やる気・心

学び直しの「理由」チェック表。「会社に言われた」「やらないと不安」だけで続けていないか確かめ、自分にとっての意味を1つ足す(自己決定理論の研究から)

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ふたを開いた方位磁針
Photo: Jacek Halicki / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

学び直しを始めた理由を聞かれたら、何と答えますか。「会社に言われたから」「資格手当のため」「このままだと置いていかれそうで不安だから」。どれも本当の理由で、悪い理由ではありません。ただ研究では、理由の「種類」によって、勉強の続きやすさが違うことがわかっています。この記事は、自分の理由を4種類に分けて見直し、続く支えになる理由を1つ足すための表です。

3行でわかる

  1. 344のサンプル(計22万3209人)をまとめたメタ分析では、「自分にとって大事だから」という理由が、勉強を続けることと特に強く結びついていた。「ごほうびや罰のため」という理由は、成績とも継続とも関係が見られなかった。
  2. 個人の目標を調べた研究では、自分で選んだ理由は目標の進み具合と関係したが、「やらされ」の理由は関係しなかった。著者らは、やらされ感を減らすより、自分の理由を増やすほうに目を向けるよう勧めている。
  3. 表1で理由を書き出して4種類に分け、表2で「自分にとっての意味」を1つ足し、表3で月に1回見直す。

01 悩みの正体続かないのは、やる気が足りないから?

やる気の「量」ではなく、理由の「種類」が関係していることがあります。研究では、勉強する理由を4種類に分けて考えます。

自己決定理論(自分で選んでいると感じるほど、行動が続きやすいとする心理学の理論)では、勉強する理由を次の4つに分けます。

  • ①面白いから(内発的動機)
  • ②自分にとって大事だから(同一化)
  • ③やらないと恥ずかしい・不安だから(取り入れ)
  • ④ごほうびや罰、人の指示のため(外的)

①②を「自律的な動機」、③④を「統制された動機(やらされ感)」と呼びます。理由は1つでなくてかまいません。「会社に言われた」と「仕事の幅を広げたい」が同時にあるのが普通です。表で確かめたいのは、どの種類が多いかです。

02 科学的にわかっていることどんな理由だと勉強は続きやすい?

「自分にとって大事だから」という理由が、続けることと特に強く結びついていました。ごほうびや罰のためという理由は、継続とも成績とも関係が見られませんでした。ただし多くは学生の調査です。

Howardら(2021)のメタ分析[1]

学生の動機を調べた344のサンプル(計22万3209人)をまとめ、26の結果との関係を調べた。「面白いから」は成績や心の健康と、「自分にとって大事だから」は続けることと特に強く関係していた。「やらないと恥ずかしい・不安だから」は続けることとも関係したが、心の不調の指標とも関係していた。「ごほうびや罰のため」は成績とも継続とも関係せず、心の健康の低さと関係していた。

対象: 学生を対象にした研究のメタ分析 / 限界: 理由と結果の「関係」を調べたもので、理由を変えれば続くようになるという因果は示していない。社会人の学び直しを調べたものではない。

Koestnerら(2008)[2]

3つの研究とメタ分析で、自分で選んだ理由(自律的な動機)は個人の目標の進み具合と大きく関係していたが、やらされの理由(統制された動機)は関係していなかった。自律的な動機と進み具合の関係には、「いつ・どうやるか」の計画が関わっていた。著者らは、統制された動機を減らすより、自律的な動機を高めることに目を向けるよう勧めている。

対象: 人が自分で立てた目標(勉強に限らない) / 限界: 目標の進み具合は本人の申告。勉強の成績で確かめたものではない。

SheldonとElliot(1999)[3]

自分の興味や大事にしている価値に合った目標を追う人は、努力を長く続け、目標を達成しやすかった。3つの追跡データで確かめられ、この関係は自己効力感(「できそう」という感覚)や、「いつ・どこでやるか」の計画とは別に成り立っていた。

対象: 3つの追跡データ(要旨で確認) / 限界: 個人の目標全般の研究で、資格や語学の勉強に絞ったものではない。

Vansteenkisteら(2004)[4]

高校生と大学生の3つの実験で、学ぶ内容を「成長・健康・人の役に立つこと」につなげて伝えると、「お金・見た目」につなげて伝えたときより、深く理解し、テストの成績がよく、自分から続ける行動も多かった。成長などにつなげ、しかも押しつけない言い方で伝えたときに、理解とテストの成績が特に高くなった(続ける行動では、この組み合わせの上乗せは見られなかった)。

対象: 高校生と大学生の実験(要旨で確認) / 限界: 目的を伝えたのは研究者で、自分で理由を書き出す方法を確かめたものではない。

van der Burgtら(2019)[5]

オランダの4つの病院の専門医1591人に調査を送り、193人(回答率12.1%、平均49歳)が答えた。仕事を自分で選べていると感じる人ほど、仕事への自律的な動機が高く、それが学び続けることへの意欲の高さにつながっていた。

対象: 社会人(医師)の調査 / 限界: 一時点の調査で、回答率が低い。著者ら自身が、意欲の高い人ほど回答した可能性を挙げている。測ったのは学ぶ意欲で、実際に学び続けたかどうかではない。

ここで紹介した研究の多くは学生の調査や短い実験です。社会人の学び直しで、理由を書き直したら続くようになったと確かめた研究は、このサイトが調べた範囲では見つかりませんでした。下の表は、研究の考え方を独学向けにこのサイトがまとめたものです。

03 使える表自分の学び直しの理由を、どう見直す?

表1で理由を書き出して4種類に分け、表2で「自分にとっての意味」を1つ足します。表3で月に1回見直します。やらされ感の理由は消さなくてかまいません。

表1 理由の仕分け表(3分)。学び直しの理由を思いつくだけ書き、それぞれに①〜④の番号をつけます。

種類理由の例あなたの理由研究でわかったこと
①面白い・知るのが楽しい仕組みがわかると面白い成績・心の健康と関係[1]
②自分にとって大事担当業務の判断に自信を持ちたい/転職の選択肢を持っておきたい続けることと特に強く関係[1]
③やらないと恥ずかしい・不安後輩に追い越されたくない/取らないと肩身がせまい続けることとも関係。ただし心の不調の指標とも関係[1]
④ごほうび・罰・人の指示資格手当がつく/会社に言われた成績とも継続とも関係が見られなかった[1]

①②が1つもないとき、または③④ばかりのときは、表2に進みます。①②がすでにあるなら、表2の4行目(いつ・どこで)だけ書けば十分です。

表2 「自分にとっての意味」を足す表(5分)。上から順に答えます。きれいな答えでなくてかまいません。

問い書き方の例もとになった研究
1. この勉強ができるようになったら、仕事や生活で何が変わる?見積もりの根拠を、自分の言葉で説明できる成長や人の役に立つことにつなげると、理解が深まった[4]
2. それは、自分が大事にしていることとどうつながる?お客さんに安心して任せてもらいたい自分の価値に合った目標ほど努力が続いた[3]
3. 指示やごほうびがなくなっても、続けたい部分は?法改正のところだけは知っておきたい「自分にとって大事」が継続と特に強く関係[1]
4. その理由のために、いつ・どこで・何をする?平日の朝7時、通勤電車で過去問を5問自律的な動機と進み具合の関係に、計画が関わっていた[2]

書いた1〜3の答えを、教材の表紙の裏やスマホのメモの先頭に1行で残しておきます。勉強が面倒な日に、まず読み返すためです。

表3 月1回の見直し表。月末に5分で書きます。勉強日数と理由の関係は自分用の目安で、研究で確かめた数字ではありません。

月①②の理由の数その月の勉強日数面倒だった日に支えになった理由来月に足す・書き直すこと
例 4月例 0例 6日例 「会社に言われた」だけ例 表2を書いて②を1つ足す
例 5月例 1例 13日例 「お客さんに説明できるように」例 このまま。計画の時刻だけ見直す

04 続けるためのコツ理由を足しても続かないときは?

やらされ感の理由は消さずに残し、自分の理由を足したら「いつ・どこで」まで決めます。不安だけで走り続けていないかにも気をつけます。

  • 「会社に言われた」は書いたままでいい。研究では、やらされ感を減らすより、自分の理由を増やすほうが勧められていました[2]。
  • 理由を足したら、行動の予定まで決める。自分の理由と目標の進み具合のつながりには、計画が関わっていました[2]。決め方は「いつ・どこでやるか」を決める研究にまとめています。
  • 「不安だから」だけで続けていないか確かめる。この理由は継続とも関係しますが、心の不調の指標とも関係していました[1]。疲れ切っていると感じたら燃え尽きのチェック表を使ってください。つらさが続くときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などに相談できます。
  • 学んだことと生活のつながりを書く方法は勉強する意味を書く記事に、学び直し全体の計画は学び直し計画表にまとめています。

05よくある質問

会社に言われて始めた勉強は、続かないの?

続かないと決まっているわけではありません。メタ分析で見られたのは、「ごほうびや罰のため」という理由が、成績とも継続とも関係していなかったということです。つまり、その理由だけでは支えになりにくいということです。指示で始めた勉強でも、自分にとっての意味が1つ見つかれば、その理由が支えになります。

「やらないと不安だから頑張る」はよくない?

不安や恥ずかしさからの理由は、続けることとも関係していました。ただ、心の不調の指標とも関係していたので、それだけに頼らず、「自分にとって大事」の理由を1つ足すのがおすすめです。

面白いと思えない科目は、どうすればいい?

面白さがなくても、「自分にとって大事だから」という理由は作れます。メタ分析では、この理由が続けることと特に強く関係していました。表2の1〜3の問いに答えて、仕事や生活とのつながりを探してみてください。

出典

  1. Howard, J. L., Bureau, J., Guay, F., Chong, J. X. Y., & Ryan, R. M. (2021). Student motivation and associated outcomes: A meta-analysis from self-determination theory. Perspectives on Psychological Science, 16(6), 1300–1323. https://doi.org/10.1177/1745691620966789
  2. Koestner, R., Otis, N., Powers, T. A., Pelletier, L., & Gagnon, H. (2008). Autonomous motivation, controlled motivation, and goal progress. Journal of Personality, 76(5), 1201–1230. https://doi.org/10.1111/j.1467-6494.2008.00519.x
  3. Sheldon, K. M., & Elliot, A. J. (1999). Goal striving, need satisfaction, and longitudinal well-being: The self-concordance model. Journal of Personality and Social Psychology, 76(3), 482–497. https://doi.org/10.1037/0022-3514.76.3.482
  4. Vansteenkiste, M., Simons, J., Lens, W., Sheldon, K. M., & Deci, E. L. (2004). Motivating learning, performance, and persistence: The synergistic effects of intrinsic goal contents and autonomy-supportive contexts. Journal of Personality and Social Psychology, 87(2), 246–260. https://doi.org/10.1037/0022-3514.87.2.246
  5. van der Burgt, S. M. E., Kusurkar, R. A., Wilschut, J. A., Tjin A Tsoi, S. L. N. M., Croiset, G., & Peerdeman, S. M. (2019). Medical specialists’ basic psychological needs, and motivation for work and lifelong learning: A two-step factor score path analysis. BMC Medical Education, 19, 339. https://doi.org/10.1186/s12909-019-1754-0