家族の話し声やテレビの音で、家の勉強が進まない。どう立て直す?音の種類で勉強の中身を入れ替える6つの手順(話し声と集中の研究)

家族の話し声、隣の部屋のテレビ、外の工事。音を止められない家で机に向かうと、同じ行を何度も読んでしまう。そんな日が続くと「自分は集中力がない」と思いがちです。研究から言えるのは、意味のわかる話し声は、読む勉強も覚える勉強も小さいながら確実に邪魔する。そして、どの音がどのくらい邪魔かを、人は聞いただけでは正しく見積もれないということです。立て直しは、音を我慢することではなく、音の種類に合わせて勉強の中身と時間を入れ替えることから始めます。
3行でわかる
- 読みながら音を聞く65件の研究のメタ分析では、話し声が読んで理解する成績をいちばん下げた(g=−0.26)。意味のわかる話し声は、わからない話し声より邪魔だった。
- 大人を含む実験では、話し声は「言葉を順番に覚える」作業を下げたが、「位置を覚える」作業は下げなかった。母語の話し声は外国語より邪魔に感じにくいのに、実際の邪魔の大きさは同じだった。
- 立て直しは、①音の時間帯を1週間メモする ②話し声の時間は読む・暗記を避けて別の作業に回す ③読む勉強は静かな時間に移す ④読むなら、つっかえた所だけ読み返す、の順に進める。
01 悩みの正体家の音で勉強が進まないのは、集中力がないから?
集中力の問題とは言えません。話し声は、聞くつもりがなくても頭に入ってきて、読んだり覚えたりする作業とぶつかります。音のある部屋で勉強が進みにくいのは、多くの人に起きることです。
耳はまぶたのように閉じられません。言葉が聞こえると、頭は聞こうとしなくても、その音や意味をある程度処理してしまいます。
読む・覚えるといった勉強も、頭の中で言葉を扱う作業です。そのため、同じ「言葉」を扱う話し声とぶつかりやすいと考えられています。
勉強場所の整え方全体は家だと勉強に集中できない人のための場所の整え方の記事で扱いました。この記事では、音をなくせない家で、すでに勉強が崩れてしまったときの立て直しに絞ります。
02 科学的にわかっていることどんな音が、どんな勉強を邪魔する?
いちばん邪魔なのは、意味のわかる話し声です。読む勉強と、言葉を順番に覚える勉強で影響が出やすく、位置を覚える作業では影響が見られませんでした。音の邪魔さは、聞いただけでは見積もりにくいこともわかっています。
Vasilevら(2018)[1]
読みながら周りの音を聞く研究65件をまとめたメタ分析(多くの研究を統合する分析)。音があると、読んで理解する成績は小さいながら確実に下がった(g=−0.21)。下げ幅は話し声(g=−0.26)が、雑音(g=−0.17)や音楽(g=−0.19)より大きかった。意味のわかる話し声は、わからない話し声より邪魔で、その差はg=−0.12だった。大人と子どもで影響の大きさはほぼ同じだった。
対象: 子どもと大人の実験 / 限界: 多くは短い文章を読む実験室の研究。著者らは、雑音にも確かに邪魔する効果があり、話し声だけでは説明できないとしている。
Socherら(2026)[2]
スウェーデンの小学5年生125人に、静かな中・意味のわかる話し声の中・意味のわからない話し声の中で、文章を読む課題と話を聞く課題をしてもらった。意味のわかる話し声の中では、読む課題も聞く課題も成績が静かなときより下がった。意味のわからない話し声では、はっきりした低下は見られなかった。読むのにかかった時間も、意味のわかる話し声の中でいちばん長く、静かなときより平均で約1割長かった。
対象: 小学5年生(分析は122人) / 限界: 子どもの研究で、大人に同じ大きさで当てはまるとは限らない。意味のわかる声とわからない声の差そのものは、統計的にはっきりしなかった。
Leistら(2023)[3]
ドイツの大学生・職員の大人80人と小学3年生81人に、画面に出た物の順番を覚えてもらった。単語の絵の順番を覚える課題では、次々に違う音節が流れる話し声があると、静かなときや同じ音節のくり返しより成績が下がった。点の位置の順番を覚える課題では、話し声による低下は見られなかった。子どもは大人より影響が大きかった。
対象: 大人80人、小学3年生81人 / 限界: 数秒の並びを覚える実験室の課題。何時間もの勉強や、意味のある会話で同じ結果になるかは調べていない。
Komarら(2024)[4]
ドイツ語を話す大人(2つの実験で255〜256人ずつ)に、8つの数字の順番を覚えてもらい、その間に話し声を流した。どの話し声も静かなときより成績を下げた(効果量 d=−0.35〜−0.68、小〜中くらい)。2つ目の実験では、母語のドイツ語と外国語の日本語の声で、実際の邪魔の大きさに差は見られなかった。ところが参加者は、聞き取りやすい母語の声のほうを「邪魔になりにくい」と予想していた。
対象: オンラインで集めた大人(平均35歳) / 限界: 数字を覚える短い課題での結果。外国語の声が「読んで理解する」勉強をどのくらい邪魔するかは、この研究ではわからない。
ZhangとMiller(2026)[5]
アメリカの大学の参加者59人(平均19歳)の目の動きを測りながら、静かな中と、意味のわかる話し声の中で文章を読んでもらった。単語を最初に読むときの「なじみの薄い語ほど長く見る」という読み方は、話し声があっても崩れなかった。一方、話し声の中では、なじみの薄い単語や意味の予想しにくい単語を、あとから読み返す時間が長くなった。著者らは、読み返すことで話し声の影響を補っていると考えている。
対象: 英語が第一言語の59人 / 限界: 1回の読書での実験。読み返しで理解が十分に補えるのかは、この研究だけでは言えない。
どの研究も、短い課題を使った実験です。仕事や家事のあとに家で何時間も勉強する社会人に、同じ大きさで当てはまるかはわかっていません。それでも、話し声は言葉を扱う勉強とぶつかりやすい、自分の感覚だけでは音の邪魔さを見積もれない、という方向はそろっています。
03 今日からできる小さな一歩音をなくせない家で、勉強をどう立て直す?
まず1週間、音がする時間帯をメモします。話し声の時間は読む・暗記を避けて別の作業に回し、読む勉強は静かな時間に移します。どうしても音の中で読むなら、つっかえた所だけ読み返します。
音の「時間割」を1週間メモする
勉強した時刻と、聞こえていた音(家族の会話・テレビ・工事・外の車など)、進んだかどうかを1行で書きます。「ふだん気にならない音」も書きます。聞いた感じだけでは、邪魔の大きさを見誤りやすいためです[4]。
所要 1日1分
話し声の時間は、読む・暗記を入れない
家族の会話やテレビが聞こえる時間は、話し声の影響を受けやすい「文章を読む」「単語を順番に覚える」を避けます[1][3]。かわりに、ノートや図の清書、解き終えた問題の丸つけ、次の日の準備などに回します。
所要 0分(予定を入れ替えるだけ)
読む勉強を、静かな時間帯に移す
手順1のメモで静かだった時間(家族が寝た後、出かけている間、早朝など)に、新しい単元を読む勉強を寄せます。毎日でなくても、週に2〜3回の静かな時間に集めるだけで構いません。睡眠を削ってまで時間を作らないようにします。
所要 5分(計画の組み直し)
音を小さくする工夫は、話し声から先に
家族に「この時間だけテレビの音を小さく」と頼む、ドアを閉める、耳栓を使うなど、まず話し声を聞き取りにくくします。音楽で話し声を消そうとするなら、歌詞のある曲は避けます。歌詞のある音楽も読む成績を下げやすいためです[1]。BGMの選び方は音楽を聴きながらの勉強の記事にまとめています。
所要 1〜3分
音の中で読むなら、つっかえた所だけ読み返す
どうしても音の中で読む日は、1段落ごとに区切り、意味がつかめなかった語や文に印をつけて、そこだけ読み返します。話し声の中では、なじみの薄い語を読み返す時間が長くなっていました[5]。最初から読み直す必要はありません。
所要 1段落につき数十秒
音のあった日の内容は、静かな時間に思い出して確かめる
音の中で読んだ所は、次の静かな時間に、何も見ずに要点を3行書き出します。書けなかった所だけ読み直します。思い出す練習が読み返すより残りやすいことは思い出す練習と読み返しの記事で紹介しています。
所要 5分
下の表は、研究の結果をもとにした入れ替えの目安です。研究で決まった組み合わせではないので、手順1のメモと合わせて自分用に直してください。
| 聞こえている音 | 避けたい勉強 | 回しやすい勉強 |
|---|---|---|
| 家族の会話・テレビ・ラジオ(意味のわかる話し声) | 新しい単元を読む、単語や用語を順番に覚える | 清書、丸つけ、計画づくり、図や表を描き写す |
| 外国語の会話・聞き取れない話し声 | 単語や用語を順番に覚える | 読み慣れた範囲の見直し(つっかえた所だけ読み返す) |
| 工事・掃除機など話し声でない音 | 長い文章を一気に読む | 問題演習、思い出して書く練習 |
| ほぼ静か | なし | 新しい単元を読む、暗記 |
04 続けるためのコツ音のある日が続いても、勉強を止めないには?
「静かな日だけ勉強する」と決めず、音のある日にもできる作業を先に用意しておきます。進まなかった日を、集中力のせいにしないことが立て直しの土台になります。
- 1週間の計画に「音があってもできる作業」の枠を最初から入れておく。
- 静かな時間が取れる日を週に2〜3回だけ決め、読む勉強をそこに集める。
- 家族に頼むときは「何時から何時まで」と時間を区切ると頼みやすい。
- 2週間たったら、手順1のメモで「進んだ日」の音と時間帯をくらべる。記録のつけ方は勉強する場所と時間帯の記録表が使える。
05よくある質問
家族の話し声で勉強に集中できないのは、集中力がないからですか?
そうとは言えません。65件の研究をまとめたVasilevら(2018)では、話し声は読んで理解する成績を小さいながら確実に下げ、大人と子どもで影響の大きさはほぼ同じでした。話し声が言葉を扱う勉強とぶつかるのは、多くの人に起きることです。
外国語の会話や、聞き取れない話し声なら気にならないですか?
「気にならない」と感じても、邪魔にならないとは限りません。Komarら(2024)の実験では、外国語の声も母語の声と同じくらい数字の順番の記憶を下げましたが、参加者は母語の声のほうを邪魔になりにくいと予想していました。一方、読んで理解する勉強では、意味のわかる話し声のほうが邪魔だという分析があります。
話し声のある部屋でも、できる勉強はありますか?
あります。Leistら(2023)では、話し声は単語の順番を覚える課題の成績を下げましたが、点の位置の順番を覚える課題では下げませんでした。話し声の時間は、新しい単元を読む・暗記するより、清書や丸つけ、計画づくりなどに回すのが一つの方法です。
カフェのざわざわした音は大丈夫ですか?
人によって感じ方は違いますが、研究では雑音にも読む成績を少し下げる効果がありました。カフェだとはかどる気がする理由はカフェだと勉強がはかどる気がするのはなぜ?の記事で扱っています。
出典
- Vasilev, M. R., Kirkby, J. A., & Angele, B. (2018). Auditory distraction during reading: A Bayesian meta-analysis of a continuing controversy. Perspectives on Psychological Science, 13(5), 567–597. https://doi.org/10.1177/1745691617747398
- Socher, M., Ström, I., Andin, J., Elwér, Å., Wengelin, Å., & Ingo, E. (2026). Language comprehension in background noise: Effects of noise type and task modality. Journal of Cognition, 9(1), 7. https://doi.org/10.5334/joc.478
- Leist, L., Lachmann, T., Schlittmeier, S. J., Georgi, M., & Klatte, M. (2023). Irrelevant speech impairs serial recall of verbal but not spatial items in children and adults. Memory & Cognition, 51(2), 307–320. https://doi.org/10.3758/s13421-022-01359-2
- Komar, G. F., Buchner, A., Mieth, L., van de Vijver, R., & Bell, R. (2024). Evidence of a metacognitive illusion in stimulus-specific prospective judgments of distraction by background speech. Scientific Reports, 14, 24111. https://doi.org/10.1038/s41598-024-74719-4
- Zhang, H., & Miller, K. F. (2026). I'm trying to read here! How does irrelevant speech affect how you read? Cognitive Processing, 27(3), 667–676. https://doi.org/10.1007/s10339-026-01346-4


