記憶・覚え方

覚えたつもりなのにテストで書けないのはなぜか。「わかったつもり」の研究

約6分で読めます

Angelina Litvin 2015-08-31
Photo: Angelina Litvin linalitvina / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

ノートを読み返したときは「もう覚えた」と思えたのに、テストでは書けない。それはやる気や頭の良し悪しの問題ではありません。研究では、すらすら読める手ごたえを「覚えた」と取り違える錯覚が、多くの人に起きることがわかっています。

3行でわかる

  1. 人は「すらすら読める」「見覚えがある」感覚を、覚えた証拠と取り違えやすい。
  2. この錯覚は、効かない勉強法を選ばせる。実験では、成績が良かったやり方を「効かない」と答える人が多数だった。
  3. 対策は、判断の基準を「読めるか」から「本を閉じて書けるか」に変えること。

01「覚えたつもり」は、読みやすさにだまされている

覚えたかどうかを、私たちは「どれだけ楽に読めたか」で判断しがちです。けれど楽に読めることと、あとで自力で思い出せることは別物です。

研究では、この取り違えを「流暢性(りゅうちょうせい)の錯覚」と呼びます。流暢性とは、情報がすらすら頭に入ってくる感じのことです。

Bjorkら(2013)のレビューは、人は自分の学び方について誤ったイメージを持ちやすいと指摘しました。その結果、学習の進み具合を見誤り、勉強のしかたも誤りやすいとまとめています[5]。

02科学的にわかっていること

文字の大きさのように記憶と無関係な手がかりでも「覚えた」と感じます。そして多くの学生は、効果の薄い読み返しを主な勉強法にしています。

Rhodes・Castel(2008)[3]

単語を大きな文字(48ポイント)と小さな文字(18ポイント)で見せ、「あとで思い出せる自信」を0〜100で答えてもらいました。自信は大きな文字のほうが高く(約61対約49)、実際に思い出せた数には差がありませんでした。

「文字の大きさは記憶に関係しない」と事前に伝えても、差は小さくなっただけで消えませんでした。

対象: 米コロラド州立大学の学生(実験1は20人) / 限界: 単語リストを数分後に思い出す実験で、教科書の理解とは条件が違う。数値は著者公開原稿による。

Kornell・Bjork(2008)[2]

12人の画家の絵を見て画風を覚える実験です。同じ画家の絵をまとめて見るより、別の画家の絵と混ぜて見るほうが、初めて見る絵の画家を当てられました(正答率 61%対35%)。

ところが78%の人は混ぜたほうが成績が良かったのに、78%の人が「まとめて見るほうが同じか、より良い」と答えました。テストを受けたあとでもです。

対象: 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の学部生120人(実験1a) / 限界: 絵の画風を見分ける課題で、暗記科目にそのまま当てはまるとは限らない。

Karpickeら(2009)[1]

学生に普段の勉強法を自由に書いてもらうと、84%が読み返しを挙げ、55%がそれを一番の方法にしていました。思い出す練習(自分でテストする)を挙げたのは11%でした。

教科書の章を読んだ後の行動を選ばせると、読み返しが57%、自分でテストするのは18%でした。著者らは、勉強中に「わかったつもり」が起きていると考えています。

対象: 米ワシントン大学(セントルイス)の学部生177人へのアンケート / 限界: 自己申告の調査で、実際の勉強時間や成績は測っていない。

Kornellら(2011)は、今の覚え具合に引っぱられて「この先もう一度勉強すれば覚えられる量」を低く見積もる傾向も報告しました[4]。手ごたえは、今も先も正確な物差しではありません。

ここで紹介した研究の多くは、大学生が短時間で取り組む実験です。資格や語学のように何か月も続く独学で、錯覚がどれだけ成績を左右するかは、まだ十分に調べられていません。

03今日からできる小さな一歩

「覚えたか」を、読みやすさではなく「本を閉じて書けるか」で確かめます。手ごたえが良いときほど、一度テストしてみます。

1

「覚えた」と思ったら、本を閉じる

そのページの要点を、何も見ずに白紙に3つ書きます。書けなければ、まだ覚えていないサインです。やり方は思い出す練習の記事でも紹介しています。

所要 3分

2

書けた所と書けなかった所を分ける

本を開いて答え合わせをし、書けなかった所に印をつけます。次の勉強は、印の所から始めます。

所要 2分

3

翌日、もう一度だけ確かめる

次の日の最初に、前日の要点を見ずに書きます。読んだ直後の手ごたえより、1日たっても書けるかのほうが当てになります。

所要 5分

04続けるためのコツ

書けないことに落ち込まないことが大切です。書けなかった所は、勉強が足りない場所を教えてくれる地図になります。

  • 「すらすら読めた」「見覚えがある」は、覚えた証拠にしない。
  • 手間がかかるやり方ほど「効いていない」と感じやすい。研究では逆の結果が出ることが多い。間をあける復習も同じです(分散学習の記事)。
  • きれいに線を引いたノートも、手ごたえを生みやすい道具です(蛍光ペンの記事)。
  • 書き出しは1日1回、3分からで十分。続けられる量にする。

05よくある質問

「わかったつもり」とは何ですか?

実際には自力で思い出せないのに、覚えた・理解したと感じてしまう状態です。研究では、すらすら読める・見覚えがあるという手ごたえを、覚えた証拠と取り違えることが原因の1つと考えられています。

読み返しても覚えられないのはなぜ?

読み返すと文章が見慣れて、すらすら読めるようになります。その感覚は「覚えた」と感じさせますが、本を閉じて書けるかどうかとは別です。

自分が本当に覚えたかを確かめる方法は?

本を閉じて、要点を白紙に書き出すか、問題に答えてみることです。「読めばわかる」ではなく「見ずに書けるか」で判断します。書けなかった所が、次に勉強する場所です。

勉強法の早見表で「すらすら読めたら「覚えた」と判断する」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Karpicke, J. D., Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2009). Metacognitive strategies in student learning: Do students practise retrieval when they study on their own? Memory, 17(4), 471-479. https://doi.org/10.1080/09658210802647009
  2. Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Learning concepts and categories: Is spacing the "enemy of induction"? Psychological Science, 19(6), 585-592. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x
  3. Rhodes, M. G., & Castel, A. D. (2008). Memory predictions are influenced by perceptual information: Evidence for metacognitive illusions. Journal of Experimental Psychology: General, 137(4), 615-625. https://doi.org/10.1037/a0013684
  4. Kornell, N., Rhodes, M. G., Castel, A. D., & Tauber, S. K. (2011). The ease-of-processing heuristic and the stability bias: Dissociating memory, memory beliefs, and memory judgments. Psychological Science, 22(6), 787-794. https://doi.org/10.1177/0956797611407929
  5. Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N. (2013). Self-regulated learning: Beliefs, techniques, and illusions. Annual Review of Psychology, 64, 417-444. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-113011-143823