勉強中にスマホを見たくなるのはなぜ?通知・退屈・疲れの研究と「スマホ脳」説の弱さ

問題集を開いて数分。気づくと、スマホを手に取っている。通知が来たわけでもないのに、なぜか見たくなる。これは意志が弱いからではありません。研究では、スマホを見たくなるきっかけは大きく2つに分かれます。外からの合図(通知)と、内側の状態(退屈や疲れ)です。
3行でわかる
- 通知の音や振動は、画面を見なくても注意を乱す。実験では、通知を受けただけで、電話やメッセージを実際に使ったときと同じくらい成績が下がった。
- 通知がなくても、退屈や疲れが強い時間ほどスマホに手が伸びやすい。83人の職場での記録では、退屈が少し強まると使うオッズ(見込みの比)が約1.4倍になった。
- 「スマホが脳を作り変えて、ごほうび中毒にする」という説は、長期の研究がなく根拠が弱い。原因と結果もまだはっきりしていない。
01 悩みの正体スマホを見たくなるきっかけは何?
きっかけは「外から」と「内から」の2種類です。外からは通知の音や振動、内からは「今の作業がつまらない・疲れた」という感覚です。勉強中は、両方が重なりやすい状態にあります。
スマホと注意の研究をまとめた2017年の総説は、スマホによる中断を2つに分けています[1]。1つは、通知のように外から来る中断。もう1つは、自分の頭の中でスマホのことが浮かび、自分から手に取る中断です。
自分から手に取る中断について、総説は「目の前の作業がごほうびに感じられないとき、すぐ得られる楽しさを求めて起きるのかもしれない」と述べています[1]。暗記や問題演習は、成果が見えるまで時間がかかります。すぐ反応が返ってくるスマホとは、ちょうど逆の性質です。
もう1つ、総説が指摘しているのが「連鎖」です。1つの用事でスマホを開くと、そのまま別のアプリへ、さらに別の用事へと続きやすくなります[1]。「ちょっとだけ」のつもりが長くなるのは、このためです。
02 科学的にわかっていること通知や退屈は、どれくらい影響する?
通知は、見なくても注意の課題の成績を下げました。退屈や疲れが強い時間ほどスマホを使う見込みは高まりましたが、使う時間が長くなったわけではありません。
Stothartら(2015)[2]
集中が必要な注意の課題の最中に、参加者のスマホへ電話やメッセージの通知を送った。参加者がスマホに触れなくても、通知を受けただけで成績ははっきり下がった。下がり方の大きさは、実際に電話やメッセージをしたときと同じくらいだった。
対象: 実験室で行った研究(参加者は課題中スマホに触れない) / 限界: 短い注意の課題での結果で、勉強の成果を測ったものではない。著者らは、通知が課題と関係ない考えを呼び起こすためと考えている。
Upshawら(2022)[3]
画面の文字を見分ける課題の途中で、スマホの通知音か、ふつうの音を鳴らした。通知音が鳴ったときの方が、反応が遅くなった。脳波でも、通知音のときは注意をより強く引き締めている反応が見られた。
対象: 米国の大学生69人(脳波の分析は54人) / 限界: 効果の多くは小さく、著者らも慎重な解釈を求めている。対象はほとんどが同じ地域の大学生。
Doraら(2021)[4]
オランダの博士課程の研究員83人が、仕事中の3日間、1時間ごとに疲れと退屈の強さを答え、アプリがスマホの使用を記録した。退屈が少し強いとき(平均より標準偏差の半分ほど上)は、次の20分にスマホを使うオッズ(使う見込みの比)が約1.43倍、疲れが同じだけ強いときは約1.36倍だった。ただし、使う時間が長くなったわけではない。
対象: 職場で自由にスマホを使える83人 / 限界: 観察の研究で、退屈や疲れがスマホ使用の原因とは言い切れない。著者らは、結果を探索的なものとして慎重に読むよう求めている。
この研究には意外な結果もありました。スマホを使った後の方が、疲れと退屈はむしろ強く報告されていました[4]。「スマホで気分転換すれば回復する」とは限らないということです。ただし、これも原因と結果がはっきりしない観察の結果です。
| よく言われること | 研究での判定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 通知は見なければ影響しない | 当てにならない。音や振動だけで注意が乱れた | 実験[2][3] |
| 退屈や疲れでスマホに手が伸びる | 関係はある(小さめ、原因かは未確定) | 83人の職場の記録[4] |
| スマホで休憩すると回復する | はっきりしない。使った後の方が疲れを強く感じていた | 同上[4] |
| スマホが脳を作り変え、ごほうび中毒にする | 根拠が弱い。長期の研究がない | 総説[1] |
「予測できないごほうびがあるから、つい見てしまう」という説明はよく聞きます。しかし2017年の総説は、「スマホが脳を作り変える」といった主張には長期の研究がなく、裏づけがとても限られているとまとめています[1]。この分野の研究の多くは相関(同時に起きているだけ)の研究で、原因まではわかりません[1]。
ここで紹介した研究は、実験室の短い課題か、職場での3日間の記録です。何か月も続く独学で、スマホを見たくなる気持ちがどれだけ成果を下げるかを直接測った研究ではありません。
03 今日からできる小さな一歩スマホを見たくなる気持ちを減らすには?
外からのきっかけは通知を切って減らし、内からのきっかけは「疲れ・退屈のサイン」として扱います。見たくなったら、責めずに休憩の予定へ回します。
04 続けるためのコツそれでもスマホを見てしまったら?
自分を責めず、きっかけを1つだけ直します。退屈が多いなら課題を小さく区切り、疲れが多いならスマホを使わない休憩に変えます。
- 退屈が多い日は、課題を小さく区切る。「10問だけ」「1ページだけ」のように、終わりが見える単位にします。
- 疲れが多い日は、スマホ以外の休憩にする。スマホを使った後の方が疲れを強く感じていた記録があります[4]。歩く・目を閉じるなどを試します(休憩のとり方の研究)。
- 見てしまったら、戻る場所を確かめてから再開する。中断の後の戻り方は集中が切れたときの立て直し方にまとめています。
05よくある質問
通知を見なければ、勉強への影響はない?
影響はあります。実験では、スマホに触れなくても、通知を受けただけで注意の課題の成績がはっきり下がりました。下がり方は、実際に電話やメッセージをしたときと同じくらいでした[2]。勉強の前に、音と振動まで切っておくのが確実です。
スマホを見たくなるのは「スマホ依存」だから?
そうとは限りません。退屈や疲れが強い時間ほど、スマホを使う見込みが高まる傾向がありました[4]。依存でなくても起こりうる反応です。ただし、生活に支障が出るほど止められないと感じるときは、医療機関や相談窓口(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 など)に相談してください。
スマホは脳を作り変えるって本当?
今のところ、はっきりした根拠はありません。2017年の総説は、「スマホが脳を作り変えて、すぐ得られる楽しさの中毒にする」といった主張には長期の研究がなく、裏づけがとても限られているとまとめています[1]。研究の多くは相関の研究で、原因まではわかっていません。
出典
- Wilmer, H. H., Sherman, L. E., & Chein, J. M. (2017). Smartphones and cognition: A review of research exploring the links between mobile technology habits and cognitive functioning. Frontiers in Psychology, 8, 605. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00605
- Stothart, C., Mitchum, A., & Yehnert, C. (2015). The attentional cost of receiving a cell phone notification. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 41(4), 893–897. https://doi.org/10.1037/xhp0000100
- Upshaw, J. D., Stevens, C. E., Ganis, G., & Zabelina, D. L. (2022). The hidden cost of a smartphone: The effects of smartphone notifications on cognitive control from a behavioral and electrophysiological perspective. PLOS ONE, 17(11), e0277220. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0277220
- Dora, J., van Hooff, M., Geurts, S., Kompier, M., & Bijleveld, E. (2021). Fatigue, boredom and objectively measured smartphone use at work. Royal Society Open Science, 8(7), 201915. https://doi.org/10.1098/rsos.201915


