2019). Depth of encoding through observed gestures in foreign language word learning. Frontiers in Psychology, 10, 33. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00033
  6. Oppici, L., Mathias, B., Narciss, S., & Proske, A. (2023). Benefits of enacting and observing gestures on foreign language vocabulary learning: A systematic review and meta-analysis. Behavioral Sciences, 13(11), 920. https://doi.org/10.3390/bs13110920
  7. Macedonia, M. (2025). Your body as a tool to learn second language vocabulary. Behavioral Sciences, 15(8), 997. https://doi.org/10.3390/bs15080997