蛍光ペンで線を引く勉強法は効くのか。研究でわかったこと

テキストを読みながら、気づけばページが黄色だらけ。それでも試験になると思い出せない。そんな経験はありませんか。研究の答えは「線を引くだけでは、覚える効果は小さめで、理解を深める効果は確認されていない」です。ただ、引き方しだいで役に立つ場面もあります。
3行でわかる
- 2013年の大規模レビューで、蛍光ペンで線を引く勉強は「効果が低い」グループに入りました。
- 2022年のメタ分析では、自分で引く線は覚える面で小さめの効果があり、理解を深める効果は確認されませんでした。
- 効くのは「読み終えてから要点だけに引く」こと。見直しより、思い出す練習に置きかえると効率的です。
01線を引くと「勉強した気」になるのはなぜか
線を引くと「大事な所はわかった」と感じますが、その感覚と、後で思い出せるかどうかは別ものです。
線を引く勉強法には、2つの働きがあると考えられています。1つは、どこが大事かを選ぶときに頭を使うこと。もう1つは、後で見直すときに要点を見つけやすくすることです。
ところが実際には、引きすぎたり、大事でない所に引いたりしがちです。大事な所を選ぶ作業がおろそかになると、1つ目の働きがほとんど起きません。
02研究でわかっていること
自分で線を引く勉強は、覚える面では小さめの効果、理解や応用の面では効果が確認されていません。練習した引き方なら効果が上がります。
Dunloskyら(2013)[1]
10種類の勉強法を比べたレビューで、線を引く勉強法は再読と並んで「効果が低い」と評価されました。多くの学生が使っているのに、成績を安定して伸ばさないためです。
対象: 既存研究のレビュー(年齢・教材・テストの種類をまたいで評価) / 限界: 研究者による評価で、効果量を数値で統合したものではありません。
Ponceら(2022)[2]
自分で線を引くと、覚える面の効果量は0.36、理解の面は0.20で、理解を高める効果は確認されませんでした。最初から線が引いてある教材では、覚える面・理解の面とも0.44でした。
対象: 1938〜2019年の36本の論文・85の効果量を統合したメタ分析。大学生では0.39、小中高生では0.24(効果は確認されず) / 限界: 短い文章を読む実験が中心です。
Miyatsuら(2018)[3]
引き方は60分ほどの練習で身につけられます。効果が出た練習には「1回目は読むだけ、引くのは読み終えてから」という共通点がありました。一方、線の箇所を見直しても上乗せの効果は見られませんでした。推論を問うテストで効果が出なかった研究もあります。
対象: 学生の勉強法に関する研究のレビュー。調査では学生の53%(1,517人)が線を引いた所を読み返すと回答 / 限界: 練習の効果を示した研究は少数です。
Leutnerら(2007)[4]
パソコンで引き方を練習したグループは、練習なしのグループより多くを学べていました。さらに、引き方に加えて「うまく使えているか自分で確かめる」練習もしたグループが最も成績が良好でした。
対象: 大学生45人を3グループにランダムに分けた実験 / 限界: 人数が少なく、1回の文章読解で測った結果です。
- 効く: 最初から要点に線が引いてある教材を読む(効果量0.44)
- 条件しだい: 自分で線を引く。読み終えてから要点だけに引けば、覚える面で役立つ
- 当てにならない: 線を引いた所をくり返し眺めて、理解したつもりになる
03今日からできる小さな一歩
次の勉強では「読み終えてから引く」「1段落に1か所だけ」「線の所を隠して書き出す」の3つを試してください。
1回目はペンを置いて読む
段落や小見出しの区切りまで、線を引かずに読み切ります。その後で戻って線を引きます。
所要 いつもの読書時間のまま
1段落に1か所だけ引く
「この段落で一番言いたいことは何か」を選んでから引きます。迷う作業そのものが、覚える助けになります。
所要 1段落につき10秒ほど
線の所を隠して書き出す
読み返す代わりに、ページを閉じて、線を引いた内容を思い出して紙に書きます。書けなかった所だけ見直します。
所要 5分
04続けるためのコツ
線は「後で思い出す練習の目印」と割り切ると続けやすくなります。引くこと自体を勉強のゴールにしないのがコツです。
- ページの半分以上が色で埋まったら、引きすぎの合図と考える
- 過去問や問題集で応用問題に備える。線を引く勉強だけで推論や応用の力をつけるのは難しい
- 引き方がうまくいっているか、週に1回「線の所を書き出せたか」で確かめる
05よくある質問
蛍光ペンで線を引く勉強は意味がないの?
意味がないわけではありません。2022年のメタ分析では、自分で線を引くと覚える面では小さめの効果が見られました。ただし内容を理解する力を高める効果は確認されていません。線を引くだけで終えず、思い出す練習と組み合わせるのがおすすめです。
線を引いたところを読み返せば覚えられる?
研究ではあまり期待できません。Miyatsuら(2018)のレビューによると、線を引いた箇所を見直しても、線を引いた時点の効果に上乗せされる効果は見られませんでした。読み返す代わりに、線の内容を見ずに書き出してみる方が効率的です。
どこに線を引けばいいかわからないときは?
まず段落を最後まで読んでから、その段落の要点を1つだけ選んで線を引きます。研究で効果が出た引き方の練習は、どれも「1回目は読むだけ、引くのは読み終えてから」という共通点がありました。
勉強法の早見表で「蛍光ペンで線を引く」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Ponce, H. R., Mayer, R. E., & Méndez, E. E. (2022). Effects of Learner-Generated Highlighting and Instructor-Provided Highlighting on Learning from Text: A Meta-Analysis. Educational Psychology Review, 34, 989-1024. https://doi.org/10.1007/s10648-021-09654-1
- Miyatsu, T., Nguyen, K., & McDaniel, M. A. (2018). Five Popular Study Strategies: Their Pitfalls and Optimal Implementations. Perspectives on Psychological Science, 13(3), 390-407. https://doi.org/10.1177/1745691617710510
- Leutner, D., Leopold, C., & den Elzen-Rump, V. (2007). Self-Regulated Learning with a Text-Highlighting Strategy. Zeitschrift für Psychologie / Journal of Psychology, 215(3), 174-182. https://doi.org/10.1027/0044-3409.215.3.174


