記憶・覚え方

英単語は見ればわかるのに、話す・書くときに出てこない。どう立て直す?「日本語から英語」で思い出す練習の研究

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木でできたアルファベットの文字
Photo: WOKANDAPIX / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

単語帳なら、英語を見た瞬間に意味がわかる。なのに、いざ話そう・書こうとすると、その単語が出てこない。「何周もしたのに覚えていない」と落ち込む人もいるかもしれません。研究では、英語を見て意味がわかる知識と、自分で英語を取り出せる知識は、別々に育つことがわかっています。出てこないのは、覚え方の向きが片方に偏っていたからかもしれません。

3行でわかる

  1. 英語を見て意味がわかる「わかる知識」は、自分で英語を言える「使える知識」より先に、速く育つ。単語帳で何周しても、使える知識は伸びにくい。
  2. 日本語を見て英語を思い出す練習は、英語→日本語の練習より難しいが、1週間後の記憶では上回った実験がある。ただし同じ研究室の追試では、覚え直すと差はほぼ消えた。
  3. 立て直しは、出てこなかった単語を集め、日本語→英語の向きで思い出す練習を足し、意味があやふやな単語は先に英語→日本語で固める。

01 悩みの正体単語を見ればわかるのに、出てこないのはなぜ?

英語を見て意味がわかる知識と、日本語から英語を取り出す知識は、別の力だからです。単語帳で英語を見て意味を確かめる練習は、前者を育てますが、後者はあまり育てません。

外国語の単語の知識には、「見て・聞いてわかる」と「自分で言える・書ける」の2つがあります。研究では前者を受け身の知識、後者を使える知識と呼んで分けて測ります。

一般に、わかる単語は使える単語より多いことが知られています[5]。単語帳を英語から見る練習は、英語を手がかりに意味を思い出す練習です。話すときのように、意味から英語を取り出す練習にはなっていません。

何もない状態から思い出す力の大切さは、英単語の覚え方の記事でも紹介しています。この記事では、その「向き」に注目します。

02 科学的にわかっていること日本語から英語を思い出す練習は効く?

日本語→英語の向きで練習した人が、1週間後の記憶で上回った実験があります。ただし追試では覚え直すと差が消え、外国語の力が低い人には逆向きの方が合っていた研究もあり、条件しだいです。

Mohammadiら(2024)[6]

イランの大学生86人が、5週間、学術英単語を3つの方法で学んだ。どのグループでも、母語から英語を書くテストの点は、英語の意味を選ぶテストの点より低かった。最も伸びたグループでも、わかるテストは平均11.09点から20.32点へ、書けるテストは6.09点から12.85点へで、書ける方が低いままだった(各50問)。著者らは、意味がわかる知識の伸びの方が大きかったと書き、、使える知識を伸ばすための練習が別に要るとしている。

対象: イランの大学で英語を学ぶ学生 / 限界: 1つの大学のクラス単位の比較で、無作為に分けた実験ではない。

Schneiderら(2002)[2]

フランス語を話さない人が、フランス語の単語を2つの向きで学んだ実験。英語(母語)を見てフランス語を答える向きは、学習中の正答率がずっと低かった。しかし1週間後のテストでは、この難しい向きで学んだ人の方が正答率が高く、その後の覚え直しでもやや上回った。

対象: 米国でフランス語を学んだことのない人 / 限界: この記事では、同じ研究室の2025年の論文[1]にある説明で内容を確認した(論文本体は読めていない)。同じ論文では、Griffin・Harley(1996)も、母語→外国語の向きで学ぶ方が、理解と産出の両方のテストでよく残ったと紹介されている[3]。

Healyら(2025)[1]

Schneiderらと同じ研究室の新しい実験。米国の大学生48人が、フランス語の単語36組を、英語→フランス語か、フランス語→英語の向きで学んだ。1週間後、全員が英語→フランス語の向きでテストを受けた。学習中は易しい向き(フランス語→英語)の方がずっとよくできた。1週間後のテストでは、学習した単語について難しい向きで学んだ人の方が成績がよかった。ただし覚え直しの段階で差はほぼ消え、最後のテストではどちらの向きも一貫して上回らなかった。

対象: 米国の大学生、フランス語の初心者 / 限界: 人数が少なく、短い単語リストの実験。著者らは「難しい向きで学べば必ず長く残る」とは言えない、としている。

Teraiら(2021)[4]

日本の英語学習者を対象に、2つの向きの思い出す練習を比べた研究。日本語→英語の向きが有利だったのは、英語の力が高い学習者だけだった。

対象: 日本の英語学習者 / 限界: この記事では論文本体を読めておらず、Healyら(2025)[1]による紹介で確認した。人数や効果の大きさは確認できていない。

Allal-Sumotoら(2023)[5]

京都大学の学生37人(日本語が母語)を対象に、英語の200の言い回しを「自分で言える」「わかるだけ」「わからない」に分けたうえで、1週間以上あとに、それらを含む英文を聞く実験をした。分析した30人では、自分で言える言い回しを含む文は、わかるだけの言い回しを含む文より、約430ミリ秒速く理解できた。

対象: 日本の大学生・大学院生 / 限界: 理解の速さだけを測り、正しく理解できたかは測っていない。速くなった理由もわかっていない。

まとめると、使える知識はわかる知識とは別に練習が要ります。日本語→英語の向きの練習は使える知識を狙った方法ですが、「難しいほど効く」と言えるほど結果はそろっていません。意味がまだあやふやな段階では、英語→日本語で意味を固めるのが先です[4]。

また、使える知識は話すためだけのものではありません。自分で言える言い回しは、聞いたときも速く理解できていました[5]。

ここで紹介した研究の多くは、大学生が短い単語リストを数日〜数週間で学んだものです。何か月も続く社会人の独学で、同じ大きさの効果が出るとは限りません。

03 今日からできる小さな一歩出てこない単語は、どう覚え直せばいい?

話す・書くときに出てこなかった単語を集め、日本語を見て英語を言う・書く練習を足します。意味があやふやな単語は、先に英語→日本語で固めます。日をあけて、日本語→英語で確かめます。

1

出てこなかった単語を、その場でメモする

英作文や会話の練習で詰まったとき、言いたかった日本語をメモします。「言えなかった単語」が、あなたにとって一番練習が要る単語です。単語帳の全部をやり直す必要はありません。

所要 1語10秒

2

単語帳を逆向きに使う

日本語の側を見て、英語を声に出すか書いてから、答えを確かめます。紙の単語帳なら英語を手で隠し、カードなら日本語の面を表にします。暗記カードの扱い方は暗記カードの記事も参考に。

所要 1日10分

3

意味があやふやな単語は、先に英語→日本語で固める

英語を見ても意味がすぐ出ない単語は、まだ「わかる」の段階です。英語の力が高い人ほど日本語→英語の練習が有利だった研究があるため[4]、まず英語→日本語で意味を思い出せるようにしてから、逆向きに進みます。

所要 1日5分

4

言えた単語を、自分の短い文で使う

日本語から英語が言えるようになった単語を、1日5語ほど選び、自分の生活の短い文で言うか書きます。話す・書く場面に近い形で取り出す練習になります。この記事からの提案で、研究で効果を直接確かめた手順ではありません。

所要 1日5分

5

翌日・数日後・1週間後に、日本語→英語で確かめる

1日に何周もするより、日をあけてくり返します。思い出せなかった単語は、次の回にも残します。復習の日の決め方は英単語の復習スケジュール表の記事にまとめています。

所要 1回10分

単語ごとの状態と、次にする練習の目安を表にしました。研究をもとに、この記事で独学向けに当てはめたものです。

単語を見たときの状態段階次にする練習
英語を見ても意味があやふやまだ「わかる」の段階にない英語→日本語で思い出し、意味を固める(手順3)
英語を見れば意味がわかるわかるが、使えない日本語→英語で思い出す(手順2)
日本語から英語が言えるが、時間がかかる使えるが、遅い日をあけて日本語→英語をくり返す(手順5)
日本語から英語がすぐ言える使える自分の短い文で使う(手順4)

04 続けるためのコツ逆向きの練習がつらいときは、どうする?

日本語→英語の練習は、最初は正答率が低くて当然です。実験でも学習中はずっと低い成績でした。正答率ではなく、1週間後に言えるかどうかで判断します。

05よくある質問

英単語は、英語→日本語と日本語→英語のどちらで覚えるべきですか?

話す・書くために使いたいなら、日本語→英語の練習を足すのがおすすめです。英語→日本語の練習だけでは、見てわかる知識は育っても、自分で言える知識は伸びにくいからです。ただし意味があやふやな段階では、先に英語→日本語で意味を固めた方がよいという研究もあります。

単語帳を何周もしたのに話せないのは、覚えていないからですか?

覚えていないのではなく、覚えた向きが違う可能性があります。英語を見て意味がわかる知識と、日本語から英語を取り出す知識は別に育ちます。イランの大学生の研究でも、書けるテストの点はわかるテストの点より低いままでした。

難しい向きで練習した方が、長く覚えていられますか?

そうとは言い切れません。日本語→英語のような難しい向きで学んだ人が1週間後に上回った実験はありますが、同じ研究室の2025年の追試では、覚え直すと差がほぼ消えました。難しさより、使いたい向きで練習することを重視します。

話せる単語が増えると、リスニングにも役立ちますか?

役立つ可能性があります。京都大学の学生の実験では、自分で言える言い回しを含む英文は、わかるだけの言い回しを含む英文より約430ミリ秒速く理解できました。ただし正しく理解できたかまでは測っていません。

勉強法の早見表で「日本語を見て英単語を思い出す」の判定を見る
ほかの勉強法も54種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Healy, A. F., Schneider, V. I., & Kole, J. A. (2025). Exploring whether making second-language vocabulary learning difficult enhances retention and transfer. Behavioral Sciences, 15(5), 692. https://doi.org/10.3390/bs15050692
  2. Schneider, V. I., Healy, A. F., & Bourne, L. E., Jr. (2002). What is learned under difficult conditions is hard to forget: Contextual interference effects in foreign vocabulary acquisition, retention, and transfer. Journal of Memory and Language, 46(2), 419-440. https://doi.org/10.1006/jmla.2001.2813
  3. Griffin, G. F., & Harley, T. A. (1996). List learning of second language vocabulary. Applied Psycholinguistics, 17(4), 443-460. https://doi.org/10.1017/S0142716400008195
  4. Terai, M., Yamashita, J., & Pasich, K. E. (2021). Effects of learning direction in retrieval practice on EFL vocabulary learning. Studies in Second Language Acquisition, 43(5), 1116-1137. https://doi.org/10.1017/S0272263121000346
  5. Allal-Sumoto, T. K., Miyoshi, K., & Mizuhara, H. (2023). The effect of productive vocabulary knowledge on second language comprehension. Frontiers in Psychology, 14, 1049885. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1049885
  6. Mohammadi, M., Valizadeh, M., Zohdi Jalal, P., & Xodabande, I. (2024). University students' academic vocabulary development through mobile-assisted learning: Exploring the impacts on receptive and productive knowledge. Heliyon, 10(7), e28103. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e28103