風邪の日・治りかけの日の勉強メニュー表と体調つき記録表。新しい単元より見直しを短く、治って1週間は模試の点で判断しない(風邪と頭の働きの研究から)

鼻がつまって、のどが痛い。でも試験まで日がないから、今日も勉強したい。風邪の日に机に向かうと、いつもより進まないうえに、休んだら休んだで不安になります。研究では、風邪で落ちやすいのは頭の働きの「速さ」で、覚えたことを正しく思い出す力は比較的保たれていました。この記事では、その結果をもとに、体調の段階ごとの勉強メニュー表と、体調の欄がついた記録表を作りました。
3行でわかる
- 風邪をひいた若い大人48人を、健康なままの141人と比べた研究では、風邪の人は反応が遅くなり、新しい情報を取り込むのも遅かった。体の症状の重さと、頭の働きの遅れは関係していなかった。
- いっぽう、覚えたことを思い出す正確さは、風邪では落ちにくいとされる。熱が出るインフルエンザのような病気では、注意の働きへの影響がより大きかった。
- 表1で体調に合うメニューを選び、表3に体調も一緒に記録する。治った後の1週間ほどは、模試の点で実力を判断しない。
01 この表でできること風邪の日は、勉強しても意味がない?
意味がないわけではありません。ただ、頭の働きの速さが落ちやすいので、いつもと同じメニューでは進みが悪く、点数も実力より低く出がちです。体調に合わせて、やることを入れ替えるための表です。
ミネソタ大学の学生3,249人を半年追った調査では、91%が少なくとも1回は風邪かインフルエンザのような病気にかかりました。そのうち27.8%が「テストの出来が悪かった」、46.3%が「課題の出来が悪かった」と答えています[1]。
表は「熱があるか」「鼻やのどだけか」「治りかけか」の3つの段階に分けています。最後の記録表で、体調と勉強の結果を並べて残します。
02 表の根拠になった研究風邪で、頭の働きの何が落ちる?
落ちやすいのは、反応の速さ、新しい情報を取り込む速さ、注意を保つ力です。覚えたことを思い出す正確さは保たれやすいとされます。影響は症状がなくなった後も、しばらく続くことがありました。
Nicholら(2005)[1]
アメリカのミネソタ大学の学生に、11月から4月まで毎月、風邪やインフルエンザのような病気について答えてもらった。91%が少なくとも1回かかり、全員を合わせて寝込んだ日は6,023日、休んだ授業の日は4,263日になった。27.8%がテストで、46.3%が課題で出来が悪かったと答えた。熱が出るインフルエンザのような病気は、風邪よりずっと影響が大きかった。
対象: 参加した4,919人のうち、最後まで答えた3,249人(平均22.7歳) / 限界: すべて本人の回答による調査で、成績そのものを測ったわけではない。
Smith(2012)[2]
健康なときに一度テストを受けた若い大人が、風邪をひいたらもう一度テストを受けた。風邪の人は健康なままの人に比べ、眠気が強く気分も沈み、反応が遅かった。新しい情報を取り込むのも、文の正しさを判断する問題も遅かった。気分の落ち込みは症状が重いほど大きかったが、頭の働きの遅れは症状の重さとも、睡眠時間とも関係していなかった。
対象: 18〜30歳の189人(風邪48人、健康な141人) / 限界: 調べたのは主に反応の速さで、勉強の成績ではない。
Bucksら(2008)[3]
若い人と年配の人80人が最初にテストを受け、風邪の症状が出た人と、年齢などをそろえた健康な人がもう一度テストを受けた。健康な人は2回目に記憶を引き出す速さが上がったが、風邪の人は熱がなくても上がり方が小さかった。この差は年配の人でより大きかった。
対象: 比べられたのは風邪21人と健康な21人(若い人の平均20.3歳、年配の人の平均64.3歳) / 限界: 人数が少ない。
Smith(2013)[4]
風邪とインフルエンザが頭の働きに与える影響の、25年分の研究をまとめた総説。風邪では手と目の動きの速さが落ち、インフルエンザでは注意を保つ課題が落ちやすかった。記憶の正確さは、風邪では落ちていなかった。長時間の作業やお酒が重なると、遅れはさらに大きくなった。症状が消えて1週間たっても、遅れが残っていた研究もある。
対象: 実験で風邪をうつした研究と、自然にかかった人の研究 / 限界: 著者自身の研究が中心のまとめ。初期の実験は、インフルエンザ3人と健康な7人を比べるなど人数が少ない。
ここで紹介した研究が測ったのは、主に反応の速さや短い記憶の課題です。風邪の日に勉強した内容が、どれだけ身につくかを直接調べた研究ではありません。表はこの限界をふまえ、「速さが落ちても困らない勉強」を選ぶ形にしています。
03 使える表体調ごとに、何を勉強する?
熱があるときは休みます。鼻やのどだけの風邪なら、時間を計らない見直しと思い出す練習を短く行います。治りかけの時期は、いつものメニューに戻しても、模試の点で実力を判断しません。
表1 体調の段階ごとの勉強メニュー表。研究の結果をもとに、このサイトが勉強の選び方としてまとめたものです。
| 体調の段階 | 研究でわかっていること | 勉強のメニュー | 避けること |
|---|---|---|---|
| A 熱がある・体がだるい | インフルエンザのような病気は、風邪より影響がずっと大きかった[1]。注意を保つ課題が落ちやすい[4] | 勉強は休む | 「遅れを取り戻す」ための長時間の勉強 |
| B 鼻・のどだけ(熱はない) | 反応と、新しい情報を取り込む速さが落ちる[2]。記憶の正確さは落ちにくい[4] | 1回15〜20分で、解いたことのある問題の見直し、暗記カードの確認、時間を計らない問題 | 時間を計る演習・模試、初めての難しい単元 |
| C 治りかけ〜治って1週間 | 症状が消えても、遅れが1週間ほど残った研究がある[4] | いつものメニューに戻す。新しい単元も再開してよい | この時期の模試や小テストの点だけで、実力や計画を見直すこと |
1回の時間や「熱がある日は休む」という線引きは、研究の数字ではなく、このサイトが決めた目安です。症状が重いとき・長引くときは、勉強より医療機関への相談を先にしてください。
03 つづき風邪の日に、とくに避けたいことは?
長時間続けて勉強すること、寝る時間を削ること、お酒を飲むことです。風邪の影響は、ほかの負担と重なると大きくなっていました。
表2 風邪の日のチェック表。勉強を始める前に、3つを確かめます。
| 確かめること | 根拠 | ○ |
|---|---|---|
| 1回の勉強を短く区切り、間に休みを入れる予定にした | 風邪の遅れは、1日の中で長く作業するほど大きくなった[4] | |
| 今夜はいつもの時刻に寝る | 風邪の影響の一部は、睡眠の乱れを通じて起きる可能性があるとされる[4] | |
| 今日はお酒を飲まない | 病気の人だけ、少量のお酒で選んで反応する課題が42%遅くなった[4] | |
| 静かな場所で勉強する | 風邪の人は、騒音の影響を受けやすかった[4] |
お酒と勉強の関係は飲み会の翌日の記事、寝不足の日のメニューは寝不足から立て直す記事でもくわしく紹介しています。
03 つづき体調も一緒に記録するのはなぜ?
体調の悪い時期の点数を、実力の低下と取り違えないためです。体調の欄があれば、後で点数が下がった理由を見分けられます。
毎日、体調を0〜3で書く
0=元気、1=鼻やのどが少し、2=つらいが熱はない、3=熱がある。段階はこのサイトが決めたものです。
所要 10秒
表1の段階に合わせて、その日のメニューを選ぶ
体調2の日はBのメニュー、3の日は休み、と決めておくと、迷う時間が減ります。
所要 1分
治って1週間後に、もう一度同じ種類の問題を解く
体調が戻った後の点と比べて、計画を見直すかを決めます。
所要 15分
表3 体調つきの勉強記録表(1日1行)。記入例は架空のものです。
| 日付 | 体調(0〜3) | メニュー(表1) | 時間 | 小テスト・模試の点 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 例 1/10 | 0 | いつも | 90分 | 過去問 72% | |
| 例 1/12 | 2 | B | 20分×2 | — | カードの確認だけ |
| 例 1/13 | 3 | A(休み) | 0分 | — | 熱 38度台 |
| 例 1/16 | 1 | C | 60分 | 過去問 61% | 治りかけ。点は参考にしない |
| 例 1/23 | 0 | いつも | 90分 | 過去問 74% | 1/16と同じ種類の問題 |
04 続けるためのコツ休んだ分は、どう取り戻す?
治ってから数日かけて、少しずつ戻します。休んだ日の分を1日に詰め込むと、治りかけの遅れと長時間の負担が重なります。
- 計画は「日数」で数え直す。 休んだ日を計画から外し、残りの日数で割り直します(崩れた計画の作り直し方)。
- 再開の1日目は、休む前の最後の内容の見直しから。 思い出せるかを確かめてから先へ進みます。
- 年齢が上がるほど、ゆとりを多めに。 記憶を引き出す速さの遅れは、年配の人で大きかったと報告されています[3]。
- 試験が近い時期は、体調の欄を必ずつける。 後で点数の上下を落ち着いて見られます。
05よくある質問
風邪の日に覚えたことは、忘れやすいですか?
そう言い切れる研究は見つかりませんでした。研究で落ちていたのは、反応や新しい情報を取り込む「速さ」でした[2]。覚えたことを思い出す正確さは、風邪では落ちにくいとされています[4]。ただし同じ量を覚えるのに時間がかかるので、新しい単元は体調が戻ってからの方が進めやすいでしょう。
症状がなくなったら、もう元どおりですか?
すぐに元どおりとは限りません。風邪の症状が消えて1週間たっても、反応の遅れが残っていた研究があります。一方で、症状が消えた後は、単純な反応の速さ以外にほとんど差がなかった研究もあります[4]。治った直後の模試の点は、参考程度に見るのが安全です。
試験の当日に風邪をひいていたら、どうすればいいですか?
研究からは、速さが落ちやすく、正確さは比較的保たれやすいことがわかっています[2][4]。解ける問題から確実に答える、時間のかかる問題は後に回す、という解く順番を前もって決めておくと落ち着けます。体調不良のときの受験の扱いは、試験ごとに違うので、主催者の案内を確かめてください。
出典
- Nichol, K. L., D'Heilly, S., & Ehlinger, E. (2005). Colds and influenza-like illnesses in university students: Impact on health, academic and work performance, and health care use. Clinical Infectious Diseases, 40(9), 1263–1270. https://doi.org/10.1086/429237
- Smith, A. P. (2012). Effects of the common cold on mood, psychomotor performance, the encoding of new information, speed of working memory and semantic processing. Brain, Behavior, and Immunity, 26(7), 1072–1076. https://doi.org/10.1016/j.bbi.2012.06.012
- Bucks, R. S., Gidron, Y., Harris, P., Teeling, J., Wesnes, K. A., & Perry, V. H. (2008). Selective effects of upper respiratory tract infection on cognition, mood and emotion processing: A prospective study. Brain, Behavior, and Immunity, 22(3), 399–407. https://doi.org/10.1016/j.bbi.2007.09.005
- Smith, A. P. (2013). Twenty-five years of research on the behavioural malaise associated with influenza and the common cold. Psychoneuroendocrinology, 38(6), 744–751. https://doi.org/10.1016/j.psyneuen.2012.09.002


