似た単語をまとめて覚えると混ざるのはなぜ?意味の近い単語どうしの「干渉」の研究

単語帳の「果物」のページを開いて、apple、pear、grape をまとめて覚えた。翌日、pear を見て「ぶどうだっけ、梨だっけ」と迷う。似た単語ほど混ざるのは、覚え方が下手だからではありません。研究では、意味の近い新しい単語を同時に覚えると、おたがいが記憶の中でぶつかり合う「干渉」が起きやすいことがわかっています。
3行でわかる
- 意味の近い新しい単語を同時に覚えると、覚えきるまでの回数が増えやすい。人工の単語を使った実験で、くり返し確かめられている。
- 英単語48語を覚えた日本の大学生133人の実験では、最終的な正答数に差はなかった。しかし、似た単語どうしの取り違えは多かった。
- 混ざりやすいのは「覚えたての単語どうし」。似た単語は日を分けて覚え、片方が定着してから足すと混ざりにくい。
01 悩みの正体似た単語をまとめて覚えると、なぜ混ざる?
意味の近い単語は、記憶の中で同じ「引き出し」に入ろうとします。まだ定着していない単語どうしだと、思い出すときにどちらを取り出すかで迷い、取り違えが起きます。
心理学では、似たものどうしが記憶の中でじゃまし合うことを「干渉」と呼びます。意味の近い単語の研究も、この考え方を土台にしています[1][8]。
たとえば「果物」という同じグループの単語は、どれも「果物の一つ」という共通の手がかりを持っています。手がかりが共通だと、pear を思い出そうとしたときに、grape や apple も一緒に浮かびます。どれがどれだったか、区別する情報がまだ少ないうちは、取り違えが起きやすくなります[3]。
単語帳や教科書は、果物・体の部分・色のように、意味のグループごとに単語を並べることがよくあります。整理されていて覚えやすそうに見えます。しかし研究者のあいだでは、この並べ方が新しい単語を覚えるのに向いているかどうかが、長く議論されてきました[4][5]。
02 科学的にわかっていること意味の近い単語をまとめると、覚えにくくなる?
覚えきるまでの回数が増え、取り違えも増えやすいという結果がくり返し出ています。ただし、最後のテストの正答数まで下がるかは研究によって違い、はっきりしていません。
Tinkham(1993)[1]
実在しない人工の単語を、意味の近いグループか、ばらばらのグループで覚えてもらった。正しく思い出せるまでに必要な回数は、意味の近いグループの方がはっきり多かった。
対象: 実在しない単語を覚える実験(2つの実験) / 限界: 人工の単語を使った短い実験で、覚えるまでの速さを測ったもの。長く覚えていられるかは調べていない。
Waring(1997)[2]
Tinkhamの実験をほぼ同じ手順でくり返した研究(再現実験)。意味の近い単語を同時に覚えると覚えにくいという、同じ結果が出た。
対象: 外国語の学習者 / 限界: こちらも人工の単語を使った実験で、ふだんの単語学習とは条件が違う。
NakataとSuzuki(2019)[3]
日本の大学生133人が、英単語と日本語訳48組を覚えた。半分は意味の近い単語、半分はばらばらの単語。最後のテストの正答数には差がなかった。しかし、意味の近い単語では、同じグループの別の単語と取り違える誤りが多かった。
対象: 日本の大学生133人 / 限界: 間をあけて復習すると、似た単語の取り違えが特に減ると予想されていた。しかし実際は、間をあける効果はばらばらの単語の方で大きかった。
Pérez-Serranoら(2022)[4]
スペインの大学生102人が、字幕つきの動画で新しい単語12語に出会った。半分はぶどう・りんご・梨などの果物で、半分はばらばら。選択肢から選ぶテストでは、ばらばらの単語の方がよく当てられた。書いて答えるテストでは、差が出たのは8回見た単語だけだった。
対象: 18〜22歳の大学生102人 / 限界: 見た直後のテストだけで、日をあけたテストはしていない。単語は実在しない作り物。
Pérez-Serranoらの実験では、ばらばらの単語は、見る回数が4回から8回に増えると、書けるようになる割合がさらに伸びました。一方、果物のグループの単語は、4回から8回に増やしても、はっきりした伸びがありませんでした[4]。くり返しても伸びにくいのは、似た単語どうしが邪魔し合うためと考えられています。
Healyら(2025)[5]
同じ研究室の過去の実験では、フランス語の単語を意味のグループごとにまとめて覚えると、その場では覚えやすかった。しかし1週間後の覚え直しでは、グループを混ぜて覚えた人の方がよかった。新しい実験では、すでに覚えたのと同じグループの単語は、新しいグループの単語より覚えにくかった。
対象: 米国の大学生(新しい実験は48人) / 限界: 著者ら自身が、この分野の研究結果はまちまちだと述べている。まとめた方がよく覚えられたという研究もある。
| 何を測ったか | 意味の近い単語をまとめた場合 | 根拠 |
|---|---|---|
| 覚えきるまでの回数 | 多くかかる(くり返し確認) | [1][2] |
| 似た単語どうしの取り違え | 多くなる | [3] |
| 最後のテストの正答数 | 差なし〜やや不利(研究でまちまち) | [3][4][5][7] |
| くり返し見たときの伸び | 伸びにくい | [4] |
ややこしいのは、混ざる原因が「意味の近さ」だけではないかもしれない点です。Ishii(2015)は、形の似た物(見た目が似ている物の名前)を集めると覚えにくく、20分後のテストでも取り違えが多かったと報告しました。一方、見た目の似ていない「意味だけ近い」グループは、ばらばらのグループと比べて覚えにくくはありませんでした[6]。
また、単語をばらばらに覚えるのではなく、話の流れの中で覚えた実験では、意味の近いグループの不利はわずかでした。著者らは、話の流れがその不利の多くを打ち消した可能性があると述べています[7]。
ここで紹介した研究の多くは、大学生が数十語を短時間で覚える実験です。何か月もかけて数千語を覚える独学で、どれだけ差が出るかを直接調べた研究ではありません。
03 今日からできる小さな一歩似た単語を混ぜずに覚えるには?
似た単語は同じ日にまとめて覚えず、日を分けます。片方を何も見ずに言えるようになってから、もう片方を足します。混ざった単語は、違いを一言でメモします。
今日覚える単語から、同じグループの語を2語までにする
単語帳の「果物」「体の部分」のページを丸ごと1日で覚えるのをやめます。今日の単語の中で同じグループの語は2語までにし、残りは別の日に回します。
所要 3分
片方が言えるようになってから、もう片方を足す
まったく知らない単語や、まだ定着していない単語ほど、まとめて覚えたときに混ざりやすいと指摘されています[4]。left を何も見ずに言えるようになってから right を足す、という順番にします。
所要 数日
単語を短い文に入れて覚える
「I ate a pear after lunch.」のように、自分の生活の場面に入れます。話の流れの中で覚えると、似た単語の不利が小さかった実験があります[7]。
所要 1語1分
04 続けるためのコツもう混ざってしまった単語はどうする?
混ざった2語を並べて、違いを一言で書き出します。そのうえで、片方ずつ日をあけて思い出す練習をします。
- 取り違えた組をメモする。「pear=梨(洋梨の形)/ grape=ぶどう(房)」のように、見分ける手がかりを1つ書きます。
- 思い出す練習で確かめる。見て「わかる」より、何も見ずに言えるかを確かめます。やり方は暗記カードの使い方にまとめています。
- 日をあけてもう一度。間をあける理由は分散学習の記事で紹介しています。覚え方の全体は英単語の覚え方へ。
- 単語帳の並べ方を責めない。グループ分けは、復習で整理するときには役に立ちます。新しく覚える日だけ、グループを崩します。
05よくある質問
単語帳の「テーマ別」の章は使わない方がいい?
使ってかまいませんが、1つの章を1日で全部覚えようとしないのがおすすめです。意味の近い新しい単語を同時に覚えると、覚えきるまでの回数が増え、取り違えも増えやすいという実験があります。章の中の単語を何日かに分け、他の章の単語と混ぜて覚えます。
似た単語をまとめて覚えると、最後の成績は下がる?
研究によって違います。日本の大学生133人の実験では、最後のテストの正答数に差はなく、取り違えが増えただけでした。動画で単語を学んだスペインの大学生102人の実験では、ばらばらの単語の方がよく当てられました。まとめた方がよく覚えられたという研究もあります。
反対語(右と左など)も混ざりやすい?
この記事で紹介した実験の多くは、果物のような同じグループの単語を使ったものです。反対語だけを取り出して比べた研究は、今回確認できた範囲にはありませんでした。ただ、右と左のように一緒に習うことの多い組で迷うなら、片方を定着させてから足すやり方を試す価値はあります。
出典
- Tinkham, T. (1993). The effect of semantic clustering on the learning of second language vocabulary. System, 21(3), 371–380. https://doi.org/10.1016/0346-251X(93)90027-E
- Waring, R. (1997). The negative effects of learning words in semantic sets: A replication. System, 25(2), 261–274. https://doi.org/10.1016/S0346-251X(97)00013-4
- Nakata, T., & Suzuki, Y. (2019). Effects of massing and spacing on the learning of semantically related and unrelated words. Studies in Second Language Acquisition, 41(2), 287–311. https://doi.org/10.1017/S0272263118000219
- Pérez-Serrano, M., Nogueroles-López, M., & Duñabeitia, J. A. (2022). Effects of semantic clustering and repetition on incidental vocabulary learning. Frontiers in Psychology, 13, 997951. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.997951
- Healy, A. F., Schneider, V. I., Kole, J. A., Little, J. L., & Bjork, E. L. (2025). Exploring whether making second-language vocabulary learning difficult enhances retention and transfer. Behavioral Sciences, 15(5), 692. https://doi.org/10.3390/bs15050692
- Ishii, T. (2015). Semantic connection or visual connection: Investigating the true source of confusion. Language Teaching Research, 19(6), 712–722. https://doi.org/10.1177/1362168814559799
- Bolger, P., & Zapata, G. C. (2011). Semantic categories and context in L2 vocabulary learning. Language Learning, 61(2), 614–646. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00624.x
- Tinkham, T. (1997). The effects of semantic and thematic clustering on the learning of second language vocabulary. Second Language Research, 13(2), 138–163. https://doi.org/10.1191/026765897672376469


