AIに自分の説明を聞かせて、抜けや誤りを見つけるには?説明して学ぶ研究からわかったやり方

教科書を読んで「わかった」と思ったのに、問題になると手が止まる。そんなとき、誰かに説明してみると自分の抜けに気づけます。AIは、いつでも説明を聞いてくれる相手になります。ただし研究では、説明の効果の中心は何も見ずに思い出すことで、チャットで話しかける形そのものに効果は見られませんでした。AIの指摘も間違うことがあります。この2点をふまえたやり方を紹介します。
3行でわかる
- 人に教えて学ぶ研究のまとめでは、相手と対面で教えた場合の効果が大きく(g = 0.84)、文章や動画で一方的に説明した場合は0.48だった。理由の候補の1つが質問のやりとり。
- 大学生137人の実験では、チャット画面で説明しても、ふつうに書く・声に出す・ただ思い出す、と比べて理解は変わらなかった。効くのは、教材を閉じて思い出す部分と考えられている。
- やり方は、①教材を閉じて説明する ②AIには答えを書かせず質問だけさせる ③答えられなかった所を教材で確かめる ④AIの指摘も教材と照らす ⑤翌日もう一度説明する、の5つ。
01 悩みの正体わかったつもりなのに説明できないのはなぜ?
読んでいる間は、目の前の文章に助けられて「わかった」と感じるからです。教材を閉じて説明しようとすると、自分の力だけで思い出せる部分とそうでない部分の差がはっきりします。
読み終えた直後の「わかった」は当てになりません。後で紹介する実験でも、参加した学生は全員、自分の理解を実際より高く見積もっていました[3]。AIの説明を読んでわかった気になる仕組みはAIの説明でわかった気になる理由の記事で扱っています。
そこで、説明する側に回るのが有効です。説明して学ぶ方法が効くのかどうかは教える効果の記事と自分で説明するか、AIに説明させるかの記事で判定しました。この記事では、AIを聞き手にして実際にやる手順に絞ります。
02 科学的にわかっていることAIに説明すると、何が身につく?
説明して学ぶ効果の多くは、教材を見ずに思い出すことから来ると考えられています。対面で教える方が効果は大きい一方、チャットで話しかける形にするだけでは効果は上がりませんでした。
小林(2019)[1]
教えるつもりで学ぶ・実際に教える研究のメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)を分析し直した。教えるつもりで学んでから相手と対面で教えると、教えずに学んだだけの場合と比べた効果は g = 0.84 だった。動画や文章で一方的に説明した場合は0.48、教えるつもりなく学んでから一方的に説明した場合は0.23だった。著者は、対面が効く理由の候補として、質問をし合えること、相手から情報が得られること、深く考える意欲が高まることを挙げた。
対象: 教える・説明する学習の実験研究 / 限界: 相手は人間で、AIを相手にした研究ではない。対面がなぜ効くのかは、まだ候補の段階。
小林(2022)[2]
人に説明して学ぶ効果は、教材を見ずに思い出す練習(想起練習)の効果ですべて説明できる、という説を検討したレビュー。ある実験では、教材を見ずに説明動画を作った組と、思い出してテストを受けた組は同じくらい成績がよく、渡された原稿を読み上げた組より上だった。説明する方がただ思い出すより効いた研究と、差がなかった研究の両方がある。
対象: これまでの実験のまとめ / 限界: 著者は、今ある証拠ではこの説の正否はまだ判断できないと結論づけている。
Jacobら(2021)[3]
免疫学の文章を読んだ後、教材を見ずに10分間、①架空の人に声で説明 ②文章で説明 ③メッセージアプリ風のチャットで説明 ④ただ思い出して書く、のどれかをした。理解のテストの成績に、4つの組の差はなかった。説明した組は、思い出すだけの組より「頑張った」「楽しかった」「おもしろかった」と答えた。
対象: ドイツの大学生137人 / 限界: 教材が難しすぎた可能性を著者らが挙げている。説明が効いた先行研究を再現できなかった研究でもある。
Akhundら(2026)[4]
309人の医学部進学課程の学生が答えた実技試験(画像を見て短く答える19問)を、3つのAI(大規模言語モデル)に採点させ、人間の採点とくらべた。成績の順位はおおむね一致したが、合格・不合格の判定が人間と一致した割合は、AIによって52.1%から84.1%まで開きがあった。人間の採点では93.3%が正解した問題に、3つのAIがいずれも平均0点をつけた例もあった。
対象: 解剖学・組織学・生理学の試験 / 限界: 画像を読む問題が中心で、文章だけの説明をAIがどこまで正しく判断できるかは別に調べる必要がある。
研究を、AIに説明して学ぶ作業に当てはめて整理しました。
| やること | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 教材を閉じて説明する | 思い出す練習になり、効果の中心と考えられる[2] |
| 質問に答える | 対面で教える方が効果が大きく、質問のやりとりが理由の候補(人が相手の研究)[1] |
| チャットで相手に話しかける形にする | 形だけでは理解は変わらなかった[3] |
| AIの判定をそのまま信じる | 人間の判定と大きくずれることがある[4] |
ここで紹介した研究は、人を相手に教える実験や、AIによる採点の研究です。AIに説明を聞かせて学ぶやり方そのものを、独学の社会人で確かめた研究ではありません。
03 今日からできる小さな一歩AIに説明を聞いてもらうには、どう頼む?
教材を閉じて説明し、AIには正しい説明を書かせず質問だけしてもらいます。答えられなかった所とAIの指摘は教材で確かめ、翌日もう一度、何も見ずに説明します。
教材を閉じて、1つの節を5分で説明する
読み終えた節を1つ選び、教材もノートも閉じてからAIに説明を書きます(声で入力してもかまいません)。見ながら書くと、思い出す練習になりません。説明の効果の中心は、教材を見ずに思い出す部分と考えられています[2]。
所要 5〜10分
AIには「答えを書かずに、質問を3つだけして」と頼む
例:「私の説明を読んで、正しい説明は書かずに、抜けていそうな所について質問を3つだけしてください。私が答えたら、次の質問をしてください」。AIが先に正しい説明を書くと、自分で思い出す機会がなくなります。人に教える研究では、対面で教える方が効果が大きく、その理由の候補に質問をし合えることが挙がっています[1]。頼み方の型はAIへの依頼文テンプレートにもまとめています。
所要 1分
質問には教材を見ずに答え、詰まった所に印をつける
答えられなかった質問、あいまいにしか答えられなかった質問を、紙に書き出します。これが自分の「抜け」のリストです。読んだ直後の「わかった」は当てにならないので、詰まった所こそ大事な手がかりです[3]。
所要 5分
抜けとAIの指摘は、必ず教材で確かめる
最後にAIに「私の説明で、誤りがありそうな所を挙げて」と頼んでもかまいません。ただし、AIの判定は人間の判定と大きくずれることがあります[4]。指摘された所は教材の該当ページを開いて確かめ、教材が正しければ教材に従います。AIが自信ありげに間違える理由はハルシネーションの記事で説明しています。
所要 10分
翌日以降に、もう一度何も見ずに説明する
印をつけた所を中心に、同じ節をもう一度説明します。間をあけて思い出し直すと、記憶に残りやすくなります。復習の間のあけ方は分散学習の記事を参考にしてください。
所要 5〜10分
「AIに質問だけさせる」「指摘を教材で確かめる」は、研究の結果から考えた工夫です。この手順そのものの効果を確かめた研究ではありません。
04 続けるためのコツ説明がうまく書けないときは?
うまく書けないのは、抜けが見つかったしるしです。短い説明から始め、書けなかった所を教材で確かめてから、もう一度説明すれば十分です。
- 最初は「この節で大事なことを3つ」だけ説明する。長い説明を目指さない。
- 説明する時間がない日は、教材を閉じて要点を書き出すだけでもよい。説明とただ思い出すことの差がなかった実験もある[3]。
- AIとのやりとりが楽しくて長くなりすぎたら、質問は3つまでと決めておく。
05よくある質問
AIに説明するより、人に説明した方がいい?
人を相手にした研究では、対面で教えた場合の効果が大きく(g = 0.84)、文章や動画で一方的に説明した場合(0.48)を上回りました。AIを相手にした場合に同じ効果があるかは、まだ確かめられていません。人に説明できる機会があれば使い、なければAIに質問役を頼む、という使い分けが現実的です。
AIに正しい説明を書いてもらってから覚えるのではだめ?
それだと、自分で思い出す機会がなくなります。説明して学ぶ効果の中心は、教材を見ずに思い出すことだと考えられています。AIの説明を読むのは、自分で説明して詰まった所を確かめた後にします。
AIの指摘が正しいかどうか、どうやって見分ける?
教材や公式の資料と照らし合わせるのが確実です。試験の採点をAIにさせた研究では、合格・不合格の判定が人間と一致した割合が52.1%から84.1%まで開いていました。AIの指摘は「確かめる候補」として扱い、正しいかどうかは教材で決めます。
出典
- Kobayashi, K. (2019). Interactivity: A potential determinant of learning by preparing to teach and teaching. Frontiers in Psychology, 9, 2755. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.02755
- Kobayashi, K. (2022). The retrieval practice hypothesis in research on learning by teaching: Current status and challenges. Frontiers in Psychology, 13, 842668. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.842668
- Jacob, L., Lachner, A., & Scheiter, K. (2021). Does increasing social presence enhance the effectiveness of writing explanations? PLOS ONE, 16(4), e0250406. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0250406
- Akhund, S. A., Qazi, S., Mazhar, M. A., Shaikh, A. A., Atif, E., et al. (2026). Agreement, calibration, and failure of three large language models as high-stakes multimodal OSPE graders: A comparative psychometric analysis. Medical Education Online, 31(1), 2684837. https://doi.org/10.1080/10872981.2026.2684837


