覚えたつもりなのにテストで書けないのはなぜか。「わかったつもり」の研究

ノートを読み返したときは「もう覚えた」と思えたのに、テストでは書けない。それはやる気や頭の良し悪しの問題ではありません。研究では、すらすら読める手ごたえを「覚えた」と取り違える錯覚が、多くの人に起きることがわかっています。
3行でわかる
- 人は「すらすら読める」「見覚えがある」感覚を、覚えた証拠と取り違えやすい。
- この錯覚は、効かない勉強法を選ばせる。実験では、成績が良かったやり方を「効かない」と答える人が多数だった。
- 対策は、判断の基準を「読めるか」から「本を閉じて書けるか」に変えること。
01「覚えたつもり」は、読みやすさにだまされている
覚えたかどうかを、私たちは「どれだけ楽に読めたか」で判断しがちです。けれど楽に読めることと、あとで自力で思い出せることは別物です。
研究では、この取り違えを「流暢性(りゅうちょうせい)の錯覚」と呼びます。流暢性とは、情報がすらすら頭に入ってくる感じのことです。
Bjorkら(2013)のレビューは、人は自分の学び方について誤ったイメージを持ちやすいと指摘しました。その結果、学習の進み具合を見誤り、勉強のしかたも誤りやすいとまとめています[5]。
02科学的にわかっていること
文字の大きさのように記憶と無関係な手がかりでも「覚えた」と感じます。そして多くの学生は、効果の薄い読み返しを主な勉強法にしています。
Rhodes・Castel(2008)[3]
単語を大きな文字(48ポイント)と小さな文字(18ポイント)で見せ、「あとで思い出せる自信」を0〜100で答えてもらいました。自信は大きな文字のほうが高く(約61対約49)、実際に思い出せた数には差がありませんでした。
「文字の大きさは記憶に関係しない」と事前に伝えても、差は小さくなっただけで消えませんでした。
対象: 米コロラド州立大学の学生(実験1は20人) / 限界: 単語リストを数分後に思い出す実験で、教科書の理解とは条件が違う。数値は著者公開原稿による。
Kornell・Bjork(2008)[2]
12人の画家の絵を見て画風を覚える実験です。同じ画家の絵をまとめて見るより、別の画家の絵と混ぜて見るほうが、初めて見る絵の画家を当てられました(正答率 61%対35%)。
ところが78%の人は混ぜたほうが成績が良かったのに、78%の人が「まとめて見るほうが同じか、より良い」と答えました。テストを受けたあとでもです。
対象: 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の学部生120人(実験1a) / 限界: 絵の画風を見分ける課題で、暗記科目にそのまま当てはまるとは限らない。
Karpickeら(2009)[1]
学生に普段の勉強法を自由に書いてもらうと、84%が読み返しを挙げ、55%がそれを一番の方法にしていました。思い出す練習(自分でテストする)を挙げたのは11%でした。
教科書の章を読んだ後の行動を選ばせると、読み返しが57%、自分でテストするのは18%でした。著者らは、勉強中に「わかったつもり」が起きていると考えています。
対象: 米ワシントン大学(セントルイス)の学部生177人へのアンケート / 限界: 自己申告の調査で、実際の勉強時間や成績は測っていない。
ここで紹介した研究の多くは、大学生が短時間で取り組む実験です。資格や語学のように何か月も続く独学で、錯覚がどれだけ成績を左右するかは、まだ十分に調べられていません。
03今日からできる小さな一歩
「覚えたか」を、読みやすさではなく「本を閉じて書けるか」で確かめます。手ごたえが良いときほど、一度テストしてみます。
書けた所と書けなかった所を分ける
本を開いて答え合わせをし、書けなかった所に印をつけます。次の勉強は、印の所から始めます。
所要 2分
翌日、もう一度だけ確かめる
次の日の最初に、前日の要点を見ずに書きます。読んだ直後の手ごたえより、1日たっても書けるかのほうが当てになります。
所要 5分
04続けるためのコツ
書けないことに落ち込まないことが大切です。書けなかった所は、勉強が足りない場所を教えてくれる地図になります。
- 「すらすら読めた」「見覚えがある」は、覚えた証拠にしない。
- 手間がかかるやり方ほど「効いていない」と感じやすい。研究では逆の結果が出ることが多い。間をあける復習も同じです(分散学習の記事)。
- きれいに線を引いたノートも、手ごたえを生みやすい道具です(蛍光ペンの記事)。
- 書き出しは1日1回、3分からで十分。続けられる量にする。
05よくある質問
「わかったつもり」とは何ですか?
実際には自力で思い出せないのに、覚えた・理解したと感じてしまう状態です。研究では、すらすら読める・見覚えがあるという手ごたえを、覚えた証拠と取り違えることが原因の1つと考えられています。
読み返しても覚えられないのはなぜ?
読み返すと文章が見慣れて、すらすら読めるようになります。その感覚は「覚えた」と感じさせますが、本を閉じて書けるかどうかとは別です。
自分が本当に覚えたかを確かめる方法は?
本を閉じて、要点を白紙に書き出すか、問題に答えてみることです。「読めばわかる」ではなく「見ずに書けるか」で判断します。書けなかった所が、次に勉強する場所です。
勉強法の早見表で「すらすら読めたら「覚えた」と判断する」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Karpicke, J. D., Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2009). Metacognitive strategies in student learning: Do students practise retrieval when they study on their own? Memory, 17(4), 471-479. https://doi.org/10.1080/09658210802647009
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Learning concepts and categories: Is spacing the "enemy of induction"? Psychological Science, 19(6), 585-592. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x
- Rhodes, M. G., & Castel, A. D. (2008). Memory predictions are influenced by perceptual information: Evidence for metacognitive illusions. Journal of Experimental Psychology: General, 137(4), 615-625. https://doi.org/10.1037/a0013684
- Kornell, N., Rhodes, M. G., Castel, A. D., & Tauber, S. K. (2011). The ease-of-processing heuristic and the stability bias: Dissociating memory, memory beliefs, and memory judgments. Psychological Science, 22(6), 787-794. https://doi.org/10.1177/0956797611407929
- Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N. (2013). Self-regulated learning: Beliefs, techniques, and illusions. Annual Review of Psychology, 64, 417-444. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-113011-143823


