「インプットよりアウトプットを多くするほうが身につく」は本当?「3対7」の比率と、読む時間・思い出す時間の研究(効く・効かないの判定)

「インプット3、アウトプット7が理想の比率」。勉強法の本やSNSで、こんな話を見かけたことがあるかもしれません。読むより問題を解くほうが身につく、というのは研究でもかなり確かです。けれど「3対7」という数字まで研究で決まっているのでしょうか。比率を調べた古い実験と、新しい研究をあわせて確かめました。判定は「条件しだい」です。
3行でわかる
- 判定:「条件しだい」。思い出す練習(アウトプット)は、同じ時間の読み直しより長く記憶に残る。研究のまとめでは効果は中くらいの大きさで、1日以上あとのテストで差が大きかった。
- けれど「3対7」が最適という結果は見つからなかった。比率を変えた1917年の子どもの実験では、伝記の文章は思い出す時間が6割を超えると成績が頭打ちになった。大人での再現は失敗したと報告されている。
- 読む量を1回から8回まで変えても、思い出す練習の上乗せ分は変わらなかった。比率より「答え合わせをする」「読んだら思い出す、をくり返す」ことのほうが大事。
01 通説の中身「アウトプット7割」の話は、どこまで研究どおり?
「読むより思い出すほうが残る」までは研究どおりです。けれど「何対何が最適」という数字は、今回調べた範囲の研究では決まっていませんでした。比率の話は2つに分けて考える必要があります。
この通説には、2つの主張が混ざっています。1つは「読むより、思い出すほうが身につく」という主張。もう1つは「その最適な割合は3対7だ」という主張です。
1つ目は、研究でくり返し確かめられています。本を閉じて思い出したり、問題を解いたりすると、同じ時間読み直すより記憶に残りやすくなります。これをテスト効果と呼びます[1][2]。
2つ目の「3対7」は話が別です。読む時間と思い出す時間の割合を変えて比べた研究は少なく、いちばん有名なのは100年以上前、1917年に子どもを対象に行われた実験です[1]。この実験の結果は、「7割がいちばん良い」と言えるものではありませんでした。
02 科学的にわかっていること読む時間と思い出す時間、割合で成績は変わる?
思い出す練習は読み直しより残ります。ただし割合を増やすほど良いわけではなく、子どもの実験では6割を超えると頭打ちでした。読む量が多くても少なくても、思い出す練習の上乗せ分は変わりませんでした。
Fraundorfら(2023)[2]
テスト効果の研究をまとめた総説。複数のメタ分析(研究のまとめ)で、思い出す練習は読み直しより長期の記憶に残った。効果の大きさは「中くらい」で、Rowland(2014)のまとめでは効果量0.50、Adesopeら(2017)では0.70。1日以上あとのテストでは0.69、1日未満では0.41と、時間がたつほど差が大きかった。一方、直後のテストでは、思い出す練習は読み直しより成績が低くなりやすい。
対象: 多くの実験研究のまとめ / 限界: 医師の学び直しに向けて書かれた総説。読む時間と思い出す時間の最適な割合は扱っていない。
Gates(1917)/Polack・Miller(2022)の総説による紹介[1]
小学1年生から中学2年生にあたる子どもに、無意味なつづりや短い伝記を覚えてもらった。決まった時間のうち、心の中で暗唱(思い出す練習)にあてる割合を0%から90%まで6段階に変えた。1年生以外のどの学年でも、思い出す時間を増やすと成績が上がった。ただし伝記の文章では、思い出す時間が6割を超えると成績が頭打ちになり、少し下がり始めた。
対象: 1・3・4・5・6・8年生の子ども / 限界: 100年以上前の実験で、読み直す時間をそろえた比較ではない。総説によると、McDermottとNaaz(2014)が大人で行った追試では、基本的な結果は再現されなかった。
Guptaら(2022)[3]
アメリカの大学生が、英単語のペアを覚える前に1回・4回・8回と、読む回数を変えて学んだ。その後、半分を読み直し、半分を思い出す練習(答えを見せる)にあて、2日後にテストした。どの回数でも、思い出す練習のほうが成績が良かった。上乗せ分の大きさは、最初に読んだ回数によって変わらなかった(3つの実験、分析は95人・129人・51人)。読む回数を増やすと、どちらの条件も成績が上がった。
対象: カリフォルニア大学サンディエゴ校の学生 / 限界: 単語のペアを覚える課題。文章を理解する勉強や、計算の解き方で同じになるかはわからない。
Krishnanら(2017)[4]
イギリスの大人36人が、耳で聞いた架空の単語27個を絵と結びつけて覚えた。思い出す練習・まねして言う練習・聞き直しの3つを比べた。思い出す練習が1週間後に有利になる、という事前に登録した予想は支持されなかった。直後のテストでは思い出す練習が聞き直しより良かったが、1週間後には3つの条件で差がなかった。
対象: オックスフォード大学の参加者(18〜40歳) / 限界: 耳で聞いて発音する課題で、人数も少ない。文字で読む教材の結果とは違う可能性がある。
ここで紹介した研究は、単語や短い文章を数分〜数日で覚える実験と、その総説です。何か月も資格や語学を独学する社会人で、読む時間と解く時間の割合を変えて比べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
03 今日からできる小さな一歩読む時間と思い出す時間、どう配分すればいい?
比率を守るより、「少し読んだら本を閉じて思い出し、答え合わせをする」を短い区切りでくり返します。思い出せなかった所だけ読み直し、日をあけてもう一度思い出します。
1回目は、まず一通り読む
初めての単元は、思い出す材料がありません。まず1節を読みます。読む回数が多くても少なくても、思い出す練習の効き目は変わりませんでした[3]。
所要 1節10〜15分
本を閉じて、思い出せることを書き出す
読んだ節の要点や用語を、何も見ずに書きます。白紙でも、問題集の問題でもかまいません。
所要 5分
必ず答え合わせをする
書いたものを教材と見比べ、抜けや誤りに印をつけます。答えを確かめない思い出す練習は、思い出せた所しか強くなりません。思い出せなくても、答えを見れば読むだけより残りました[2]。
所要 3分
印をつけた所だけ読み直す
全部を読み直す必要はありません。思い出せなかった所に読む時間を回します。
所要 5分
翌日以降に、もう一度思い出す
差が大きく出たのは、1日以上あとのテストでした[2]。次の日の最初の5分に、前日の節を何も見ずに思い出します。
所要 5分
04 続けるためのコツ思い出す練習がつらいときは?
直後は読み直しのほうがよくできた気がします。それでも、日をあけたテストで差が出るのが思い出す練習です。手応えではなく、翌日に思い出せた数で判断します。
- 思い出す練習は、その場では読み直しより成績が低く出やすい[2]。「できない」と感じるのは、効いていない証拠ではない。
- 割合を計算しなくていい。1回の勉強で「読む→閉じて思い出す→答え合わせ」が1周できていれば十分。
- 耳で覚える単語のように、思い出す練習の差が出にくい課題もある[4]。1つの方法にこだわらず、翌日の小テストで比べる。
- 思い出す練習の基本は 読み返すより思い出す研究、白紙に書き出す型は 暗記ノートのテンプレート にまとめている。
05よくある質問
「インプット3:アウトプット7」は守ったほうがいい?
守る必要はありません。思い出す練習が読み直しより残ることは確かですが、3対7が最適という研究は今回調べた範囲では見つかりませんでした。比率を変えた1917年の子どもの実験では、伝記の文章は思い出す時間が6割を超えると成績が頭打ちになり、大人の追試では結果が再現されなかったと報告されています。
まったく読まずに、いきなり問題を解いてもいい?
初めての内容なら、まず一通り読むか、解いたあとに必ず解説を読みます。答えを確かめない思い出す練習は、思い出せた所しか強くなりません。わからない問題でも、解こうとしたあとに答えを見れば、読むだけより残ったという研究がまとめられています。
読む回数を減らしてまで、問題を解く時間を増やすべき?
読む回数を減らす必要はありません。単語のペアの実験では、読む回数を1回から8回まで増やすと成績は上がり、思い出す練習の上乗せ分は読む回数に関係なく同じでした。読むことと思い出すことは、取り合いではなく両方とも役に立ちます。
問題集を何周もしていれば、アウトプットは十分?
答えを覚えてしまった問題を解き直すだけだと、思い出す練習にならないことがあります。問題文を少し変えたり、選択肢を隠して答えを先に書いたりすると、思い出す練習になります。
出典
- Polack, C. W., & Miller, R. R. (2022). Testing improves performance as well as assesses learning: A review of the testing effect with implications for models of learning. Journal of Experimental Psychology: Animal Learning and Cognition, 48(3), 222–241. https://doi.org/10.1037/xan0000323
- Fraundorf, S. H., Caddick, Z. A., Nokes-Malach, T. J., & Rottman, B. M. (2023). Cognitive perspectives on maintaining physicians' medical expertise: IV. Best practices and open questions in using testing to enhance learning and retention. Cognitive Research: Principles and Implications, 8, 53. https://doi.org/10.1186/s41235-023-00508-8
- Gupta, M. W., Pan, S. C., & Rickard, T. C. (2022). Prior episodic learning and the efficacy of retrieval practice. Memory & Cognition, 50, 722–735. https://doi.org/10.3758/s13421-021-01236-4
- Krishnan, S., Watkins, K. E., & Bishop, D. V. M. (2017). The effect of recall, reproduction, and restudy on word learning: a pre-registered study. BMC Psychology, 5, 28. https://doi.org/10.1186/s40359-017-0198-8


