やる気・心

あと数点で不合格だった。悔しさが抜けないとき、どう立て直す?「もし〜していれば」を次の一手に変える6つの手順(反実仮想とニアミスの研究)

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金・銀・銅のオリンピックメダル
Photo: Arne Müseler / CC BY-SA 3.0 de / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

合格点まで、あと2点。大差で落ちたときより、なぜか悔しさが抜けない。「あの1問を見直していれば」「あと1週間あれば」と、同じ場面が何度も頭に浮かぶ。その「もし〜していれば」という考えは、使い方しだいで次の試験の力にもなれば、ただ自分を責めるだけにもなります。研究でわかった分かれ目と、立て直しの6つの手順をまとめました。

3行でわかる

  1. 「あと少し」で届かないと、比べる相手が「合格した自分」になり、大差で落ちたときより悔しくなりやすい。オリンピックの銀メダリストが銅メダリストより嬉しそうでない、という研究がよく知られている。
  2. 「もし〜していれば」という考え(反実仮想)は、自分で変えられる行動について具体的に考え、次の行動に結びつけたときに役立つ。「なぜ自分は」と自分を責めるだけでは、行動は変わらない。
  3. 足りなかった点数を問題ごとに書き出し、「もし〜していれば」を3つ書いて「次は〜する」に変え、次の試験日を決める。変えられないことは1行で終える。

01 悩みの正体あと数点で落ちると、なぜ大差よりつらい?

頭の中で「合格していた自分」と比べてしまうからです。あと少しだったほど、その姿がはっきり浮かび、今の結果との落差が大きく感じられます。

実際には起きなかった「もし〜だったら」を考えることを、心理学では反実仮想(はんじつかそう)と呼びます。よく知られているのが、1992年のオリンピックのメダリストの表情を調べた研究です。銅メダリストの方が、銀メダリストより嬉しそうに見えました[2]。

研究者は、銀メダリストは「もう少しで金だった」と上と比べ、銅メダリストは「メダルなしだったかもしれない」と下と比べるからだと考えました[2]。2000〜2016年の大会の写真を使った追試でも、この説明と、「期待していた順位との差」で悔しさが決まるという説明の両方を支える結果が出ています[3]。

あと数点の不合格は、まさに「銀メダル」の状態です。悔しさが強いのは、気持ちが弱いからではありません。

02 科学的にわかっていること「もし〜していれば」と考えるのは、役に立つ?

考え方しだいです。自分で変えられる行動について「こうしていれば、もっとよかった」と考え、次の行動に結びつけると役立ちます。自分を責めるだけ、くり返し考えるだけでは、つらさが増えます。

EpstudeとRoese(2008) [1]

反実仮想の研究をまとめたレビュー。「こうしていればもっとよかった」と上向きに考えた人は、次にどうするかの意図が強くなり、文字の並べ替え課題では次の回の成績が上がった実験がある(Roese, 1994)。「もっと悪くなったかも」と下向きに考えても、意図は変わらなかった。テストの結果を受け取った大学生の研究では、反実仮想が多いほど勉強のしかたを変え、自分でどうにかできるという感覚が強い人ほど、次のテストの点が高かった(Nasco & Marsh, 1999)。

対象: 多くの実験と調査のレビュー / 限界: 個々の研究はレビューの記述で確認した。次の機会がない場面や、自分を責めるだけの反実仮想は、行動の助けにならずつらさを増やすとレビュー自身が書いている。

Watkins(2008) [5]

くり返し考えることが役立つか害になるかを分けるのは、考え方の細かさだった。失敗のあとに「なぜこう感じたのか」と抽象的に考えた人のうち、くよくよ考えやすい人では、12時間後の気分の落ち込みが大きかった。「その時どう感じたか」を具体的に考えた人では、この差は出なかった。うつ病の人に「次に何をするか、どう決めているか」と具体的に問いかけると、問題を解く力の落ち込みが小さくなった実験もある。

対象: 多くの実験のレビュー(大学生や、うつ病の経験がある人など) / 限界: 試験の不合格そのものを扱った研究ではない。

Wangら(2019) [4]

アメリカの研究費の審査で、合格ラインのわずかに下で落ちた若手研究者623人と、わずかに上で通った561人を比べた。わずかに落ちた人は、その後10年でこの研究費の申請から完全に離れる確率が12.6%高かった。一方で残った人は、最初の5年に書いた論文のうち、特によく引用された論文の割合が16.1%で、わずかに通った人の13.3%より高かった。

対象: アメリカの若手研究者(1990〜2005年の申請) / 限界: 試験ではなく研究費の審査の話。去った人が抜けたことだけでは差を説明しきれないと著者は分析したが、どこまで一般に当てはまるかはわからないと書いている。

どれも、資格試験にあと数点で落ちた人を直接調べた研究ではありません。実験室の短い課題や、研究者という限られた人の結果です。「あと少しの失敗は、続ければ力になりうる。ただし、やめてしまう人も増える」という程度に受け取るのが確かです。

03 今日からできる小さな一歩あと数点で落ちたら、何から立て直す?

足りなかった点を問題ごとに書き出し、自分で変えられる「もし〜していれば」を3つ書いて「次は〜する」に変えます。変えられないことは1行で終え、次の試験日と最初の行動を決めます。

1

足りなかった点数を、問題ごとに書き出す

「あと2点」を、「どの問題で、何点落としたか」に分けます。点数の通知や自己採点、問題用紙を見て、落とした問題を5つほど書き出します。

所要 15分

2

「もし〜していれば」を3つ、自分で変えられることで書く

「もし計算問題を毎日5問解いていれば」のように、自分の行動を「足す」形で書きます。上向きで、何かを足す形の反実仮想が、次の成績の伸びにつながった実験があります[1]。「運が悪かった」「問題が難しかった」は入れません。

所要 10分

3

「なぜ自分は」を「どの場面で、どう」に書き換える

「なぜ自分はいつも詰めが甘いのか」と浮かんだら、「どの問題で、どんな順番で迷い、どう答えを選んだか」に書き直します。抽象的に「なぜ」を考えると、くよくよしやすい人で落ち込みが残りやすく、具体的に考えると問題を解く力が戻りやすかった実験があります[5]。

所要 5分

4

3つを「次は〜する」の行動に変える

「もし計算問題を毎日解いていれば」を「次は平日の朝、計算問題を5問解く」に。反実仮想は、次にどうするかという意図を通して行動を変えます[1]。いつ・何を・どれだけやるかまで書きます。

所要 5分

5

変えられないことは、1行書いて終える

試験当日の体調や、問題の難しさのように変えられないことは「今回は〜だった」と1行で書いて閉じます。自分を責めるだけの反実仮想は行動の助けにならず、つらさを増やすとされています[1]。

所要 2分

6

次の試験日を決め、1週間以内に最初の1回をやる

反実仮想が行動に結びつくのは、次の機会があるときです[1]。わずかに落ちた人は、やめる人も多かった一方、続けた人は伸びていました[4]。受けるかどうか迷うなら、まず次の申込日だけ確かめ、手順4の行動を1回やってから決めます。

所要 30分

04 続けるためのコツ悔しさが頭から離れないときは?

考える時間と場所を決め、紙に書いて外に出します。同じ場面が何日も浮かび、眠れない・何も手につかない状態が2週間以上続くときは、一人で抱えず相談してください。

  • くり返し「もし〜」を考えすぎることは、不安や落ち込みと結びつきやすいとされています[1]。考えるのは1日15分など時間を決め、手順1〜4のメモに書き足す形にします。
  • 落とした問題の直し方は、試験に落ちた後の間違い直しの研究に、何度も落ちて受け直すか迷うときは再受験の決め方にまとめています。
  • 自分を責める気持ちが強いときは、自分への思いやり(セルフ・コンパッション)の研究も役立ちます。
  • 次の模試や過去問のあとは、振り返りシートで「準備のしかた・ミスの理由・次の作戦」を書くと、手順1〜4を毎回くり返せます。
  • つらさが続くときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談先があります。

05よくある質問

あと少しで落ちた方が、大差で落ちるよりつらいのはおかしい?

おかしくありません。あと少しだったほど「合格していた自分」と比べやすく、落差を大きく感じます。オリンピックでも、銀メダリストより銅メダリストの方が嬉しそうに見えたという研究があり、追試でも支持されています。

「もし〜していれば」と考えるのはやめた方がいい?

やめる必要はありません。自分で変えられる行動について「こうしていれば」と考え、「次は〜する」に結びつけると、次の成績が上がった実験や、勉強のしかたを変えた学生の調査があります。役に立たないのは、自分を責めるだけ、くり返し考えるだけのときです。

あと少しで落ちた経験は、次の合格に有利になる?

わかっていません。研究費の審査でわずかに落ちた若手研究者は、続けた人がその後よい論文を多く出した一方、やめる人も増えました。資格試験で同じことが言えるかは調べられていません。続けるかどうかを決めること自体が分かれ目です。

悔しくて何日も眠れない。どうすればいい?

考える時間を1日15分などに区切り、紙に書いて外に出します。それでも眠れない、何も手につかない状態が2週間以上続くときは、一人で抱えず、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などに相談してください。

出典

  1. Epstude, K., & Roese, N. J. (2008). The functional theory of counterfactual thinking. Personality and Social Psychology Review, 12(2), 168-192. https://doi.org/10.1177/1088868308316091
  2. Medvec, V. H., Madey, S. F., & Gilovich, T. (1995). When less is more: Counterfactual thinking and satisfaction among Olympic medalists. Journal of Personality and Social Psychology, 69(4), 603-610. https://doi.org/10.1037/0022-3514.69.4.603
  3. Hedgcock, W. M., Luangrath, A. W., & Webster, R. (2021). Counterfactual thinking and facial expressions among Olympic medalists: A conceptual replication of Medvec, Madey, and Gilovich's (1995) findings. Journal of Experimental Psychology: General, 150(6), e13-e21. https://doi.org/10.1037/xge0000992
  4. Wang, Y., Jones, B. F., & Wang, D. (2019). Early-career setback and future career impact. Nature Communications, 10, 4331. https://doi.org/10.1038/s41467-019-12189-3
  5. Watkins, E. R. (2008). Constructive and unconstructive repetitive thought. Psychological Bulletin, 134(2), 163-206. https://doi.org/10.1037/0033-2909.134.2.163