「知らない単語は、答えを見る前に意味を当ててみると覚えやすい」は本当?推測してから答えを見る学び方の研究(効く・効かないの判定)

知らない単語に出会ったら、すぐ答えを見ずに、まず意味を当ててみる。外れても、そのほうが記憶に残る。アプリや勉強法の本で見かける考え方です。研究を調べた結論は「条件しだい」でした。推測すると、後で選択肢から意味を選ぶ力は伸びやすい一方、手がかりのない外国語の単語では、意味を自分で思い出す力がかえって落ちた実験があります。
3行でわかる
- 判定:「条件しだい」。推測の後すぐに正解を見ると、意味を「選ぶ」テストでは成績が上がりやすい。
- ただし、フィンランド語の単語の訳を当てずっぽうで書いたポーランドの実験では、意味を「思い出す」成績は、ただ読んだときより低かった(.40と.48)。
- 絵を4つの選択肢から選ぶ形の推測では、思い出す成績も上がった(.41と.31)。推測は、正解をすぐ見ること、絵や選択肢などの手がかりがあることが条件。
01 通説の中身単語の意味は、先に当ててみたほうが覚えやすい?
「外れてもいいから先に答えてみると、正解が記憶に残る」という説です。母国語の関連する言葉どうしでは確かめられていますが、知らない外国語の単語では結果が分かれています。
もとになったのは、答えを知らない問題にまず答えさせ、その後で正解を見せる実験です。間違えても、ただ読むより後のテストの成績が良くなることがありました。こうした効果は「事前テスト効果」や「間違いを生む学習の効果」と呼ばれます。
ところが、効果が安定して出たのは、「花—つぼみ」のように母国語の、もともと関係のある言葉どうしの組み合わせが中心でした。外国語の単語は、知らない人にとって意味の手がかりがありません。そこで推測が役に立つかが、ここ数年の研究で確かめられてきました。
02 科学的にわかっていること外国語の単語で推測すると、記憶はどう変わる?
正解をすぐ見る形なら、意味を選ぶテストでは推測が有利でした。一方、文字だけの単語を当てずっぽうで推測した実験では、意味を思い出す成績が読むだけより低くなりました。
Butowskaら(2022)[1]
フィンランド語を知らないポーランドの学生・卒業生162人が、3つの実験でフィンランド語の名詞64語を学んだ。半分は8秒以内に訳を推測して入力し、その後5秒正解を見た。残り半分は単語と訳を13秒読んだ。実験1(58人)では、学び直しをしない単語で、意味を4択で選ぶテストは推測が上(.92と.86)だったが、訳を思い出すテストは読むほうが上(.48と.40)。もう一度学び直す機会を設けても、この差は消えなかった。
対象: ポーランドの学生・卒業生(実験1は58人) / 限界: 1回の短い実験で、テストは同じ日。推測が当たったのは0.5%ほどで、ほぼすべてが外れだった。著者らは「推測は外国語の単語の学び方として良い方法とは言えない」と結論づけている。
Butowskaら(2022)の実験4[1]
同じ手順で、母国語の弱く関係する言葉どうしを学ぶと、今度は推測のほうが思い出す成績が良かった(.69と.58)。推測が役に立つかは、覚える組み合わせに手がかりがあるかで変わった。
対象: 61人 / 限界: 外国語ではなくポーランド語どうしの組み合わせ。
ChuaとPan(2026)[2]
スペイン語を知らない英語圏の大人が、スペイン語の名詞36語を学んだ。単語を見て4枚の絵から意味を選び、すぐ正解を見る形の推測は、読むだけより成績が良かった。実験1(58人)では、意味を思い出すテストが.41と.31、選ぶテストが.92と.81。4つの実験を通じた思い出すテストの効果量(差の大きさの目安)は0.18〜0.40で、小さめだった。
対象: オンラインで募った21〜45歳の大人(4つの実験で計341人) / 限界: テストは約5分後で、長く覚えているかは調べていない。推測の正答率が35〜38%と高めで、一部の単語を知っていた可能性も著者らは挙げている。
PottsとShanks(2014)[3]/VaughnとRawson(2012)[4]
珍しい英単語の定義や外国語の訳を、推測してから正解を見る方法は、読むだけより最終テストの成績が良かった[3]。ただし、正解をすぐ見ないで後で学んだ場合は、推測の有利さが逆転した[4]。別の研究の整理でも、推測が役に立つ条件は「推測のすぐ後に正解を見ること」とされている[6]。
限界: Pottsらの最終テストは選択式で、推測が有利に出やすい形だった(Butowskaらの指摘)。VaughnとRawsonの実験1では、元になった実験の推測の有利さ自体が再現されなかった。
どれも1回の実験室の学習で、テストは数分〜同じ日のうちです。何週間もかけて単語帳を回す独学で、推測が成績を上げるかを確かめた研究ではありません。
03 今日からできる小さな一歩推測を単語の勉強にどう使えばいい?
手がかりのある単語や、選択肢・絵がある場面では、推測してからすぐ答えを見ます。手がかりのない単語は先に正しい意味を読み、その後で思い出す練習をします。
手がかりのある単語だけ、先に意味を当てる
例文や絵がある、知っている語に形が似ている。こうした単語は推測してみます。手がかりのある組み合わせでは推測が有利でした[1][2]。似た形の単語そのもので確かめた研究ではありません。
所要 1語5〜8秒
推測したら、すぐ正解を見る
答え合わせを後回しにしない。正解を見るのが遅れると、推測の有利さは消えたり逆転したりした[4][6]。
所要 1語5秒
手がかりのない単語は、先に読んでから思い出す
意味の手がかりがない単語は、当てずっぽうをせず、まず単語と意味を読みます。その後、数分あけて意味を隠し、思い出す練習をします。
所要 10語で5分
「推測は効かない気がする」という感覚を当てにしない
外れた単語は「覚えていない」と感じやすい。けれど実際の成績とずれることがある[5]。効いたかどうかは、翌日の小テストの結果で判断します。
所要 翌日3分
04 続けるためのコツ推測と思い出す練習は、どう組み合わせる?
推測は最初の出会いに少し使うだけにし、記憶を固めるのは思い出す練習と間をあけた復習に任せます。
- 覚え方の土台は「思い出す・間をあける」。研究で確かめられた方法は英単語の効率的な覚え方にまとめています。
- 思い出せたかを記録する。英単語の復習スケジュール表と記録表で、推測した単語と読んだ単語の結果を比べられます。
- 読む前の問題にも使える。教科書を読む前に問題を解く方法は事前テストの記事で扱っています。
- 何度やっても覚えられない単語は。ヒントを少しずつ消して書く練習を試してください。
05よくある質問
知らない単語は、意味を推測してから答えを見たほうが覚えられる?
条件しだいです。意味を選ぶテストでは推測が有利になりやすい一方、文字だけの外国語の単語を当てずっぽうで推測した実験では、意味を思い出す成績は読むだけより低くなりました(.40と.48)[1]。絵の選択肢から選ぶ形では、思い出す成績も上がりました[2]。
単語アプリの「選択肢から意味を選ぶ問題」は意味がある?
短い時間の実験では効果がありました。スペイン語の単語を見て4枚の絵から意味を選び、すぐ正解を見た場合、読むだけより思い出す成績も選ぶ成績も良くなりました[2]。ただしテストは約5分後で、長く覚えているかはまだわかっていません。
間違えた答えが記憶に残ってしまわない?
外国語の単語の実験では、テストで自分の推測を思い出せた単語は、思い出せなかった単語より正解しやすい傾向がありました(.37と.21)。それでも、読んだ単語より成績が良くはなりませんでした[1]。手がかりのない単語は、先に正しい意味を読むほうが確実です。
出典
- Butowska, E., Hanczakowski, M., & Zawadzka, K. (2022). You won't guess that: On the limited benefits of guessing when learning a foreign language. Memory & Cognition, 50(5), 1033–1047. https://doi.org/10.3758/s13421-021-01254-2
- Chua, T. J. E., & Pan, S. C. (2026). Duolingo-inspired pretesting with words and pictures improves vocabulary learning. Cognitive Research: Principles and Implications, 11, 20. https://doi.org/10.1186/s41235-026-00708-y
- Potts, R., & Shanks, D. R. (2014). The benefit of generating errors during learning. Journal of Experimental Psychology: General, 143(2), 644–667. https://doi.org/10.1037/a0033194
- Vaughn, K. E., & Rawson, K. A. (2012). When is guessing incorrectly better than studying for enhancing memory? Psychonomic Bulletin & Review, 19(5), 899–905. https://doi.org/10.3758/s13423-012-0276-0
- Yang, C., Potts, R., & Shanks, D. R. (2017). Metacognitive unawareness of the errorful generation benefit and its effects on self-regulated learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 43(7), 1073–1092. https://doi.org/10.1037/xlm0000363
- Brod, G. (2021). Predicting as a learning strategy. Psychonomic Bulletin & Review, 28(6), 1839–1847. https://doi.org/10.3758/s13423-021-01904-1


