何度やっても覚えられない英単語がある。どう立て直す?ヒントを少しずつ消して書く練習と「3回正解」の研究

単語帳を何周しても、いつも同じ単語で手が止まる。ほかの単語は覚えられたのに、その単語だけは何度見ても出てこない。そんな経験はありませんか。研究では、覚えにくい単語は、ほかの単語と同じ回数だけ練習しても残りにくいことがわかっています。やり方を少し変えると、残りやすくなる可能性があります。
3行でわかる
- 覚えにくい単語は、正しく思い出した回数をそろえても、あとで忘れやすい。弱いのは単語そのものより、日本語と英語の組み合わせの記憶だった。
- ほとんど思い出せない単語には、ヒントを少しずつ消しながら思い出す練習が効いた実験がある(難しい英単語20語の実験でも、ふつうの思い出す練習を上回った)。
- 立て直しは、覚えられない単語を別にし、ヒントつきで書くことから始めて、その日に3回書けたら日をあけて覚え直す。書けた単語もすぐには外さない。
01 悩みの正体同じ単語ばかり覚えられないのはなぜ?
覚えにくい単語は、同じ回数だけ正しく思い出せても、あとで忘れやすいことがわかっています。弱いのは単語そのものより「日本語と英語の結びつき」の方でした。さらに、ほとんど思い出せない段階では、思い出す練習自体が効きにくくなります。
単語帳を何周しても、いつも同じ単語で止まる。それは努力が足りないからではありません。単語には、覚えやすいものと覚えにくいものがあり、覚えにくい単語は同じやり方では残りにくいのです[1]。
もう1つの理由は、思い出す練習(何も見ずに答えを出す練習)の弱点です。思い出す練習はよく効く勉強法ですが、最初の覚え方が弱く、練習でほとんど答えが出ない状態では、効果が小さくなるか、なくなることがあります[2]。覚えられない単語ほど毎回思い出せないので、この弱点にはまりやすくなります。
思い出す練習そのものの効き方は、思い出す練習の記事で紹介しています。この記事では「それでも残る単語」をどう扱うかに絞ります。
02 科学的にわかっていること覚えにくい単語は、どうすれば残る?
ヒントを少しずつ消しながら思い出す方法が、ふつうの思い出す練習では効かない条件でも効いた実験があります。その日のうちに3回正しく思い出し、日をあけて覚え直すことも、長く残すのに役立ちました。
Vaughnら(2013)[1]
覚えにくいリトアニア語と英語の単語の組と、覚えやすい組を、決められた回数(1〜11回)正しく思い出せるまで練習させた2つの実験。正しく思い出した回数をそろえても、あとのテストでは覚えにくい単語の成績が低かった。2つ目の実験では、差が出たのは「どの単語とどの単語が組か」を見分けるテストだけで、英単語そのものを見分けるテストではむしろ覚えにくい単語の方がよかった。
対象: 実験の参加者(人数は要旨で確認できていない) / 限界: 大学の実験室で短い単語リストを学んだ結果。著者らは、思い出す練習は覚えにくい単語にも覚えやすい単語にも効いたが、難しさの差は消えなかった、としている。
FiechterとBenjamin(2018)[2]
「ヒントを少しずつ消しながら思い出す練習」(答えの一部を見せ、回を追うごとに見せる部分を減らす方法)を調べた実験。ふつうの思い出す練習がよく効く条件では、どちらの方法も読み直しより成績がよかった。ふつうの思い出す練習が役に立たなかった条件でも、ヒントを消していく方法は成績を大きく上げた。
対象: 実験の参加者 / 限界: この記事では論文の要旨で確認した(本文は読めていない)。人数や効果の大きさ、使った単語の言語は確認できていない。
Quら(2026)[3]
英語を学ぶ中国の大学生が、難しい英単語20語(英語と中国語の組)を、ヒントを消していく思い出す練習・ふつうの思い出す練習・読み直しのどれかで学んだ。最後のテストでは、思い出す練習の2つのグループがどちらも読み直しを上回り、ヒントを消していく方法はふつうの思い出す練習も上回った。
対象: 中国語が母語で英語を学ぶ大学生(人数は要旨で確認できていない) / 限界: 要旨で確認した。20語だけの実験で、何か月も続く独学で同じ差が出るかはわからない。
RawsonとDunlosky(2011)[4]
3つの実験で、大学生533人が用語の意味(概念)を、思い出しては答えを見直すやり方で学んだ。最初の日に1〜4回正しく思い出すまで練習し、その後1〜5回、日をあけて1回正しく思い出すまで覚え直した。1〜4か月後の成績を調べると、覚え直しの回数が長く残すのに大きく効き、追加の練習回数は比較的少なくてすんだ。著者らは、最初に3回正しく思い出し、その後間をあけて3回覚え直すことをすすめている。
対象: 米国の大学生 / 限界: 単語ではなく、用語の意味を学んだ実験。英単語でも同じ回数が最適かは確かめられていない。
KornellとBjork(2008)[5]
暗記カードで「もう覚えた」と思ったカードを外すやり方を調べた4つの実験。カードを外せるようにすると、学習の成績は小さいながら一貫して下がった。
対象: 実験の参加者 / 限界: 短い時間の実験。著者らは、覚えたかどうかの自己判断が当てにならないことを理由の1つに挙げている。
また、思い出す練習の研究をまとめた分析では、選択肢から選ぶテストより、自分で答えを出すテストの方が効果が大きいことが示されています[6]。覚えにくい単語ほど、選ぶのではなく書く・言う形で練習する方がよいと考えられます。
ここで紹介した研究は、大学生が短い単語リストを数日〜数か月で学んだものです。社会人が長い期間独学する場合に、同じ大きさの効果が出るとは限りません。
03 今日からできる小さな一歩覚えられない単語は、どう覚え直せばいい?
覚えられない単語だけを別にし、意味との結びつきを確かめてから、ヒントを少しずつ消して書く練習をします。その日に3回書けたら、日をあけて覚え直します。書けた単語もすぐには外しません。
覚えられない単語だけを別の束にする
単語帳で3回以上まちがえた単語に印をつけ、10〜20語の「覚えられない束」を作ります。全部をやり直すより、残った単語に時間を回す方が効率的です。
所要 1回10分
日本語と英語の結びつきを確かめる
覚えにくい単語で弱いのは、単語と意味の組み合わせでした[1]。似た単語と取り違えるなら、2語を並べて違いを1行で書きます。語呂やイメージで結びつけたい人は記憶術の記事も参考に。この手順はこの記事からの提案で、研究で直接確かめたものではありません。
所要 1語1分
ヒントを少しずつ消して書く
日本語を見て、英単語の最初の数文字と文字数をヒントに書きます。例: 「見捨てる」→ aban _ _(6文字)。書けたら次の回は ab _ _ _ _、次は a _ _ _ _ _、最後はヒントなしにします[2][3]。ヒントの出し方は論文と同じではなく、この記事での当てはめです。
所要 1回10分
選ぶのではなく、書くか声に出す
四択や「見て意味がわかるか」だけで確かめず、自分で書く・言う形で答えます。自分で答えを出す練習の方が効果が大きいからです[6]。
所要 毎回
その日のうちに3回書けるまで回す
ヒントなしで書けた単語も、その日のうちに合計3回書けるまでは束に残します[4]。書けなかった単語は束の後ろに回し、少し時間をあけてもう一度。
所要 1回15分
翌日・数日後・1週間後に、覚え直す
別の日に、ヒントなしで1回書けるかを確かめ、書けなければ手順3に戻します。研究では間をあけた覚え直しを3回すすめています[4]。書けても「覚えた」とカードを外さないこと[5]。日の決め方は英単語の復習スケジュール表で。
所要 1回10分
単語ごとの状態と、次にすることの目安です。研究をもとに、この記事で独学向けに当てはめたものです。
| 単語を思い出すときの状態 | 次にすること |
|---|---|
| 最初の文字を見ても、まったく出てこない | 最初の2〜3文字+文字数をヒントに出し、書けたら次の回はヒントを1文字減らす(手順3) |
| ヒントがあれば出るが、なしでは出ない | ヒントを最初の1文字だけにして、なしで書けるまで進める(手順3) |
| ヒントなしで出るが、ときどき別の単語と取り違える | 日本語と英語の組み合わせの方を確かめる。似た単語と並べて違いを1行で書く(手順2) |
| その日のうちにヒントなしで3回書けた | カードは外さず、別の日にもう一度書けるかを確かめる(手順5・6) |
04 続けるためのコツ何度もまちがえて、いやになったときは?
ヒントつきで書けたら、それも前進です。覚えにくい単語は同じ回数では残りにくいと研究でわかっているので、他の単語より多く回すのが当たり前と考えます。
- 1回の束は10語ほどに絞る。20語を超えると、1語あたりの回数が減ります。
- 「何回まちがえたか」ではなく、「ヒントが何文字まで減ったか」を記録すると、進み具合が見えます。
- 見ればわかるのに話せない単語は、「わかるのに出てこない」の記事の方法も組み合わせます。
- 似た単語どうしで混ざるときは、似た単語が混ざる理由の記事も参考に。
05よくある質問
何度やっても覚えられない単語は、あきらめた方がいいですか?
あきらめる前に、やり方を変える価値があります。覚えにくい単語は、同じ回数だけ思い出せても忘れやすいことがわかっています。ヒントを少しずつ消して書く方法は、ふつうの思い出す練習が効かない条件でも効いた実験があります。
ヒントを見ながら書くのは、ずるくないですか?
ずるくありません。まったく思い出せない状態で何度も挑むと、思い出す練習の効果が小さくなることがあります。最初はヒントで書けるようにし、回を追うごとにヒントを減らしていくのが、この方法の考え方です。
何回書ければ覚えたと言えますか?
目安として、その日のうちに3回正しく思い出し、別の日に3回覚え直すことをすすめた研究があります。ただしこれは用語の意味を学んだ大学生の実験で、英単語で最適な回数は確かめられていません。
覚えた単語はカードから外していいですか?
すぐには外さない方がよいです。「覚えた」と思ったカードを外せるようにした実験では、学習の成績が小さいながら一貫して下がりました。別の日にもう一度書けるかを確かめてから減らします。
出典
- Vaughn, K. E., Rawson, K. A., & Pyc, M. A. (2013). Repeated retrieval practice and item difficulty: Does criterion learning eliminate item difficulty effects? Psychonomic Bulletin & Review, 20(6), 1239-1245. https://doi.org/10.3758/s13423-013-0434-z
- Fiechter, J. L., & Benjamin, A. S. (2018). Diminishing-cues retrieval practice: A memory-enhancing technique that works when regular testing doesn't. Psychonomic Bulletin & Review, 25(5), 1868-1876. https://doi.org/10.3758/s13423-017-1366-9
- Qu, K., Sun, Y., Lei, Y., & Zhou, J. (2026). The enhancing effect of diminishing-cues retrieval practice on the learning of difficult English vocabulary. Journal of Psycholinguistic Research, 55(4), 86. https://doi.org/10.1007/s10936-026-10275-4
- Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2011). Optimizing schedules of retrieval practice for durable and efficient learning: How much is enough? Journal of Experimental Psychology: General, 140(3), 283-302. https://doi.org/10.1037/a0023956
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Optimising self-regulated study: The benefits—and costs—of dropping flashcards. Memory, 16(2), 125-136. https://doi.org/10.1080/09658210701763899
- Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432-1463. https://doi.org/10.1037/a0037559


