勉強法

教科書の用語を「わざと間違えて直す」勉強法はどうやる?ありそうな間違いを書いて消し、正しい言葉に直す6つの手順(効いた実験と、再現しなかった実験)

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Photo: Liji Jinaraj from San Francisco, USA / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

勉強中の間違いは、できるだけ避けたいものです。ところが近年、「答えがわかっている文を、わざと間違えて書き、すぐ消して正しく直す」という一見遠回りな勉強法が研究されています。うまくいった実験がある一方で、別の研究室では同じ効果が出ませんでした。効いた条件と効かなかった条件を分けて、試すならどうやるかをまとめます。

3行でわかる

  1. 教科書の文を「ありそうな間違い」に書き換え、線で消して正しい言葉に直す勉強法を、研究者は「わざと間違える効果(derring effect)」と呼んでいる。
  2. シンガポールの大学生の実験では、同じ25分で、正しい言い換えをするより多く思い出せ、別の分野に応用する問題も解けた。ただし別の研究室の事前登録した2つの実験では、写して線を引くやり方と差がなかった。
  3. 試すなら、用語と定義の勉強で、内容に関係のある間違いを作り、必ずすぐ正しく直す。効いたかは感覚では判断できないので、2日後に本を閉じて確かめる。

01 勉強法の中身「わざと間違えて直す」勉強法とは?

答えを見ながら、教科書の文をわざと内容の違う文に書き換え、その間違いを線で消して、正しい言葉を書き直す勉強法です。誤字ではなく、意味の間違いを作るのがポイントです。

研究で使われたやり方はこうです。たとえば「コウモリは空を飛ぶ哺乳類である」という文なら、「コウモリは空を飛ぶ鳥類である」と書き、「鳥類」に線を引いて消し、横に「哺乳類」と書き直します[1]。

「コウモリわ」のような誤字は対象外です。実験では、ありそうで、もっともらしい間違いを作るよう指示されていました[1]。答えは最初から目の前にあるので、テストのように「わからなくて間違える」のとは違います。

なぜ覚えやすくなりうるのかは、まだ決着していません。間違いを考えるときに正しい言葉のまわりの知識を広く思い浮かべるから、という説を支える実験があります[4]。

02 科学的にわかっていることわざと間違えて直す勉強法は、本当に効く?

効いた実験と効かなかった実験があり、条件しだいです。提案した研究者の実験では覚え方と応用の両方でよい結果が出ましたが、別の研究室の事前登録した2つの実験では差が出ませんでした。

Wong(2023) [1]

320語の科学の文章(台風・ワクチン)を、①わざと間違えて直す、②正しい言い換えを書く、のどちらかで25分ずつ勉強した。①は思い出せた内容が平均11.6個で、②の9.1個より多かった。別の分野に当てはめて考える問題でも①がよく、他人の間違いを見つけて直すやり方よりもよかった。それなのに本人たちは、①が効いたとは思っていなかった。

対象: シンガポールの大学生、3つの実験で計120人 / 限界: テストは勉強した日のうちに行った。同じ研究者のグループによる実験。

WongとLim(2022) [2]

用語と定義を、本を見ながら学ぶ3つの実験。わざと間違えるやり方は、写して線を引くやり方よりよく思い出せ、間違いを直す手順を加えるとさらによかった。具体例を作るやり方と比べても、わざと間違えて直す方がよかった。

対象: 大学生(3つの実験) / 限界: 論文の要旨で確認した。この効果を最初に報告した研究者のグループによる結果。

Meraら(2025) [3]

別の研究室が、事前に計画を登録して2つの追試をした。36個の用語と定義を学ぶ実験室の実験と、雑学の知識を学ぶオンライン実験。どちらも、わざと間違えて直すやり方と、写して線を引くやり方とで、思い出せた量に差はなかった。2日後のテストでも同じだった。

対象: 実験室とオンラインの参加者 / 限界: 論文の要旨で確認した。元の実験と教材や参加者が違う。

Thomasら(2026)、QiangとMa(2026) [4][5]

単語の組を覚える4つの実験では、わざと作った間違いが正解と意味の近いものだったときだけ記憶がよくなり、関係のない間違いでは効果がなかった[4]。大学生を対象にした2つの実験(96人と103人)では、同じ時間で比べると、わざと間違えるやり方は写すより覚えやすかった。思い出す練習と比べると、すぐのテストでは差がなく、時間をおいたテストでは1つ目の実験だけわざと間違える方がよかった。応用の問題ではわざと間違える方がよかったが、著者らはさらに確かめる必要があるとしている[5]。

対象: 大学生など / 限界: どちらも論文の要旨で確認した。

技能の練習では、まだ差が見えていません。歯学部の学生87人が、レントゲン撮影で失敗した画像をわざと作って直す練習をした研究では、ふつうの説明の授業と比べて、テストの点にも撮影の出来にも差はありませんでした[6]。

どの実験も、数十分の勉強と短いテストで測った実験室の結果です。数か月かけて資格試験の範囲を覚えるような独学で、同じ差が出るかは確かめられていません。計算問題の解き方のような「手順の知識」では、まだ試されていないと著者自身が書いています[1]。

03 今日からできる小さな一歩わざと間違えて直す勉強は、どうやる?

用語と定義が並ぶ1ページを選び、1文ずつ「ありそうな間違い」に書き換えて消し、正しい言葉に直します。最後に2日おいて本を閉じて確かめ、ふだんのやり方と比べます。

1

用語と定義が並ぶページを選ぶ

効果が調べられているのは、用語の意味や仕組みを説明した文章です[1][2]。計算の手順や実技の練習ではまだ差が見えていないので[6]、まずは教科書の説明の1〜2ページで試します。

所要 1分

2

まず1〜2分、ふつうに読む

実験でも、書き換える前に1.5分ほど文章を読んでいました[1]。ここではまだ覚えようとしなくてかまいません。

所要 1〜2分

3

1文ずつ、内容のありそうな間違いに書き換える

「哺乳類」を「鳥類」に、「増える」を「減る」に、のように、意味が変わる間違いを作ります。正解と関係のある間違いのときだけ効果が出た実験があるので[4]、でたらめな言葉や誤字にはしません。

所要 1文30秒ほど

4

間違いを線で消し、正しい言葉を書き直す

その場で本を見て、正しい言葉を横に書きます。間違えた後に直すと、さらに覚えやすかった実験があります[2]。間違いのまま次の文に進まないことが大切です。

所要 1文10秒ほど

5

2日おいて、本を閉じて書き出す

実験の参加者は、このやり方が効いたと感じていませんでした[1]。感覚では判断できないので、2日後に何も見ずに、覚えている内容を書き出して数えます。

所要 5分

6

ふだんのやり方と、半分ずつ比べる

別の研究室では差が出なかったので[3]、自分の教材で確かめます。同じ章の前半を「わざと間違えて直す」、後半をふだんの方法で勉強し、5の手順で書き出せた数を比べます。差がなければ、続けやすい方を選べば十分です。

所要 1回の勉強時間を2つに分ける

04 続けるためのコツわざと間違えて直す勉強を、ほかの勉強法とどう組む?

「これだけ」にせず、思い出す練習と組み合わせます。覚えた量では思い出す練習との差がはっきりしなかったので、新しい章の最初に使い、その後は本を閉じて思い出す練習で固めます。

  • 覚えた量で比べると、思い出す練習(本を閉じて答える練習)との差は、2つの実験のうち1つで時間をおいたテストに出ただけでした[5]。思い出す練習の効果は読み返しと思い出す練習の比較にまとめています。
  • 写して線を引くだけのやり方は、どの実験でも比べる相手として使われていました[2][3]。何度も書いて覚える勉強法や蛍光ペンで線を引く勉強法の研究もあわせて読むと、選びやすくなります。
  • 他人の間違いを探して直すやり方は、自分で間違いを作るやり方ほど応用がきかなかった実験があります[1]。計算問題で誤答例を使う方法は間違った解答例で学ぶ手順へ。
  • 「なぜそうなる?」と自分に問いかける方法も、文章の理解に使えます。詳しくは精緻化質問の研究へ。
  • 1文ずつ書き換えるので、時間はかかります。1ページで疲れるなら、大事な文だけに絞ってかまいません。

05よくある質問

わざと間違えると、間違いの方を覚えてしまわない?

研究では、間違いを書いたらすぐ線で消し、正しい言葉を書き直していました。間違えた後に直すと、直さない場合よりさらに覚えやすかった実験があります。間違いのまま放っておかず、その場で直すのが条件です。

わざと間違える勉強法は、思い出す練習より効く?

覚えた量でははっきりした差がありません。大学生の2つの実験では、どちらも写すよりはよく、思い出す練習と比べると、すぐのテストでは差がなく、時間をおいたテストでは1つ目の実験だけわざと間違える方がよかった程度でした。応用の問題ではわざと間違える方がよかったものの、著者らはさらに確かめる必要があるとしています。

この勉強法は、誰にでも効く?

わかっていません。効果を報告したのは主に同じ研究者のグループで、別の研究室の事前登録した2つの追試では、写して線を引くやり方と差がありませんでした。自分の教材で、2日後のテストで確かめてから続けるのがおすすめです。

数学の計算問題にも使える?

まだ確かめられていません。研究は用語や仕組みを説明した文章が中心で、著者自身が、計算の手順のような知識ではまだ試されていないと書いています。計算問題では、正しい例題や誤答例を使う方法の方が研究が多くあります。

出典

  1. Wong, S. S. H. (2023). Deliberate erring improves far transfer of learning more than errorless elaboration and spotting and correcting others' errors. Educational Psychology Review, 35, 16. https://doi.org/10.1007/s10648-023-09739-z
  2. Wong, S. S. H., & Lim, S. W. H. (2022). The derring effect: Deliberate errors enhance learning. Journal of Experimental Psychology: General, 151, 25-40. https://doi.org/10.1037/xge0001072
  3. Mera, Y., Modirrousta-Galian, A., Thomas, G., Higham, P. A., & Seabrooke, T. (2025). Erring on the side of caution: Two failures to replicate the derring effect. Journal of Experimental Psychology: General, 154, 658-671. https://doi.org/10.1037/xge0001707
  4. Thomas, G., Mera, Y., Higham, P. A., & Seabrooke, T. (2026). When deliberate errors boost learning: Semantic constraints on the derring effect. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. https://doi.org/10.1037/xlm0001646
  5. Qiang, X., & Ma, X. (2026). The advantages of deliberate errors in promoting college students' memory retention and transfer. British Journal of Educational Psychology, 96, 922-944. https://doi.org/10.1111/bjep.70058
  6. Yeung, A. W. K., Tanaka, R., Hung, K. F., Vardhanabhuti, V., & Nalley, A. (2026). Deliberate error-based learning in dental radiography: An educational study. Dentistry Journal, 14, 417. https://doi.org/10.3390/dj14070417