語学アプリだけで話せるようになるのか。アプリ学習の研究でわかったこと

毎日アプリを続けて、連続記録も伸びている。なのに、いざ話そうとすると言葉が出てこない。そう感じる人は少なくありません。研究の答えは「アプリは単語や読みの練習には効果の報告があるが、話す力はほとんど確かめられていない」です。話せるようになりたいなら、声に出して文を作る練習を別に足すのが確実です。
3行でわかる
- 語学アプリを使った23本の研究のメタ分析では、紙と教科書の学習より成績が高かった(g = 0.88)。ただし全研究で偏りのリスクが「高」と判定された。
- 調べられたのは主に単語・読解・文法。23本のうち会話を主なテーマにした研究は1本だけで、アプリだけで話せるようになるとは言えない。
- アプリは単語の入口として使い、覚えた語で文を作って声に出す練習を毎日数分足す。
01 悩みの正体語学アプリを続けても話せないのはなぜ?
語学アプリの研究で確かめられているのは、主に単語・読解・文法のテストの点数です。自分で文を組み立てて話す力は、ほとんど測られていません。
語学アプリの練習には、決まった形があります。絵と単語を結びつける、選択肢から正しい訳を選ぶ、単語を並べて文にする、といった形です。Chuaら(2026)も、人気のアプリの多くが「当ててから正解を見る」練習で単語を教えていると説明しています[3]。
こうした練習は、目の前に答えの候補があります。一方、会話では候補はありません。言いたいことを自分で文にして、その場で声に出す必要があります。
つまり「アプリで点が取れる」ことと「話せる」ことは、別の力を見ている可能性があります。単語の覚え方そのものは英単語の効率的な覚え方で詳しく扱っています。
02 科学的にわかっていること語学アプリの効果は研究で確かめられている?
単語や読解では、アプリで成績が上がったという報告が多くあります。ただし研究の質は低めで、授業と同じくらいという結果もあります。話す力を測った研究はごくわずかです。
Mihaylovaら(2022)[1]
語学学習アプリを使った組と、紙と教科書など従来の方法で学んだ組を比べた23本の研究(合計1,873人)のメタ分析(多くの研究をまとめる分析)。アプリの組の方が成績が高く、効果量は g = 1.08だった。極端な結果の研究を除いた19本では g = 0.88。
対象: 70%が大学生、65%がアジアの研究、学ぶ言語はほぼ英語。期間は1日〜4か月 / 限界: 全研究で偏りのリスクが「高」と判定され、本当の意味でランダムに組分けした研究は1本もなかった。著者らも証拠の質は低く、慎重に扱うべきとしている。
Yangら(2025)[2]
中国の大学生63人をランダムに2組に分け、8週間、週3回30分ずつ、片方はゲーム形式の大手語学アプリ(Duolingo)で、もう片方はふだんの読解の授業で練習した。どちらの組も読解の点数が伸び、伸び方の差は統計的に意味のある大きさではなかった。読む自信(自己効力感)にも差はなかった。
対象: 18〜25歳の英語学習者63人、1つの大学 / 限界: 8週間だけの研究で、話す力は測っていない。アプリ組の平均点は全体にやや高かった。
Chuaら(2026)[3]
アプリによくある「絵と単語を当ててから正解を見る」練習を、オンラインの4つの実験で調べた。読むだけの練習より、単語を自分で書いて答えるテストで成績が高く(効果量 d = 0.18〜0.40)、選択式のテストでも多くの場合で高かった(d = 0.25〜0.67)。
対象: オンラインで参加した大人(実験1は21〜45歳の58人)、スペイン語の名詞36語 / 限界: テストは学習の数分後。何週間も覚えているか、会話で使えるかは調べていない。
Zhang(2025)[4]
16週間、授業外でAIの英会話アプリを使って話す練習をした中国の大学生6人に聞き取りをした。発音・文法・流暢さが良くなったという実感が語られた。一方で、AIとの会話は堅く、人との自然な会話とは違うという声もあった。著者は、先生の授業と組み合わせることを勧めている。
対象: 大学生6人 / 限界: 本人の感想を集めた研究で、話す力をテストで測ってはいない。
何が確かめられていて、何が確かめられていないかをまとめます。効果量 g・d は差の大きさの目安で、0.2で小さい、0.5で中程度、0.8で大きいとされます。
| 身につけたい力 | アプリの研究でわかっていること |
|---|---|
| 単語 | 効果の報告が多い(ただし研究の質は低め) |
| 当てて覚える練習 | 読むだけより覚えていた(数分後のテスト) |
| 読解 | 伸びるが、同じ時間の授業と差がなかった研究も |
| 話す力 | ほとんど測られていない(会話がテーマの研究は23本中1本) |
ここで紹介した研究の多くは、大学の授業の一部としてアプリを使ったものです。社会人が一人で何か月も、アプリだけで学んだ場合の効果は、ほとんど確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩アプリの練習に「話す」を足すには?
アプリの練習が終わったら、画面を閉じて、その日の単語で短い文を作り声に出します。答えを選ぶ練習を、自分で文を作る練習に変えるのがねらいです。
今日の単語を3つ使って、自分のことを30秒話す
「今日は何をしたか」など、身近な話題でかまいません。独り言で十分です。詰まった言い方をメモしておきます。
所要 3分
04 続けるためのコツアプリの連続記録だけで満足しないためには?
記録する数字を「アプリを開いた日数」から「声に出して言えた文の数」に変えます。アプリは単語の入口と割り切り、話す練習は別に数えます。
- 連続記録とは別に、その日に言えた文の数を1行で記録する(勉強の記録の研究)。
- アプリの点数が上がっても、話す力が上がったとは限らない。点数と話す力は別に確かめる。
- AIの会話機能は、練習相手の一つとして使う。人との会話の代わりにはならないと感じた学習者もいる。
- 詰まるのは失敗ではない。言えなかった表現が、次の練習の材料になる。
05よくある質問
語学アプリは1日何分やれば効果がありますか?
研究で決まった時間はありません。Yangら(2025)では1回30分・週3回・8週間の練習で読解の点数が伸びましたが、同じ時間の授業を受けた組と伸び方に差はありませんでした。時間を増やすより、アプリの後に声に出す練習を数分足す方が、話す力には直接つながります。
AIと会話できるアプリなら、話せるようになりますか?
話す練習の相手としては役に立つ可能性があります。ただし確かめた研究は少なく、Zhang(2025)は中国の大学生6人への聞き取りでした。発音や流暢さが良くなったという実感が語られた一方、AIとの会話は堅く、人との会話の代わりにはならないという声もありました。話す力をテストで測った結果ではありません。
語学アプリは意味がないのですか?
意味がないわけではありません。23本の研究をまとめたメタ分析では、紙と教科書の学習より成績が高い結果でした。ただし研究の質は低いと評価されています。単語を覚える入口として使い、話す練習は別に足すのが現実的です。
大人になってからアプリで単語を覚えても効果はありますか?
大人でも効果は報告されています。Chuaら(2026)はオンラインで参加した大人(実験1は21〜45歳)を対象に、絵と単語を当ててから正解を見る練習で、読むだけより単語を覚えていたと報告しました。ただしテストは数分後で、何週間も残るかは調べていません。
勉強法の早見表で「語学アプリだけで学ぶ」の判定を見る
ほかの勉強法も41種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Mihaylova, M., Gorin, S., Reber, T. P., & Rothen, N. (2022). A meta-analysis on mobile-assisted language learning applications: Benefits and risks. Psychologica Belgica, 62(1), 252–271. https://doi.org/10.5334/pb.1146
- Yang, W., & Ying, Z. (2025). Exploring the potential of gamified reading: the effects of Duolingo on L2 reading, self-efficacy, and learner experiences in a Chinese university EFL context. BMC Psychology, 14, 14. https://doi.org/10.1186/s40359-025-03180-3
- Chua, T. J. E., & Pan, S. C. (2026). Duolingo-inspired pretesting with words and pictures improves vocabulary learning. Cognitive Research: Principles and Implications, 11, 20. https://doi.org/10.1186/s41235-026-00708-y
- Zhang, X. (2025). Enhancing oral English learning through AI: a case study on the impact of AI-driven speaking applications among Chinese university students. Frontiers in Psychology, 16, 1595818. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1595818


