記憶・覚え方

英語のリスニングで、知っている単語なのに聞き取れないのはなぜ?音が崩れる「くだけた発音」と、聞き疲れの研究

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ヘッドホンとスマートフォン
Photo: wu yi takeshi2 / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

文字で見れば全部わかる英文なのに、音声で聞くと聞き取れない。単語帳の音声ならわかるのに、映画や会話になると急に追いつけない。そんな経験は珍しくありません。研究では、ふだんの英語の音が単語帳の発音とは大きく違うこと、そして外国語を聞くこと自体に頭の力を多く使うことがわかってきました。

3行でわかる

  1. ふだんの会話では、音が短くなる・消える・つながる「くだけた発音」が多い。I do not know が「ダノウ」のように聞こえるなど、単語帳の発音とは形が変わる。
  2. 学習者は母語の話し手より、くだけた発音を聞き取るのが苦手で、前後の文脈も母語の話し手ほどは助けにならなかった。雑音があると、さらに聞き取りにくくなる。
  3. 英語の語彙が少ない人ほど、聞くことで疲れやすい傾向もある。聞き取れないのは耳が悪いからではなく、音の変化に慣れていないことと、頭の負担が大きいことが主な理由と考えられる。

01 悩みの正体知っている単語なのに、なぜ聞き取れない?

覚えた単語の「辞書どおりの音」と、実際の会話の音が違うからです。会話では音が短くなったり、消えたり、前後の語とつながったりします。

単語帳の音声は、1語ずつはっきり読まれた音です。ところが、ふだんの会話では話す速さが上がり、音が省かれます。

たとえば I do not know は「ダノウ」のような短い形になります[2]。this year が「ディシア」、do you have が「ジャヴ」のように聞こえる例も、研究で挙げられています[1]。このように、辞書の発音から音が崩れた形をくだけた発音(研究では「縮約形」「弱化」などと呼ぶ)といいます。

覚えた音と聞こえた音が一致しないので、知っている単語でも「知らない音」として耳を素通りしてしまいます。LやRなど、1つ1つの音の聞き分けにくさは英語のLとRが聞き分けられないのはなぜ?にまとめています。この記事は、単語やフレーズの単位で起きる聞き取りにくさの話です。

02 科学的にわかっていること学習者は、くだけた発音のどこでつまずく?

母語の話し手より聞き取りの正確さが低く、文脈の助けも受けにくく、雑音に弱いことがわかっています。語彙が少ないと聞くことで疲れやすい傾向もあります。

Biら(2022)[1]

くだけた発音を含む「つながった話し言葉」の研究128本を整理した。聞き取りに影響する要因として、話す速さ・意味・単語の使われる頻度・音を聞き分ける力が多く調べられていた。母語の話し手は難なく処理できるが、外国語の学習者には聞き取りと理解の難しさの原因になりうるとまとめた。

種類: システマティックレビュー(決まった手順で研究を集めて整理) / 限界: 母語の話し手の研究が中心で、学習者の研究は2011年から現れ始めたばかり。長い期間追った研究はほとんどない。

Kul(2024)[2]

英語を学ぶポーランド人102人と、英語を母語とする14人に、実際の会話から取り出した287個のくだけた発音を聞かせた。母語の話し手は、前後の文脈があってもなくても学習者より正確だった。文脈があると母語の話し手は正確さが上がったが、学習者は答えるのが速くなっただけで、正確さは有意には上がらなかった。

対象: ポーランドの英語学習者102人、英語の母語話者14人 / 限界: 母語話者の人数が少ない。日本語を母語とする人の研究ではない。

Mulderら(2024)[3]

フランス語を母語とする28人と、フランス語を学ぶ上級のオランダ人27人が、文の途中に音の省かれた単語を含むフランス語の文を聞いた。視線と脳波を同時に測ると、どちらも音の省略の影響を受けたが、母語の話し手の方が早く立ち直っていた。著者らは、単語を思い出す速さの違いが理由だろうと考えている。

対象: フランスとオランダの大学生など / 限界: 英語ではなくフランス語の研究。上級の学習者でも差が出たという点が参考になる。

Wongら(2017)[4]

英語を学ぶ中国の大学生64人に、くだけた発音を含む英語を、複数の人の話し声・工場の騒音・ささやき声・悲しそうな声など5つの聞きにくい条件で聞かせた。雑音のない条件と比べて、どの条件でも聞き取りがより難しくなった。

対象: 中国の大学生64人 / 限界: 論文の要旨で確認。

DilleyとPitt(2010)[5]

英語を母語とする人でも、周りの話す速さを変えると、短い機能語(or や are など)が聞こえたり消えたりした。たとえば leisure or time の周りをゆっくりにすると、or のない leisure time に聞こえた。人は話す速さから「ここに語があるはず」と予想して聞いていると考えられる。

対象: 英語の母語話者(実験室の2つの実験) / 限界: 論文の要旨で確認。学習者の研究ではない。

McGarrigleら(2026)[6]

英語圏に住み、英語を第二言語として使う256人に、聞くことでどれくらい疲れるかを尋ねた。母語が英語から遠い言語(中国語・ベトナム語など)の人は、英語に近い言語(イタリア語など)の人より疲れを強く感じていた。英語の語彙テストの点や自分で評価した英語力が低い人ほど疲れやすく、探索的な分析では、言語グループの差は語彙と英語力の低さで説明できた。

対象: 英国・米国・カナダに住む18〜50歳 / 限界: アンケートの研究で、因果関係はわからない。日本語を母語とする人は含まれていない。英語を母語とする人との差は統計的にはっきりしなかった。

ここで紹介した研究は、Biら・Kul・Mulderら・McGarrigleらは論文の本文で、WongらとDilleyとPittは論文の要旨で内容を確かめました。どれも実験室や調査の研究で、日本語を母語とする学習者を直接調べたものではありません。

03 今日からできる小さな一歩聞き取れないとき、まず何をすればいい?

聞き取れなかった部分を文字で確かめ、「どう崩れていたか」を知ってから、もう一度聞きます。雑音の少ない場所で、短い区切りから始めます。

1

聞き取れなかった5〜10秒を、文字と見比べる

英語字幕や台本で、聞き取れなかった部分の文を確かめます。知らない単語だったのか、知っている単語が崩れていたのかを分けます。

所要 5分

2

崩れ方をメモして、文字を見ずにもう一度聞く

「do you → ジュ」「want to → ワナ」のように、聞こえた音をカタカナで書きます。そのあと文字を見ずに2〜3回聞き直します。

所要 5分

3

静かな場所で、短い区切りから

雑音があると学習者の聞き取りはさらに落ちます[4]。慣れるまでは、静かな場所で1〜2文ずつ止めながら聞きます。

所要 1回10分

04 続けるためのコツリスニングで疲れてしまうときは?

外国語を聞いて疲れるのは自然なことで、語彙が増えると疲れにくくなる傾向があります。長時間より短い時間をこまめに、が無難です。

  • 疲れは「力が足りない証拠」ではない。英語の語彙が少ないうちは、聞くことに頭の力を多く使うと考えられています[6]。1回10〜15分で区切ります。
  • 語彙と聞き取りを並行して進める。語彙の点が高い人ほど聞き疲れが少ない傾向がありました[6]。単語は意味だけでなく音声も一緒に覚えます。覚え方は英単語の覚え方にまとめています。
  • 字幕は段階的に外す。字幕の使い分けは英語の動画で勉強するとき、字幕はどうする?を参考にしてください。

05よくある質問

リスニングができないのは、耳が悪いからですか?

多くの場合、そうではないと考えられます。会話の英語では音が短くなったり消えたりつながったりするため、単語帳の発音とは形が変わります。英語を学ぶポーランド人102人の実験でも、学習者は母語の話し手よりこうした音の聞き取りが苦手でした。音の変化に慣れていないことが大きな理由です。

前後の文脈がわかれば、聞き取れるようになりますか?

母語の話し手では文脈があると正確さが上がりましたが、学習者では答えるのが速くなっただけで、正確さは有意には上がりませんでした。文脈に頼るだけでなく、崩れた音そのものに慣れる練習が必要と考えられます。

英語を聞いているとすぐ疲れるのはなぜですか?

外国語を聞くことは、母語より頭の力を多く使うと考えられています。英語圏に住む256人の調査では、英語の語彙テストの点や自分で評価した英語力が低い人ほど、聞くことで疲れを感じやすい傾向がありました。アンケートの研究なので因果関係はわかりませんが、短い時間で区切るのが無難です。

出典

  1. Bi, H., Zare, S., Kania, U., & Yan, R. (2022). A systematic review of studies on connected speech processing: Trends, key findings, and implications. Frontiers in Psychology, 13, 1056827. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.1056827
  2. Kul, M. (2024). Perception of reduced forms in English by non-native users of English. Frontiers in Psychology, 15, 1305134. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1305134
  3. Mulder, K., Brand, S., Boves, L., & Ernestus, M. (2024). Processing reduced speech in the L1 and L2: A combined eye-tracking and ERP study. Language, Cognition and Neuroscience, 39(5), 527–551. https://doi.org/10.1080/23273798.2024.2344162
  4. Wong, S. W. L., Tsui, J. K. Y., Chow, B. W., Leung, V. W. H., Mok, P., & Chung, K. K. (2017). Perception of native English reduced forms in adverse environments by Chinese undergraduate students. Journal of Psycholinguistic Research, 46, 1149–1165. https://doi.org/10.1007/s10936-017-9486-y
  5. Dilley, L. C., & Pitt, M. A. (2010). Altering context speech rate can cause words to appear or disappear. Psychological Science, 21, 1664–1670. https://doi.org/10.1177/0956797610384743
  6. McGarrigle, R., Havelka, J., & de Bruin, A. (2026). Language proficiency drives listening-related fatigue in those who communicate in English as their second language. Psychonomic Bulletin & Review, 33. https://doi.org/10.3758/s13423-026-03005-3