試験まで時間が足りない。範囲が終わらないとき、どう立て直す?残り時間で何を優先するかの研究

試験日はもう近いのに、問題集は半分も終わっていない。計画どおりに進まなかった自分を責めつつ、何から手をつければいいかわからず焦っている。そんなときに必要なのは、全部をやり直す計画ではなく、残り時間で何を優先するかの順番です。研究では、時間が足りないときの勉強時間の配り方について、手がかりになる結果が出ています。
3行でわかる
- 時間に余裕があると人は難しい項目に時間をかけるが、時間が足りないときは易しい項目を優先した。実験では、その選び方は理にかなっていた。
- 自由に選ばせると、人は易しい項目を先に済ませ、最も多くの時間を中くらいの難しさの項目に使った。時間を割り振る実験でも、中くらいの項目に多く使ったときの成績が最もよかった。
- 立て直しは、範囲を「ほぼできる」「もう少し」「まったくわからない」に分け、時間の大半を「もう少し」に使い、読み直しより問題を解いて思い出す。
01 悩みの正体時間が足りないとき、苦手から片づけるべき?
時間が足りないときに、一番苦手な所から片づけるのは得策とは限りません。苦手な所は、短い時間では伸びにくいからです。研究では、もう少しでわかる所に時間を使う方が成績につながっていました。
「苦手をなくせ」はよく言われる助言です。時間に余裕があるなら、それも一つの考え方です。実際、多くの研究で、人は難しいと感じた項目ほど長く勉強していました[1]。
しかし試験直前は事情が違います。まったくわからない所は、理解するまでに時間がかかり、残り時間を使い切ってしまうおそれがあります。研究者のMetcalfeらは、「もう少しでわかる」範囲に時間を使うのが効率がよいと考え、これを「近接学習領域(もう少しでわかる範囲)」と呼んでいます[2][3]。
02 科学的にわかっていること残り時間が少ないとき、どこに時間を使えばいい?
時間が足りない実験では、人は易しい項目を優先しました。中くらいの難しさの項目に多くの時間を使ったときに成績が最もよく、わからない項目どうしなら易しい方を選んだ人が得をしていました。
SonとMetcalfe(2000)[1]
それまでの研究をまとめると、人は難しいと感じた項目に多くの時間を使っていた。ただしそれらは、教材が短く、時間に余裕がある条件だった。時間が足りない条件の実験では、人は易しいと感じた項目に多くの時間を使い、テストがあると知っているときに特にそうした。強い時間の圧力のもとでは易しい詩を選び、中くらいの圧力では好みの差がなかった。
対象: 実験の参加者 / 限界: 文章や詩を覚える実験室の研究。この記事では論文の要旨で確認した。
MetcalfeとKornell(2003)[2]
自由に選ばせると、人は易しい項目を先に勉強し、最も多くの時間を中くらいの難しさの項目に使った。勉強時間を実験者が割り振った実験では、中くらいの項目に最も多くの時間を与えたときに成績が最もよかった。易しい項目は最初に一気に覚えられるが、その後はあまり伸びず、中くらいの項目は伸びが小さくても長く続いた。
対象: 実験の参加者 / 限界: 項目を覚える実験室の研究で、理解が積み上がる科目(数学や会計など)で同じ結果になるかは確かめていない。この記事では論文の要旨で確認した。
KornellとMetcalfe(2006)[3]
何を勉強するかを自分で選べた人は、選べなかった人より成績がよかった。まだ覚えていない項目の中から選ばなければならないとき、参加者は最も易しい項目を選び、それで得をしていた。
対象: 実験の参加者 / 限界: 項目を覚える実験室の研究。この記事では論文の要旨で確認した。
Metcalfe(2002)[4]
勉強に使える時間を長くすると、人はより難しい項目に移っていった。その分野にくわしい人は、初心者より難しい項目に時間を使った。何が「もう少し」かは、その人の今の力で変わる。
対象: 大学生と小学6年生 / 限界: 5つの実験室の実験。この記事では論文の要旨で確認した。
Rowland(2014)[5]
テスト(思い出す練習)と読み直しを比べた研究をまとめたメタ分析(複数の研究を統合する分析)。テストをした方が記憶に残り、選択肢から選ぶより、自分で思い出して答える形の方が効果が大きかった。
対象: テスト効果の実験研究 / 限界: 多くは実験室の研究。効果の大きさは条件で変わる。
Cepedaら(2008)[6]
1,350人以上が一連の事実を学び、間をあけて復習し、さらに後でテストを受けた。最もよい復習の間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなった。テストが1週間後なら、その期間の約20〜40%の間隔をあけるのがよかった。
対象: 1,350人以上の参加者 / 限界: 覚えたのは事実の知識で、問題を解く力の学習ではない。
まとめると、時間が足りないときは、全部を均等にやろうとせず、伸びやすい所から時間を使うのが研究に沿った考え方です。ただし、どれも短い教材を使った実験室の研究です。資格試験のように配点や合格点がある試験では、出題の多さも合わせて考える必要があります。
03 今日からできる小さな一歩試験直前、何から手をつければいい?
まず範囲を3つに分けます。「ほぼできる」は先に短く確かめ、時間の大半を「もう少し」に使い、「まったくわからない」は配点を見て後回しにするか決めます。勉強は読み直しより問題を解く形にします。
範囲を書き出し、3つに分ける
章や単元ごとに、「ほぼできる」「もう少し」「まったくわからない」の印をつけます。迷ったら、その単元の問題を2〜3問解いて決めます。何が「もう少し」かは人によって違うため[4]、他人のおすすめではなく、自分の手応えで分けます。
所要 20〜30分
「ほぼできる」は、先に短く確かめる
易しい所は、短い時間で仕上がる一方、時間をかけてもそれ以上は伸びにくい[2]。問題を数問解いて、できたら次へ進みます。間違えた所だけを「もう少し」に移します。
所要 1単元10分
時間の大半を「もう少し」に使う
残り時間のうち、多くをこの印の単元に回します。中くらいの難しさに多くの時間を使ったときに成績が最もよかったからです[2]。「もう少し」の中では、易しいものから順に片づけます[3]。
所要 残り時間の大半
「まったくわからない」は、配点を見て決める
出題が少ない所は、思い切って後回しにします。出題が多い所や、ほかの単元の土台になる所は、基本問題1〜2種類だけに絞って取り組みます。これは研究をもとにしたこの記事の提案で、配点を考えた手順そのものは研究で確かめられていません。
所要 10分(決めるだけ)
読み直しをやめ、問題を解いて思い出す
テキストを読み返す代わりに、問題を解くか、本を閉じて要点を書き出し、答え合わせをします。選ぶ形より、自分で答えを出す形の方が効果が大きかったからです[5]。
所要 1回20〜30分
間違えた問題は、日をあけてもう一度
試験まで1週間あるなら、2日ほどあけてもう一度解きます。1週間後のテストでは、その期間の約20〜40%の間隔がよかったからです[6]。試験まで数日しかなければ、翌日に解き直します。
所要 1回15分
3つの印と、時間の使い方の目安を表にしました。研究をもとに、この記事で独学向けに当てはめたものです。
| 単元の状態 | 時間の使い方 | やること |
|---|---|---|
| ほぼできる | 少し(最初に済ませる) | 数問解いて確かめ、間違えた所だけ「もう少し」へ(手順2) |
| もう少し | いちばん多く | 易しい単元から、問題を解いて思い出す(手順3・5) |
| まったくわからない・出題が少ない | 後回し | 時間が余ったら手をつける(手順4) |
| まったくわからない・出題が多い | 絞って少し | 基本問題1〜2種類だけに取り組む(手順4) |
04 続けるためのコツ焦って手が止まるときは、どうする?
「全部は終わらない」と先に認め、今日やる単元を3つまでに絞ります。終わった単元に印をつけると、残りが見えて焦りが行動に変わりやすくなります。
- 睡眠を削って時間をつくるのは避けます。理由は一夜漬けの記事と寝不足からの立て直しの記事で紹介しています。
- 試験が終わったら、今回の計画がどこでずれたかを1行で書き残します。次の計画づくりは計画が崩れたときの記事と計画が倒れる理由の記事が参考になります。
- 本番の緊張が心配な人は、試験で緊張したときの記事も参考に。
05よくある質問
試験直前は、苦手分野から勉強するべきですか?
時間が足りないなら、一番苦手な所からとは限りません。実験では、中くらいの難しさの項目に多くの時間を使ったときに成績が最もよく、時間が足りないと人は易しい項目を優先しました。もう少しでわかる所を先に固め、まったくわからない所は配点を見て決めます。
わからない単元を捨てても大丈夫ですか?
出題が少なければ、後回しにするのは一つの選択です。ただし出題が多い単元や、ほかの単元の土台になる単元は、基本問題だけに絞って取り組むのがこの記事の提案です。研究は短い教材の実験で、配点のある試験での捨て方までは確かめていません。
試験直前は、テキストを読み直すのと問題を解くのとどちらがいいですか?
問題を解く方がおすすめです。テスト効果のメタ分析では、読み直すより思い出す練習の方が記憶に残り、選択肢から選ぶより自分で答える形の方が効果が大きくなりました。解いたら必ず答え合わせをします。
試験まで1か月あるときも、同じやり方でいいですか?
時間に余裕があるほど、難しい所にも時間を回せます。実験でも、使える時間が長くなると人はより難しい項目に移りました。1か月あれば、まったくわからない単元にも取り組み、間違えた問題は間をあけて解き直します。
勉強法の早見表で「試験直前は「もう少しでわかる」所に時間を使う」の判定を見る
ほかの勉強法も56種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Son, L. K., & Metcalfe, J. (2000). Metacognitive and control strategies in study-time allocation. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 26(1), 204-221. https://doi.org/10.1037/0278-7393.26.1.204
- Metcalfe, J., & Kornell, N. (2003). The dynamics of learning and allocation of study time to a region of proximal learning. Journal of Experimental Psychology: General, 132(4), 530-542. https://doi.org/10.1037/0096-3445.132.4.530
- Kornell, N., & Metcalfe, J. (2006). Study efficacy and the region of proximal learning framework. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 32(3), 609-622. https://doi.org/10.1037/0278-7393.32.3.609
- Metcalfe, J. (2002). Is study time allocated selectively to a region of proximal learning? Journal of Experimental Psychology: General, 131(3), 349-363. https://doi.org/10.1037/0096-3445.131.3.349
- Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432-1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
- Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science, 19(11), 1095-1102. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x


