やる気・心

勉強のやる気が続かないときのWOOPシート。願い・結果・障害・計画を書く使い方(障害を先に考える研究と、効かなかった大規模実験)

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手帳に鉛筆で描かれた入り江のスケッチ
Photo: John Muir / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「合格したい」「英語を話せるようになりたい」と思うのに、机に向かう気持ちが続かない。そんなときに試す価値があるのが、願いと一緒に「じゃまになるもの」を先に書く方法です。研究では、この方法(WOOP)で目標の達成がやや高まりました。ただし、効かなかった大規模な実験もあります。この記事では、研究の手順をそのまま1枚のシートにしました。

3行でわかる

  1. 願い・最高の結果・障害・「もし〜なら、〜する」計画の4つを書く方法(WOOP)は、21本の論文・15,907人をまとめた分析で、目標の達成をやや高めた(g = 0.336)。
  2. 高校生66人の実験では、30分の書く作業で、夏休みに解いた練習問題が60%以上多かった。一方、オンライン講座の約1万8千人の実験では、全体の修了率に統計的な差は出なかった。
  3. 効いたのは、障害が「仕事や家族の用事」のように予想でき、乗り越えられるときだった。「時間がない」「ネットがない」が障害のときは効かなかったので、シートでは障害の種類で次の手を分けている。

01 このシートでできることWOOPとは、どんな勉強のやる気の出し方?

WOOPは、願い(Wish)・最高の結果(Outcome)・障害(Obstacle)・計画(Plan)の順に書く方法です。じゃまになる自分の行動や気持ちを先に決め、その対処を「もし〜なら、〜する」で決めておきます。

研究での正式な名前は「心の中の対比と実行意図(MCII)」です。「対比」は、望む未来と、今の現実のじゃまものを並べて考えることを指します。WOOPは、その4つの手順の頭文字をとった呼び名で、子どもを対象にした実験でも使われました[3]。

メタ分析(たくさんの研究を統計でまとめる方法)の論文は、序論でこう整理しています。良い未来だけを考えると、目標に向けた努力や達成の見込みが下がるという研究がある。その後に障害を考えると、願いが「やるべき目標」に変わりやすい[1]。

後半の「もし〜なら、〜する」計画は、それだけでも研究があります。くわしくは「いつ・どこでやるか」を決めると勉強は続くのか(実行意図の研究)にまとめました。先延ばしの原因から探したいときは勉強の先延ばしチェック表が向いています。

02 シートの根拠になった研究障害を先に書く方法は、勉強に効く?

まとめた分析では、目標の達成に小〜中くらいの効果がありました。高校生や小学生の勉強でも効いた実験があります。ただし、オンライン講座の大規模な実験では、効いたのは一部の国と、一部の障害の人だけでした。

Wangら(2021)[1]

MCII(WOOP)を調べた21本の論文、24の研究、合計15,907人をまとめたメタ分析。目標の達成に小〜中くらいの効果があった(g = 0.336)。研究者と対面でやりとりしながら行う方法(g = 0.465)は、紙やネットの文書だけで行う方法(g = 0.277)より効果が大きかった。

対象: 勉強・健康・人間関係などの目標。子ども・大学生・一般の大人 / 限界: 出版の偏り(効果が出た研究ほど発表されやすい)の可能性があり、補正すると g = 0.242 に下がった。著者らも「実際の効果はもっと小さいかもしれない」と書いている。

Duckworthら(2011)[2]

大事な試験を控えた高校2年生66人を、30分の書くMCIIの作業か、別の書く作業(比べる組)にくじで分けた。MCIIの組は、夏休みに自分で解いた練習問題が、比べる組より60%以上多かった。

対象: 高校2年生66人 / 限界: 論文の要旨と、ほかの論文の紹介で確認。測ったのは解いた問題の数で、試験の点数ではない。

Duckworthら(2013)[3]

アメリカの都市部の公立中学校に通う5年生77人(85%が低所得の家庭)。WOOPを学ぶ組と、良い結果だけを思い描く組にくじで分け、少人数で1時間のセッションを3回行った。約2か月後の通知表の平均点は、WOOPの組が80.29点、比べる組が78.13点で、出席と生活態度もWOOPの組が上だった。

対象: 小学5年生にあたる子ども77人 / 限界: 次の学期には差が小さくなり、統計的にはっきりしなくなった。著者らは、続けるには思い出させる働きかけが要るかもしれないと書いている。

KizilcecとCohen(2017)[4]

オンライン講座の受講者で2回の実験(9,619人と8,344人、80か国以上)。8分以内で終わるMCIIの書く作業をしても、全体の修了率に統計的な差は出なかった。個人主義が強いとされる国の受講者だけを見ると、修了率は5.52%から7.28%、25.7%から29.5%に上がった。集団主義が強いとされる国では効果がなかった。

対象: ビジネスとコンピュータの講座の受講者 / 限界: 国ごとの文化の分け方は国の平均の指標で、一人ひとりを測ったものではない。日本はこの論文で名前が挙がっていない。

KizilcecとCohen(2017)の続き[4]

受講者が書いた障害を分けて調べると、効果が出たのは障害が「仕事や家族の用事」「予定が詰まっている」のように、予想できて乗り越えられるものだったとき。「時間がない」や、ネット環境・言葉の壁のような物理的な障害を書いた人には効かなかった。

対象: 1回目の実験の受講者 / 限界: 著者らは、この分析は探索的(あとから見つけた傾向)だと書いている。

CrossとSheffield(2019)[5]

運動や食事など、健康のための行動を対象にしたメタ分析(1,528人)。障害を思い描く方法には、4週間までの小〜中くらいの効果があった(g = 0.28)。「もし〜なら」の計画を足した組(7件の研究)も同じくらい(g = 0.28)で、足したことによる上乗せは見られなかった。

対象: 健康の行動 / 限界: 論文の要旨で確認。勉強の研究ではない。上乗せを比べた研究は少ない。

紹介した実験は、数週間〜数か月の学校や講座の中で行われたものです。社会人が資格や語学を1年かけて独学する場面で、同じ大きさの効果が出るかは確かめられていません。効果は「やや高まる」程度と考えておくのが安全です。

03 シートの使い方WOOPシートは、何をどう書く?

願いは1つに絞り、障害は「自分の行動や気持ち」で書き、計画は「もし〔障害〕なら、〔行動〕する」の1文にします。書く時間は5〜10分です。研究で使われた作業も30分以内でした。

表1 WOOPシート(ノートに書き写して使う)

欄書くこと記入例
W 願いこの1〜4週間で、できそうだけど少し難しい勉強の願いを1つ今月中に問題集の第3章を終える
O 最高の結果かなったら一番うれしいことを1つ。目を閉じて、その場面を思い浮かべる模試でこの分野を落とさなくなり、試験日までの不安が減る
O 障害じゃまになる「自分の中のもの」(行動・気持ち・くせ)を1つ。いつ、どこで起きそうかも書く平日の夜、帰宅してソファに座ると、そのまま動画を見てしまう
P 計画「もし〔障害〕なら、〔すぐできる行動〕する」の1文もし帰ってソファに座りたくなったら、座る前に問題集を開いて1問だけ解く

記入例は説明用で、研究の内容ではありません。研究の手順では、願いは「難しいけれどかないそうなもの」にします[3]。障害は、外の出来事より、それに対する自分の反応で書くと計画を立てやすくなります。

表2 障害の種類で、次の手を分ける表(オンライン講座の実験[4]から)

書いた障害研究での結果次の手
仕事や家族の用事、予定が詰まる日がある効果が出たWOOPの計画で対処する(例: もし残業になったら、帰りの電車で単語を10個だけ見る)
そもそも時間がない効果が出なかった計画より先に、願いの量を減らすか、締め切りをのばす
ネット環境・言葉の壁・お金などの物理的な障害効果が出なかった気持ちの工夫ではなく、環境や教材そのものを変える

表3 1週間の振り返り表

見ること月火水木金土日
障害が起きた(○/×)
計画どおり動けた(○/×)
やった勉強(問題数・ページ・分)

週末に、「障害が起きたのに計画どおり動けなかった日」を数えます。2日以上あれば、計画の行動をもっと小さくするか、障害を書き直します。予想していなかった別の障害が出た日は、それで新しいシートを1枚作ります。

1

願いと最高の結果を書き、場面を思い浮かべる

願いは1つ、期間は1〜4週間にします。最高の結果は、紙に書いたあと、目を閉じてその場面を思い浮かべます。

所要 約3分

2

障害を1つ選び、いつ・どこで起きるかを書く

一番じゃまになりそうな自分の行動や気持ちを1つだけ選びます。表2で「時間がない」型なら、計画の前に願いの量を見直します。

所要 約3分

3

「もし〜なら、〜する」を1文で書き、声に出して言う

行動は、障害が起きたその場ですぐできるものにします。研究の手順でも、計画を書いたあと、心の中でくり返して覚えていました[3]。

所要 約2分

4

1週間、表3に○×をつけ、週末に見直す

シートは机の前か手帳にはさみ、勉強を始める前に見ます。週末に計画を直すか、新しいシートを作ります。

所要 毎日1分+週末5分

04 続けるためのコツWOOPを書いても、やる気が戻らないときは?

願いが大きすぎるか、障害が「時間がない」のように計画では動かせない型のことがあります。願いを小さくし、障害を自分の行動で書き直します。効果は時間とともに薄れやすいので、週1回書き直します。

  • 一度書いて終わりにしない。小学生の実験では、次の学期には差が小さくなりました[3]。週末の見直しで、そのときの障害に合わせて書き直します。
  • 書くだけより、人と話しながら作る方が効果が大きかった。まとめた分析では、研究者とやりとりする方法の効果が大きめでした[1]。勉強仲間や家族に、願いと障害を口で説明してみるのも1つの手です。目標を人に話すことについては「目標は人に言わない方が続く」は本当?にまとめました。
  • 効かない人もいると知っておく。大規模な実験では、全体では差が出ず、効いたのは一部の受講者でした[4]。2〜3週間試して変化がなければ、ほかの方法に切りかえてかまいません。

05よくある質問

WOOPは勉強のやる気に本当に効きますか?

やや効くという研究が多いです。21本の論文・15,907人をまとめた分析では、目標の達成に小〜中くらいの効果がありました(g = 0.336)。ただし偏りを補正すると0.242に下がり、オンライン講座の約1万8千人の実験では全体の修了率に差が出ませんでした。

合格した自分をイメージするだけではだめですか?

良い結果だけを思い描くより、障害もあわせて考える方が良い結果が出た実験があります。小学5年生77人の実験では、良い結果だけを思い描く組より、WOOPを学んだ組の方が約2か月後の通知表の点が高くなりました(80.29点と78.13点)。

日本人にも効きますか?

日本で確かめた研究は、この記事の出典にはありません。オンライン講座の実験では、個人主義が強いとされる国の受講者では修了率が上がり、集団主義が強いとされる国では効果がありませんでした。日本はその論文で名前が挙がっていないため、自分で2〜3週間試して、表3で確かめるのが確実です。

障害が「時間がない」のときは、どうすればいいですか?

WOOPの計画だけでは動かしにくい障害です。オンライン講座の実験では、「時間がない」と書いた人には効果がありませんでした。先に、願いの量を減らす、期間をのばす、勉強する時間そのものを作るといった、計画の中身を見直します。

出典

  1. Wang, G., Wang, Y., & Gai, X. (2021). A meta-analysis of the effects of mental contrasting with implementation intentions on goal attainment. Frontiers in Psychology, 12, 565202. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.565202
  2. Duckworth, A. L., Grant, H., Loew, B., Oettingen, G., & Gollwitzer, P. M. (2011). Self-regulation strategies improve self-discipline in adolescents: Benefits of mental contrasting and implementation intentions. Educational Psychology, 31(1), 17–26. https://doi.org/10.1080/01443410.2010.506003(要旨に基づく)
  3. Duckworth, A. L., Kirby, T. A., Gollwitzer, A., & Oettingen, G. (2013). From fantasy to action: Mental contrasting with implementation intentions (MCII) improves academic performance in children. Social Psychological and Personality Science, 4(6), 745–753. https://doi.org/10.1177/1948550613476307
  4. Kizilcec, R. F., & Cohen, G. L. (2017). Eight-minute self-regulation intervention raises educational attainment at scale in individualist but not collectivist cultures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 114(17), 4348–4353. https://doi.org/10.1073/pnas.1611898114
  5. Cross, A., & Sheffield, D. (2019). Mental contrasting for health behaviour change: a systematic review and meta-analysis of effects and moderator variables. Health Psychology Review, 13(2), 209–225. https://doi.org/10.1080/17437199.2019.1594332(要旨に基づく)