勉強法

読んでも頭に入らない人の「自己説明カード」と記録表。1段落ごとに自分に問いかける5つの質問(自己説明の研究から)

約7分で読めます

ノートに手書きしたメモとペン
Photo: Tookapic / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

教科書を最後まで読んだのに、閉じると何が書いてあったか言えない。そんなとき、もう一度最初から読み直したくなります。研究では、読みながら「この段落は何を言っているか」「前とどうつながるか」を自分に説明すると、ただ読むより理解が深まりやすいことがわかっています。ただし時間がかかるので、全部の段落ではなく難しい段落で使うのが現実的です。この記事では、その「自己説明」の研究から、段落ごとに使う問いかけカードと記録表を作りました。

3行でわかる

  1. 自己説明をうながした研究をまとめた分析では、効果は中くらい(g = 0.55、64本の報告・5917人)。用意された説明を読む場合と比べても上回った(g = 0.35)。
  2. ただし時間がかかる。同じ時間で問題を多く解いた子どもと比べると、差は小さく、一部の項目にしか出なかった。
  3. 表1の5つの問いを難しい段落で1つずつ使い、表2に「説明できなかった段落」を記録して、読み直す場所を決める。

01 このカードでできること自己説明とは、何をすること?

自己説明は、読んだ内容を自分に向けて自分の言葉で説明することです。読み直しと違い、「何を言っているか」「なぜそうなるか」を自分で作り出すので、わかっていない所が見えます。

文字を目で追っていると、読めた感じはあっても、内容は頭に残りにくいものです。自己説明では、段落を読み終えるたびに手を止め、「今の段落は要するに何か」「前に読んだこととどうつながるか」を自分に説明します。説明できなかった段落が、読み直すべき場所です。

このカードは、その問いかけを5つに絞り、毎回同じ形で使えるようにしたものです。自己説明そのものが効くかどうかの判定は 自己説明とAIの説明をくらべた記事 に、「なぜ?」と問う読み方は 精緻化質問の記事 にまとめています。

02 カードの根拠になった研究自分に説明しながら読むと、理解は深まる?

多くの研究をまとめた分析で、中くらいの効果がありました。ただし時間がかかり、同じ時間をほかの練習に使った場合と比べると、差は小さくなりました。

Bisraら(2018)[1]

学習者に自己説明をうながした研究の69の効果量(64本の報告、5917人)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。全体の効果は g = 0.55 で中くらい。説明を受けないグループと比べると g = 0.67、用意された説明を読んだグループと比べても g = 0.35 で、自分で説明した方が上だった。

対象: さまざまな年齢・科目の研究 / 限界: 「用意された説明」との比較は6つの効果量(573人)と少ない。自己説明の方が学習時間の長い研究もあり、時間の差が効果に混ざっている可能性がある。

Chiら(1994)[2]

血液循環の文章を読むとき、1行ごとに「自分に説明して」と頼まれた中学2年生14人は、同じ文章を2回読んだ10人より、読む前から読んだ後への伸びが大きかった。たくさん説明した生徒ほど、深い理解を問う問題に答えられた。

対象: 中学2年生24人 / 限界: 人数が少なく、社会人の独学にそのまま当てはまるかはわからない。

DonoghueとHattie(2021)[3]

よく使われる10の勉強法の研究を、242本の研究でまとめ直したメタ分析。自己説明の効果は d = 0.54 だった。学校段階別では、小学生 0.28、中高生 0.57、大学生 0.60 だった。

対象: 10の勉強法についての242本の研究 / 限界: 研究の多くは事実を覚えているかを問うテストで、著者らは深い理解に当てはめるときは注意が必要としている。

McEldoonら(2013)[4]

「3 + 4 + 8 = _ + 8」のような算数の問題で、自己説明をする組・同じ時間で問題を多く解く組・同じ数の問題だけ解く組に、くじで分けた。同じ数の問題だけ解いた組と比べると、自己説明は考え方と解き方の両方を伸ばした。しかし、問題を多く解いた組と比べると差は小さく、一部の項目にしか出なかった。

対象: 小学2〜4年生69人 / 限界: 著者らは、自己説明には小さな独自の効果があるが、ほかの時間の使い方とくらべてどれだけ得かに、もっと注意が必要だと結論している。

Dunloskyら(2013)[5]

10の勉強法を評価した大規模なレビューで、自己説明は「中程度に有用」とされた。高い評価にならなかった理由は、効果の証拠がまだ限られ、実際の学校の場面で十分に確かめられていないためだった。要約・線引き・読み直しは「有用性が低い」とされた。

対象: 既存研究のレビュー / 限界: レビュー自体は新しい実験ではない。

これらは主に子どもや大学生の、短い時間の実験の結果です。社会人が何か月も一人で教科書を読む場合に同じ大きさの効果が出るかは、確かめられていません。

03 カードと記録表の使い方どの段落で、何を自分に問えばいい?

読み慣れない段落や、理由が書いてある段落で手を止め、表1の問いを1つ選んで自分に説明します。説明できなかった段落の番号を表2に書き、翌日はそこだけ読み直します。

表1 自己説明カード(5つの問いかけ)

問いかけ何をするか答え方の例(「需要と供給」の段落)
1. 要するに何?段落の中心を1文で言う値段が上がると、買う量は減り、売りたい量は増える
2. 前とどうつながる?前の段落・前の章との関係を言う前の章の「需要曲線」に、売る側の線が加わった
3. なぜそうなる?書いてある理由を自分の言葉で言う。無ければ「理由が無い」と気づく高く売れるなら、作る側はもっと作りたくなるから
4. 例に当てはめると?身近な例や数字に置きかえる野菜が高い年は、買う量を減らす人が多い
5. どこがわからない?説明できない言葉・納得できない所を書き出す「均衡価格」がなぜ1つに決まるのか、まだ言えない

5つの問いは、研究で使われた「この段落は何を言っているか」「前とどうつながるか」といった問いかけを参考に、このサイトが整理したものです。どの問いが最も効くかを比べた研究は、ここで紹介したものにはありません。

表2 記録表(1回の勉強で1行)

日付章・ページ止まった段落の数説明できなかった段落翌日、何も見ずに言えた要点
10/213章 p.40〜486p.43 2段落目、p.46 1段落目4つ中3つ
     つ中 つ
     つ中 つ

表3 使い分け表(時間をどこに使うか)

場面このカードの使い方
初めて読む説明文、理由やしくみが書いてある所使う。段落ごとに問い1〜3
例題の解き方を読むとき使う。各ステップで問い3(なぜこの式か)
すでにわかっている所、読み流してよい所使わない。時間をほかの練習に回す
用語や単語をそのまま覚える所カードより、何も見ずに思い出す練習を優先する
1

読む前に、今日読む範囲を2〜3ページに区切る

表2に章とページを書きます。区切ることで、どの段落で止まるかを決めやすくなります。

所要 1分

2

難しい段落で止まり、表1の問いを1つ使う

まず問い1(要するに何?)を試し、言えたら問い2か3に進みます。心の中で言っても、余白に一言書いてもかまいません。

所要 1段落1〜2分

3

言えなかった段落の番号を表2に書く

問い5で出た「わからない所」も一言添えます。その場で何度も読み返さず、先に進んでかまいません。

所要 30秒

4

翌日、何も見ずに要点を言ってから、書いた段落だけ読み直す

言えた要点の数を表2の右の列に書きます。読み直しは、昨日説明できなかった段落に絞ります。

所要 10分

04 続けるためのコツ時間がかかって進まないときは?

全部の段落でやる必要はありません。研究でも、時間をほかの練習に使った場合との差は小さめでした。難しい段落だけに絞り、わかっている所は速く読みます。

  • 自己説明は時間がかかるので、同じ時間で問題を多く解く場合と比べた実験では差が小さくなりました[4]。表3で「使わない」場面を決めておくと、読むのが遅くなりすぎません。
  • 説明できなかった段落は、失敗ではなく「読み直す場所の印」です。表2に番号が残るので、翌日の読み直しが短くすみます。
  • 自分の説明が合っているかは、教科書の該当ページで確かめます。AIに説明を聞かせて抜けを探す方法は AIに自分の説明を聞かせる記事 にまとめています。
  • 読んでいるうちに字を追うだけになったときの立て直し方は、読書中の「心ここにあらず」の記事 に、理解度の見積もりの確かめ方は 理解度チェック表 にあります。

05よくある質問

自己説明と要約は、何が違うのですか?

要約は文章を短くまとめることで、自己説明は「なぜそうなるか」「前とどうつながるか」を自分に説明することです。10の勉強法を評価したレビューでは、自己説明は「中程度に有用」、要約は「有用性が低い」とされました。

全部の段落でやると時間が足りません。どうすればいいですか?

難しい段落だけで十分です。自己説明は時間がかかり、同じ時間で問題を多く解く場合と比べると差は小さめでした。わかっている段落は普通に読み、理由やしくみが書いてある段落で止まってください。

声に出して説明しないと効果はありませんか?

このカードでは、心の中で言っても、余白に一言書いてもよいとしています。声に出す場合と出さない場合を比べた研究は、ここで紹介したものにはありません。続けやすい方を選んでください。

出典

  1. Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018). Inducing self-explanation: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30(3), 703–725. https://doi.org/10.1007/s10648-018-9434-x
  2. Chi, M. T. H., De Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477. https://doi.org/10.1207/s15516709cog1803_3
  3. Donoghue, G. M., & Hattie, J. A. C. (2021). A meta-analysis of ten learning techniques. Frontiers in Education, 6, 581216. https://doi.org/10.3389/feduc.2021.581216
  4. McEldoon, K. L., Durkin, K. L., & Rittle-Johnson, B. (2013). Is self-explanation worth the time? A comparison to additional practice. British Journal of Educational Psychology, 83(4), 615–632. https://doi.org/10.1111/j.2044-8279.2012.02083.x
  5. Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266