AIに説明させるより、自分で説明した方が覚えられるのか。自己説明と生成効果の研究

AIの説明はわかりやすい。読んでいると、自分も理解できた気がしてきます。研究からいえるのは、上手な説明を読むより、自分の言葉で説明してみる方が学びは大きくなりやすい、ということです。AIは「説明する係」より「あなたの説明を確かめる係」にすると、この効果を活かせます。
3行でわかる
- 学びながら自分に説明する「自己説明」は、69の効果量・5917人をまとめたメタ分析で、はっきりした効果がありました(g = 0.55)。
- 用意された説明を読んだグループと比べても、自分で説明したグループの方が上回りました(g = 0.35)。
- AIには先に説明させず、自分の説明を書いてから「間違いや抜けを指摘して」と頼むのが、研究に沿った使い方です。
01「読んでわかった」と「説明できる」は別もの
わかりやすい説明を読むと、理解した感覚は生まれます。でも、その説明を自分で組み立てる作業は、AIが代わりにやっています。
ここで出てくるのが「自己説明」という考え方です。読んだ内容について、「なぜそうなるのか」「前に習ったこととどうつながるのか」を、自分に向けて言葉にすることを指します。
似た研究に「生成効果」があります。答えを見て読むより、自分で答えを作り出した方が覚えている、という現象です。どちらも「自分で作る」ことが鍵になっています。読んだだけで覚えたつもりになる仕組みは、「わかったつもり」の記事でも紹介しています。
02科学的にわかっていること
自分で説明する・自分で答えを作ると、読むだけより覚えやすいことが、複数のメタ分析で確かめられています。用意された説明と比べても、自己説明の方が上回りました。
Bisraら(2018)[1]
自己説明をうながした研究の69の効果量(64本の報告、5917人)をまとめると、効果はg = 0.55でした。説明をとくに受けないグループと比べるとg = 0.67、自己説明の代わりに用意された説明を読んだグループと比べてもg = 0.35で、自分で説明した方が上回りました。
対象: さまざまな年齢・科目の研究 / 限界: 「用意された説明」との比較は6つの効果量(573人)と少なめです。多くの研究は学習時間を報告しておらず、自己説明の方が時間がかかった可能性もあります。
Chiら(1994)[2]
血液循環の文章を読むとき、1行ごとに「自分に説明して」と頼まれた中学2年生14人は、同じ文章を2回読んだ10人より、読む前から読んだ後への伸びが大きくなりました。たくさん説明した生徒ほど、深い理解を問う問題に答えられました。
対象: 中学2年生24人 / 限界: 人数が少なく、社会人の独学にそのまま当てはまるかはわかりません。
Chiら(1989)[3]
物理(力学)の例題を学ぶとき、よくできる学生は解き方の理由を自分にたくさん説明し、自分がどこをわかっていないかも正確に把握していました。説明が少ない学生は、問題を解くときに例題に頼りがちでした。
対象: 力学の例題を学ぶ学生(考えを声に出してもらった記録を分析) / 限界: 説明を「させた」実験ではなく、もともとの差を観察した研究です。
Slamecka & Graf(1978)[4]、Bertschら(2007)[5]
「速い―は○○(同じ意味の言葉)」のように自分で単語を作った方が、完成した単語のペアを読んだときより覚えていました(5つの実験すべて)。その後の86研究・445の効果量をまとめたメタ分析でも、効果はおよそ0.40(標準偏差の半分弱)でした。
対象: 主に単語を使った記憶の実験 / 限界: 効果の大きさは条件によってかなりばらつきます。
どの研究も、AIに説明させる場合と直接比べたものではありません。「用意された説明を読む」の代わりに「AIの説明を読む」を当てはめるのは、この記事の解釈です。また、実験の多くは短時間の課題で、何か月も続く独学で同じ大きさの効果が出るとは限りません。
03今日からできる小さな一歩
先に自分で説明を書き、そのあとでAIに確かめてもらう。順番を入れ替えるだけで、説明を作る作業を自分の手元に残せます。
AIに聞く前に、3行で自分の説明を書く
「これは何か」「なぜそうなるのか」「前に習ったこととどうつながるか」を1行ずつ。うまく書けなくて大丈夫です。
所要 5分
AIには「説明して」ではなく「確かめて」と頼む
例:「次は私の説明です。正しい答えは言わずに、間違いと抜けている点だけ指摘してください」。
所要 2分
指摘をもとに、自分で書き直す
AIの文章をコピーせず、自分の言葉で直します。翌日、何も見ずにもう一度説明できるか試します。
所要 5分
04続けるためのコツ
完璧な説明を目指さず、毎回「1つだけ自分で説明する」と決めます。説明に詰まった場所こそ、次に学ぶべき場所です。
- 説明を書く問いは「なぜ?」「前とどう違う?」の2つに固定すると迷わない
- 選択肢から選ぶ形の問いは、メタ分析で効果がはっきりしなかった(研究は2件だけ)ので、白紙から書く形にする
- 翌日の「何も見ずに説明」は、思い出す練習も兼ねる
05よくある質問
AIに説明してもらうと、勉強は身につかないの?
身につかないわけではありません。Bisraらのメタ分析でも、用意された説明を読むことにも一定の効果がありました。ただ、自分で説明した方が上回りました(g = 0.35)。AIの説明を読むなら、そのあと自分の言葉で説明し直す時間をセットにしましょう。
自分の説明が間違っていたら、かえって間違えて覚えない?
その心配はあります。だからこそ、書いた説明をAIや教科書で確かめる手順が大切です。Chiらの研究でも、説明の多い学生は「自分がどこをわかっていないか」に気づいていました。
自己説明と、人に教えるつもりで学ぶのは同じ?
どちらも「自分で説明を組み立てる」点は共通しています。ただ、この記事で紹介した研究は、自分に向けて説明する方法を調べたものです。AIに答えを聞く使い方全体についてはAIに答えを聞くと勉強は身につかないのかで紹介しています。
勉強法の早見表で「自分の言葉で説明する(AIの説明を読むより)」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018). Inducing Self-Explanation: a Meta-Analysis. Educational Psychology Review, 30(3), 703–725. https://doi.org/10.1007/s10648-018-9434-x
- Chi, M. T. H., De Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting Self-Explanations Improves Understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477. https://doi.org/10.1207/s15516709cog1803_3
- Chi, M. T. H., Bassok, M., Lewis, M. W., Reimann, P., & Glaser, R. (1989). Self-Explanations: How Students Study and Use Examples in Learning to Solve Problems. Cognitive Science, 13(2), 145–182. https://doi.org/10.1207/s15516709cog1302_1
- Slamecka, N. J., & Graf, P. (1978). The generation effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 4(6), 592–604. https://doi.org/10.1037/0278-7393.4.6.592
- Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A. (2007). The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35(2), 201–210. https://doi.org/10.3758/BF03193441


