同期や友人が先に合格して、やる気が落ちた。どう立て直す?うらやましさを「追いつく力」に変える6つの手順(妬みと比較の研究)

同じ時期に勉強を始めた同期や友人から、「受かったよ」と連絡が来た。おめでとうと返したあと、自分の問題集を開いても手が止まる。そんな経験は珍しくありません。研究では、相手の合格を「ずるい」ではなく「やったことの結果」と受け止め、自分にも手が届くと思えるとき、うらやましさは努力の力に変わりやすいことがわかっています。この記事では、そのための6つの手順を紹介します。
3行でわかる
- 自分より上の人と比べると、自分の力の見積もりや気分が下がるのが、いちばんよく起きる反応。落ち込むのは自然なこと。
- うらやましさには、自分を高める方向に働く「良性の妬み」と、相手を下げたくなる「悪性の妬み」があるとする研究がある。相手の成果が不当ではなく、自分にも変えられると思えるときほど、良性の方になりやすかった。
- 相手がやったことを事実で書き、自分が変えられることを1つ選び、次の目標を近くに置く。比べる回数は減らし、自分の先週と比べる。
01 悩みの正体人の合格で、なぜやる気まで落ちる?
自分より上の人と比べると、自分の力を低く見積もり、気分も下がりやすいからです。うらやましさそのものは悪い感情ではなく、向かう先しだいで努力の力にもなります。
比べる心理を調べた60年以上の研究をまとめた分析では、自分より上の人と比べたとき、いちばん多い反応は「対比」でした[5]。相手が上だと感じるほど、自分の力の評価や気分が下がる、という反応です。とくに能力について比べたとき、この反応ははっきり出ていました[5]。
うらやましさ(妬み)は、相手が自分のほしいものを持っているときに起きる、つらい感情です。研究者の一部は、これを2つに分けて考えています。相手に追いつこうとする良性の妬みと、相手を引きずり下ろしたくなる悪性の妬みです[2]。どちらになるかは、その状況をどう受け止めるかで変わることがわかってきました[2]。
比べる気持ちが生まれる仕組みそのものは、SNSで他人の勉強量を見て焦る理由の記事で紹介しました。この記事は、もう比べてしまった後の立て直し方が中心です。
02 科学的にわかっていることうらやましさが、やる気に変わるのはどんなとき?
相手の成果を「不当ではない」と受け止め、自分にも変えられると感じたときに、追いつこうとする気持ちが強くなりやすいことがわかっています。ただし、多くは大学生の実験や質問票の研究です。
van de Venら(2011)[1]
4つの研究で、良性の妬みだけが「もっと勉強しよう」という気持ちや、言葉を使った課題(知能と創造性をみる課題)の成績と結びついていた。憧れや悪性の妬みでは見られなかった。4つ目の研究では、自分より上の人と比べたあと良性の妬みが生まれて成績が上がったのは、「自分も伸ばせる」と思えた条件だけだった。「伸ばすのは難しい」と思った条件では、憧れが強まるだけで、もっと頑張る気持ちにはつながらなかった。
対象: オランダの研究グループによる4つの研究 / 限界: 論文の本文は確認できず、要旨で確かめた範囲の記述。短い課題での実験で、資格試験の勉強で同じことが起きるかはわからない。
van de Venら(2012)[2]
平均20歳の参加者124人に、「同僚だけが昇給した」という場面を読ませた。昇給が不当(相手の方が成績が悪い)か妥当か、次の評価が1年後か3か月後かを入れ替えた。うらやましさの強さはどの組も同じくらいだった。しかし、不当な場面ほど悪性の妬みが強く、良性の妬みは「妥当で、しかも次の機会が近い」場面でいちばん強かった。
対象: オランダの大学での研究 / 限界: 想像の場面に答える実験。実際に追いつく行動をとったかは測っていない。不当だと感じると「自分では変えられない」感覚も下がるため、2つの影響は分けきれないと著者らは書いている。
LangeとCrusius(2015)[3]
4つの研究(計1,094人)で、良性の妬みと悪性の妬みの感じやすさを測る質問票を作った。マラソンの研究では、良性の妬みを感じやすい人ほど高い目標タイムを立て、それを通して実際のレースも速かった。悪性の妬みを感じやすい人は、レースの目標をあきらめやすかった。
対象: マラソンのランナーを含む4つの研究 / 限界: 感じやすさの個人差と成績の関係を見た研究で、妬みが速さの原因とまでは言えない。論文の本文ではなく要旨で確認した。
van de Ven(2017)[4]
計345人の2つのサンプルで、良性の妬みと憧れのそれぞれが、どんな気持ちを生むかを調べた。どちらも「自分を高めたい」という気持ちにつながっていた。2011年の研究で「憧れでは頑張る気持ちにならない」とされた点とは、異なる結果になった。
対象: 2つのサンプル計345人 / 限界: 気持ちを答えてもらう研究で、実際の行動は測っていない。
妬みを「良性」と「悪性」の2種類に分けるべきか、1つの感情が2つの方向に働くと考えるべきかは、研究者のあいだでも議論が続いています。両方の立場の研究者が一緒に書いた総説では、どちらの考え方でも説明できる点と、まだ決着していない点が整理されています[6]。
また、ここで紹介した研究の多くは、オランダなどの大学生の実験や、マラソンのランナーの研究です。友人の合格を見たあと、社会人が何か月も資格の勉強を続けられるかを直接調べた研究は見つかりませんでした。以下の手順は、これらの研究の考え方を独学に当てはめたものです。
03 今日からできる小さな一歩友人が先に合格したら、何から立て直す?
気持ちを責めずに書き出し、相手がやったことを事実で並べます。そのうえで自分が変えられることを1つ選び、次の目標を近い日に置きます。
落ち込んだ自分を責めず、「何がうらやましいか」を1行書く
上の人と比べて気分が下がるのは、よくある反応です[5]。「合格そのもの」「短期間で受かったこと」「職場でほめられたこと」など、うらやましい中身を1行にします。中身がわかると、自分が本当にほしいものが見えます。
所要 3分
相手の合格の「理由」を、事実で3つ書く
「勉強を始めた時期」「1日の勉強時間」「使った問題の解き方」など、わかっている事実だけを書きます。「運がよかっただけ」「ずるい」と感じるほど、相手を下げたい気持ちが強まりやすいことがわかっています[2]。事実を並べると、相手の合格を「やったことの結果」として受け止めやすくなります。
所要 5分
聞ける相手なら、やり方を1つだけ聞く
「いちばん効いたと思う勉強は何だった?」と1つだけ聞きます。手順2の「事実」が増え、相手の合格を「やったことの結果」として見やすくなります。聞いた答えは自分にそのまま合うとは限らないので、手順4で取捨選択します。
所要 5分(聞けない場合は飛ばす)
「自分が変えられること」を1つだけ選ぶ
手順2と3から、来週から自分でも変えられることを1つ選びます(例: 読む勉強を減らして過去問を週2回解く)。良性の妬みは、自分でも状況を変えられると思えるときに強かったためです[2]。勉強時間や環境の差など、すぐには変えられないことは選びません。
所要 5分
次の目標を、3か月以内の近い日に置く
本番が半年以上先なら、模試や過去問1年分など、もっと近い目標を置きます。次の機会が「1年後」より「3か月後」の場面で良性の妬みが強かった研究があります[2]。良性の妬みを感じやすい人ほど高い目標を立て、成績もよかった研究もあります[3]。目標は高すぎず、「伸ばせそう」と思える高さにします[1]。
所要 5分
比べる相手を「先週の自分」に替える
相手の近況を何度も見に行くと、そのたびに自分の評価が下がりやすくなります[5]。手順1〜5を書いたら、相手の話題を追う回数は減らし、週に1回、自分の先週の勉強時間や正答数と比べる記録に切り替えます。
所要 週1回 5分
04 続けるためのコツ比べる気持ちに、また振り回されないためには?
次に比べたくなったときの動きを決めておき、自分の記録を見る習慣に置き換えます。目標は「伸ばせそう」と思える高さに保ちます。
- 比べたくなったら、手順4の1行を読み返す。相手の結果ではなく、自分が今週変えていることに目を戻します。
- 目標を高くしすぎない。「自分には無理」と感じると、憧れで終わってしまい、頑張る気持ちにつながりにくかった研究があります[1]。届きそうだと思える高さに区切ります。点数より「やること」で目標を立てるやり方は、目標の立て方の記事で紹介しています。
- 自分を責める気持ちが強いときは、別の立て直し方も。試験に落ちた自分を責めてしまうときの考え方は自分への思いやりの記事に、何度も落ちて受け続けるか迷うときは再受験の決め方の記事にまとめています。
05よくある質問
友人の合格をうらやましく思う自分が嫌です。おかしいのでしょうか?
おかしくありません。自分より上の人と比べると、自分の評価や気分が下がる方向に動くのが、60年以上の比較の研究をまとめた分析でいちばん多い反応でした。うらやましさは、相手が自分のほしいものを持っているときに起きる感情です。大事なのは感じないことより、その気持ちを相手を下げる方向ではなく、自分が追いつく方向に向けることです。
うらやましさではなく「すごいな」と憧れるだけでは、やる気になりませんか?
研究の結果は分かれています。2011年のオランダの研究では、勉強する気持ちが強まったのはうらやましさ(良性の妬み)のときだけで、憧れでは強まりませんでした。一方、同じ研究者が2017年に計345人で調べた研究では、良性の妬みも憧れも、自分を高めたい気持ちにつながっていました。どちらの気持ちでも、具体的な次の一歩に結びつけることが共通の手がかりです。
相手のSNSや合格報告を見るのがつらいときは、見ないほうがいいですか?
しばらく見る回数を減らすのは一つの手です。比べた直後は、自分の力の見積もりが下がりやすいことがわかっています。この記事の手順で「相手がやったこと」と「自分の次の一手」を書き出したら、そのあとは比べる回数を減らし、自分の先週と比べる記録に切り替えます。
気持ちの落ち込みが何週間も続きます。
比べる気持ちとは別に、心が疲れているのかもしれません。眠れない・何も楽しめない状態が2週間以上続くときは、一人で抱えずに相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)でも話を聞いてもらえます。
出典
- van de Ven, N., Zeelenberg, M., & Pieters, R. (2011). Why envy outperforms admiration. Personality and Social Psychology Bulletin, 37(6), 784-795. https://doi.org/10.1177/0146167211400421
- van de Ven, N., Zeelenberg, M., & Pieters, R. (2012). Appraisal patterns of envy and related emotions. Motivation and Emotion, 36(2), 195-204. https://doi.org/10.1007/s11031-011-9235-8
- Lange, J., & Crusius, J. (2015). Dispositional envy revisited: Unraveling the motivational dynamics of benign and malicious envy. Personality and Social Psychology Bulletin, 41(2), 284-294. https://doi.org/10.1177/0146167214564959
- van de Ven, N. (2017). Envy and admiration: Emotion and motivation following upward social comparison. Cognition and Emotion, 31(1), 193-200. https://doi.org/10.1080/02699931.2015.1087972
- Gerber, J. P., Wheeler, L., & Suls, J. (2018). A social comparison theory meta-analysis 60+ years on. Psychological Bulletin, 144(2), 177-197. https://doi.org/10.1037/bul0000127
- Crusius, J., Gonzalez, M. F., Lange, J., & Cohen-Charash, Y. (2020). Envy: An adversarial review and comparison of two competing views. Emotion Review, 12(1), 3-21. https://doi.org/10.1177/1754073919873131


