模試・過去問のあとの「振り返りシート」。準備のしかた・ミスの理由・次の作戦を書く使い方(エグザム・ラッパーの研究と、点数への効果がはっきりしない点)

模試や過去問を解いたあと、点数だけ見て終わっていませんか。大学の授業では、試験のあとに「どう準備したか・なぜ間違えたか・次に何を変えるか」を書く「エグザム・ラッパー(試験の振り返りシート)」が使われてきました。研究では、振り返る力は伸びても、点数まで上がるかははっきりしていません。この記事では、研究で使われた質問をもとにしたシートと、その限界を紹介します。
3行でわかる
- エグザム・ラッパーは、試験のあとに「準備のしかた・点数の予想・ミスの理由・次の作戦」を書く短い振り返りシート。
- 薬学生88人の研究では、使った人の点数の伸びは統計的にはっきりしなかった(p = 0.142)。129人の授業研究でも、試験の点や最終成績に差は出なかった。
- 点数より、予想と実際のずれと、ミスの理由の偏りに気づく道具として使う。書いた作戦を次の模試までに本当にやったかまで確かめる。
01 悩みの正体模試のあと、点数だけ見て終わるのはなぜ損?
点数だけでは、準備のしかたが悪かったのか、読み違いや時間切れだったのかが分かりません。理由が分からないまま、同じ勉強法をくり返しやすくなります。
点数が悪いと「もっと勉強しよう」と考えがちです。でも、量を増やしても、やり方が同じなら結果は変わりにくいものです。
フィリピンの研修医19人の研究では、試験の点数を正しく予想できた人は2回の試験で26.32%と31.58%でした。間違いの理由の分析が正確だった人も、31.58%と26.32%でした[1]。自分の準備やミスを、思っているほど正しくつかめていないということです。
点数の予想と実際のずれだけを記録する方法は、模試・過去問の「点数予想」記録表で紹介しています。この記事のシートは、そこに「準備のしかた」と「ミスの理由」と「次の作戦」を加えたものです。
02 科学的にわかっていること振り返りシートで、試験の点は上がる?
点数が上がるという結果ははっきりしていません。比較した研究では差が統計的に確かめられず、振り返る力が伸びたという報告と、変わらなかったという報告が混ざっています。
Pateら(2019)[2]
アメリカの薬学部の病態生理学の授業で、2〜5回目の試験の前に、前回の試験を見直すシートを配った。1回以上使った53人と、一度も使わなかった35人をくらべると、使った人の平均点はやや高かったが、統計的にははっきりしなかった(p = 0.142)。
対象: 薬学生88人 / 限界: 使うかどうかを学生が自分で選んだため、もともとまじめな人が使った可能性がある。
Langdonら(2019)[3]
解剖生理学の3つのクラスを、「振り返りの練習」「ふつうに知識を受け取る」「協力して学ぶ」にランダムに割り当てた。振り返りのクラスでは「自分の考え方についての知識」が増えた。ただし、勉強の調整のしかた、試験の点、最終成績には差が出なかった。
対象: アメリカの大学生129人 / 限界: 割り当てはクラス単位で3つだけ。著者らは「自己申告の測り方では一部しか分からない」と書いている。
Schuler・Chung(2019)[4]
看護の基礎科目で、学期を通して振り返りシートを使った学生は、メタ認知(自分の学び方を見張る力)の得点が時間とともに上がった(p = .014)。一方、話し合いでは、学生は「役に立たなかった」「質問に答えにくい」と感じていた。
対象: アメリカの看護学生(予備研究) / 限界: くらべるグループがなく、時間とともに自然に伸びた分と区別できない。
Lao・Sana(2026)[1]
内科の研修医に、3回の試験ごとに16問の振り返りシートを書いてもらった。内容は「勉強の習慣」「自信と点数の予想」「ミスの理由」「次の勉強計画」。多くの人は試験直前に詰め込み、教科書を流し読みしていた。ミスの理由で多かったのは「その範囲を読んでいなかった」で、次の計画も「もっと読む」が多かった。メタ認知の得点は36.79から36.05で変わらず(p = 0.81)、シートの使用と成績の関係もはっきりしなかった。
対象: フィリピンの2病院の研修医24人(19人が最後まで参加) / 限界: 人数が少なく、くらべるグループがない。
Sethares・Asselin(2022)、Dabkowskiら(2025)[5][6]
2つのまとめ研究(レビュー)は、10の分野や看護教育の9研究から、成績や振り返りの改善が報告されているとまとめた。ただし、どちらも効果の大きさを数字でまとめるメタ分析ではない。上の研究のように差が出なかった報告もある。
限界: まとめに入った研究の多くは、くらべるグループがないか、使う人を自分で選んでいる。Dabkowskiらは、続けるには指導する側の時間と支えが必要だったとしている。
研究の多くは、大学の授業の中で先生が配ったシートです。一人で資格試験を勉強する社会人が使った研究は見つかりませんでした。ミスを種類に分ける方法だけを取り出して確かめた研究も見つかっていません。
03 使える表振り返りシートには、何を書けばいい?
「準備・予想・結果とずれ・ミスの理由・次の作戦・作戦をやったか」の6つを、模試や過去問1回ごとに書きます。研究で使われたシートの質問をもとにしています。
表1 振り返りシート(模試・過去問1回分)。IとIIは採点の前に、III〜Vは採点の後に書きます。所要は10〜15分です。
| 段階 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| I 準備 | 何日前から・合計何時間・どの勉強法で準備したか(読む/問題を解く/思い出す練習など) | 3日前から合計5時間。テキストを読み直すのが4時間、問題は1時間 |
| II 予想 | 採点の前に、自分の点数を予想して書く | 予想70点 |
| III 結果とずれ | 実際の点数と、予想とのずれ | 実際56点(予想より14点低い) |
| IV ミスの理由 | 落とした問題ごとに、下の表2の理由を1つ選ぶ | 知らなかった3問、読み違い2問、時間切れ2問 |
| V 次の作戦 | 次の模試までに変えることを、行動の形で1〜2個 | 問題を解く時間を毎日20分に増やす。見直しの5分を最初に確保する |
| VI 確かめ | 次の模試の前に、Vの作戦を実際にやったかに○×をつける | ○ 問題20分(週5日)、× 見直し時間 |
表2 ミスの理由の分け方。落とした問題を1問ずつ、どれか1つに分けます。分け方は整理のための目安で、この分け方そのものを確かめた研究はありません。
| ミスの理由 | よくある様子 | 次の作戦の例 |
|---|---|---|
| 知らなかった・読んでいなかった | 解説を読んで初めて見る内容だった | その範囲を読み、閉じて要点を書き出す |
| 覚えたつもりだった | 見たことはあるのに、答えが出てこない | 読み直しではなく、答えを隠して思い出す練習に変える |
| 問題文の読み違い | わかっていたのに、条件や「誤っているもの」を見落とした | 問題文の条件に線を引いてから解く |
| 計算・転記のミス | 式は合っていたのに数字を写し間違えた | 見直す順番を決め、最後の5分を確保する |
| 時間切れ | 最後まで解けなかった | 1問の目安時間を決め、超えたら印をつけて次へ |
表3 回ごとの記録表。シートを書いたら、この表に1行だけ写します。3回分たまると、ずれとミスの偏りが見えてきます。
| 回 | 準備の主な方法 | 予想 | 実際 | ずれ | いちばん多いミスの理由 | 次の作戦 | 作戦をやった? |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| (記入例)1回目 | 読み直し中心 | 70点 | 56点 | +14点 | 覚えたつもり | 問題を解く時間を毎日20分 | ○ |
| (記入例)2回目 | 問題中心 | 62点 | 61点 | +1点 | 時間切れ | 1問の目安時間を決める | |
表2で「覚えたつもり」が多い人は、覚えたつもりなのに書けない理由も参考になります。間違えた問題の直し方そのものは、試験に落ちた後の、間違えた問題の直し方にまとめています。
04 続けるためのコツ振り返りシートを、書くだけで終わらせないには?
次の作戦は「行動」で1〜2個に絞り、次の模試の前に実行できたかを確かめます。研修医の研究では、次の計画が「もっと読む」のようなあいまいなものに偏っていました。
- 作戦は「もっと読む」にしない。研修医の研究では、多くの人の次の計画が「もっと読む」でした。「毎日20分、問題を解く」のように、時間と方法を入れて書きます。
- 採点の前に予想を書く。点を見てからでは、ずれが分かりません。
- 1回で判断しない。看護学生の研究で伸びが見られたのは、学期を通して使った人でした。3回分ためてから見直します。
- 点数が上がらなくても、やめる理由にしない。このシートの役目は、準備のしかたとミスの偏りに気づくことです。点数は、作戦を変えた勉強の結果として見ます。
- 勉強法そのものを選び直すときは、試験勉強の作戦の立て方や過去問を使った勉強の研究と組み合わせます。
05よくある質問
振り返りシートを書くと、試験の点数は上がりますか?
はっきりとは言えません。薬学生88人の研究では使った人の点数の伸びは統計的に確かめられず(p = 0.142)、129人の授業研究でも試験の点や最終成績に差は出ませんでした。点数を上げる道具というより、準備のしかたとミスの理由に気づくための道具です。
どのくらいの時間をかければいいですか?
1回10〜15分が目安です。長く書くことより、次の作戦を行動の形で1〜2個に絞ることを優先します。看護学生の研究では「質問に答えにくい」という声があったので、表1の6項目だけにしています。
過去問を1問解くたびに書いた方がいいですか?
いいえ。研究で使われたのは、まとまった試験1回ごとです。1年分の過去問や模試1回のあとに書くと、ミスの偏りが見えやすくなります。
出典
- Lao, J. J. K., & Sana, E. A. (2026). Use of exam wrapper in internal medicine residency training in two tertiary private hospitals: A pre-experimental study. Acta Medica Philippina, 60(6), 51–70. https://doi.org/10.47895/amp.v60i6.13419
- Pate, A., Lafitte, E. M., Ramachandran, S., & Caldwell, D. J. (2019). The use of exam wrappers to promote metacognition. Currents in Pharmacy Teaching and Learning, 11(5), 492–498. https://doi.org/10.1016/j.cptl.2019.02.008
- Langdon, J., Botnaru, D. T., Wittenberg, M., Riggs, A. J., Mutchler, J., Syno, M., & Caciula, M. C. (2019). Examining the effects of different teaching strategies on metacognition and academic performance. Advances in Physiology Education, 43(3), 414–422. https://doi.org/10.1152/advan.00013.2018
- Schuler, M. S., & Chung, J. (2019). Exam wrapper use and metacognition in a fundamentals course: Perceptions and reality. Journal of Nursing Education, 58(7), 417–421. https://doi.org/10.3928/01484834-20190614-06
- Sethares, K. A., & Asselin, M. E. (2022). Use of exam wrapper metacognitive strategy to promote student self-assessment of learning: An integrative review. Nurse Educator, 47(1), 37–41. https://doi.org/10.1097/NNE.0000000000001026
- Dabkowski, E., Webb, C., & Johnson, E. (2025). Unwrapping success: A scoping review of exam wrappers and metacognitive skill development in undergraduate nursing education. Nurse Education in Practice, 88, 104565. https://doi.org/10.1016/j.nepr.2025.104565


