やる気・心

学び直しで、わからないことを人に聞けずに行き詰まった。どう立て直す?質問をためらう心理と、聞き方の研究

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誰もいない講義室の座席
Photo: Yinan Chen / Public Domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「こんな初歩的なことを聞いたら、できない人だと思われる」「忙しい相手に悪い」。学び直しでは、そう思って質問を飲み込み、同じところで何日も止まってしまうことがあります。研究からわかるのは、頼む側は相手が引き受けてくれる見込みを低く、相手の負担を大きく見積もりがちなことです。聞くことは甘えではなく、学び方の1つです。

3行でわかる

  1. 頼みごとの実験では、頼む側は相手が引き受けてくれる見込みを、最大で50%低く見積もっていた。
  2. 米国の大人2,118人の研究では、頼む側は、頼まれた側の前向きな気持ちを低く、迷惑の大きさを高く見積もっていた。
  3. 立て直しは、①止まっている所を1行で書く ②15分自分で考えた跡を残す ③「答え」ではなく「ヒント」を頼む ④聞く場所を1つ決める ⑤聞いた後に自分で解き直す ⑥お礼と結果を伝える、の6つ。

01 悩みの正体大人になると、質問しにくくなるのはなぜ?

質問すると「できない人」と見られる気がすること、自分で解決すべきだと考えること、相手に迷惑だと思うことが、主な理由として挙げられています。どれも、実際の相手の反応より悪い方に見積もりやすい思い込みです。

大学生の質問行動の研究55本をまとめたレビューでは、質問をためらう理由として、人に頼るのは自立した学び方ではないという考えや、質問が力不足の印と受け取られる心配が挙げられていました[4]。年齢が上がるほど助けを求めにくくなるという研究も紹介されています[4]。

社会人の学び直しでは、「仕事ではできる側なのに」という気持ちも加わります。年齢のせいで覚えられないと落ち込んだときの立て直しは年齢の思い込みの記事で紹介しました。この記事は、質問できずに止まった後の立て直しに絞ります。

02 科学的にわかっていること人に頼むと、相手は迷惑に感じる?

頼む側が思うほど、相手は迷惑に感じていないことが多いと、複数の実験で示されています。頼まれた側は、頼む側の予想より引き受けやすく、引き受けた後の気持ちも前向きでした。

FlynnとLake(2008)[1]

6つの研究で、人に直接頼みごとをしたとき相手が引き受けてくれる見込みを調べた。最初の3つの研究では、実験と実際の場面の両方で、頼む側は引き受けてもらえる見込みを最大で50%低く見積もっていた。頼む側は、相手が「いいよ」と言う手間ばかりを考え、「断る」ことの気まずさを軽く見ていた。

対象: 実験参加者(実験と実際の場面での頼みごと) / 限界: さまざまな日常の頼みごとの研究で、勉強の質問そのものを調べたものではない。論文の要旨で確認。

ZhaoとEpley(2022)[2]

想定場面、過去の経験の思い出し、実際のやりとりを組み合わせた一連の研究(米国の大人、合計2,118人)。助けが必要な側は、相手が手を貸してくれる気持ちを低く、手を貸した後の相手の良い気分を低く、相手の迷惑を大きく見積もっていた。

対象: 米国の大人 / 限界: 日常の頼みごとの研究で、学習の場面に限った研究ではない。米国以外で同じ大きさのずれがあるかはわからない。論文の要旨で確認。

02 聞き方の研究質問は、学びの役に立つ?

聞き方によります。考え方やヒントを聞く質問は学びと結びつき、答えだけをもらう質問や、必要なのに聞かずに避けることは、良くない結果と結びついていました。

WonとChang(2024)[3]

オンラインで行われた工学の入門講座を受けたカナダの大学生213人を調べた。理解するためにヒントや説明を求める学生ほど、その分野を学び続けたいと答えていた。答えだけを求める学生は、次の講座を選ぶ意欲が低かった。必要な質問を避ける学生ほど、何をどう勉強すればいいかわからない状態になりやすかった。

対象: カナダの大学の学生(平均19歳) / 限界: 1回の調査での相関で、質問したから結果が良くなったとは言えない。社会人の学び直しで調べた研究ではない。

Davisonら(2023)[5]

英国の小学生290人の授業ごとの記録(6,592件)を分析した。課題の理解度と「助けが必要か」が、先生や友だちへの質問と結びついていた。英語が母語でない子どもは、必要なときでも周りより質問しにくかった。

対象: 英国の小学生(8〜11歳) / 限界: 子どもの教室での研究で、大人にそのまま当てはまるとは限らない。慣れない言葉や場で質問しにくくなる例として紹介する。

まとめると、「相手の迷惑になる」という心配は、実際より大きく見積もられがちです。一方で、ここで紹介した研究は、日常の頼みごとや、学生・子どもの調査です。社会人の学び直しで質問の効果を直接確かめた研究は、まだ多くありません。

03 今日からできる小さな一歩聞けずに止まった勉強は、どう立て直す?

止まっている所を1行で書き、15分は自分で考えた跡を残します。そのうえで、答えではなくヒントを頼む形で、決めた1つの場所で聞きます。聞いた後は、自分で解き直して確かめます。

1

止まっている所を1行で書く

「教科書の何ページの、どの式の、どこから先がわからない」と書きます。「全部わからない」のままでは、聞く側も答える側も困ります。書けない場合は、わかる所の最後の行に線を引きます。

所要 5分

2

15分だけ自分で考え、試した跡を残す

教科書の例題に戻る、用語を調べる、図に描くなど、試したことを箇条書きにします。15分は目安で、研究で決まった時間ではありません。試した跡があると、質問が具体的になります。

所要 15分

3

「答え」ではなく「ヒント」を頼む文にする

「ここまでは〇〇と考えました。次の一歩のヒントをください」と書きます。考え方やヒントを求める聞き方は学び続ける意欲と結びつき、答えだけを求める聞き方は、次の講座を選ぶ意欲の低さと結びついていました[3]。

所要 5分

4

聞く場所を1つ決めて、その日のうちに送る

講座の質問窓口、勉強会、職場の詳しい人、オンラインの質問の場などから1つ選びます。「迷惑では」と迷ったら、頼む側は相手の迷惑を大きく見積もりがちだったことを思い出します[2]。AIに聞く場合は答えを言わせない依頼文の表が使えます。

所要 5分

5

聞いた後に、答えを見ずに自分で解き直す

説明を聞いてわかった気がしても、その場で閉じてもう一度自分で解きます。翌日にもう一度解ければ、本当に身についています。説明を聞いてわかった気になる落とし穴はわかったつもりの記事で紹介しました。

所要 10分

6

お礼と「解けた」の報告をする

教えてくれた人に、お礼とその後どうなったかを一言伝えます。頼まれた側は、頼む側の予想より前向きな気持ちになっていました[2]。次に聞くときのハードルも下がります。

所要 2分

04 続けるためのコツまた聞けなくならないためには?

質問をためる場所を1つ作り、週1回まとめて聞く日を決めます。聞くことを特別なことにせず、勉強の手順の1つにします。

  • ノートの最後のページを「質問メモ」にし、わからない所が出たらすぐ1行書く。
  • 週に1回「聞く日」を決め、たまった質問をまとめて送る。
  • 勉強仲間がいる場合は、自分も人の質問に答える。教える側に回ると、自分の理解も確かめられる(勉強仲間の記事)。
  • 聞けずに長く止まって勉強をやめてしまった場合は、学び直しで挫折した後の再開の記事も参考にしてください。

05よくある質問

いい年をして初歩的なことを聞くのが恥ずかしいです。

そう感じる人は少なくありません。ただ研究では、頼む側は相手が引き受けてくれる見込みを低く、相手の迷惑を大きく見積もりがちでした。米国の大人2,118人の研究では、頼まれた側は頼む側の予想より前向きな気持ちになっていました。

聞くより、自分で調べて解決した方が力がつきませんか?

まず自分で考えることは大切です。ただ、必要なのに聞かずに避ける学び方は、オンライン講座の学生の研究で、学び方の混乱と結びついていました。答えをもらうのではなく、ヒントや考え方を聞く形なら、自分で解く部分は残せます。

聞ける相手がいない独学の場合はどうすればいいですか?

講座の質問窓口、勉強会、オンラインの質問の場、職場の詳しい人など、聞ける場所を1つ決めておきます。AIに聞く場合も、答えを言わせずヒントを頼む形にします。どこで聞いても、どこまでわかってどこでつまずいたかを書いてから聞くと伝わりやすくなります。

出典

  1. Flynn, F. J., & Lake, V. K. (2008). If you need help, just ask: Underestimating compliance with direct requests for help. Journal of Personality and Social Psychology, 95(1), 128–143. https://doi.org/10.1037/0022-3514.95.1.128
  2. Zhao, X., & Epley, N. (2022). Surprisingly happy to have helped: Underestimating prosociality creates a misplaced barrier to asking for help. Psychological Science, 33(10), 1708–1731. https://doi.org/10.1177/09567976221097615
  3. Won, S., & Chang, Y. (2024). Antecedents and consequences of academic help-seeking in online STEM learning. Frontiers in Psychology, 15, 1438299. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1438299
  4. Li, R., Che Hassan, N., & Saharuddin, N. (2023). College student's academic help-seeking behavior: A systematic literature review. Behavioral Sciences, 13(8), 637. https://doi.org/10.3390/bs13080637
  5. Davison, K., Malmberg, L.-E., & Sylva, K. (2023). Academic help-seeking interactions in the classroom: A microlongitudinal study. British Journal of Educational Psychology, 93(1), 33–55. https://doi.org/10.1111/bjep.12538