集中・環境

寝不足の日、難しい勉強ほど避けたくなるのはなぜ?「頑張る気持ち」が先に下がる、睡眠不足とやる気の研究

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眠っている猫
Photo: Umberto Salvagnin / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

寝不足の日は、単語の復習くらいならできても、難しい問題集を開く気にはなれない。そんな自分を「怠けている」と責めていませんか。実験では、睡眠が足りないと、頭を使う課題に挑もうとする気持ちそのものが下がることが示されています。寝不足の日に難しい勉強を避けたくなるのは、意志の弱さだけでは説明できません。

3行でわかる

  1. 3晩続けて睡眠を3時間に減らした実験では、難しい集中の課題を選ぶ人が減った。握力を使う体の課題では、選び方は変わらなかった。
  2. 徹夜した学生は、同じ文章を読む時間を約129分と見積もり、よく寝た学生(約77分)より難しく感じていた。説明を読み飛ばす人も多かった。
  3. どの研究も少人数で、実験室の短い課題を使っている。勉強そのものを調べたわけではないが、「寝不足の日は難しい勉強ほど重く感じる」と考えておくと計画を立てやすい。

01 悩みの正体寝不足の日にやる気が出ないのは、頭が働かないから?

頭の働きが落ちるだけではありません。睡眠不足の実験では、課題をこなす力とは別に、「頑張る価値がある」と感じる気持ちが下がる様子が示されています。

寝不足で集中力や記憶が落ちることは、よく知られています。徹夜の後に新しいことを覚えると成績が下がることは、徹夜・寝不足で勉強してしまったときの立て直し方でも紹介しました。

一方で、最近の研究が注目しているのは「やろうとする気持ち」です。人は、課題の大変さと、得られるもの(点数・ごほうび)をくらべて、頑張るかどうかを決めていると考えられています。睡眠が足りないと、この天びんが「頑張らない」側に傾きやすくなるようです。勉強がもともと「面倒」に感じられる理由は、頭を使う勉強が面倒に感じるのはなぜ?にまとめています。

02 科学的にわかっていること睡眠不足で、難しい課題を選ぶ気持ちは下がる?

下がるという実験が複数あります。睡眠を減らすと、より多くのごほうびがもらえても難しい課題を選ぶ人が減り、課題を難しく見積もり、説明を飛ばしやすくなりました。

Jurgelisら(2022)[1]

同じ人が、4晩とも9時間眠れる回と、1晩目は9時間、続く3晩は3時間しか眠れない回の両方に参加した。睡眠を減らした後は、ポイントが多くもらえても難しい集中の課題を選ぶことが減った(6段階のうち、難しさ3〜6の申し出で差があった)。握力を使う体の課題では、選び方は変わらなかった。課題の出来ばえは、どちらを選ぶかと関係していなかった。

対象: オーストラリアの研究室で、21〜45歳の大人24人(平均26.8歳) / 限界: 頭を使う課題は「画面の文字を見張る集中の課題」だけで、ほかの種類の勉強に当てはまるかは調べていない。人数が少ない。

Libedinskyら(2013)[2]

徹夜した日は、よく眠った日より、「単語を逆から打ち込めば20ドル」という大変な選択肢を避け、何もしなくてよい少ない金額を選びやすくなった。一方、「今もらうか、数か月後に多くもらうか」の選び方は、3つの実験のどれでも徹夜で変わらなかった。

対象: シンガポールの18〜30歳の健康な大人77人(3つの実験の合計)。大変さの実験は、最後まで参加した14人 / 限界: 大変さの結果は1つの実験の少人数のもの。お金のごほうびだけを調べている。

Engle-Friedmanら(2018)[3]

徹夜した学生20人は、家で眠った学生19人より、同じ文章を読むのにかかる時間を長く見積もり(約129分と約77分)、文章をより難しいと評価した。課題の説明を読み飛ばした人は、徹夜した組で90%、眠った組で58%だった。

対象: アメリカの大学生39人(18〜29歳) / 限界: パズルの見積もりや、難しい計算問題を選ぶかどうかには、はっきりした差がなかった。家で眠った組も平均約5.9時間しか眠っていなかった。

約129分 と 約77分

同じ文章を読む時間の見積もり。徹夜した学生と、家で眠った学生の平均です[3]。寝不足だと、同じ勉強でも「重い」と感じやすいことを示しています。

Axelssonら(2020)[4]

123人を、徹夜する組と家でふつうに眠る組に分けた。徹夜した組は、休みたい・目を閉じたいという気持ちがとても強くなり、運動したい・友だちと過ごしたいという気持ちは弱くなった。空腹や食べ物の好みには、はっきりした差がなかった。

対象: スウェーデンの若い大人123人(平均25.3歳) / 限界: 「したい気持ち」を本人が答えたもので、実際の行動は測っていない。勉強したい気持ちの項目は無かった。

寝不足で起きたこと変わらなかったこと
難しい集中の課題を選ぶことが減った[1]握力を使う体の課題の選び方[1]
大変な作業を避け、少ないごほうびを選んだ[2]「今か、数か月後か」の選び方[2]
文章を難しく見積もり、説明を飛ばした[3]パズルの見積もり、計算問題の難しさの選び方[3]
休みたい気持ちが強まり、運動や人と会う気持ちが下がった[4]空腹、食べ物の好み[4]

02 研究の限界この結果は、毎日の勉強にもそのまま当てはまる?

そのままとは言えません。どれも数十人規模の実験室の研究で、徹夜や3時間睡眠という強い寝不足を使っています。勉強そのものを課題にした研究ではありません。

ふだんの寝不足は、1〜2時間短い日が続くような形が多いはずです。その程度の寝不足で、どのくらい勉強の意欲が下がるかは、ここで紹介した研究ではわかりません。

また、Engle-Friedmanらの研究では、計算問題を難しい方にするかどうかの選び方に、全体としてはっきりした差は出ませんでした[3]。「寝不足だと必ず難しいことを避ける」とまでは言えず、課題の種類によって違う可能性があります。

4本とも論文の本文で内容を確かめました。Engle-Friedmanらは、同じ研究室の2003年の研究で、徹夜した大学生がやさしい計算問題を選んだことも紹介しています(今回は元の論文は確認していません)。

03 今日からできる小さな一歩寝不足の日の勉強は、どう組み立てればいい?

寝不足の日は「難しい勉強ほど重く感じる日」と考え、前もって軽いメニューを決めておきます。説明の読み飛ばしに気をつけ、その夜の睡眠を優先します。

1

まず「寝不足の日」だと気づく

やる気が出ないとき、前の晩に何時間眠れたかを書きます。眠気を記録する方法は勉強中の眠気チェック表が使えます。原因が睡眠なら、自分を責める必要はありません。

所要 1分

2

「寝不足の日メニュー」を先に決めておく

よく眠れた日に、寝不足の日用のやさしいメニューを2〜3個決めておきます。たとえば、覚えた単語の確認や、解いたことのある問題の解き直しです。難しい新しい範囲は、眠れた日に回します。

所要 5分(前もって1回)

3

問題の指示と解説は、飛ばさずに読む

徹夜した学生は、課題の説明を読み飛ばす人が多くいました[3]。寝不足の日は、問題文の条件に線を引いてから解き始めます。

所要 1問30秒

4

その夜は、勉強より睡眠を優先する

遅れを取り戻そうと、また夜ふかしすると悪循環になります。寝る時刻を先に決め、そこから勉強の終わりの時刻を決めます。

所要 1分

04 続けるためのコツ寝不足でも勉強を休みたくないときは?

量より「ゼロにしないこと」を目標にします。短い昼寝で眠気を下げる、軽いメニューだけこなすなど、寝不足の日用の最低ラインを決めておくと、習慣を切らさずにすみます。

  • 短い昼寝を使う。昼寝の長さや時間帯の研究は勉強の合間の昼寝は記憶に効く?にまとめています。
  • 「やる気が出ない」を「眠い」に言い換える。徹夜した人は、休みたい気持ちが強まる一方で、運動や人と会う気持ちが下がりました[4]。やる気の低さは、眠気のサインとして出ることがあります。
  • 寝不足が続くなら、計画の方を直す。毎日の勉強時間を確保するために睡眠を削っているなら、計画が無理をしているサインです。立て直し方は勉強の計画が崩れたときの立て直し方を参考にしてください。

眠れない日が長く続く、日中の眠気が強くて生活に困る、といったときは、医療機関に相談してください。

05よくある質問

寝不足の日にやる気が出ないのは、怠けているからですか?

それだけとは言えません。睡眠を3晩続けて3時間に減らした実験では、ポイントが多くもらえても難しい集中の課題を選ぶ人が減りました。課題の出来ばえとは関係なく選び方が変わったため、著者らは「頑張ることを避ける気持ち」が強まったと考えています。

寝不足の日は、勉強を休んだほうがいいですか?

全部休む必要はありませんが、難しい新しい範囲より、覚えたことの確認や解いたことのある問題など、やさしいメニューに切り替えるのが現実的です。睡眠不足の実験では、難しい課題ほど避けたくなり、課題を難しく見積もりやすくなりました。その夜の睡眠を優先してください。

寝不足だと、体を動かす気もなくなりますか?

研究によって違います。握力を使う短い課題では、睡眠を減らしても選び方は変わりませんでした。一方、徹夜した人に気持ちを聞いた研究では、運動したい気持ちは下がっていました。課題の種類や、実際の行動か気持ちかで結果が分かれています。

出典

  1. Jurgelis, M., Boardman, J. M., Coxon, J. P., Drummond, S. P. A., & Chong, T. T.-J. (2022). Sleep restriction reduces cognitive but not physical motivation. Nature and Science of Sleep, 14, 2001–2012. https://doi.org/10.2147/NSS.S368335
  2. Libedinsky, C., Massar, S. A. A., Ling, A., Chee, W., Huettel, S. A., & Chee, M. W. L. (2013). Sleep deprivation alters effort discounting but not delay discounting of monetary rewards. Sleep, 36(6), 899–904. https://doi.org/10.5665/sleep.2720
  3. Engle-Friedman, M., Mathew, G. M., Martinova, A., Armstrong, F., & Konstantinov, V. (2018). The role of sleep deprivation and fatigue in the perception of task difficulty and use of heuristics. Sleep Science, 11(2), 74–84. https://doi.org/10.5935/1984-0063.20180016
  4. Axelsson, J., Ingre, M., Kecklund, G., Lekander, M., Wright, K. P., Jr., & Sundelin, T. (2020). Sleepiness as motivation: a potential mechanism for how sleep deprivation affects behavior. Sleep, 43(6), zsz291. https://doi.org/10.1093/sleep/zsz291