講義のノートが追いつかない。書いている間に話を聞き逃す。どう立て直す?キーワードと「?」だけ書いて後で埋める6つの手順(ノートの取り方の研究)

講座やセミナーでノートを取っていると、書いている間に次の話が進んでしまう。書き終えたころには、何の話だったか追えなくなっている。そんな経験から「自分はノートが下手だ」と感じる人は少なくありません。研究から言えるのは、ノートを取ること自体は聞くだけより記憶に残りやすく、講師の言葉をそのまま書き写す量を増やしても成績が上がるとは限らないということです。立て直しは、書く量を減らして聞くことに戻り、抜けた所を講義の後に埋めることから始めます。
3行でわかる
- 45分の講義を聞いた172人の実験では、ノートを取った人のテストは28問中平均19.1問正解で、聞くだけの人(16.6問)より高かった。
- パソコンで打つと手書きより言葉数が多く、講師の言葉そのままの書き写しも多くなったが、テストの成績に差はなかった(142人の追試)。手書きの速さには個人差があり、合う道具は人によって違うと考えられている。
- 立て直しは、①全部書くのをやめてキーワードと「?」だけにする ②録画なら止めて書く ③空欄つきの資料があれば書き込む ④講義の後すぐに「?」を埋める ⑤1週間後に見返す、の順に進める。
01 悩みの正体ノートが追いつかないのは、ノートが下手だから?
下手だからとは限りません。話は書くより速く進むことが多く、全部を書こうとするほど聞く時間が削られます。手書きの速さにも個人差があります。追いつかないのは、やり方と道具の問題であることが多いのです。
講義のノートでは、聞く・大事な所を選ぶ・短くまとめる・書く、を同時に行っています。書くことに頭を使うほど、次の話を聞く余裕は減ります。
特に「先生の言ったことを全部残そう」とすると、書き写すことで手いっぱいになりがちです。追いつかなくなったら、まず「全部書く」という目標そのものを下ろします。
スライドを写真に撮って済ませてしまった場合の立て直しは講座のスライドを写真に撮っただけで、内容を覚えていないの記事で扱いました。この記事では、ノートを取ろうとして追いつかないときに絞ります。
02 科学的にわかっていることノートは全部書けなくても意味がある?
意味はあります。聞くだけよりノートを取ったほうが講義の内容を覚えていました。打ち込むと書く量は増えますが、成績が上がるとは限りません。空欄つきの資料に書き込む方法は、難しい問題の間違いを減らしたという結果があります。
Spencer-MuellerとFenske(2024)[1]
退屈になりやすい45分の講義の録音を、「聞くだけ」「図形を塗る落書き」「自由な落書き」「ノートを取る」の4つのグループに分けて聞かせた。28問のテストの平均正答数は、ノートが19.09問、聞くだけ16.63問、図形の落書き15.95問、自由な落書き15.69問だった。ノートを取った人は、講義中に「心がそれていた」と答えることも最も少なかった。
対象: カナダのゲルフ大学の学部生172人(1グループ43人) / 限界: 講義は1本だけで、テストは講義の直後。ノートを見返す時間はなかった。
Urryら(2021)[2]
「手書きのほうがパソコンよりよく覚える」とした有名な実験(MuellerとOppenheimer、2014)の追試。講義を見ながらパソコン(74人)か手書き(68人)でノートを取り、見返さずに小テストを受けた。パソコンの人は言葉数が多く、講師の言葉をそのまま写した部分も多かったが、小テストの成績は手書きの人と変わらなかった。似た研究8件をまとめた分析でも同じ傾向だった。ノートの言葉数が多い人ほど成績がよかった。
対象: 大学の参加者142人 / 限界: 見返しなしのすぐ後のテスト。「書き写しが多いほど成績が下がる」という元の研究の結果は、この追試でははっきりしなかった。論文の要旨で確認した。
ShimkoとJames(2025)[3]
ADHD(注意欠如・多動症)の診断がある人を多めに含む大学生に、15分の講演動画を、手書き・打ち込み・ノートなしのどれかで見てもらった。ADHDの特徴が強い人ほど手書きが遅く、注意を保ちにくい傾向があった。そうした人は、手書きでも打ち込みでも、ノートを取ったほうがノートなしより多く学んでいた。著者らは、合う書き方は一人ひとりの書く・打つ力によって違う可能性があるとしている。
対象: 大学生 / 限界: 1本の動画を見た直後の小テスト。人数や詳しい数値は、この記事では論文の要旨で確認できた範囲に限っている。
Neefら(2006)[4]
大学の授業の2つのクラスで、要点の一部が空欄になった資料に書き込みながら聞く「ガイドノート」と、全部書かれた資料を配る方法を、講義の前後の小テストで比べた。小テストの平均点に一貫した差はなかったが、分析を求める難しい問題での間違いは、ガイドノートのほうが少なかった。
対象: 大学の授業の受講生 / 限界: 1つの科目の2クラスでの比較。論文の要旨で確認した。
Xuら(2024)[5]
中国の2つの大学の学生189人に、ノートを取りながら動画を見てもらい、1週間後に予告なしでテストをした。メモを取る時間を確保するため、動画は8分20秒から16分34秒にゆっくりにしてあった。テストの前に5分間ノートを見返せたグループでは、ノートの言葉数が多いほど成績がよかった。見返せないグループでは、言葉数との関係ははっきりしなかった。手書きのグループは、見返しの有無にかかわらず、パソコンのグループより成績がよかった。
対象: 中国の大学生189人 / 限界: クラス単位で組を分けたため、組の違いが結果に混ざっている可能性がある。手書きとパソコンの差は、上のUrryらの追試とは結果が分かれている。
まとめると、ノートを取ること自体は、取らないより役に立つという結果はそろっています。一方、手書きとパソコンのどちらがよいかは研究によって結果が分かれています。どれも大学生が1本の講義を聞いた実験で、社会人が何か月も講座を受ける場面に同じ大きさで当てはまるかはわかっていません。
03 今日からできる小さな一歩ノートが追いつかないとき、どう立て直す?
講義中は全部書くのをやめ、キーワードと聞き逃した所の「?」だけにします。録画なら止めて書き、空欄つきの資料があれば書き込みます。講義の後すぐに「?」を埋め、1週間以内に見返します。
「全部書く」をやめ、キーワードと「?」だけにする
文ではなく、用語・数字・矢印だけを書きます。聞き逃した所や意味がわからなかった所には「?」を書いて、すぐに次の話へ耳を戻します。追いつこうとして書き続けるより、聞くことを優先します。
所要 0分(講義中の書き方を変えるだけ)
録画やオンライン講座なら、止めて書く
区切りのよい所で一時停止し、聞いた内容を自分の言葉で1〜2行にまとめてから先へ進みます。研究でも、メモを取る時間を確保するために動画の速さを落としていました[5]。動画の見方はオンライン講座の動画の見方の記事にまとめています。
所要 1区切り1〜2分
資料が先にもらえるなら、空欄つきの枠に書き込む
配布資料やスライドが事前にあれば、見出しだけを先に書き写しておき、講義中は各見出しの下に要点を書き足します。白紙から書くより書く量が減り、聞く余裕が生まれます。空欄に書き込む方法は、難しい問題の間違いを減らしたという結果があります[4]。
所要 講義前に5〜10分
手書きがどうしても遅いなら、打ち込みも試す
打ち込むと書ける量は増え、追試では成績も手書きと変わりませんでした[2]。ただし、書き写すだけにならないよう、短くまとめて打ちます。どちらが合うかは人によって違うと考えられているので[3]、2〜3回の講義でくらべます。
所要 くらべるのに2〜3回の講義
講義が終わったら、すぐ「?」を埋める
講義の直後、記憶が新しいうちに、まず何も見ずに「?」の所を思い出して書きます。思い出せなければ、資料・テキスト・録画で確かめて書き足します。仲間がいれば、その所だけ聞いてもかまいません。
所要 10分
1週間以内に、ノートを見返して思い出す
ノートを見返せたグループでは、書いた量が多いほど1週間後の成績がよかった研究があります[5]。見返すときは、見出しだけを見て中身を思い出してから、ノートで答え合わせをします。見返し方はノート見直し表の記事で紹介しています。
所要 10分
講義中と講義後で、やることを分けておくと迷いが減ります。下の表は研究の結果をもとにした目安で、研究で決まった手順ではありません。
| タイミング | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 講義の前 | 資料の見出しを書き写し、空欄つきの枠を作る | 資料を全部読み込もうとする |
| 講義中 | キーワード・数字・矢印と「?」だけを書く | 話を文のまま全部書き写す |
| 講義の直後 | 何も見ずに「?」を思い出し、資料で確かめて埋める | ノートをきれいに清書し直す |
| 1週間以内 | 見出しだけ見て中身を思い出し、答え合わせする | ノートを眺めて読み返すだけで終える |
04 続けるためのコツノートが崩れても、講座についていくには?
完璧なノートを目標にしないことです。講義中は短く、講義後に10分で埋める、という2段階にしておけば、追いつかない日があっても立て直せます。
- ノートの左端に「?」用の列を空けておき、講義後にそこだけ見ればよいようにする。
- きれいに清書する時間があれば、その時間を思い出す練習に回す。
- 手書きと打ち込みは、講座ごとに合うほうを選べばよい。どちらかが正解というわけではない。
- 手書きとパソコンの研究の詳しい比較はノートは手書きとパソコン、どちらが覚えられるのかの記事にまとめている。
05よくある質問
講義のノートが追いつかないとき、全部書かなくても大丈夫ですか?
全部書けなくても、取らないよりはよいと考えられます。45分の講義を聞いた172人の実験(Spencer-MuellerとFenske、2024)では、ノートを取った人は28問中平均19.1問正解で、聞くだけの人の16.6問より高くなりました。書いた量が多い人ほど成績がよい傾向を示した研究もあるので、講義中はキーワードと「?」だけにして、講義の後に埋めて量を補います。
手書きが遅いので、パソコンでノートを取ってもいいですか?
選択肢になります。142人の追試(Urryら、2021)では、パソコンの人は手書きより言葉数が多く、小テストの成績は変わりませんでした。ただし、手書きのほうが1週間後の成績がよかった研究もあり、結果は分かれています。2〜3回の講義でくらべて、自分に合うほうを選びます。
聞き逃した部分は、どうすればいいですか?
講義中は「?」の印だけ書いて、すぐ次の話に耳を戻します。講義が終わったらすぐ、まず何も見ずに思い出し、それから資料やテキスト、録画で確かめて書き足します。追いつこうとして書き続けると、その後の話も聞き逃しやすくなります。
ノートはきれいにまとめ直したほうがいいですか?
きれいに清書する必要はありません。見返すときは、見出しだけを見て中身を思い出し、ノートで答え合わせをするほうが、眺めて読み返すより記憶に残りやすいと考えられます。思い出す練習については思い出す練習と読み返しの記事で紹介しています。
出典
- Spencer-Mueller, E. K., & Fenske, M. J. (2024). Note-taking for the win: Doodling does not reduce boredom or mind-wandering, nor enhance attention or retention of lecture material. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 77(8), 1780–1796. https://doi.org/10.1177/17470218231222402
- Urry, H. L., Crittle, C. S., Floerke, V. A., Leonard, M. Z., Perry, C. S., Akdilek, N., ... Zarrow, J. E. (2021). Don't ditch the laptop just yet: A direct replication of Mueller and Oppenheimer's (2014) Study 1 plus mini meta-analyses across similar studies. Psychological Science, 32(3), 326–339. https://doi.org/10.1177/0956797620965541
- Shimko, G. A., & James, K. H. (2025). The effects of notetaking modality and symptoms of attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD) on learning. Educational Psychology, 45(5). https://doi.org/10.1080/01443410.2025.2493257
- Neef, N. A., McCord, B. E., & Ferreri, S. J. (2006). Effects of guided notes versus completed notes during lectures on college students' quiz performance. Journal of Applied Behavior Analysis, 39(1), 123–130. https://doi.org/10.1901/jaba.2006.94-04
- Xu, L., Cai, S., Liu, Y., Chen, J., Peng, S., & Andrasik, F. (2024). The effects of the medium of notetaking on the delayed learning effect of college students: A mediated moderation model. Behavioral Sciences, 14(9), 756. https://doi.org/10.3390/bs14090756


