勉強法

人に効いた勉強法が自分には合わないのはなぜ?予備知識しだいで効き方が逆になる「熟達化逆転効果」の研究

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森の中に続く木の階段
Photo: Basile Morin / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

合格した人のおすすめ勉強法をまねたのに、さっぱり進まない。逆に、初心者向けの丁寧な参考書が、少し慣れた今はまどろっこしい。それはあなたの努力不足ではありません。研究では、同じ教え方や勉強法でも、その分野の予備知識が少ない人と多い人とで、効き方が逆になることがあるとわかっています。

3行でわかる

  1. 初心者を助ける丁寧な解説や手順が、その分野に慣れた人には逆に学びを妨げることがある。これを熟達化逆転効果と呼ぶ。
  2. 大学生104人の実験では、補足の説明文は初心者の成績を上げ、慣れた人では結果が逆になった。小学生やバスケットボール選手の実験でも同じ向きの結果が出ている。
  3. 合う勉強法を決めるのは「視覚型」などの好みではなく、その分野の予備知識。自分の段階を確かめてから選び、慣れたら手順を変える。

01 悩みの正体評判の勉強法が自分に合わないのはなぜ?

勉強法の効き方は、その分野の予備知識の量で変わります。初心者に効く丁寧なやり方が慣れた人には遠回りになり、慣れた人に効くやり方は初心者には難しすぎることがあります。

私たちが一度に頭の中で扱える情報は多くありません。この作業場所を「作業記憶」と呼びます。

初心者は、新しい用語や手順を一つずつ作業記憶で処理するしかありません。そこで、くわしい解説や例題が足場になります。

一方、その分野に慣れた人は、知識のまとまりを長期の記憶に持っています。すでに知っていることを丁寧に説明されると、知っている内容と説明文を照らし合わせる手間が増えます。そのぶん、作業記憶を余計に使ってしまうと考えられています。

認知負荷理論(頭の負担の大きさから教え方を考える理論)では、この現象を「熟達化逆転効果」と呼びます。2025年の総説も、教え方の効き目はその分野での学習者の熟達度で変わる、という効果として説明しています[7]。

02 科学的にわかっていること予備知識で、勉強法の効き方は本当に逆になる?

逆になることがあります。大学生・小学生・スポーツ選手の実験で、初心者に効いたやり方が、慣れた人では効かないか逆効果になりました。ただし、いつも逆転するとは限りません。

ReyとBuchwald(2011)[1]

学生104人が、数学の最適化の手法をアニメーションで約30分学んだ。アニメーションを説明する文章を足すと、初心者は記憶と応用のテストの成績が上がった。しかし事前に教材で学んで慣れた人では、結果が逆になった。この差は、やる気の違いより頭の負担の違いで説明できた。

対象: その内容を学んだ経験のない学生104人(慣れた人は、実験の中で事前に学んでもらって作った) / 限界: 短時間の実験室の課題。何か月も続く独学とは条件が違う。

LeahyとSweller(2005)[2]

小学生がバスの時刻表の読み方を学んだ。まだ慣れていない段階では、手順を目で見て学ぶ方が、頭の中で手順を思い浮かべる練習より成績がよかった。経験を積むと結果が逆転し、思い浮かべる練習の方がよくなった。2つ目の実験(気温のグラフ)でも同じ結果が出た。

対象: 小学生(2つの実験) / 限界: 逆転は、複雑な教材のときに出やすかった。簡単な内容では差が出にくい。

Khacharemら(2020)[3]

バスケットボールの戦術を、映像と音声の説明で学んだ。クラブでチーム競技をした経験のない大学生20人は、映像と説明を同時に見る形が最も合っていた。平均12年あまりの競技歴がある選手20人には、短く区切った映像と説明を交互に見る形の方が合っていた。

対象: 初心者20人、フランスのプロリーグ(3部)の選手20人 / 限界: 教材を1回見ただけの短い学習。著者らも、くり返し学ぶ場面での再現が必要としている。

Gorbunovaら(2025)[4]

反対の結果もある。大学院生136人が、問題を解く前に用語集と概念図で予習した。予備知識の多い人にとっても、予習は余計な負担を減らしていた。予備知識が多い人には予習がむだになる、という予想は支持されなかった。

対象: ロシアの大学の大学院生136人 / 限界: 予習なしのグループとの比較ではない。負担は本人の自己評価で測った。

教える側が手順を決める形と、学ぶ人が自分で進め方を決める形を比べた2021年の総説は、研究の結果はまちまちだとしています[5]。そのうえで、初心者は教える側が組んだ形で、慣れた人は自分で管理する形で学びやすい、と熟達化逆転効果から予測しています[5]。予測であって、確かめる研究はまだ必要とされています。

「視覚型・聴覚型」とは別の話です。好みに合わせて教え方を変えると成績が上がるという学習スタイル説は、2008年の総説で、検証に耐える証拠がほとんど見つからなかったとされました[6]。熟達化逆転効果で効き方を分けるのは好みではなく、その分野の予備知識の量です。くわしくは学習スタイル説の記事へ。

03 今日からできる小さな一歩自分に合う勉強法は、どう見分ける?

まず、何も見ずにどこまで解けるかで自分の段階を確かめます。解けないうちは解説や例題が多いやり方、解けるようになったら問題演習や自分で説明するやり方へ移ります。

1

何も見ずに3問解いて、段階を確かめる

今の単元の問題を3問、解説を見ずに解きます。手がつかないなら初心者の段階、2問以上解けるなら慣れてきた段階の目安にします。

所要 10分

2

初心者の段階では、例題と解説を先に読む

いきなり問題集を解くより、解き方の示された例題を読んでから似た問題を解きます。例題の使い方は例題学習の記事にまとめています。

所要 1単元20分

3

解けてきたら、解説を減らして問題に移る

わかっている部分の解説を読み直すのはやめ、問題演習や、何も見ずに手順を説明する練習に切り替えます。分野や単元が変わったら、手順1からやり直します。

所要 単元ごとに5分の見直し

04 続けるためのコツ人のおすすめ勉強法は、どう取り入れる?

おすすめした人がその分野でどの段階にいたかを確かめてから取り入れます。合格者のやり方は、合格者の段階に合わせたやり方かもしれません。

  • 「上級者の方法」をそのまままねない。過去問だけで合格した人は、すでに基礎の知識を持っていた可能性があります。
  • 参考書がまどろっこしく感じたら、段階が上がった合図。読み飛ばしてよい部分が増えたら、問題演習の割合を増やします。
  • 得意な分野と苦手な分野で、やり方を変えてよい。熟達度は人ではなく分野ごとに違います。
  • 勉強法そのものの選び方は、目的から決める。手順は勉強法の選び方の記事へ。新しいやり方の手応えがないときはこちらの記事も参考にしてください。

ここで紹介した研究は、どれも数十分から数時間の短い学習を調べたものです。何か月も続く資格の独学で、どの時点でやり方を切り替えるのが最もよいかは、まだわかっていません。

05よくある質問

勉強法に向き・不向きはある?

あります。ただし決めるのは「視覚型」などの好みではなく、その分野の予備知識の量です。初心者に効く丁寧な解説や例題が、慣れた人には遠回りになることが実験で示されています。好みに合わせる学習スタイル説には、検証に耐える証拠がほとんどありません。

初心者向けの参考書と上級者向けの問題集、どちらから始めるべき?

その分野が初めてなら、解説や例題の多い教材から始めるのが研究の結果に合っています。何も見ずに問題が解けるようになってきたら、解説を減らして問題演習の割合を増やします。

合格者の勉強法をまねてもうまくいかないのはなぜ?

合格者は、その方法を使ったときにすでに一定の知識を持っていた可能性があります。研究では、慣れた人に合うやり方は初心者には難しすぎることがあると示されています。まねる前に、自分がその分野のどの段階にいるかを確かめます。

出典

  1. Rey, G. D., & Buchwald, F. (2011). The expertise reversal effect: Cognitive load and motivational explanations. Journal of Experimental Psychology: Applied, 17(1), 33–48. https://doi.org/10.1037/a0022243
  2. Leahy, W., & Sweller, J. (2005). Interactions among the imagination, expertise reversal, and element interactivity effects. Journal of Experimental Psychology: Applied, 11(4), 266–276. https://doi.org/10.1037/1076-898X.11.4.266
  3. Khacharem, A., Trabelsi, K., Engel, F. A., Sperlich, B., & Kalyuga, S. (2020). The effects of temporal contiguity and expertise on acquisition of tactical movements. Frontiers in Psychology, 11, 413. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.00413
  4. Gorbunova, A., Kapuza, A., Chen, O., & Costley, J. (2025). Rethinking pre-training: Cognitive load implications for learners with varying prior knowledge. Frontiers in Psychology, 16, 1628047. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1628047
  5. Castro-Alonso, J. C., de Koning, B. B., Fiorella, L., & Paas, F. (2021). Five strategies for optimizing instructional materials: Instructor- and learner-managed cognitive load. Educational Psychology Review, 33(4), 1379–1407. https://doi.org/10.1007/s10648-021-09606-9
  6. Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x
  7. Kalyuga, S. (2025). Human cognitive architecture as an intelligent natural information processing system. Behavioral Sciences, 15(3), 332. https://doi.org/10.3390/bs15030332