長時間座って勉強するとき、休憩に体を動かすには?30分〜1時間ごとに数分歩くやり方(座りっぱなしを区切る研究とその限界)

休日に図書館や机で何時間も座って勉強していると、だんだん体が重くなり、頭もぼんやりしてきます。休憩はスマホを見て終わり、という人も多いのではないでしょうか。研究からのおすすめは、30分〜1時間ごとに3〜5分、立って歩く休憩をはさむことです。疲れや眠気は減りやすい一方、頭の働きへの効果は小さく、研究によって結果が分かれています。そのことも含めて、勉強への取り入れ方をまとめます。
3行でわかる
- 座りっぱなしを短い歩行などで区切った21の実験(433人)をまとめると、計画や切り替えに使う頭の働き(g=0.18)と記憶(g=0.37)に小さな改善が見られた。ただし証拠の確かさは「低い」で、注意力の改善は見られなかった。
- 1つひとつの実験では、疲れや眠気が減った、気分がよくなったという結果は比較的そろっている。一方、頭の働きの成績には差が出なかった実験も多い。
- 勉強では、①30分〜1時間ごとに区切る ②立って3〜5分歩く ③画面を見ない ④戻ったら前の内容を思い出してから再開する、の順で取り入れる。
01 悩みの正体長く座って勉強すると、なぜだんだん進まなくなる?
理由は1つではありませんが、同じ姿勢で座り続けると、疲れや眠気を感じやすくなることが実験で確かめられています。休憩の中身を「座ったまま画面を見る」から「立って動く」に変えるのが、すぐできる対策です。
勉強の休憩というと、席に座ったままスマホを見ることが多くなりがちです。これでは、体は何時間も同じ姿勢のままです。
研究では、座ったままの状態が長く続くことを座りっぱなし(長時間の座位)と呼び、それを数分の歩行や立ち上がりで区切る効果が調べられてきました。もともとは健康のための研究ですが、疲れや頭の働きも測られています。
運動そのものと記憶の関係は運動すると記憶や勉強の成果は良くなるのかの記事で扱いました。この記事では、勉強の途中の休憩に、どう体を動かすかに絞ります。
02 科学的にわかっていること座りっぱなしを区切ると、頭の働きは良くなる?
良くなるとしても小さく、確かとは言えません。疲れや眠気が減る効果の方が、比較的はっきりしています。休憩に歩くのは「頭が良くなる方法」ではなく「疲れを軽くして続けやすくする方法」と考えるのが研究に沿っています。
Zhuangら(2026)[1]
座りっぱなしを、立つ・歩くなどの短い動きで区切った21のランダム化クロスオーバー試験(同じ人が両方の条件を試す実験、合計433人)をまとめたメタ分析。座りっぱなしにくらべ、計画や切り替えに使う頭の働き(実行機能)はg=0.18、記憶はg=0.37と小さく改善した。注意力(g=−0.08)や情報処理の速さでは、はっきりした改善は見られなかった。
対象: 年齢や体格のさまざまな人を対象にした21の実験(効果は高齢の人や太りぎみの人で大きい傾向) / 限界: 証拠の確かさはほとんどの項目で「低い」か「とても低い」。何分ごとに何分動くのがよいかを決められるほどの証拠はないと著者ら自身が書いている。
Chuehら(2022)[2]
健康な人を対象にした7つの研究(18〜80歳・168人)を調べたシステマティックレビュー。頭の働きに良い効果が見られたのは7つのうち3つで、たとえば若い成人が30分ごとに3分、やや速く(時速6km)歩いた研究では、注意と衝動を抑える力が良くなった。
対象: 健康な成人 / 限界: 研究の数が少なく、動き方もばらばらで、結果は「さらに確かめる必要がある」と著者らは結論している。
Bergouignanら(2016)[3]
ふだん座っている時間が長い成人30人が、3つの日を体験した。①6時間座りっぱなし ②朝に30分歩いてから座る ③1時間ごとに5分歩く(6回)。②と③はどちらも活力を高めたが、気分がよくなり、夕方の疲れが減ったのは③の日だけだった。注意などの頭の働きの成績は、3つの日で差がなかった。
対象: 25〜50歳の米国の成人30人(平均31歳、太りすぎではない人) / 限界: 気分や疲れは本人の自己評価で、どの条件か本人にわかる実験だった。
Wennbergら(2016)[4]、Vincentら(2018)[5]
30分ごとに3分、ゆっくり歩く日と、座りっぱなしの日をくらべた2つの実験。45〜75歳の19人では、歩いた日の方が4時間後・7時間後の疲れが少なかったが、記憶や実行機能の成績に差はなかった。3晩続けて5時間しか眠らなかった健康な男性6人でも、歩いた日は眠気が少なかったが、頭の働きの成績は変わらなかった。
対象: 太りぎみの成人19人、運動習慣のない男性6人 / 限界: どちらも少人数の実験で、勉強の成果を測ったものではない。
まとめると、短く歩く休憩で疲れや眠気が減ることは複数の実験でそろっていますが、頭の働きや記憶が良くなるかは、まだはっきりしません。どの研究も数時間〜1日の実験室の結果で、何か月も勉強を続けたときの成績を測ったものではありません。
03 今日からできる小さな一歩勉強の休憩に、どう体を動かす?
30分〜1時間ごとに区切りを決め、立って3〜5分歩きます。休憩中は画面を見ず、席に戻ったら直前の内容を何も見ずに思い出してから再開します。
区切りの時間を決める
実験でよく使われていたのは「30分ごと」か「1時間ごと」です。問題を1セット解いたら、1節読んだら、など内容の区切りに合わせてもかまいません。タイマーを使うと忘れません。
所要 1分(決めるだけ)
立ち上がって3〜5分歩く
廊下や部屋の中を歩く、階段を1往復する、飲み物を取りに行くなどで十分です。実験では、ゆっくり歩く程度の軽い動きでも疲れが減っていました。図書館なら、入口まで歩いて戻ります。
所要 3〜5分
休憩中はスマホの画面を見ない
座ってスマホを見ると、体は座りっぱなしのままです。歩きながら、さっき学んだことを頭の中で一言にまとめてみます。スマホの置き場所は勉強中のスマホはどこに置く?の記事が参考になります。
所要 0分
戻ったら、直前の内容を思い出してから再開する
席に戻ったら、休憩前に読んだ内容を何も見ずに2〜3行書き出してから続きを始めます。休憩が、思い出す練習のきっかけになります。思い出す練習の効果は思い出す練習の記事で紹介しています。
所要 2分
1日の終わりに、疲れ具合をメモする
「歩く休憩を入れた日」と「入れなかった日」で、夕方の疲れや勉強の進み具合を1行ずつ書きます。1〜2週間くらべると、自分に合う区切り方がわかります。
所要 1日30秒
勉強の場面ごとの取り入れ方の例です。研究で決まった組み合わせではなく、実験でよく使われていた長さをもとにした目安です。
| 勉強の場面 | 区切り | 休憩の動き |
|---|---|---|
| 家の机で問題演習 | 1セット解くごと(30〜60分) | 部屋の中を歩く、飲み物を取りに行く(3〜5分) |
| 図書館・自習室 | 1時間ごと | 入口や別の階まで歩いて戻る(5分) |
| 講義動画を見る | 動画1本ごと | 立って歩きながら、要点を一言で言ってみる(3分) |
| 寝不足の日 | 30分ごと | 軽く歩く(3分)。ただし長時間の勉強は避けて早く寝る |
04 続けるためのコツ歩く休憩を、勉強の習慣にするには?
休憩を「時間がきたら歩く」と決めておき、勉強の流れに組み込みます。頭が良くなる効果を期待しすぎず、疲れにくくして長く続けるための工夫と考えると続けやすくなります。
- 「タイマーが鳴ったら立つ」「1セット終わったら立つ」のように、合図と行動をセットで決める。
- 休憩の長さは5分以内にとどめる。長くなりすぎると、勉強に戻りにくくなる。
- 25分ごとに休む方法の効果はポモドーロ・テクニックの記事、休憩に外を歩く方法は緑の中を歩く休憩の記事で扱っている。
- 寝不足は歩く休憩では取り戻せない。眠る時間を先に確保する。
この記事は勉強の休憩のとり方についての情報です。持病や痛みがあって体を動かすのが心配なときは、医師に相談してください。
05よくある質問
勉強の休憩に体を動かすと、成績は上がりますか?
上がるとまでは言えません。21の実験(433人)をまとめたZhuangら(2026)では、座りっぱなしを区切ると、計画や切り替えに使う頭の働き(g=0.18)と記憶(g=0.37)に小さな改善が見られましたが、証拠の確かさは「低い」と評価されています。注意力の改善は見られませんでした。
何分ごとに、何分くらい動けばいいですか?
研究で決まった正解はありません。実験では「30分ごとに3分歩く」「1時間ごとに5分歩く」といった形がよく使われています。勉強なら、区切りのよいところで30分〜1時間ごとに3〜5分歩くのが取り入れやすい目安です。
朝にまとめて運動すれば、日中は座りっぱなしでもいいですか?
気分や疲れの面では、こまめに動く方がよい可能性があります。30人の実験(Bergouignanら、2016)では、朝の30分の歩行も、1時間ごとの5分の歩行も活力を高めましたが、気分の改善と夕方の疲れの軽減が見られたのは1時間ごとに歩いた日だけでした。頭の働きの成績には、どちらも差がありませんでした。
寝不足の日も、休憩に歩いた方がいいですか?
眠気をやわらげる助けにはなるかもしれませんが、寝不足による頭の働きの低下は戻りませんでした。健康な男性6人が3晩続けて5時間しか眠らなかった実験(Vincentら、2018)では、30分ごとに3分歩いた日は眠気が少なかったものの、頭の働きの成績は座りっぱなしの日と変わりませんでした。
出典
- Zhuang, M., Yin, M., Liu, Z., Xiao, N., Yi, Q., Fan, Z., ... Shi, D. (2026). Acute cognitive effects of interruptions to prolonged sitting with brief standing or physical activity breaks: A systematic review and three-level meta-analysis. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 23, 79. https://doi.org/10.1186/s12966-026-01953-6
- Chueh, T.-Y., Chen, Y.-C., & Hung, T.-M. (2022). Acute effect of breaking up prolonged sitting on cognition: A systematic review. BMJ Open, 12(3), e050458. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2021-050458
- Bergouignan, A., Legget, K. T., De Jong, N., Kealey, E., Nikolovski, J., Groppel, J. L., ... Bessesen, D. H. (2016). Effect of frequent interruptions of prolonged sitting on self-perceived levels of energy, mood, food cravings and cognitive function. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 13, 113. https://doi.org/10.1186/s12966-016-0437-z
- Wennberg, P., Boraxbekk, C.-J., Wheeler, M., Howard, B., Dempsey, P. C., Lambert, G., ... Dunstan, D. W. (2016). Acute effects of breaking up prolonged sitting on fatigue and cognition: A pilot study. BMJ Open, 6(2), e009630. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2015-009630
- Vincent, G. E., Jay, S. M., Sargent, C., Kovac, K., Vandelanotte, C., Ridgers, N. D., & Ferguson, S. A. (2018). The impact of breaking up prolonged sitting on glucose metabolism and cognitive function when sleep is restricted. Neurobiology of Sleep and Circadian Rhythms, 4, 17–23. https://doi.org/10.1016/j.nbscr.2017.09.001


