記憶・覚え方

「英語は歌にして覚えると身につく」は本当?フレーズを歌って覚える研究(効く・効かないの判定)

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手に持って開いた歌の本
Photo: Øyvind Holmstad / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

子どものころに歌で覚えたアルファベットや九九は、今でもすらすら出てきます。だから英語のフレーズも、歌にすれば覚えられるのでは。そう考えて歌を使った勉強を試す人は多いはずです。研究を調べた結論は「条件しだい」でした。短いフレーズを一字一句言えるようにするには助けになった実験があります。一方で、歌詞を歌って思い出すと、話すより思い出せた語が少なかった実験もありました。

3行でわかる

  1. 判定:「条件しだい」。短いフレーズを、そのまま言えるように覚えるときは助けになりうる。長い文章や中身の理解には、歌が有利とは言えない。
  2. 大人60人の実験では、知らない言語(ハンガリー語)の短いフレーズを歌って練習した人が、話して練習した人よりも正確に言えた。
  3. 37の研究のまとめでは、28件が記憶のどこかに良い効果を報告し、9件は効果なし。歌と話し声の速さをそろえると、効果が逆転した研究もあった。

この記事の判定

条件しだい

短いフレーズの丸暗記には助けになりうる。長い文や意味の理解は別の方法で

  • 知らない言語の短いフレーズ:歌った人の方が言えた(大人60人、15分の練習)[2]
  • 知らない歌の歌詞:歌って答えると、話して答えるより思い出せた語が少なかった(大学生36人)[3]
  • 文章の中身:歌を聞くより読んだ方が思い出せた(高校生108人)[4]
  • 37の研究のまとめ:28件で何らかの良い効果、9件で効果なし[1]

01 通説の中身なぜ「歌にすると覚えられる」と言われる?

歌は同じメロディとリズムがくり返され、言葉をまとまりで区切ってくれるからです。アルファベットの歌のように、教育の場でも昔から使われてきました。

歌で覚える方法は、研究では「音楽を使った記憶術」と呼ばれます。メロディやリズムが言葉を区切ってまとまりにし、頭の中で自然にくり返しやすくなる、と考えられています[1]。

一方で、歌うときは言葉とメロディの両方を思い出す必要があります。覚えはじめのうちは、2つのことを同時にする負担になる、という見方もあります[3]。どちらの面が強く出るかは、何をどう覚えるかで変わります。

02 科学的にわかっていること歌って覚えると、本当に覚えやすい?

短いフレーズを一字一句そのまま言う力には、歌が役立った実験があります。しかし歌詞や文章の中身を思い出す実験では、歌が有利にならないか、むしろ不利な結果も出ています。

Ludkeら(2014)[2]

大人60人を、くじで3つに分けた。知らない言語であるハンガリー語の短いフレーズを、聞いてからまねて「話す」「リズムをつけて話す」「歌う」のどれかで15分間練習した。歌ったグループは、テスト全体で最も成績が良かった。とくに、ハンガリー語のフレーズを思い出して声に出す2つのテストで、差がはっきりした。年齢・性別・気分・音を覚えておく力・音楽の能力や経験では、この差は説明できなかった。

対象: 大人60人 / 限界: 15分の練習の直後と、20分後までの結果。覚えたのは決まったフレーズの言い方で、そのフレーズを使って話せるようになるかは調べていない。

RacetteとPeretz(2007)[3]

大学生36人(半分は音楽をしている人)が、知らない歌(フランス語の民謡)の歌詞を覚えた。歌って答えると決めた条件のほうが、話して答える条件より思い出せた語が少なかった。歌で聞いたか、話し声で聞いたかは、直後にも時間がたってからも、思い出せる語の数に影響しなかった。音楽の経験も、ほとんど関係しなかった。

対象: 大学生36人 / 限界: 外国語の学習として行われた実験ではない。著者らは、歌詞とメロディは別々に記憶され、覚えはじめは歌うことが2つの作業を同時にする負担になると考えている。

LehmannとSeufert(2017)[4]

ドイツの高校に通う12〜19歳の生徒108人が、ヘンリー8世についての約200語の文章(韻をふんだ詩の形)を「歌で聞く」「話し声で聞く」「紙で読む」のどれかで学んだ。内容を思い出すテストでは、読んだ人が最も良く、歌で聞いた人との差は効果量0.78だった。歌で聞くのと話し声で聞くのとの差は、はっきりしなかった。一方、内容の理解のテストでは、歌で聞いた人が読んだ人より良かった(効果量0.40)。

対象: ドイツの中高生108人 / 限界: 1回の学習で、文章はドイツ語。テスト中にメロディを流すと、理解の成績が下がった。

Derks-Dijkmanら(2024)[1]

1970〜2022年に発表された、歌で覚える方法の研究37件をまとめたシステマティックレビュー。記憶のどこかに良い効果を報告したのは28件、効果がなかったのは9件。記憶に問題のない大人では、知っているメロディを使うほうが良い傾向があり、音楽の経験による上乗せはおおむねなかった。同じ簡単なメロディをくり返し聞いたときに歌が役立った研究がある一方、歌と話し声の速さ(提示の速さ)をそろえると効果が逆転した研究もあった。

限界: 研究ごとに覚える内容も方法もばらばらで、著者ら自身が「結果は混ざっており、慎重に解釈する必要がある」としている。数字をまとめたメタ分析ではない。

ここで見た実験は、どれも1回か数十分の練習です。英語を何か月も歌で勉強して、話す力や試験の点数が伸びたかを確かめた研究ではありません。独学で使うなら、覚えたいフレーズを決めて試す、くらいの位置づけが安全です。

03 今日からできる小さな一歩歌を使って英語のフレーズを覚えるには?

歌にするのは短い決まり文句だけにし、知っている簡単なメロディに乗せます。聞くだけでなく自分で歌い、最後は歌わずに言えるかを確かめます。長い文章は読む勉強に回します。

1

歌にするフレーズを3つだけ選ぶ

「Could you say that again?」のような、そのまま使う短い決まり文句を選びます。効果が出たのは、短いフレーズを一字一句言う力でした[2]。

所要 3分

2

知っている簡単なメロディに乗せる

童謡など、すでに知っている単純な曲を使います。知っているメロディのほうが良い傾向があり、同じ簡単なメロディのくり返しで歌が役立った研究もあります[1]。

所要 5分

3

聞くだけでなく、声に出して歌う

実験で効果が出たのは、聞いてからまねて歌う練習でした[2]。1つのフレーズを、聞く→歌う、で5回ほどくり返します。

所要 5分

4

翌日、歌わずに言えるか確かめる

歌うと思い出せる語が減った実験もあります[3]。翌日、日本語の意味を見て、メロディなしで英語のフレーズを言ってみます。言えなかったものだけ、もう一度歌います。

所要 3分

04 続けるためのコツ歌の勉強だけで、英語は身につく?

歌は、短いフレーズを言いやすくする補助と考えます。単語や文の意味を覚える中心は、思い出す練習と、間をあけた復習に置くほうが研究の裏づけがあります。

  • 単語は思い出す練習で。英単語の覚え方の基本は英単語の覚え方の記事にまとめています。
  • 声に出すだけでも記憶に残りやすい。歌わなくても、音読で覚えやすくなる研究は音読効果の記事にあります。
  • 勉強中のBGMとは別の話。覚えたい内容を歌にする方法と、勉強中に歌詞のある曲を流すことは違います。BGMの研究は勉強中の音楽の記事で扱っています。
  • 言えたフレーズを記録する。英語の話す練習の記録表に、歌わずに言えたフレーズを書いていきます。

05よくある質問

英語のフレーズは、歌にすると覚えやすいですか?

短いフレーズを、そのまま言えるように覚えるときには助けになる可能性があります。大人60人の実験では、知らない言語の短いフレーズを、歌って練習した人が、話して練習した人より正確に言えました。ただし15分の練習の直後と短い時間あとの結果です。

好きな洋楽を聞いていれば、英語が覚えられますか?

この記事で見た研究は、覚えたいフレーズを歌にして練習したもので、好きな曲を聞き流す効果は調べていません。歌詞を覚えた実験でも、歌って答えたほうが思い出せた語が少なかったという結果があります。聞くだけでは足りないと考えた方が安全です。

歌って覚えるのと、声に出して読むのはどちらがいいですか?

目的で分けます。短い決まり文句を一字一句言えるようにしたいなら、歌って練習する方法を試す価値があります。長い文章の中身を覚えるなら、高校生108人の実験では、歌を聞くより文章を読んだほうが内容をよく思い出せました。

音楽が苦手でも効果はありますか?

この記事で見た研究では、音楽の経験は大きく関係していませんでした。60人の実験では、音楽の能力や練習歴で結果の差は説明できませんでした。37の研究のまとめでも、記憶に問題のない人では、音楽の経験による上乗せはおおむね見られませんでした。

出典

  1. Derks-Dijkman, M. W., Schaefer, R. S., & Kessels, R. P. C. (2024). Musical mnemonics in cognitively unimpaired individuals and individuals with Alzheimer's dementia: A systematic review. Neuropsychology Review, 34(2), 455–477. https://doi.org/10.1007/s11065-023-09585-4
  2. Ludke, K. M., Ferreira, F., & Overy, K. (2014). Singing can facilitate foreign language learning. Memory & Cognition, 42(1), 41–52. https://doi.org/10.3758/s13421-013-0342-5
  3. Racette, A., & Peretz, I. (2007). Learning lyrics: To sing or not to sing? Memory & Cognition, 35(2), 242–253. https://doi.org/10.3758/bf03193445
  4. Lehmann, J. A. M., & Seufert, T. (2017). Can music foster learning – Effects of different text modalities on learning and information retrieval. Frontiers in Psychology, 8, 2305. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.02305