やる気・心

学び直しを始めてすぐ「もうわかった」と思ってしまうのはなぜ?初心者の自信と「ダニング=クルーガー効果」の研究

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古い海図に描かれた方位図
Photo: Pedro Reinel / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

学び直しを始めて数日。入門書の最初の章を読み、例題も解けた。「思ったより簡単だ」と感じたのに、模擬問題を解いてみたら半分も取れなかった。そんな経験はありませんか。研究では、まったくの初心者は最初は控えめでも、少し学んだだけで自信が実力を追い越しやすいことがわかっています。これは能力の問題ではなく、学び始めにだれにでも起きやすいことです。

3行でわかる

  1. 少し学んだ初心者は、自信が実力より先に上がりやすい。数回の練習で作った「自分なりの理屈」が、まちがいを含んだまま自信の元になるため。
  2. 有名な「ダニング=クルーガー効果」の実験では、成績が下位4分の1の大学生は、実際は下から12%ほどの位置なのに、自分を上から4割ほど(62パーセンタイル)と見積もった。
  3. ただし、この効果の多くは統計の見かけだという分析もある。感覚で「わかった」と決めず、小テストで予想と結果を比べるのが確実な確かめ方。

01 悩みの正体学び始めに「わかった」と感じやすいのはなぜ?

数回学ぶと、人は「こう考えればいい」という自分なりの理屈をすぐに作ります。その理屈がまちがいを含んでいても、うまくいった例が少しあるだけで、自信が実力より先に上がってしまうからです。

まったく知らない分野に入ったときは、多くの人が「自分にはわからない」と控えめです。ところが、例題をいくつか解くと、頭の中に「こういうときはこうする」という理屈ができます。

学び始めの理屈は、まだ例外や細かい条件を知らないので、穴だらけです。それでも、作った本人には筋が通って見えます。まちがいに気づくには、そのまちがいを見分ける知識が必要だからです[1]。

学び直しの大人は、仕事や昔の勉強で似た分野を見聞きしていることも多く、「なんとなく知っている」感覚を持ちやすい立場です。だからこそ、感覚と実際の結果を分けて確かめることが役に立ちます。

02 科学的にわかっていること初心者の自信は、実力とどのくらいずれる?

成績の低い人ほど自分の順位を高く見積もる、という結果は何度も観察されています。初心者が少し学んだだけで自信が先に上がることも実験で示されました。ただし、そのずれの多くは統計の見かけだという反論もあります。

KrugerとDunning(1999)[1]

ユーモア・文法・論理のテストを行った4つの研究。成績が下位4分の1だった人は、自分の成績と力を大きく高く見積もった。テストの点では下から12%ほどの位置(12パーセンタイル)なのに、自分では62パーセンタイルと答えた。論理の解き方を短く教えて力を上げると、自分の力の限界に気づけるようになった。

対象: アメリカの大学の学生 / 限界: 大学生の短いテストでの結果。下の分析が示すように、統計上の見かけも混ざっている可能性がある。

SanchezとDunning(2018)[2]

6つの研究で、初心者の自信の変化を追った。架空の「ゾンビ病」を症状から診断するなど、まったく新しい課題を学んでもらった。初心者は最初は自信過剰ではなかった。しかし数回学んだだけで、自信が実力を大きく追い越す「初心者のバブル」が生まれた。その元は、少ない経験から急いで作った、まちがいの多い理屈だった。練習を続けると理屈が直され、自信の伸びはいったん止まり、実力は少しずつ伸びた。

対象: 6つの研究の成人参加者(うち2つはお金の知識の調査) / 限界: 4つは実験室の架空の課題。資格や語学の学び直しを直接調べたものではない。

GignacとZajenkowski(2020)[3]

一般の参加者929人に、自分の知能を見積もってもらい、知能テスト(レーヴン漸進的マトリックス)も受けてもらった。成績の低い人ほど見積もりのずれが大きくなる、という形ははっきり見られなかった。著者らは、ダニング=クルーガー効果の多くは統計の見かけで、本当の効果は言われているよりずっと小さいだろうと結論づけた。

対象: 一般の成人929人 / 限界: 調べたのは知能の見積もりで、勉強した内容の理解度ではない。分析のしかたには反論もある。

Jansenら(2021)[4]

1999年の研究を大きな規模でやり直した。2つの研究でそれぞれ約4,000人が、文法と論理の問題に答えた。結果を数理モデルで分析すると、成績の低い人は、1問ごとに自分の答えが合っているかを見分ける力が弱い、という説明が支持された。

対象: 2つの研究で約4,000人ずつ / 限界: 文法と論理の問題での結果。統計の見かけを除いても、ずれの一部は残ることを示した研究。

まとめると、「成績の低い人は自分の力に気づけない」と言い切るのは強すぎます。一方で、学び始めに自信が実力を追い越しやすいこと、まちがいを見分ける力が弱いうちは自分の答えの正誤を判断しにくいことは、研究で示されています。どれも短い実験や調査で、何か月もかける学び直しを追った研究ではありません。

03 今日からできる小さな一歩「わかったつもり」を確かめるには?

感覚で「わかった」と決めず、問題を解く前に点数を予想し、解いた後に実際の点と比べます。予想と結果のずれが大きい単元を、もう一度学ぶ単元にします。

1

解く前に、何問できそうかを書く

5問の小テストなら「4問できそう」と書いてから解きます。予想を書いておかないと、あとで「だいたい合っていた」と思いやすくなります。

所要 30秒

2

1問ごとに「自信あり・なし」に印をつける

成績の低いうちは、1問ごとの正誤を見分けにくいことがわかっています[4]。印をつけると、自信があったのに外した問題が見えます。

所要 1問5秒

3

「自信ありで外した問題」を最優先で直す

自信ありで外した問題は、まちがった理屈を持っているしるしです[2]。解説を読み、自分の理屈のどこがずれていたかを1行で書きます。

所要 1問5分

4

「簡単だ」と感じた単元ほど、1週間後にもう一度テストする

学び始めの自信は、数回の経験で急に上がります[2]。時間をおいて同じ単元の問題を解き、それでも解けたら次に進みます。

所要 10分

04 続けるためのコツ自信と実力のずれに、落ち込まないためには?

ずれは「学び始めに起きやすい普通のこと」で、能力の低さのしるしではないと知っておくことです。ずれを見つけるたびに、直すべき理屈が1つ見つかったと考えます。

05よくある質問

少し勉強しただけで「わかった」と思うのは、能力が低いから?

能力の高い低いだけの話ではありません。実験では、まったくの初心者は最初は控えめでしたが、数回学んだだけで自信が実力を追い越しました。だれでも学び始めに起きやすいことです。感覚ではなく、小テストの結果で確かめるのが対策です。

ダニング=クルーガー効果は本当にあるの?

成績の低い人ほど自分の順位を高く見積もるという結果は、何度も観察されています。ただ、その多くは統計の見かけだという分析もあり、一方で約4,000人ずつの再現研究では、成績の低い人は1問ごとの正誤を見分けにくいという結果も出ています。効果の大きさについては議論が続いています。

自信がないほうが、学び直しはうまくいく?

自信の大きさより、自信と実際の結果のずれを知ることが大事です。自信が低すぎると、わかっている単元に時間を使いすぎることもあります。予想と結果を並べて書く習慣があれば、どちらのずれにも気づけます。

出典

  1. Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one's own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121-1134. https://doi.org/10.1037/0022-3514.77.6.1121
  2. Sanchez, C., & Dunning, D. (2018). Overconfidence among beginners: Is a little learning a dangerous thing? Journal of Personality and Social Psychology, 114(1), 10-28. https://doi.org/10.1037/pspa0000102
  3. Gignac, G. E., & Zajenkowski, M. (2020). The Dunning-Kruger effect is (mostly) a statistical artefact: Valid approaches to testing the hypothesis with individual differences data. Intelligence, 80, 101449. https://doi.org/10.1016/j.intell.2020.101449
  4. Jansen, R. A., Rafferty, A. N., & Griffiths, T. L. (2021). A rational model of the Dunning-Kruger effect supports insensitivity to evidence in low performers. Nature Human Behaviour, 5, 756-763. https://doi.org/10.1038/s41562-021-01057-0