勉強の目標は「点数」より「やること」で立てるには?練習の回数と学び方を目標にするやり方(目標の種類の研究とその限界)

「次の試験で800点」「模試で7割」。目標を点数で決めたのに、毎日何をすればいいかがはっきりせず、気づけば手が止まっている。そんな経験は少なくありません。大学生約4,000人の実験では、点数の目標を立てさせても成績ははっきり上がりませんでした。一方で「練習問題を何回解くか」という、やることの目標は、実際に解く回数を確実に増やしました。点数は行き先として置いたまま、毎日の目標は「やること」と「学び方」に言い換えるのがこの記事の提案です。
3行でわかる
- 大学生約4,000人の2つの実験では、「練習テストを何回やるか」の目標はやる回数をはっきり増やし、成績もわずかに上げた。点数の目標は、成績への効果が小さく、統計的にはっきりしなかった。
- 新しく難しい課題では、点数の目標より「やり方を見つける」という学び方の目標の方が成績がよかった(114人と96人の実験)。90の実験をまとめた分析でも、身につけることを目指す目標は成績を高めていた。
- やり方は「点数を行き先に書く→やることに言い換える→難しい所は学び方の目標にする→やった量を紙に記録→月1回、点数で見直す」の5つ。
01 悩みの正体点数の目標だけだと、なぜ毎日の勉強が進まない?
点数は、今日の行動では直接動かせないからです。「800点」と決めても、今日何問解けばいいかは書かれていません。今日できることを目標にすると、行動がはっきりします。
点数は、何週間も勉強した結果として、試験の日にやっと見えるものです。毎日の勉強では、点数が上がったかどうかを確かめられません。そのため、「がんばろう」と思っても、今日の一歩が決まりにくくなります。
この記事では、目標を3つに分けて考えます。試験の点数などの点数の目標、練習問題を解く回数などのやることの目標、そして「この単元の解き方を3通り見つける」のような学び方の目標です。
02 科学的にわかっていること勉強の目標は、点数とやることのどちらで立てるべき?
毎日の目標は「やること」で立てる方が、研究の結果と合っています。やることの目標は行動を確実に増やし、点数の目標は成績への効果がはっきりしませんでした。難しい単元では、学び方の目標が点数の目標を上回りました。
Clarkら(2020)[1]
大学生約4,000人を対象にした2つの実験。1つは、授業の成績について目標を立てさせた。もう1つは、オンラインの練習テストを何回やるかという「やることの目標」を立てさせた。やることの目標は、練習テストをやる回数をはっきり増やし、授業の成績もわずかに上げた(統計的にはぎりぎりの差)。成績の目標は、成績をわずかに上げる方向だったが、効果は小さく、統計的にはっきりしなかった。
対象: 大学生約4,000人(授業の中で行った2つのフィールド実験) / 限界: 成績への効果は小さく、統計的に確かとまでは言えない。はっきり増えたのは「やった回数」の方。
WintersとLatham(1996)[2]
ビジネススクールの学生114人が、スケジュールを組む課題に取り組んだ。簡単な版では、結果の目標を持った人が、「ベストを尽くせ」と言われた人より多く正解した。難しい版では逆に、「やり方を見つける」という学び方の目標を持った人が、結果の目標や「ベストを尽くせ」の人より成績がよかった。学び方の目標の人は、役に立つやり方を多く使っていた。
対象: ビジネススクールの学生114人 / 限界: 1回きりの実験室の課題で、何か月も続く独学ではない。
SeijtsとLatham(2001)[3]
知識を身につけないと正しくできない、時間割を組む課題での実験。具体的で高い結果の目標を与えると、「ベストを尽くせ」より成績が低かった。一方、具体的で高い学び方の目標を与えると、「ベストを尽くせ」より成績が高かった。学び方の目標の方が、目標への本気度も高かった。役に立つやり方を多く見つけた人ほど、成績がよかった。
対象: 96人 / 限界: 実験室での中くらいの難しさの課題。結果の目標の途中に小さな結果の目標を足しても、成績は上がらなかった。
Noordzijら(2021)[4]
実験で目標の種類を割り当てた90の研究(235の効果、1万1,247人)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。「身につけること」を目指す目標は、「人よりよい成績を取る」「人より劣らないようにする」目標や、目標なしの場合とくらべて、成績を高めた。ただし、やる気そのものは高めなかった。身につける目標が「課題そのものの基準」で立てられたとき、特に差がはっきりした。
対象: 90の実験研究の参加者 / 限界: 「身につける目標」は、この記事の「やることの目標」とは同じではない。多くは短い実験の課題。
Harkinら(2016)[5]
進み具合を確かめる回数を増やす工夫は、目標の達成を後押しした(効果量d=0.40)。結果を紙などに書いて記録したときや、人に報告したときに、効果はより大きかった。
対象: 138件のランダム化実験、合計1万9,951人のメタ分析 / 限界: 勉強に限らず、さまざまな目標を扱った研究のまとめ。
どの研究も、社会人が何か月もかけて資格や語学を独学する場面を調べたものではありません。それでも「点数だけを目標にしても行動は増えにくい」「やることや学び方を目標にすると行動が変わる」という方向は、大学の授業の実験と実験室の研究でそろっています。
03 今日からできる小さな一歩点数の目標を、やることの目標に言い換えるには?
点数は行き先として1行だけ書き、毎日の目標は「何を・どれだけやるか」に言い換えます。新しく難しい単元では、「やり方を何通り見つけるか」を目標にします。やった量は紙に記録し、月1回、点数で見直します。
点数の目標は「行き先」として1行だけ書く
「12月の試験で7割」のように、ノートの最初のページに1行書きます。ここは毎日見返す目標ではなく、方角を決めるためのものです。点数の目標だけでは、成績への効果ははっきりしませんでした[1]。
所要 2分
点数を「今週やること」に言い換える
「過去問を週2回分解く」「問題集を1日10問」「単語カードを1日50枚めくる」のように、自分の行動だけで達成できる形にします。練習テストの回数を目標にした大学生は、実際に解く回数がはっきり増えました[1]。
所要 10分
新しく難しい単元は「学び方の目標」にする
初めての分野や、まだ解き方がわからない単元では、量より「この型の問題の解き方を3通り書き出す」「間違えた理由を5つ見つける」を目標にします。難しい課題では、学び方の目標の方が結果の目標より成績がよかったからです[2][3]。
所要 5分
やった量を、毎日紙に1行で記録する
「10/20 問題集 12問」のように書くだけで十分です。進み具合を確かめる工夫は目標の達成を後押しし、紙などに書いて記録したときに効果が大きくなりました[5]。記録には勉強の記録シートも使えます。
所要 1分
月1回、模試や過去問の点数で「やること」を見直す
点数は、目標ではなく見直しの材料として使います。点が伸びていれば量を続け、伸びていなければ、手順3の学び方の目標に切りかえる単元を選びます。
所要 15分
3つの目標の使い分けを表にしました。研究の結果を、独学の場面に当てはめたものです。
| 目標の種類 | 例 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 点数の目標 | 試験で7割 | 行き先を決めるとき。毎日の目標には向かない[1][3] |
| やることの目標 | 過去問を週2回分 | 解き方がわかっていて、練習量を増やしたいとき[1] |
| 学び方の目標 | 解き方を3通り書き出す | 初めての分野や、解き方がまだわからないとき[2][3][4] |
04 続けるためのコツやることの目標を続けるには?
やる量は、忙しい日でも守れる大きさから始めます。週の終わりにやった量を数え、達成できた週が続いたら少し増やします。点数が伸びないときは量を増やす前に、学び方の目標に切りかえます。
- 量は週単位でも決める: 1日の量が守れない日があっても、週の合計で取り戻せます。計画の立て方は試験日から逆算する計画の記事にあります。
- 目標の高さと近さも考える: 目標を高くするか、小さく刻むかは、目標設定の記事で解説しています。
- 「やらない」より「やる」で書く: 「スマホを見ない」より「問題を10問解く」の方が、行動がはっきりします(「〜しない」目標の記事)。
- 量だけ増えて点が伸びないとき: 時間をかけても点数が上がらないときの見直し方は、勉強時間を増やしても点が上がらないときの記事が参考になります。
05よくある質問
勉強の目標は、点数で立てない方がいいのですか?
点数の目標を持つこと自体は悪くありません。ただ、大学生約4,000人の実験では、成績の目標を立てても成績への効果は小さく、統計的にはっきりしませんでした。点数は行き先として置き、毎日の目標は練習問題の数などのやることで立てる方が、行動につながりやすいと考えられます。
やることの目標と、学び方の目標はどう使い分ける?
解き方がわかっていて練習量を増やしたいときは、やることの目標が向いています。初めての分野や難しい単元では、「解き方を3通り見つける」のような学び方の目標が向いています。難しい課題の実験では、学び方の目標の方が結果の目標より成績がよかったからです。
やることの目標だけで、成績は本当に上がりますか?
上がるとまでは言い切れません。練習テストの回数を目標にした実験では、解く回数ははっきり増えましたが、成績の伸びはわずかで、統計的にはぎりぎりの差でした。月1回は点数で確かめ、伸びていなければやり方を見直すことをおすすめします。
出典
- Clark, D., Gill, D., Prowse, V., & Rush, M. (2020). Using goals to motivate college students: Theory and evidence from field experiments. The Review of Economics and Statistics, 102(4), 648–663. https://doi.org/10.1162/rest_a_00864
- Winters, D., & Latham, G. P. (1996). The effect of learning versus outcome goals on a simple versus a complex task. Group & Organization Management, 21(2), 236–250. https://doi.org/10.1177/1059601196212007
- Seijts, G. H., & Latham, G. P. (2001). The effect of distal learning, outcome, and proximal goals on a moderately complex task. Journal of Organizational Behavior, 22(3), 291–307. https://doi.org/10.1002/job.70
- Noordzij, G., Giel, L., & van Mierlo, H. (2021). A meta-analysis of induced achievement goals: The moderating effects of goal standard and goal framing. Social Psychology of Education, 24(1), 195–245. https://doi.org/10.1007/s11218-021-09606-1
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025


