やる気・心

資格試験に何度も落ちた。もう一度受ける?やめる?決め方と立て直しの研究(再受験者の合格率・「もったいない」の心理・目標の切りかえ)

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マークシートの解答用紙
Photo: Genppy / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

また落ちた。2回目、3回目となると「もう向いていないのでは」「でもここでやめたら、今までの時間がむだになる」と、気持ちが行ったり来たりします。研究からわかるのは、再受験で点数は上がることが多い一方、合格率は初回より低くなりやすいことです。続けるかどうかは、これまでかけた時間ではなく、これから必要なことで決めます。

3行でわかる

  1. 米国の医師の専門試験(5万人超)では、初回の合格率は平均約84%、筆記試験を受け直した人の合格率は平均36%だった。再受験で点数は上がりやすいが、合格は初回より難しくなる。
  2. 「ここまでやったから」と続けてしまう心理(サンクコスト効果)は、考えや気持ちを見つめ直すと弱まった実験がある。ただしこの効果の測り方には疑問も出ている。
  3. 決め方は、①点数と合格点の差を書く ②差の大きさで分ける ③これから必要な時間で考える ④続けるなら勉強法を変える ⑤受ける回数の上限を先に決める ⑥やめるなら次の目標を決める、の6つ。

01 悩みの正体何度も落ちると、やめるか迷うのはなぜ?

迷いの多くは「今までの時間がもったいない」という気持ちと、「次も落ちるかもしれない」という不安がぶつかるためです。どちらも、次の試験で受かるかどうかとは別の問題です。

すでに使って取り戻せない時間やお金のために、うまくいっていない計画を続けてしまう傾向は「サンクコスト効果」と呼ばれます[7]。何年も勉強した資格ほど、この気持ちは強くなりがちです。

一方で、落ちた直後は気持ちが沈み、自分の力を低く見積もりがちです。だから、決める前に、点数という事実を先に確かめます。1回目に落ちた後の、間違えた問題の直し方は試験に落ちた後の立て直しの記事で紹介しました。この記事は、それを何度か繰り返した後の「続けるか、やめるか」に絞ります。

02 科学的にわかっていること再受験すると、合格しやすくなる?

再受験すると平均では点数が上がります。ただし受け直した人の合格率は、初回に受けた人より低いことが多いです。口頭試験の分析では、点数の伸びの一部は試験ごとのぶれで説明されました。

RaymondとLuciw-Dubas(2010)[1]

米国の医師の6つの専門試験で、5万人を超える受験者の合格率を調べた。初回の合格率は平均約84%。筆記試験を受け直した人の合格率は22〜51%で、平均36%だった。口頭試験で受け直した人の点数の伸びについては、シミュレーションで、約3分の1が試験の点数のぶれ(測定の誤差)だけで説明できると示した。

対象: 米国の医師の専門試験の受験者 / 限界: 医師向けの試験で、日本の資格試験とは受験者も形式も違う。口頭試験では受け直した人の合格率が平均65%と高く、試験の形式で結果が変わる。

Rubrightら(2022)[2]

2008〜2018年に米国の医師国家試験を受けた30万人超を分析した。受け直した人は、2回目以降の受験で一貫して合格率が低かった。どの試験でも、合格した人の多くは4回目までに合格していた。この結果をふまえ、受験回数の上限は6回から4回に減らされた。

対象: 米国の医師国家試験の受験者 / 限界: 試験の運営側による分析で、受験者の勉強のしかたは調べていない。論文の要旨で確認。

Swygertら(2010)[3]

米国の医師国家試験の実技試験を受け直した3,045人では、2回目の点数が平均で上がっていた。前回と同じ患者役や同じ症例に当たった人で特に伸びたわけではなく、問題を覚えていたから上がったとは言えなかった。

対象: 米国の医師国家試験の実技試験の再受験者 / 限界: 模擬患者を診る実技試験で、筆記中心の資格試験とは違う。論文の要旨で確認。

Hausknechtら(2007)[4]

50本の研究(107の集団、13万4,436人)をまとめたメタ分析。能力テストを受け直すと、点数は平均で上がった(補正後の効果量0.26、小さめ)。試験対策の指導を受けたときと、前回と同じ問題だったときは、伸びがより大きかった。

対象: 採用や入学で使われる能力テストの受験者 / 限界: 資格試験ではなく能力テストの研究。論文の要旨で確認。

02 あきらめることの研究あきらめるのは、悪いこと?

届かない目標から手を離す力と、新しい目標に向かい直す力は、どちらも心の健康と結びついていました。結びつきは、向かい直す力の方が強めでした。

Wroschら(2003)[5]、Barlowら(2020)[6]

届かない目標から手を離せる人や、別の目標に向かい直せる人ほど、心の健康の評価が高い傾向があった(3つの研究)。31の集団をまとめたメタ分析では、手を離す力と生活の質の相関はr=0.08、向かい直す力はr=0.19だった。ただし、うつのリスクが高い人の集団では、手を離す力と抑うつの関係が逆向きになった。

対象: 大学生・若い大人と高齢者・子どもが病気の親など / 限界: 同じ時点で測った調査が中心で、あきらめたから元気になったとは言えない。相関はどれも小さい。論文の要旨で確認。

Stroughら(2016)[7]、BiałekとBiesiada(2025)[8]

米国の幅広い年齢の人に、半分まで進んでうまくいっていない計画の例を読んでもらった。「自分の考えや気持ち」に目を向けるよう促された組は、何もしない組や「どう良くするか」を考えた組より、計画をやめる判断をしやすかった。一方、2025年の研究では、サンクコスト効果を測る例え話どうしの一貫性が低く(ω=0.14〜0.57)、同じものを測れているか疑問が示された。

対象: 米国の全国調査の参加者/英語圏のオンライン参加者395人 / 限界: どちらも作られた例え話への答えで、実際の受験の決断ではない。

まとめると、受け直せば点数は上がりやすいものの、「次は必ず受かる」とは言えません。ここで紹介した再受験の研究は、どれも米国の医師向けの試験です。日本の資格試験で同じ数字になるとは限らないので、自分の点数の記録で判断します。

03 今日からできる小さな一歩受け続けるかやめるか、どう決める?

点数と合格点の差を書き、差の大きさと残りの時間で決めます。続けるなら勉強法を変えて受ける回数の上限を先に決め、やめるなら次の目標を同時に決めます。

1

これまでの点数と合格点の差を、回ごとに書く

「1回目 −18点、2回目 −9点、3回目 −11点」のように並べます。科目別の点数がわかる試験なら、科目ごとにも書きます。気持ちではなく、数字から始めます。

所要 15分

2

差が「ぶれの範囲」か「大きく足りない」かで分ける

医師の口頭試験の分析では、受け直したときの点数の伸びの約3分の1が、試験ごとのぶれで説明できました[1]。点数は実力が同じでも上下します。合格点のすぐ下を行き来しているなら、あと一歩の可能性があります。毎回大きく足りないなら、同じやり方での受け直しは見直しが必要です。

所要 5分

3

「これまで」ではなく「これから」の時間で考える

「ここまでやったから」と浮かんだら、その考えと気持ちをそのまま紙に書き出し、眺めてみます。実験では、自分の考えや気持ちに目を向けた組の方が、うまくいかない計画をやめる判断をしやすくなりました[7]。そのうえで「次の試験までに必要な時間を、今の生活から出せるか」だけを考えます。

所要 10分

4

続けるなら、勉強の中身を1つ以上変える

受け直しの伸びは、対策の指導を受けたときに大きくなりました[4]。同じ教材を同じように読み直すのではなく、間違えた問題の解き直しや本番形式の演習に時間を移します。見直し方は勉強時間を増やしても点が伸びないときの記事で紹介しています。

所要 30分(計画の見直し)

5

受ける回数か期限の上限を、先に決めておく

米国の医師国家試験では、合格した人の多くが4回目までに合格していました[2]。資格試験は種類ごとに違いますが、「あと2回」「来年の秋まで」のように上限を落ち着いているうちに決め、紙に書いておきます。

所要 5分

6

やめる・休むなら、次の目標を同じ日に決める

心の健康との結びつきは、目標から手を離す力より、別の目標に向かい直す力の方が強めでした[6]。別の資格、同じ分野の易しい試験、仕事で使う範囲だけを学ぶなど、次に向かう先を1つ決めます。

所要 15分

04 続けるためのコツ受け直すと決めた後、気持ちを保つには?

次の試験日から逆算した計画を立て、点数の記録を続けます。自分を責めず、決めた上限を守ることで、迷いを毎日くり返さずにすみます。

  • 試験日から逆算して計画を作り直す。やり方は試験日から逆算する計画の記事が参考になります。
  • 模試や過去問の点数を、合格点との差で毎回記録する。差が縮んでいるかで、続けるかどうかを判断できる。
  • 落ちた自分を責める気持ちが強いときは、自分への思いやりの記事も読んでみてください。
  • 迷いが出るたびに決め直さない。上限の回数か期限が来たときに、もう一度だけ見直す。

落ちたことで気分の落ち込みや眠れない日が2週間以上続くときは、一人で抱えずに相談してください(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)。

05よくある質問

資格試験に何回落ちたら、あきらめた方がいいですか?

決まった回数はありません。米国の医師国家試験では、合格した人の多くが4回目までに合格していましたが、日本の資格試験に当てはまる数字ではありません。回数よりも、合格点との差が縮んでいるか、次の試験までの時間を生活から出せるかで判断し、上限は落ち着いているうちに決めておきましょう。

2回目の受験は、1回目より受かりやすいですか?

点数は上がることが多いものの、合格率は初回より低くなりやすいです。米国の医師の専門試験では、初回の合格率が平均約84%だったのに対し、筆記試験を受け直した人は平均36%でした。同じやり方で受け直すより、間違えた問題の直し方や演習の比重を変えることが大切です。

「今までの勉強がむだになる」と思うと、やめられません。

取り戻せない時間やお金のために続けてしまう傾向は「サンクコスト効果」と呼ばれます。実験では、自分の考えや気持ちに目を向けた人の方が、うまくいかない計画をやめる判断をしやすくなりました。また、資格をやめても、学んだ知識は仕事や次の試験で使えます。

出典

  1. Raymond, M. R., & Luciw-Dubas, U. A. (2010). The second time around: Accounting for retest effects on oral examinations. Evaluation & the Health Professions, 33(3), 386-403. https://doi.org/10.1177/0163278710374855
  2. Rubright, J. D., Ong, T. Q., Jodoin, M. G., Johnson, D. A., & Barone, M. A. (2022). Revisiting retake policy: Analyzing the success rates of examinees with multiple attempts on the United States Medical Licensing Examination. Academic Medicine, 97(8), 1219-1225. https://doi.org/10.1097/ACM.0000000000004713
  3. Swygert, K. A., Balog, K. P., & Jobe, A. (2010). The impact of repeat information on examinee performance for a large-scale standardized-patient examination. Academic Medicine, 85(9), 1506-1510. https://doi.org/10.1097/ACM.0b013e3181eadb25
  4. Hausknecht, J. P., Halpert, J. A., Di Paolo, N. T., & Moriarty Gerrard, M. O. (2007). Retesting in selection: A meta-analysis of coaching and practice effects for tests of cognitive ability. Journal of Applied Psychology, 92(2), 373-385. https://doi.org/10.1037/0021-9010.92.2.373
  5. Wrosch, C., Scheier, M. F., Miller, G. E., Schulz, R., & Carver, C. S. (2003). Adaptive self-regulation of unattainable goals: Goal disengagement, goal reengagement, and subjective well-being. Personality and Social Psychology Bulletin, 29(12), 1494-1508. https://doi.org/10.1177/0146167203256921
  6. Barlow, M. A., Wrosch, C., & McGrath, J. J. (2020). Goal adjustment capacities and quality of life: A meta-analytic review. Journal of Personality, 88(2), 307-323. https://doi.org/10.1111/jopy.12492
  7. Strough, J., Bruine de Bruin, W., Parker, A. M., Karns, T., Lemaster, P., Pichayayothin, N., Delaney, R., & Stoiko, R. (2016). What were they thinking? Reducing sunk-cost bias in a life-span sample. Psychology and Aging, 31(7), 724-736. https://doi.org/10.1037/pag0000130
  8. Białek, M., & Biesiada, E. (2025). On the low reliability of sunk cost vignettes. Brain Sciences, 15(8), 808. https://doi.org/10.3390/brainsci15080808