記憶・覚え方

場所法(記憶の宮殿)のルート表と記録表。よく知る道順に10か所を決め、順番のある一覧を覚える(場所法の研究から)

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家の中の廊下と階段の手すり
Photo: w_lemay / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

手順や項目の並びを、順番どおりに覚えたい。でも、10個を超えたあたりで、どこかが抜けてしまう。そんなときに試せるのが、よく知っている道順に覚える物を置いていく「場所法」です。比較試験をまとめた分析では中くらいの効果があり、道順を固定して練習を重ねるほど使いやすくなります。この記事では、場所法の研究をもとに、道順を決める「ルート表」と、思い出せたかを残す「記録表」を作りました。

3行でわかる

  1. 場所法は、13のランダム化比較試験をまとめた分析で中くらいの効果(g = 0.65)。ただし研究の多くは大学で行われ、偏りのおそれが高い研究が大半だった。
  2. 場所法を6週間(30分×40回)練習した17人は、72語のテストでその日に思い出せた数が平均25.2語から62.2語に増え、4か月後も50.3語(16人)だった。
  3. 表1で道順と地点を10か所決め、表2で「何個・どこで抜けたか」を記録する。くり返し使う道順でも、混ざりやすさが特に増えるわけではなかった。

01 この表でできること場所法は、どんなものを覚えるのに向いている?

順番のある項目の一覧(手順・分類・話す順番など)に向いています。道順の地点が、思い出すときの手がかりになるからです。ただし、練習なしですぐ使える方法ではありません。

場所法(記憶の宮殿とも呼ばれる方法)は、自宅の玄関から台所までのような、よく知っている道順を頭の中で歩き、各地点に覚えたい物の映像を置いていく方法です。思い出すときは、同じ道順をもう一度たどり、置いた物を「拾って」いきます[2]。

うまくいかない原因の多くは、道順があいまいなことです。地点の数や順番がその日ごとに変わると、手がかりになりません。だから先に表で道順を固定し、毎回同じ地点を使えるようにします。

語呂合わせなど記憶術全体の効き方は 語呂合わせ・イメージで覚える方法は効くのか にまとめています。この記事は、その中の場所法を表にして使う道具です。

02 表の根拠になった研究場所法は、研究でどのくらい効くとわかっている?

複数の比較試験をまとめた分析で中くらいの効果があり、6週間の練習で4か月後まで成績が残った実験もあります。一方で、研究の質と、対象が大学生中心である点には注意が必要です。

TwomeyとKroneisen(2021)[1]

場所法の13のランダム化比較試験(くじ引きで組を分けた実験)をまとめた分析。効果の大きさは g = 0.65(95%信頼区間 0.45〜0.85)で、中くらいだった。発表の偏りを補正したり、1本ずつ除いたりしても、効果の大きさはほぼ変わらなかった。

対象: 13の比較試験(大半が大学で実施) / 限界: ほとんどの研究が、組分けのくじの作り方や割り当ての隠し方を報告しておらず、偏りのおそれが高いと判定された。

Wagnerら(2021)[2]

記憶術を使ったことのない人を3つの組に分け、6週間で30分×40回の場所法の練習、ワーキングメモリ(頭の中で情報を一時的に保つ力)の練習、何もしない、のどれかを行った。72個の具体的な名詞を覚えるテストで、場所法の組がその日に思い出せた数は、平均25.2語から62.2語に増えた。24時間後のテストでは16.1語から56.2語。4か月後も50.3語(16人)で、ほかの2組(30.4語と27.4語)より多かった。

対象: 場所法の組17人、ワーキングメモリの組16人、何もしない組17人 / 限界: 覚えたのは単語の一覧で、意味の理解が要る教科書の内容ではない。1つの研究チームの1回の実験。

Qureshiら(2014)[3]

医学生がインスリンと糖尿病を学ぶ授業で、講義のあとに自習をした組と、講義のあとに場所法の「記憶の宮殿」を自分たちで作って教え合った組を比べた。場所法の組の方が、評価テストの成績がはっきり高かった。

対象: 医学部の学生(2つの組) / 限界: 要旨で確認できた範囲では、組の分け方や人数はわからない。場所法の組は教え合う活動も加わっており、場所法だけの効果とは言い切れない。

MassenとVaterrodt-Plünnecke(2006)[4]

同じ地点を何度も使うと、前に置いた物と混ざって思い出しにくくなる(先に覚えたものが邪魔をする「順向干渉」)のではないか、を調べた実験。場所法は、ただくり返す方法より多く思い出せた。同じ分野の言葉の一覧を続けて覚えると混ざりやすくなったが、その混ざりやすさは場所法で特に大きくはならなかった。

対象: 実験の参加者(人数は要旨で確認できていない) / 限界: 短い単語の一覧を何回か覚える実験で、何か月も同じ道順を使い続けた場合はわからない。

これらは、主に大学生が実験室や授業で単語の一覧や決まった内容を覚えた結果です。社会人が仕事の合間に資格の勉強をするような、長い期間の独学で同じ効果が出るかは、まだ確かめられていません。

03 ルート表と記録表の使い方場所法の道順は、どうやって決めて使う?

表1で、よく知っている道順に10か所の地点を決めて固定します。覚える日は表2に「何個中何個・どこで抜けたか」を書き、抜けた地点の映像だけを作り直します。

表1 ルート表(最初に1回作る。例は自宅)

番号地点目印(はっきり見える物)置く物(その日に書く)
1玄関のドアドアノブ 
2靴箱一番上の棚 
3廊下照明のスイッチ 
4洗面所鏡 
5浴室浴槽のふち 
6トイレ便座のふた 
7台所冷蔵庫の扉 
8台所流し 
9居間テレビ台 
10居間窓のカーテン 

地点は、通る順番が迷わない場所にします。似た地点(同じ形の棚が2つなど)は区別しにくいので避けます。最初の1回は、置く物を空にしたまま、道順を3回頭の中で歩き、番号どおりに言えるか確かめます。

表2 記録表(覚えるたびに1行)

日付覚えた一覧その日翌日1週間後抜けた地点
10/21手順書の10項目9/108/10 4・8
  /10/10/10 
  /10/10/10 
1

道順を決めて、表1に10か所書く

自宅・通勤路・職場など、目を閉じても歩ける道順を選びます。番号どおりに3回言えたら完成です。

所要 10分(最初の1回だけ)

2

覚えたい一覧を、地点に1つずつ置く

項目を目印と結びつけた、少し大げさな場面にします(例: 冷蔵庫の扉に「承認」の大きなはんこが押してある)。置く物の欄に短く書きます。

所要 10〜15分

3

何も見ずに道順をたどり、思い出せた数を書く

その日、翌日、1週間後に、紙を隠したまま一覧を書き出します。抜けた地点の番号を表2に残します。

所要 各3分

4

抜けた地点の場面だけ作り直す

何度も抜ける地点は、目印が弱いか、場面がぼんやりしています。目印を変えるか、場面を動きのあるものにします。

所要 5分

04 続けるためのコツ場所法がうまく使えないときは?

場所法自体の練習が要る方法なので、最初は手ごたえが小さくて当然です。意味の理解が要る内容は、場所法だけに頼らず、思い出す練習と組み合わせます。

  • 研究で成績が大きく伸びたのは、30分×40回の練習のあとでした[2]。数回で「向いていない」と決めず、表2の数字の変化を見ます。
  • 道順は使い回してかまいません。ただ、同じ分野の似た一覧を続けて置くと混ざりやすくなります[4]。分野ごとに別の道順を用意すると区別しやすくなります。
  • 場所法は「順番に並んだ項目」を覚える道具です。用語の意味や解き方は、暗記の自己チェック表 のように、答えを隠して思い出す練習で確かめます。
  • 一覧が長いときは、1つの道順に詰め込まず、道順を分けて区切ります。

05よくある質問

場所法は、記憶力に自信がない人でも使えますか?

使えます。研究では、記憶術を使ったことのない人が6週間練習し、72語のテストでその日に思い出せる数が平均25.2語から62.2語に増えました。ただし、これは30分×40回の練習をしたあとの結果です。

場所法で覚えれば、試験に受かりますか?

場所法が効くと確かめられているのは、主に単語や項目の一覧の記憶です。理解や応用が問われる問題の成績まで上がるかは、研究ではまだはっきりしていません。思い出す練習や過去問と組み合わせてください。

同じ道順を何度も使うと、前に覚えたものと混ざりませんか?

短い一覧を何回か覚えた実験では、同じ地点をくり返し使っても、混ざりやすさが場所法で特に増えることはありませんでした。混ざりやすくなったのは、同じ分野の似た一覧を続けて覚えたときで、これはほかの覚え方でも同じでした。

出典

  1. Twomey, C., & Kroneisen, M. (2021). The effectiveness of the loci method as a mnemonic device: Meta-analysis. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 74(8), 1317–1326. https://doi.org/10.1177/1747021821993457
  2. Wagner, I. C., Konrad, B. N., Schuster, P., et al. (2021). Durable memories and efficient neural coding through mnemonic training using the method of loci. Science Advances, 7(10), eabc7606. https://doi.org/10.1126/sciadv.abc7606
  3. Qureshi, A., Rizvi, F., Syed, A., Shahid, A., & Manzoor, H. (2014). The method of loci as a mnemonic device to facilitate learning in endocrinology leads to improvement in student performance as measured by assessments. Advances in Physiology Education, 38(2), 140–144. https://doi.org/10.1152/advan.00092.2013
  4. Massen, C., & Vaterrodt-Plünnecke, B. (2006). The role of proactive interference in mnemonic techniques. Memory, 14(2), 189–196. https://doi.org/10.1080/09658210544000042