暑い部屋だと勉強がはかどらないのはなぜ?室温と頭の働きの研究(効きにくいのに気づきにくい理由)

夏の夜、机に向かっても同じ行を何度も読んでしまう。暑い部屋で勉強がはかどらないのは、気合いが足りないからではありません。研究では、暑さで心拍や呼吸が変わり、頑張ろうとする気持ちも下がることがわかっています。しかも、そこまで暑いと感じない室温でも頭の働きは落ち、本人はそれに気づきにくいという結果があります。
3行でわかる
- 熱波の中、冷房のない寮(室内平均26.3℃)の大学生は、冷房のある寮(21.4℃)の学生より、注意の課題の反応が13.4%遅くなった。
- 暑いと心拍や呼吸が変わり、気分が下がり、頑張る気持ちも弱まる。服装や風で快適に保っても、28℃では24℃より成績が下がり、本人は気づかなかった。
- 一方、35の研究をまとめたメタ分析では、オフィスの作業と室温の関係は見つからなかった。「何度が最適」とは言えず、暑いと感じる前に涼しく保つのが現実的。
01 悩みの正体暑い部屋だと、なぜ頭が働かない?
暑いと体は熱を逃がすために心拍や呼吸を変え、気分や頑張る気持ちも下がります。研究者は、暑さで集中が落ちるのは「暑くて気が散る」だけでなく、こうした体の反応が原因だと考えています。
暑い部屋にいると、体は熱を外に逃がそうとします。心臓の動きが速くなり、呼吸も増えます。
ある実験では、12人に22℃と30℃のオフィスで作業をしてもらいました[3]。30℃で暑いと感じたとき、作業の成績は下がりました。同時に、空気が悪いと感じ、体の不調(室内環境が原因とされる症状)を強く訴え、気分が沈み、頑張ろうとする気持ちも弱まりました。心拍は上がり、血液中の酸素の割合は下がりました。
著者らは、成績が下がったのは「暑さが気になって気が散った」からだけではなく、体の反応によるものだと考えています。つまり、暑さに慣れて不快に感じなくなっても、影響は残るかもしれない、ということです。
02 科学的にわかっていること室温で、勉強の効率はどれくらい変わる?
冷房のない部屋で熱波を過ごした大学生は、注意の課題の反応が13.4%遅くなりました。ただし、室温と作業成績の関係が見つからなかったメタ分析もあり、影響の大きさは課題や人によって違います。
Cedeño Laurentら(2018)[1]
2016年夏のボストンで、熱波の前・最中・後の12日間、毎朝起きてすぐ、スマホで2つの頭の働きのテストを受けてもらった。熱波の間、冷房のない寮の学生は、冷房のある寮の学生と比べて、色と文字の課題(ストループ課題)の反応が13.4%遅く、1分あたりの正答数は9.9%少なかった。2けたの足し算・引き算の課題でも反応が遅くなった。ストループ課題の成績は、室温22℃前後で最もよかった。
対象: 米国の大学生44人(平均20歳。冷房あり24人、なし20人)。室内の平均気温は冷房なし26.3℃、冷房あり21.4℃ / 限界: くじで分けていない観察研究。冷房のない寮は騒音が大きく、冷房のある寮は二酸化炭素の濃度が高いなど、室温以外の条件も違っていた。睡眠も影響の一部を説明していた。
Lanら(2022)[2]
服装と風の強さを変えて、24℃・26℃・28℃のどれでも快適に感じるようにした。それでも、頭の働きを測る14の指標のうち12で、24℃より高い温度のときに成績が下がった。平均すると、24℃と比べて26℃で10%、28℃で6%低かった。一方、本人が感じた「はかどり具合」は3つの温度で変わらなかった。
対象: 成人36人(男女18人ずつ)が各温度に4.5時間ずつ / 限界: 実験室の短い課題での結果。28℃より26℃の方が下がり幅が大きく、温度が高いほど一様に悪くなるとは言えない。
Wargockiら(2019)[4]
教室の温度と子どもの成績を調べた18の研究をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。教室の温度が30℃から20℃に下がると、テストや課題の成績が約20%上がると見積もった。成績が最もよくなるのは22℃より低い温度だった。
対象: 温帯の国の子どもの研究 / 限界: 著者ら自身が、温帯以外の気候や、20℃未満・30℃超の温度で当てはまるかは確かめる必要があるとしている。大人の独学の研究ではない。
Porras-Salazarら(2021)[5]
オフィスでの室温と作業成績を調べた35の研究(571の成績の指標)をまとめたメタ分析。多くのオフィスの温度である20〜30℃でも、18〜34℃に広げても、室温と作業成績の関係は見つからなかった。「22℃前後が最適」とする有名な2006年のモデルも、ほとんど当てはまらなかった。
対象: オフィスでの作業を調べた研究 / 限界: 著者らは、測り方が研究ごとにばらばらだったことなどを挙げ、温度の影響が無いことを示したわけではないとしている。
極端な暑さ・寒さについては、はっきりした結果があります。22の研究をまとめた2002年のメタ分析では、湿度なども考えた暑さの指標で32℃以上の暑さのとき成績が14.88%、10℃以下の寒さのとき13.91%下がりました[6]。また、米国でPSAT(高校生の共通テスト)を2回以上受けた約1,000万人のデータでは、テスト前の数年間に暑い授業日が多いほど点が下がりました。週末や夏休みの暑さはほとんど影響せず、学校に冷房が多いほど、その影響は大部分打ち消されていました[7]。
| 研究 | 比べた温度 | 結果 |
|---|---|---|
| 大学生の寮(44人)[1] | 室内平均26.3℃と21.4℃ | 暑い方で反応が13.4%遅い |
| 快適に保った実験(36人)[2] | 24℃・26℃・28℃ | 26℃で10%、28℃で6%低い。本人は気づかず |
| 暑いオフィス(12人)[3] | 22℃と30℃ | 30℃で成績・気分・頑張る気持ちが下がる |
| 教室のメタ分析(18研究)[4] | 30℃→20℃ | 成績が約20%上がる見積もり |
| オフィスのメタ分析(35研究)[5] | 18〜34℃ | 関係は見つからず |
研究の多くは、実験室の短い課題か、学校・オフィスでのデータです。社会人が自宅で何時間も独学するときに、同じ大きさの差が出るとは限りません。「暑いと必ず何%下がる」と言えるほど結果はそろっていない、と考えてください。
03 今日からできる小さな一歩暑い日は、どうすれば勉強しやすくなる?
「暑い」と感じる前に、部屋を涼しめにしておきます。慣れて気にならなくなっても、効率が下がっていることがあるからです。
机のそばに温度計を置く
暑さは感覚だと気づきにくいので、数字で見ます。勉強を始める前に1回見るだけで十分です。
所要 10秒
始める10分前に冷房や扇風機をつける
暑くなってから冷やすのではなく、先に涼しくしておきます。扇風機で風を当てるだけでも、暑さの感じ方は変わります。
所要 1分
一番暑い時間帯に、頭を使う勉強を入れない
西日が当たる夕方など、部屋が暑くなる時間は、単語の見直しなど軽い作業に回します。新しい内容や問題演習は、涼しい時間に移します。
所要 5分(予定を組み替える)
04 続けるためのコツ冷房のない部屋で暑さをしのぐには?
涼しい場所に移る、風を当てる、薄着にする、の順で試します。体調をくずさないことを最優先にします。
- 涼しい場所に移る。図書館など冷房のある場所で、頭を使う勉強だけをする。
- 風を当てて、薄着にする。快適さを保った実験でも、服装と風で暑さの感じ方を調整していた[2]。
- 窓を開けるときは空気も入れかえる。締め切った部屋のよどんだ空気の影響は、換気の記事で扱いました。
- 場所と時間をくらべて決める。どの部屋のどの時間がはかどるかは、場所と時間帯の記録表で2週間くらべられます。家の中の整え方は勉強する場所の整え方にまとめています。
- 暑さで眠れない夜が続くなら、睡眠を先に守る。熱波の研究でも、睡眠が成績の低下の一部を説明していました[1]。
暑さで頭痛やめまい、吐き気があるときは、勉強をやめて体を冷やし、水分をとってください。熱中症の疑いがあるときは、ためらわず医療機関に相談してください。
05よくある質問
暑い部屋で勉強すると、本当に頭の働きは落ちるの?
落ちたという研究があります。熱波の中、冷房のない寮で暮らした大学生は、冷房のある寮の学生より、色と文字の課題の反応が13.4%遅くなりました。ただし44人の観察研究で、事務作業では室温との関係が見つからなかったまとめもあり、影響の大きさは課題や人によって違います。
勉強に一番いい室温は何度?
「何度が最適」と言い切れる研究はありません。22℃前後がよいとする研究がある一方、35の研究をまとめたメタ分析では、オフィスの作業成績と室温(20〜30℃)の関係は見つかりませんでした。暑いと感じる部屋を避け、涼しめに保つのが現実的です。
暑さに慣れていれば平気?
慣れても、効率が落ちていることに気づきにくいだけかもしれません。服装や風で快適に保った実験でも、24℃より26℃・28℃のときに頭の働きを測るテストの成績が下がり、本人の「はかどった感じ」は変わりませんでした。
寒すぎる部屋も勉強に悪い?
極端に寒い場合は悪いという結果があります。22の研究をまとめたメタ分析では、10℃以下の寒さで作業成績が約14%下がりました。ただしこれは極端な条件での結果で、18〜20℃程度のふつうの涼しい部屋が悪いという証拠ではありません。
出典
- Cedeño Laurent, J. G., Williams, A., Oulhote, Y., Zanobetti, A., Allen, J. G., & Spengler, J. D. (2018). Reduced cognitive function during a heat wave among residents of non-air-conditioned buildings: An observational study of young adults in the summer of 2016. PLoS Medicine, 15(7), e1002605. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1002605
- Lan, L., Tang, J., Wargocki, P., Wyon, D. P., & Lian, Z. (2022). Cognitive performance was reduced by higher air temperature even when thermal comfort was maintained over the 24–28°C range. Indoor Air, 32(1), e12916. https://doi.org/10.1111/ina.12916
- Lan, L., Wargocki, P., Wyon, D. P., & Lian, Z. (2011). Effects of thermal discomfort in an office on perceived air quality, SBS symptoms, physiological responses, and human performance. Indoor Air, 21(5), 376–390. https://doi.org/10.1111/j.1600-0668.2011.00714.x
- Wargocki, P., Porras-Salazar, J. A., & Contreras-Espinoza, S. (2019). The relationship between classroom temperature and children's performance in school. Building and Environment, 157, 197–204. https://doi.org/10.1016/j.buildenv.2019.04.046
- Porras-Salazar, J. A., Schiavon, S., Wargocki, P., Cheung, T., & Tham, K. W. (2021). Meta-analysis of 35 studies examining the effect of indoor temperature on office work performance. Building and Environment, 203, 108037. https://doi.org/10.1016/j.buildenv.2021.108037
- Pilcher, J. J., Nadler, E., & Busch, C. (2002). Effects of hot and cold temperature exposure on performance: a meta-analytic review. Ergonomics, 45(10), 682–698. https://doi.org/10.1080/00140130210158419
- Park, R. J., Goodman, J., Hurwitz, M., & Smith, J. (2020). Heat and Learning. American Economic Journal: Economic Policy, 12(2), 306–339. https://doi.org/10.1257/pol.20180612


