「試験の前にパワーポーズをとると、自信がついて本番に強くなる」は本当?胸を張る姿勢の研究(効く・効かないの判定)

試験の直前、トイレで両手を腰に当てて胸を張る。そうすると自信がわいて、本番に強くなる。「パワーポーズ」として広まった話です。研究を調べた結論は「当てにならない」でした。模擬の口頭試験の前に2分間ポーズをとった実験では、点数にも不安にも差が出ませんでした。ホルモンが変わるという最初の報告も、追試で再現されていません。
3行でわかる
- 判定:「当てにならない」。試験やそれに近い場面で、ポーズが成績を上げた確かな証拠はありません。
- 研修医38人の模擬の口頭試験では、2分間両手を上げて立っても、点数・自己評価・不安のどれも、座って待った人と差がなかった。
- 73の研究のまとめでは、胸を張る姿勢とふつうの姿勢の差はほぼゼロ(効果量0.06)。差が出たのは、縮こまった姿勢と比べたときだった。
この記事の判定
当てにならない
胸を張るポーズで、本番の成績が上がるとは言えない
- 模擬の口頭試験:点数・自己評価・不安に差なし(研修医38人)[4]
- 模擬の面接:行動の差は小さく、はっきりしなかった(186人)[5]
- 12週間の日常の挑戦:行動への効果量0.06(127人)[6]
- ホルモンの変化:追試で再現されず[2][7][8]
01 通説の中身パワーポーズは、なぜ本番に効くと言われる?
2010年の研究で、胸を張るポーズを2つ、1分ずつとっただけで、ホルモンと気持ちが変わったと報告されたからです。この結果が広く紹介され、「面接や試験の前にやるとよい」と言われるようになりました。
もとになったのは、Carneyらの研究です[1]。両手を広げるなど「力のある人の姿勢」を2つ、1分ずつとった人は、テストステロン(強気さと関係するとされるホルモン)が上がり、コルチゾール(ストレスと関係するホルモン)が下がりました。自分に力があると感じ、賭けにも出やすくなったと報告されました。
体の姿勢が気持ちや体の中まで変えるなら、試験前の緊張にも使えそうです。ところが、その後の研究で、この話はかなり揺らぎました。
02 科学的にわかっていることパワーポーズで、試験や面接の結果は変わった?
変わりませんでした。模擬の口頭試験でも模擬の面接でも、ポーズをとった人の成績ははっきり良くなりませんでした。ホルモンの変化も追試で再現されず、残ったのは「力がある感じ」の小さな変化くらいです。
Chenら(2023)[4]
麻酔科の研修医38人を、くじで2つの部屋に分けた。片方は試験前に2分間、両手を頭の上に上げ、足を開いて立った。もう片方は2分間、いすに座って静かに待った。その後の模擬の口頭試験で、試験官がつけた点数に差はなかった。自分での出来の評価も、試験中の不安の強さも同じだった。
対象: 1つの施設の麻酔科研修医38人 / 限界: 人数が少なく、1回の模擬試験。論文の題名は「2分間の奇跡はない」。著者らは「口頭試験の成績を上げる方法としては役に立たない可能性が高い」と結論づけた。
Mikkelsenら(2024)[5]
大人186人が模擬の就職面接を受ける前に、胸を張る姿勢・縮こまる姿勢・その場で走る・何もしない、のどれかをとった。面接での行動への効果は小さく(効果量0.19〜0.28)、偶然の差と区別できなかった。前向きな気分には差が出た(効果量0.33)が、胸を張る姿勢と縮こまる姿勢を比べたときに良い方向に出た、という形だった。
対象: 大人186人 / 限界: 実験室での模擬の面接。著者らは「この場面で、姿勢は適切な行動に影響しない」とまとめた。
Mikkelsenら(2025)[6]
デンマークの大人127人が、12週間、毎週「やりたいけれど気が重いこと」を1つ決めた。実行の直前に3分間の音声で姿勢の指示を受け、週ごとに胸を張る・縮こまる・ふつう・その場で歩く、のどれかが割り当てられた。実行できた度合いへの効果量は0.06、気分への効果量は0.02〜0.06で、どれも効果はなかった。
対象: デンマーク語を話す18歳以上の大人127人(3週未満で抜けた143人を除く) / 限界: 計画していた人数に届かなかった。課題は人それぞれで、試験に限った研究ではない。
Elkjærら(2022)[3]
5819件の文献から選んだ73の研究をまとめた。胸を張る姿勢と縮こまる姿勢の間には、気分と行動の差がはっきりあった。ところが、ふつうの姿勢と比べると、胸を張る姿勢の効果量は0.06でほぼゼロ。縮こまる姿勢はふつうより悪い方向に0.45の差があった。
限界: ふつうの姿勢と比べた研究は少ない。著者らは「差を生んでいたのは、胸を張ることではなく、縮こまらないこと」と結論づけ、これまでの研究の見方を正すものだとしている。
Ranehillら(2015)ほかの追試[2][7][8]
2010年の研究より大幅に多い男女で試した追試では、テストステロン・コルチゾール・賭けへの出やすさのどれにも効果がなかった[2][8]。男性82人が2分間の姿勢を3回くり返した実験でも、ホルモンは変わらなかった[7]。若い大人92人の追試では、ホルモンに加えて「力がある感じ」も再現されなかった[8]。
「力がある感じ」が少し強まるという結果は、事前に計画を登録した6つの研究のまとめで確かめられたが、その大きさは小さいとされる[7]。
どの研究も、ポーズの効果を1回〜数週間の範囲で調べたものです。資格試験の本番そのもので確かめた研究は見つかりませんでした。ただ、本番に近い模擬試験と模擬面接で差が出なかったことは、試験前に頼る方法としては弱いことを示しています。
03 今日からできる小さな一歩試験の直前の数分は、何に使えばいい?
ポーズに期待するより、縮こまったまま待たないこと、緊張のとらえ方を整えること、最後に要点を1つ思い出すことに使います。自信は、練習で解けた記録から作るほうが確実です。
背中を丸めて、うつむいたまま待たない
差を生んでいたのは「縮こまった姿勢」の側でした[3]。特別なポーズはいらないので、ふつうに座って顔を上げておきます。
所要 0分(待ち時間の間)
直前は、新しいことを覚えず要点を1つ思い出す
ノートを閉じて、苦手な用語や公式を1つだけ頭の中で言ってみます。直前に知らないことを詰め込むより、覚えたことの確認に使います。
所要 2分
自信のもとは「解けた記録」にしておく
試験前日に、過去問や模試で解けた問題の数を見返します。姿勢で自信を作るより、実際の記録の方が本番の手がかりになります。
所要 5分(前日)
04 続けるためのコツ試験前の不安とは、どう付き合えばいい?
一瞬で自信がつく方法より、ふだんの準備と、不安を言葉にする習慣の方が研究の裏づけがあります。つらい不安が続くときは、一人で抱えずに相談してください。
- 不安を書き出す。試験前に心配ごとを紙に書く方法は不安を書き出す研究の記事で扱っています。
- 「自分はできる」と唱える方法も、条件しだい。前向きなひとりごとの記事で判定しています。
- 本番の予想は、模試の記録から。模試の点数の予想と記録表を使うと、根拠のある自信につながります。
- つらさが続くときは。眠れない、食べられない状態が続くなら、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などに相談してください。
05よくある質問
試験の前にパワーポーズをすると、点数は上がる?
当てにならない、が研究の結論です。模擬の口頭試験の前に2分間、両手を上げて立った研修医と、座って待った研修医で、試験官がつけた点数に差はありませんでした。自分での評価や不安の強さにも差はありませんでした。
パワーポーズでホルモンが変わるというのは本当?
確かめられていません。2010年の研究ではテストステロンが上がり、コルチゾールが下がったと報告されました。しかし、より多くの人で試した追試や、姿勢を3回くり返した実験でも、ホルモンの変化は再現されませんでした。
では、姿勢は気分にまったく関係ない?
関係がないとまでは言えません。73の研究をまとめた分析では、胸を張る姿勢と縮こまる姿勢の間には気分や行動の差がありました。ただ、その差は胸を張ったからではなく、縮こまったことで生まれていました。ふつうの姿勢と胸を張る姿勢の差はほぼゼロでした。
やっても損はない?
2分ほどなら害はなさそうです。ただし、本番の点数を上げる方法として頼るのはおすすめしません。試験前の時間は、緊張のとらえ方を整えたり、最後に要点を思い出したりする方に使うほうが、目的に合っています。
出典
- Carney, D. R., Cuddy, A. J. C., & Yap, A. J. (2010). Power posing: Brief nonverbal displays affect neuroendocrine levels and risk tolerance. Psychological Science, 21(10), 1363–1368. https://doi.org/10.1177/0956797610383437
- Ranehill, E., Dreber, A., Johannesson, M., Leiberg, S., Sul, S., & Weber, R. A. (2015). Assessing the robustness of power posing: No effect on hormones and risk tolerance in a large sample of men and women. Psychological Science, 26(5), 653–656. https://doi.org/10.1177/0956797614553946
- Elkjær, E., Mikkelsen, M. B., Michalak, J., Mennin, D. S., & O'Toole, M. S. (2022). Expansive and contractive postures and movement: A systematic review and meta-analysis of the effect of motor displays on affective and behavioral responses. Perspectives on Psychological Science, 17(1), 276–304. https://doi.org/10.1177/1745691620919358
- Chen, F., Stiegler, M., Martinelli, S. M., Arora, H., & Isaak, R. S. (2023). No miracles in two minutes: A randomized controlled study on the impact of preparatory expansive posing on anesthesiology residents' performance in mock structured oral examinations. The Journal of Education in Perioperative Medicine, 25(2), E700. https://doi.org/10.46374/volxxv_issue2_chen
- Mikkelsen, M. B., Tramm, G., Michalak, J., Mennin, D. S., Elkjær, E., & O'Toole, M. S. (2024). Bodies in action: Do contractive and expansive postures facilitate adaptive behavior? Scandinavian Journal of Psychology, 65(5), 966–979. https://doi.org/10.1111/sjop.13046
- Mikkelsen, M. B., Elkjær, E., Mennin, D. S., Michalak, J., & O'Toole, M. S. (2025). The power of posing: Do body display instructions have an impact on behavior in daily life? Brain and Behavior, 15(6), e70643. https://doi.org/10.1002/brb3.70643
- Metzler, H., & Grèzes, J. (2019). Repeatedly adopting power postures does not affect hormonal correlates of dominance and affiliative behavior. PeerJ, 7, e6726. https://doi.org/10.7717/peerj.6726
- Barel, E., Shahrabani, S., Mahagna, L., Massalha, R., Colodner, R., & Tzischinsky, O. (2024). The effects of power posing on neuroendocrine levels and risk-taking. BMC Psychology, 12, 726. https://doi.org/10.1186/s40359-024-02194-7


