効く勉強法を知ったのに、気づくと読み返しに戻っている。どう立て直す?負担を減らす6つの手順(勉強法を使わない理由の研究)

思い出す練習が効くと知って、やり方も変えた。なのに数週間たつと、また教科書を読み返している。そんな自分に、がっかりしていませんか。研究では、効く勉強法を知っていても使わない人は多く、その理由は「知らないから」ではありませんでした。時間・手間・準備・不安という使うときの負担です。負担を減らす形に組み直せば、立て直せます。
3行でわかる
- 米国の大学生185人の調査では、思い出す練習を「とても効く」と考えている人でも、使わない理由に「準備が大変」38%、「手間がかかる」36%、「時間がかかる」35%を挙げた。知識不足ではなく、負担が壁だった。
- 「思い出す方が効く」と説明するだけでは、一人で勉強する場面ではやり方が変わらなかった。効く勉強法を授業で教えた実験でも、6か月後に使う回数は増えていなかった。
- 立て直しは、①戻った理由を1つ選ぶ ②準備を前日に済ませる ③ヒントつきで思い出す ④読み返しに3分だけ足す ⑤始める時間と場所を決める ⑥2週間後に記録で比べる、の順で。
01 悩みの正体効く勉強法を知っているのに、読み返しに戻るのはなぜ?
意志が弱いからではありません。思い出す練習や間をあけた復習は、読み返しより準備と手間がかかり、思い出せない不安もあります。研究では、この負担が、知っていても使わない一番の理由でした。
読み返しは、教科書を開けばすぐ始められます。読んでいるあいだは、わかった気がして安心できます。
一方、思い出す練習(本を閉じて、覚えたことを書き出したり問題に答えたりすること)は、問題を用意する手間があります。思い出せないと、不安にもなります。分散学習(日をあけて復習すること)は、いつ何を復習するかの計画が要ります。
疲れている日や時間がない日ほど、楽な方に戻りやすいのは自然なことです。だから立て直しでは、「もっと頑張る」より負担を減らすことを先に考えます。
02 科学的にわかっていること「知れば使う」は本当?研究で何がわかった?
本当ではありませんでした。学生は効く勉強法の多くを知っていましたが、時間や手間を理由に使っていませんでした。説明を読ませても、一人で勉強する場面では行動は変わりませんでした。
CarpenterとSanchez(2025)[1]
米国の大学生185人に、11の勉強法をどれくらい使い、なぜ使わないかを聞いた。読み返しを「よく使う」「ほぼいつも使う」人は合わせて66%だった。思い出す練習を10点満点で9〜10点と「とても効く」と考えている88人でも、使わない理由は「準備が大変」38%、「手間がかかる」36%、「時間がかかる」35%、「不安になる」27%だった。日をあけた復習を「とても効く」と考える67人では、「準備が大変」55%、「時間がかかる」54%だった。
対象: 米国の1大学の心理学入門の受講生 / 限界: 自己申告のアンケートで、実際の勉強の様子は測っていない。
Simoneら(2023)[2]
米国の大学生258人が、外国語の単語を覚えた。勉強の前に「読み返すより思い出す方が効く」という説明を読んだ組は、実験室で見守られていると思い出す割合が増えた。ところが、自宅などで一人で取り組んだ組では、説明を読んでも読まなくても差がなかった。別の実験(114人)では、説明を読んで従った人は約7割で、一人のときに変わらなかったのは、読んでいないからではなく、手間のかかる思い出す練習を避けたためと考えられた。どの組でも、思い出す回数が多い人ほど、あとでよく覚えていた。
対象: 米国の1大学の大学生 / 限界: 単語を覚える1回だけの課題。実験室のどの要素(人の目・スマホをしまう・場所)が効いたのかはわかっていない。
Yükselら(2025)[3]
米国の大学の心理学入門で、効く勉強法を講義で教え、学期を通して実際に使わせた。6か月後に答えた54人(教わった組は15人)では、「何が効くか」の理解は残っていたが、効く勉強法を使う回数は増えていなかった。ただ、教わらなかった組では使う回数が減ったのに対し、教わった組では減らなかった。学生が挙げた壁は、時間の足りなさ、使える教材の少なさ、先延ばし、目先の点数を優先することだった。
対象: 米国の1大学の学生 / 限界: 声をかけた316人のうち答えたのは62人で、回答した人に偏りがある可能性がある。5年分の受講生に聞いた2つめの調査(102人)でも、回答率は1%未満だった。
VaughnとKornell(2019)[4]
単語の組を覚えるとき、答えの文字を2つか4つ見せるヒントを選べるようにすると、参加者は多くの回で、答えを見るより思い出す方を選んだ。ヒントの選択肢をなくすと、答えを見る方を多く選び、87%が「答えを見る方が効く」と答えた。ヒントつきで思い出しても、ヒントなしと同じくらい覚えられ、どちらも答えを見るだけより上だった。ただし、ヒントで答えが推測できてしまう問題では、効果が少し下がった。
対象: 米国のオンライン参加者と大学生(各実験36〜63人) / 限界: 単語の組の短い実験で、長い期間の独学は調べていない。
どれも大学生の短い実験か、アンケートです。社会人が何か月も一人で学ぶ場面を直接調べたものではありません。それでも共通するのは、知識を増やすより、使うときの負担を減らす方が行動は変わりやすいということです。CarpenterとSanchezも、勉強法を広めるなら時間と頭の負担を減らす工夫が必要だと述べています[1]。
03 今日からできる小さな一歩読み返しに戻った勉強を、どう立て直す?
戻った理由を1つ選び、その負担だけを減らします。準備は前日に済ませ、ヒントつきで思い出し、読み返しには3分の思い出す時間を足すだけにします。2週間後に記録で比べます。
戻った理由を、表から1つ選ぶ
下の表の4つのうち、一番近いものを選びます。全部を直そうとせず、まず1つだけ手を入れます。
所要 3分
戻った理由ごとの立て直し方です。理由の4つは[1][3]で学生が挙げたもので、立て直し方は研究をこの記事で独学に当てはめた目安です。
| 戻った理由 | よくある場面 | 立て直し |
|---|---|---|
| 準備が大変 | 問題やカードを作る時間がない | 問いを前日に3つだけ書く(手順2) |
| 思い出せなくて不安 | 白紙を前に何も出てこない | ヒントつきで思い出す(手順3) |
| 時間・手間がかかる | 疲れた日は読むだけになる | 読み返しに3分だけ足す(手順4) |
| 一人だと楽な方に流れる | 家でスマホを見ながら読む | 始める時間と場所を決める(手順5) |
思い出す問いを、前日に3つだけ書いておく
勉強を終えるとき、次回の最初に答える問いを3つ書きます。「〇〇とは何か」「AとBの違いは」程度で十分です。見出しを問いの形に変えるだけでも使えます。思い出す練習を「とても効く」と考える学生が使わない理由で、最も多かったのは「準備が大変」でした[1]。準備を勉強の日から切り離します。
所要 3分
思い出せないときは、ヒントを1つ見る
答えの頭文字、または答えの一部だけを見てから思い出します。答えを全部見るのは、そのあとです。ヒントを選べると人は思い出す方を選びやすく、覚える量もヒントなしと変わりませんでした[4]。ヒントは答えがそのまま推測できない程度にとどめます。
所要 1問30秒
読み返しをやめず、最後に3分の思い出す時間を足す
疲れた日は読み返してもかまいません。読み終えたら本を閉じ、覚えていることを3分だけ書き出します。そのあと本を開いて、抜けを確かめます。思い出す回数が多い人ほど、あとでよく覚えていました[2]。「ゼロか全部か」にしないことが、戻ってしまったときの立て直しになります。
所要 3分+確かめ2分
思い出す練習をする時間と場所を、先に決める
「平日の夜、机に座ったら最初の10分は思い出す」のように決め、スマホは別の部屋に置きます。説明を読むだけでは、一人のときにやり方が変わりませんでした[2]。実験室では、スマホをしまい、決まった場所と時間に取り組んでいました。どれが効いたのかはわかっていないため、自分に合うものを試します。
所要 決めるのに2分
2週間後、思い出せた量で前のやり方と比べる
ノートの端に、毎回「思い出せた数/問いの数」を書いておきます。2週間後、読み返していた頃の手応えではなく、この数字で比べます。効く勉強法ほど、最中は手応えが少ないことがあります。くわしくは勉強法を変えたのに手応えがないときの記事にあります。
所要 毎回10秒・見直し10分
04 続けるためのコツまた読み返しに戻らないためには?
戻るのは失敗ではなく、負担が大きくなった合図です。戻ったら手順1の表に戻り、その時点の理由に合わせて負担を減らし直します。
- 戻った週を数えない。つまずいた自分を責めない方法の研究のとおり、責めるより次の一手を決める方が再開しやすくなります。
- 思い出す練習のやり方そのものは、思い出す練習と読み返しの比較と、頭の中で思い出すか書くかの記事にまとめています。
- 白紙で何も出てこない日が続くなら、思い出す練習で頭が真っ白になったときの立て直しを試してください。
- 復習の予定の計画が負担なら、復習日の計算機で日付だけ先に決めてしまう方法もあります。
05よくある質問
読み返しは、まったく意味がない?
意味がないわけではありません。読み返しにも小さな効果はありますが、思い出す練習の方が覚えている量は多くなります。疲れた日に読み返すのはかまいません。読み終えたあとに3分だけ本を閉じて思い出す時間を足すと、読み返しの時間を生かせます。
効く勉強法の本を読んだのに、続かないのは自分だけ?
自分だけではありません。米国の大学生185人の調査では、思い出す練習を「とても効く」と考えている人でも、準備・手間・時間を理由に使っていないことが多くありました。効く勉強法を授業で教えた実験でも、6か月後に使う回数は増えていませんでした。続かないのは知識の問題ではなく、負担の問題です。
ヒントを見て思い出すのは、ずるくない?
ずるくありません。単語の組を覚える実験では、答えの文字を少し見せるヒントつきで思い出しても、ヒントなしと同じくらい覚えられ、どちらも答えを見るだけより上でした。ただし、ヒントだけで答えがわかってしまうと効果は少し下がります。頭文字や一部だけにとどめます。
出典
- Carpenter, S. K., & Sanchez, C. A. (2025). A closer look at students' knowledge of effective learning strategies, where they learn about them, and why they do not use them. Cognitive Research: Principles and Implications, 10, 83. https://doi.org/10.1186/s41235-025-00693-8
- Simone, P. M., Whitfield, L. C., Bell, M. C., Kher, P., & Tamashiro, T. (2023). Shifting students toward testing: impact of instruction and context on self-regulated learning. Cognitive Research: Principles and Implications, 8, 14. https://doi.org/10.1186/s41235-023-00470-5
- Yüksel, E. M., Green, C. S., & Vlach, H. A. (2025). Durability of students' learning strategies use and beliefs following a classroom intervention. Behavioral Sciences, 15(5), 706. https://doi.org/10.3390/bs15050706
- Vaughn, K. E., & Kornell, N. (2019). How to activate students' natural desire to test themselves. Cognitive Research: Principles and Implications, 4, 35. https://doi.org/10.1186/s41235-019-0187-y


