勉強中にのどが渇くと集中できないのはなぜ?水分不足で注意が落ちる仕組みと、のどの渇きの研究

夏の部屋や、通勤や運動のあとの勉強で、なんとなく頭がぼんやりする。同じページを何度も読み直してしまう。「やる気がないのかな」と思う前に、のどが渇いていないか確かめてみてください。体の水分が減ると、注意を向ける力が落ちやすいことが、研究のまとめでわかっています。
3行でわかる
- 33件の研究のまとめでは、体の水分が減ると考える作業の成績が小さく下がった。特に落ちたのは注意の課題で、体重の2%を超える水分が失われると下がり方が大きくなった。
- 体重の1〜2%ほどの軽い水分不足でも、「集中しにくい」「課題が難しく感じる」「疲れた」と感じる人が増えた実験がある。
- のどの渇きそのものが注意を奪う、という考え方もある。のどが渇いていない人では、水を飲んでも反応の速さは変わらなかった。
01 悩みの正体のどが渇くと、なぜ集中できない?
理由は2つ考えられています。1つは、水分が減ること自体で注意や気分が落ちること。もう1つは、「のどが渇いた」という感覚が頭の注意を少しずつ使ってしまうことです。
体の水分は、汗や息、尿で少しずつ出ていきます。暑い部屋で長く座っている日や、歩いたり運動したりした後の勉強では、気づかないうちに水分が減っています。研究では、減った量を「体重の何%の水分が失われたか」で表します。体重60kgの人なら、2%は約1.2kgです。
水分が減ると、なぜ考える力が落ちるのか。脳の中で何が起きているかは、まだはっきりしていません[6]。ただ、測ってみると「どの作業が落ちやすいか」「どれくらいの量から目立つか」は、少しずつわかってきています。
02 科学的にわかっていること水分不足で、勉強の何が落ちる?
落ちやすいのは、注意を保つ作業です。体重の2%を超える水分不足で影響が大きくなります。もっと軽い水分不足では、成績より先に「集中しにくい」「難しく感じる」という感じ方に表れやすい結果でした。
WittbrodtとMillard-Stafford(2018)[1]
水分不足と考える作業の成績を調べた33件の研究(参加者413人、失われた水分は体重の1〜6%)をまとめたメタ分析(多くの研究を統合する分析)。全体では成績が小さく下がった(効果量−0.21)。下がり方が大きかったのは注意の課題(−0.52)で、計画や切り替えなどの課題(−0.24)も下がった。単純に反応する速さの課題は、はっきりした差がなかった。体重の2%を超える研究では−0.28、2%以下では−0.14だった。
種類: メタ分析 / 限界: 研究によって水分を減らす方法(運動・暑さ・水を飲まない)や課題がばらばらで、結果のばらつきも大きい。
Ganioら(2011)[2]
若い男性26人(平均20歳)が、27.7℃の部屋で40分の歩行を3回行った。水分を体重の平均1.59%失った日は、水分を保った日と比べて、画面を見張り続ける課題での誤りが増え、短い時間覚えておく課題の反応が遅くなった。疲れと緊張・不安の気分も強くなった。
対象: 米国の若い男性26人 / 限界: 運動と薬(利尿剤)で水分を減らした実験。座って勉強しているときの水分不足とは条件が違う。
Armstrongら(2012)[3]
若い女性25人(平均23歳)で、同じ方法で水分を体重の平均1.36%減らした。考える作業の成績は、ほとんどの項目で変わらなかった。一方で、元気が減って疲れを感じ、「課題が難しい」「集中しにくい」と感じ、頭痛を訴える人が増えた。
対象: 米国の若い女性25人 / 限界: 測ったのは1日8時間の実験の中だけ。軽い水分不足では、成績より感じ方に先に表れた可能性がある。
Bentonら(2016)[4]
101人が30℃の部屋で4時間過ごし、くじで「水を300ml飲む組」と「飲まない組」に分かれた。水を飲んだ組は、記憶と、1つのことに注意を向ける課題の成績がよかった。飲まない組で失われた水分は平均で体重の0.72%と少なかった。はじめのうちは、のどの渇きが強い人ほど記憶の成績が低かった。3時間後には、水を飲んだ組のほうが課題を易しく感じていた。
対象: 大人101人 / 限界: 30℃という暑い部屋での実験。涼しい部屋で同じ差が出るかはわからない。
Edmondsら(2013)[5]
前の晩から飲食をやめた大人34人(平均29歳)で、朝に水を飲んだ日と飲まなかった日を比べた。水を飲んだ日は、合図にすばやく反応する課題が速くなった。ただし速くなったのは、のどが渇いていた人だけだった。渇いていない人は、水を飲んでも飲まなくても同じ速さだった。一方、ルールを切り替える課題では、水を飲んだ日のほうが成績が低かった。
対象: 英国の大人34人 / 限界: 少人数の実験。著者らは「渇きの感覚が注意を使う」と解釈しているが、それを直接測ったわけではない。
McCartneyら(2017)[7]
水分を減らした後に水を飲むと成績が戻るかを調べた、64の試験(643人)のまとめ。暑い中で長く運動する成績は飲むとよくなったが、考える作業(15の試験)では、飲んで成績が戻るかははっきりしなかった。
種類: システマティックレビューとメタ分析 / 限界: 主に運動選手や運動の研究。勉強の場面を調べたものではない。
水分と勉強について、研究から言えること(研究[1]〜[7]をもとに整理)
| 場面 | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 体重の2%を超える水分不足 | 注意の課題を中心に、成績の下がり方が大きくなる[1] |
| 体重の1〜2%ほどの水分不足 | 見張る課題の誤りが増えた実験[2]と、成績は変わらず「集中しにくい」と感じた実験[3]がある |
| 暑い部屋で水を飲まない | 体重の1%未満でも、飲んだ組より記憶と注意の成績が低かった[4] |
| のどが渇いていないのに飲む | 反応の速さは変わらず[5]、課題によっては成績が低かった[5] |
ここで紹介した実験は、運動や暑さで水分を減らした、数時間の実験室の研究が中心です。涼しい部屋で座って何か月も勉強する独学に、同じ大きさの差が出るとは限りません。
03 今日からできる小さな一歩勉強中の水分は、どうとればいい?
のどの渇きを合図にして、勉強を止めずに飲める場所に水を置きます。暑い部屋や運動の後は、渇きを感じる前でも一口飲んでから始めます。渇いていないのに無理にたくさん飲む必要はありません。
机の上、手の届く所に水を置く
取りに行くたびに勉強が止まると、つい我慢してしまいます。ふたつきのボトルなら、ノートや本をぬらす心配も減ります。
所要 1分
「ぼんやりしてきた」と感じたら、まずのどの渇きを確かめる
同じ行を読み直す、ミスが続くと感じたら、のどが渇いていないか自分に聞きます。渇いていたら一口飲んでから続けます。渇きの強い人ほど記憶の成績が低かった実験があります[4]。
所要 30秒
暑い部屋・通勤や運動の後は、始める前に飲む
汗をかいた後や、暑い部屋に何時間もいる日は、水分が減りやすい条件です。勉強を始める前に、コップ1杯ほどを飲んでおきます。部屋が暑いときは、温度そのものも見直してください。
所要 1分
04 続けるためのコツ水をたくさん飲むほど、頭はよく働く?
そうとは言えません。研究で差が出たのは、水分が減ったときや、のどが渇いているときでした。渇いていない人では、水を飲んでも反応の速さは変わりませんでした。「足りないのを防ぐ」くらいに考えます。
- 「集中できない=意志が弱い」と決めつけない。軽い水分不足でも「集中しにくい」「難しく感じる」と感じた実験があります[3]。体の状態を先に確かめます。
- 暑さと水分はセットで考える。暑い部屋は、それだけでも集中しにくくなります。詳しくは暑い部屋で勉強がはかどらないのはなぜ?にまとめています。
- コーヒーやお茶だけに頼らない。カフェインの飲み方は眠りにも関わります。勉強とカフェインの付き合い方も参考にしてください。
頭痛やめまい、吐き気があるとき、暑い場所で体がだるいときは、勉強をやめて体を冷やし、水分をとってください。熱中症が疑われるときや、症状が続くときは医療機関に相談してください。
05よくある質問
どれくらい水分が減ると、集中に影響する?
33件の研究のまとめでは、体重の2%を超える水分が失われた研究で、成績の下がり方が大きくなりました(体重60kgなら約1.2kg)。ただ、暑い部屋で体重の1%未満しか減っていなくても、水を飲んだ組より記憶と注意の成績が低かった実験もあります。
のどが渇いていなくても、水を飲んだほうが頭は働く?
はっきりした効果は見られていません。大人34人の実験では、水を飲んで反応が速くなったのは、のどが渇いていた人だけでした。ルールを切り替える課題では、水を飲んだ日のほうが成績が低い結果もありました。渇きを合図に飲む、くらいで十分と考えられます。
水分不足になってから飲めば、すぐに集中は戻る?
はっきりしません。水分を減らした後に飲む研究のまとめでは、暑い中での運動の成績は戻りやすかった一方、考える作業では飲んで成績が戻るかははっきりしませんでした。暑い日や運動の後は、足りなくなる前に少しずつ飲むほうが確実です。
出典
- Wittbrodt, M. T., & Millard-Stafford, M. (2018). Dehydration impairs cognitive performance: A meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise, 50(11), 2360–2368. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000001682
- Ganio, M. S., Armstrong, L. E., Casa, D. J., et al. (2011). Mild dehydration impairs cognitive performance and mood of men. British Journal of Nutrition, 106(10), 1535–1543. https://doi.org/10.1017/S0007114511002005
- Armstrong, L. E., Ganio, M. S., Casa, D. J., et al. (2012). Mild dehydration affects mood in healthy young women. The Journal of Nutrition, 142(2), 382–388. https://doi.org/10.3945/jn.111.142000
- Benton, D., Jenkins, K. T., Watkins, H. T., & Young, H. A. (2016). Minor degree of hypohydration adversely influences cognition: A mediator analysis. The American Journal of Clinical Nutrition, 104(3), 603–612. https://doi.org/10.3945/ajcn.116.132605
- Edmonds, C. J., Crombie, R., & Gardner, M. R. (2013). Subjective thirst moderates changes in speed of responding associated with water consumption. Frontiers in Human Neuroscience, 7, 363. https://doi.org/10.3389/fnhum.2013.00363
- Masento, N. A., Golightly, M., Field, D. T., Butler, L. T., & van Reekum, C. M. (2014). Effects of hydration status on cognitive performance and mood. British Journal of Nutrition, 111(10), 1841–1852. https://doi.org/10.1017/S0007114513004455
- McCartney, D., Desbrow, B., & Irwin, C. (2017). The effect of fluid intake following dehydration on subsequent athletic and cognitive performance: A systematic review and meta-analysis. Sports Medicine - Open, 3, 13. https://doi.org/10.1186/s40798-017-0079-y


