集中・環境

立って勉強すると集中できる?スタンディングデスクと注意力の研究でわかったこと(効く・効かないの判定)

約8分で読めます

段ボールで作った、立って使う机
Photo: Ambrishraja / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

座ったままだと眠くなる。立って勉強すれば集中できるのでは。スタンディングデスク(立って使う机)は、そう期待されて広まってきました。研究を調べると、「立つと注意力が上がる」という2017年の実験は、その後の追試(同じ方法でやり直す実験)で何度も再現されませんでした。立って作業しても成績は下がりませんが、上がる根拠も弱いのが現状です。判定は「当てにならない(集中のためなら)」です。

3行でわかる

  1. 判定:「立って勉強すると集中できる」は当てにならない。立つと注意力が上がった2017年の実験は、5回の追試で再現されなかった。
  2. 7件の研究・603人をまとめたメタ分析でも、座る・立つで注意の課題の成績に差はなかった。立っても成績は下がらない。
  3. 役立つのは「座りっぱなしを減らす」こと。ただし2時間立ち続けると体の不快感が増え、反応も遅くなった。座ると立つを交互にする。

01 通説の中身立って勉強すると集中できるって本当?

「立つと集中できる」という話の主な根拠は、2017年に発表された大学生の実験です。ところが、その後に行われた大きな追試では、同じ結果が出ませんでした。

よく引用されるのは、Rosenbaumらが2017年に発表した実験です[1]。色の名前の文字を、文字とは違う色で書いて見せ、文字の色を答えてもらいます(ストループ課題)。「赤」という字が青で書かれていると、答えるのが遅くなります。この遅れが小さいほど、邪魔な情報を無視して注意を向けられている、と考えます。

この実験では、立って答えたときの方が遅れが小さくなりました。17人と50人の実験です(後のメタ分析[4]の表による)。ここから「立つと集中力が上がる」と紹介されるようになりました。

02 科学的にわかっていること立つと注意力が上がる実験は、再現された?

再現されませんでした。2つの大学で行われた5回の追試でも、ドイツの2回の追試でも、立つか座るかで課題の成績は変わりませんでした。まとめた分析でも差はありません。

Caronら(2020)[2]

2017年の実験を、2つの大学で5回やり直した。分析した人数はそれぞれ108人・108人・98人・78人・51人。5回とも、立っても座っても、注意の課題の成績に一貫した違いは見られなかった。

対象: 大学生 / 限界: 1回数十分の課題で測った実験。何時間もの勉強で確かめたものではない。

Straubら(2022)[3]

ドイツで44人と38人の追試を行い、これまでの研究もまとめて分析した。姿勢が成績に影響した証拠は見つからず、統計の別の方法でも「影響はない」側を強く支持した。

対象: ドイツの成人 / 限界: 色の名前を答える課題1種類だけで確かめた。

Šömenら(2023)[4]

7件の研究・12の実験・603人(平均24歳)をメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)した。座る・立つで、注意の課題の成績に差はなかった(効果量 0.13、統計的に意味のある差ではない)。著者らは「立っても注意力が落ちることはなさそうだ」と結論している。

対象: 健康な若い成人 / 限界: 短時間の実験室の課題だけ。わずかに立つ側がよい傾向はあったが、はっきりした差ではない。

Russellら(2016)[5]

大学の職員36人が、1日1時間を座って、または立って作業する期間を5日ずつ過ごし、くじで順番を決めた。注意・処理の速さ・記憶・作業の効率のどれにも、意味のある差はなかった(効果量はすべて0.2未満)。

対象: オーストラリアの大学職員36人(平均40.1歳) / 限界: 人数が少なく、期間は1週間ずつ。

Ojoら(2018)[6]

立って使う机など「動きながら使う机」と、仕事の成績を調べた7件の研究をまとめた。立ったり座ったりできる机で、成績が下がった研究はなかった。歩きながら・こぎながら使う机では、成績が下がる可能性を示した研究もあった。12〜52週間の仕事の生産性を調べた3件でも、はっきりした変化はなかった。

対象: 職場の成人 / 限界: 多くの研究は人数が少なく、差を見つける力が足りなかったと著者らは書いている。

Bakerら(2018)[7]

20人が実験室で2時間、立ったままパソコン作業をした。時間がたつにつれて体のどこも不快感が増え、注意を保つ課題の反応は遅くなった。一方、ひらめきが必要な問題の成績は上がった。著者らは「座る作業を立つ作業に置き換えるのは慎重に」と書いている。

対象: 成人20人 / 限界: 1回2時間の実験。立つことに慣れた人の結果ではない。

座りっぱなしを短く区切る休憩については、別のメタ分析があります。21件の実験・433人をまとめると、立つ・歩く休憩をはさむと、考える力や記憶のテストでは小さな改善が見られました(効果量0.18と0.37)。しかし注意のテストでは改善は見られず、証拠の確かさも「低い」と評価されています[8]。これは「立って作業し続ける」ことではなく、「座る時間を区切る」ことの研究です。

ここで紹介した研究の多くは、数十分〜2時間の実験室の課題や、大人の職場での研究です。何か月もかけて資格や語学を独学する人の、学習の成果を直接測ったものではありません。

03 今日からできる小さな一歩スタンディングデスクを勉強に使うなら、どう使う?

集中を上げる道具ではなく、座りっぱなしを減らす道具として使います。立つのは20〜30分ほどに区切り、座ると立つを交互にするのがおすすめです。

職場の研究34件をまとめたコクランのレビューでは、立ったり座ったりできる机を使うと、仕事中に座る時間が3か月までで1日平均100分減りました。3〜12か月後でも平均57分の減少でした。ただし証拠の確かさは「低い」とされています[9]。

1

立つ時間を短く区切る

1回に立つのは20〜30分までにします。2時間立ち続けた実験では、不快感が増え、反応も遅くなりました[7]。

所要 タイマー設定に1分

2

立つ作業と座る作業を分ける

単語の見直しや、動画の講義を見るなど、手を動かさない作業を立つ時間にあてます。長い文章を書く、計算問題を解くなどは座って行います。どちらでも成績は変わらなかったので、楽な方を選んでかまいません。

所要 計画を立てるときに3分

3

机がなくても、30分ごとに立ち上がる

専用の机は必要ありません。30分〜1時間ごとに立ち上がって3〜5分歩くだけでも、座りっぱなしを区切れます(体を動かす休憩の記事)。

所要 3〜5分

04 続けるためのコツ集中したいときは、何を変えればいい?

姿勢より、スマホの置き場所や、勉強する場所の誘惑を減らす方が先です。立つか座るかは、体が楽な方を選べば十分です。

  • 立って足が疲れてきたら、座る合図。不快感が増えると集中しにくくなります。我慢して立ち続けないようにします。
  • 集中の妨げは、まず目の前から減らす。スマホや目に入る物の整え方は勉強する場所の整え方の記事にまとめています。
  • 休憩の取り方を決めておく。勉強の休憩プラン表で、何分ごとに何をするかを決められます。
  • 自分に合うかは記録して確かめる。場所と時間帯の記録表に「立った日・座った日」を書き足して比べます。

05よくある質問

立って勉強すると集中力は上がる?

研究では支持されていません。立つと注意力が上がった2017年の実験は、5回の追試で再現されませんでした。7件の研究・603人をまとめたメタ分析でも、立つか座るかで注意の課題の成績に差はありませんでした。

スタンディングデスクで勉強すると成績が下がる?

下がるという結果も出ていません。大学職員36人の実験や、職場の研究7件をまとめたレビューでは、立って作業しても成績や生産性は下がりませんでした。ただし2時間立ち続けた実験では、不快感が増え、反応が遅くなりました。

スタンディングデスクを使うと、座る時間はどれくらい減る?

職場の研究をまとめたコクランのレビューでは、立ったり座ったりできる机で、仕事中に座る時間が1日平均100分減りました(3か月まで)。3〜12か月後には平均57分でした。証拠の確かさは「低い」と評価されています。

出典

  1. Rosenbaum, D., Mama, Y., & Algom, D. (2017). Stand by your Stroop: Standing up enhances selective attention and cognitive control. Psychological Science, 28(12), 1864–1867. https://doi.org/10.1177/0956797617721270
  2. Caron, E. E., Reynolds, M. G., Ralph, B. C. W., Carriere, J. S. A., Besner, D., & Smilek, D. (2020). Does posture influence the Stroop effect? Psychological Science, 31, 1452–1460. https://doi.org/10.1177/0956797620953842
  3. Straub, E. R., Dames, H., Kiesel, A., & Dignath, D. (2022). Does body posture reduce the Stroop effect? Evidence from two conceptual replications and a meta-analysis. Acta Psychologica, 224, 103497. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103497
  4. Šömen, M. M., Peskar, M., Wollesen, B., Gramann, K., & Marusic, U. (2023). Does standing up enhance performance on the Stroop task in healthy young adults? A systematic review and meta-analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(3), 2319. https://doi.org/10.3390/ijerph20032319
  5. Russell, B. A., Summers, M. J., Tranent, P. J., Palmer, M. A., Cooley, P. D., & Pedersen, S. J. (2016). A randomised control trial of the cognitive effects of working in a seated as opposed to a standing position in office workers. Ergonomics, 59(6), 737–744. https://doi.org/10.1080/00140139.2015.1094579
  6. Ojo, S. O., Bailey, D. P., Chater, A. M., & Hewson, D. J. (2018). The impact of active workstations on workplace productivity and performance: A systematic review. International Journal of Environmental Research and Public Health, 15(3), 417. https://doi.org/10.3390/ijerph15030417
  7. Baker, R., Coenen, P., Howie, E., Lee, J., Williamson, A., & Straker, L. (2018). A detailed description of the short-term musculoskeletal and cognitive effects of prolonged standing for office computer work. Ergonomics, 61(7), 877–890. https://doi.org/10.1080/00140139.2017.1420825
  8. Zhuang, M., Yin, M., Liu, Z., Xiao, N., et al. (2026). Acute cognitive effects of interruptions to prolonged sitting with brief standing or physical activity breaks: A systematic review and three-level meta-analysis. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 23, 79. https://doi.org/10.1186/s12966-026-01953-6
  9. Shrestha, N., Kukkonen-Harjula, K. T., Verbeek, J. H., Ijaz, S., Hermans, V., & Pedisic, Z. (2018). Workplace interventions for reducing sitting at work. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2018(6), CD010912. https://doi.org/10.1002/14651858.CD010912.pub4