記憶・覚え方

脳トレで記憶力は上がる?大人の学び直しに効くのか、脳トレの研究でわかったこと

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赤いジグソーパズルのピース
Photo: Profpcde / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

学び直しを始めたら、覚えが悪くなった気がする。まずは脳トレで頭を鍛えてから、と考える人もいるでしょう。研究の判定は「当てにならない」です。練習したゲームは上達しますが、その力が似ていない課題や、勉強・日常の力に広がるという証拠はほとんどありません。

3行でわかる

  1. 18〜60歳の11,430人が6週間脳トレをした実験では、練習した課題はすべて上達したが、練習していない課題には、よく似た課題でさえ広がらなかった。
  2. 研究者がまとめたレビューやメタ分析でも、練習した課題は伸びる一方、離れた課題や日常の力が伸びる証拠はほとんどなかった。健康な高齢者では効果は小さかった(g = 0.22)。
  3. 学び直しの記憶を良くしたいなら、脳トレの時間を教材そのものを思い出す練習に回す方が確実。

01 通説の中身脳トレで「頭そのもの」は鍛えられる?

脳トレの考え方は、記憶や注意などの「頭の基礎体力」を鍛えれば、勉強も仕事も楽になるというものです。研究で問われてきたのは、ゲームの上達が、ほかの課題にまで広がるかどうかでした。

脳トレのゲームを続ければ、点数は上がります。これは誰でも実感できることで、研究でも確かめられています。

問題はその先です。ゲームでの上達が、練習していない課題にも広がることを「転移」と呼びます。脳トレが学び直しに役立つと言えるのは、この転移が起きる場合だけです。

2014年には、70人を超える科学者が「脳トレが頭の働きを高める科学的な根拠はない」という声明を出しました。数か月後には、133人の科学者や実践家が反対の声明を出しています。専門家の間でも意見が割れたため、証拠を整理し直す研究が進みました[1]。

02 科学的にわかっていること脳トレの効果は、勉強や日常にも広がる?

練習したゲームは上達します。よく似た課題には少し広がることがありますが、離れた課題や日常の力には、ほとんど広がりませんでした。高齢者の研究では小さな効果が報告されています。

Owenら(2010)[2]

英国のテレビ番組の視聴者が、6週間、1回10分以上・週3回、推理や記憶などの課題で練習した。練習した課題はすべて上達したが、練習していない課題には、よく似た課題でさえ広がりは見られなかった。練習していない4つのテストでは、調べ物をしながら雑学の問題に答えただけの組も、同じくらいの伸びだった。

対象: 18〜60歳の登録者52,617人のうち、最後まで参加した11,430人。平均24.47回練習した / 限界: 6週間の研究。オンラインで本人が参加した形で、練習の仕方は人によってばらつきがある。

Simonsら(2016)[1] レビュー

脳トレ企業が根拠として挙げていた、査読つきの研究を一つずつ評価した。練習した課題が伸びる証拠は豊富だったが、よく似た課題への証拠は少なく、離れた課題や日常の頭の働きが良くなる証拠はほとんどなかった。

対象: 脳トレの研究全般 / 限界: 多くの研究に、設計や分析の大きな欠点があった。著者らが示した基準をすべて満たす研究は1本もなかった。

Melby-Lervågら(2016)[3] メタ分析

ワーキングメモリ(覚えておきながら考える力)を鍛える訓練の研究87本・145の比較をまとめた。訓練の直後は、似たワーキングメモリの課題で伸びが見られた。一方、読解・計算などの離れた力は、別の活動をした組と比べて、はっきりした伸びはなかった。

対象: 訓練の前後にテストをし、比べる組を置いた研究 / 限界: 著者らは、伸びは短期的で訓練に特有のもので、実生活の力には広がらないと結論している。

Lampitら(2014)[4] メタ分析

認知症のない健康な高齢者のコンピューター訓練の研究52本(合計4,885人)をまとめた。全体の効果は小さく(g = 0.22)、言葉の記憶では特に小さかった(g = 0.08)。家で一人で行う形では効果が見られず、週3回を超えて訓練した場合も、週3回以下と違って効果が見られなかった。

対象: 健康な高齢者 / 限界: どの研究も訓練の直後に測っており、効果が続くか、自立した生活や認知症の予防につながるかはわからない。

Rebokら(2014)ACTIVE研究[5]

平均73.6歳の2,832人を、記憶・推理・処理の速さのどれかを10回訓練する組と、何もしない組に分け、10年後まで追った。推理と速さの訓練は、10年後もその力に効果が残った。記憶の訓練の効果は、記憶の成績には残っていなかった。

対象: 米国6都市で自立して暮らす高齢者 / 限界: 訓練した種類の力に効果が残ったという結果。日常生活の困りごとが少ないという結果は、本人の自己評価によるもの。

研究を並べると、効果は「練習したものに近いほど大きく、離れるほど小さい」という形になっています。効果量 g は差の大きさの目安で、0.2で小さい、0.5で中程度、0.8で大きいとされます。

何が伸びるか研究からわかっていること
練習したゲーム・課題伸びる(証拠が豊富)[1][2]
よく似た課題少し伸びることがある。直後だけの場合も[1][3]
読解・計算など離れた力はっきりした伸びはなかった[3]
日常の頭の働き証拠はほとんどない[1]
資格・語学の学習成果ここで紹介した研究では測られていない

ここで紹介した研究の多くは、高齢者や一般の成人が数週間〜数か月の訓練をしたものです。社会人の学び直しの成果を直接測った研究ではありません。ただ、練習していない課題には広がりにくいという結果は、年齢をこえて共通していました。

03 今日からできる小さな一歩脳トレの代わりに、何をすればいい?

効果は練習したものに近いほど大きいので、伸ばしたい力そのものを練習します。脳トレに使っていた時間を、教材の内容を思い出す練習に置きかえます。

1

「この練習は、本番の問題に似ているか」を確かめる

試験や仕事で使う形に近い練習ほど、成果につながりやすいと考えられます。似ていなければ、勉強時間としては数えません。

所要 1分

2

脳トレの10分を、教材を閉じて思い出す10分に変える

昨日学んだ内容を、見ずに3つ書き出します。思い出す練習は読み返すより記憶に残りやすいことが、繰り返し確かめられています(思い出す練習の研究)。

所要 10分

3

間をあけて、もう一度思い出す

翌日と数日後に、同じ内容をもう一度思い出します。いつ復習するかは復習タイミングで確認できます。

所要 5分

04 続けるためのコツ年齢のせいで覚えられないと感じたら?

年齢で下がりやすいのは処理の速さなど一部の力です。頭を鍛えてから学ぶ必要はなく、学ぶこと自体が練習になります。

05よくある質問

脳トレのゲームは、やっても意味がないのですか?

練習したゲームは確実に上達しますし、楽しみとして続けるのは問題ありません。ただしOwenら(2010)の11,430人の実験では、練習していない課題への広がりは見られませんでした。資格や語学の力を上げたいなら、その時間は教材そのものに使う方が確実です。

高齢の親が脳トレをしています。止めた方がいいですか?

止める必要はありません。Lampitら(2014)のメタ分析では、健康な高齢者のコンピューター訓練に小さな効果(g = 0.22)がありました。ただし家で一人で行う形では効果が見られず、測ったのも訓練の直後でした。日常生活や認知症の予防への効果は、この分析ではわかっていません。

記憶力そのものを鍛える方法はないのですか?

研究で効果がはっきりしているのは、覚えたい内容そのものを、間をあけて思い出す練習です。記憶力という一般的な力を鍛えるより、覚えたい物を直接練習する方が成果につながります。やり方は大人の学び直しの勉強法の記事で紹介しています。

勉強法の早見表で「脳トレのゲームで頭を鍛える」の判定を見る
ほかの勉強法も48種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Simons, D. J., Boot, W. R., Charness, N., Gathercole, S. E., Chabris, C. F., Hambrick, D. Z., & Stine-Morrow, E. A. L. (2016). Do "brain-training" programs work? Psychological Science in the Public Interest, 17(3), 103–186. https://doi.org/10.1177/1529100616661983
  2. Owen, A. M., Hampshire, A., Grahn, J. A., Stenton, R., Dajani, S., Burns, A. S., Howard, R. J., & Ballard, C. G. (2010). Putting brain training to the test. Nature, 465(7299), 775–778. https://doi.org/10.1038/nature09042
  3. Melby-Lervåg, M., Redick, T. S., & Hulme, C. (2016). Working memory training does not improve performance on measures of intelligence or other measures of "far transfer": Evidence from a meta-analytic review. Perspectives on Psychological Science, 11(4), 512–534. https://doi.org/10.1177/1745691616635612
  4. Lampit, A., Hallock, H., & Valenzuela, M. (2014). Computerized cognitive training in cognitively healthy older adults: A systematic review and meta-analysis of effect modifiers. PLoS Medicine, 11(11), e1001756. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1001756
  5. Rebok, G. W., Ball, K., Guey, L. T., Jones, R. N., Kim, H.-Y., King, J. W., Marsiske, M., Morris, J. N., Tennstedt, S. L., Unverzagt, F. W., Willis, S. L., & ACTIVE Study Group. (2014). Ten-year effects of the Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly cognitive training trial on cognition and everyday functioning in older adults. Journal of the American Geriatrics Society, 62(1), 16–24. https://doi.org/10.1111/jgs.12607