時間・計画

大事な勉強の前に、すぐ終わる用事や得意な問題から片付けてしまうのはなぜ?「早く片付けたい」気持ちと自信の研究

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イギリスの古い石造りの建物「ペーパー・ホール」
Photo: Philip Halling / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

勉強を始める前に、まずメールを返して、机を片付けて、洗い物を済ませる。問題集を開いても、解けそうな問題から手をつけて、苦手な単元はいつも最後に残る。こうした順番になるのは、意志が弱いからとは限りません。研究からは、人には頭の中の「やること」を早く減らしたい傾向と、自信のある課題を先に選ぶ傾向があることがわかっています。

3行でわかる

  1. 人は、遠回りになっても、すぐ手をつけられることを先に片付けやすい。「プレクラスティネーション」と呼ばれ、9つの実験から名づけられた。頭の中に覚えておくことが多いほど、この傾向は強まった。
  2. 2つの課題の順番を選ぶとき、人は自信のある方を少し先に選びやすい。実際の成績や難しさとは別に、自信そのものが順番に影響していた。
  3. 早く片付けたがる人も、先延ばしする人と同じく、期限内に終えるのに苦労していたという記録の分析もある。対策は、やることを書き出して頭を軽くし、勉強の最初の15分は大事な課題に使うこと。

01 悩みの正体すぐ終わる用事を先にしてしまうのはなぜ?

頭の中に抱えている「やること」を早く減らしたいからだと考えられています。片付けると覚えておく負担が減るため、遠回りでも、すぐできることから手をつけやすくなります。

「あとでメールを返さなきゃ」と思いながら勉強すると、そのことが頭の片すみに残ります。先に返してしまえば、覚えておく必要がなくなります。

研究者は、これを「認知的な負担を減らすため」と説明しています。頭の中の「やることリスト」から項目を消したいという考え方です[1][3]。ただ、すぐ終わる用事は次々に出てきます。気づくと、大事な勉強の時間が残っていません。

もう1つの理由は自信です。人は、うまくできそうな課題を先に選びやすいことがわかっています[4]。得意な問題から始めて、苦手な単元がいつも最後に回るのは、このためかもしれません。

02 科学的にわかっていること「早く片付けたい」傾向は、実験で確かめられている?

確かめられています。最初の研究の9つの実験の後も、別の研究チームの実験で同じ傾向が見られました。ただし多くはバケツを運ぶような短い課題で、勉強の場面で調べた研究はまだほとんどありません。

Rosenbaumら(2014)[1]

大学生に、通路の左右にある2つのバケツのどちらかを選んで、通路の終わりまで運んでもらった。楽な方(終わりに近い方)を選ぶよう伝えたのに、参加者は手前のバケツを選び、遠い距離を運んだ。9つの実験と参加者の説明から、研究者らはこれを「プレクラスティネーション(必要以上に早く片付けること)」と名づけた。

対象: 大学生 / 限界: 体を動かす短い課題。著者らは、頭の負担を減らしたい気持ちが原因と考えたが、勉強の場面では調べていない。

Fournierら(2019)[2]

2つの物を拾って一緒に持ち帰る課題で、参加者は近い物を先に拾った。覚えておく課題を同時に出すと、近い物を先に拾う人はさらに増えた。一方で、水がこぼれやすいコップを運ぶ課題では、この傾向は消えた。

対象: 2つの実験の参加者 / 限界: 体を動かす課題。先に片付けると注意の負担がかえって増える場面では、起きなかった。

MaとZhang(2023)[3]

中国の大学生81人にバケツを運ぶ課題を10回してもらうと、96%が少なくとも1回は手前のバケツを選んだ。計算を同時にしてもらった条件で理由を聞くと、46.9%が「頭がいっぱいだったので、近い方を先に取った」と答えた。

対象: 中国の大学生81人 / 限界: 1つの大学の学生で、課題は体を動かすもの。理由は本人の説明。

Aguilar-Lleydaら(2020)[4]

見た目を判断する課題や暗算の課題で、2つの課題のどちらを先にするか選んでもらった。参加者は、自信のある方の課題を少し先に選びやすかった。この傾向は、課題の難しさや答えの正しさだけでは説明できなかった。事前に計画を登録した追試でも確かめられた。

対象: 複数の実験、各16〜105人 / 限界: 数秒で終わる課題。自信のある方を先にすると成績が上がるか下がるかは調べていない。

VangsnessとYoung(2020)[5]

アメリカの大学で、研究への参加の電子記録8,655人分を分析した。早く片付けたがる人も、先延ばしする人も、期限内に終えるのに苦労していた。どちらか1つの目印だけで「良いやり方・悪いやり方」を決めるのは単純すぎる、と著者らはまとめた。

対象: 1つの大学の8,655人分の記録 / 限界: 勉強の成績ではなく、研究参加の記録。

GehrigとHerzberg(2025)[6]

オンラインで集めた大人200人の調査。不安から早く片付けようとする傾向は、慢性的なストレスと結びついていた。一方で、ふつうに早く片付ける傾向は、ストレスの低さと結びついていた。

対象: オンラインの大人200人 / 限界: 1回の調査で、原因と結果の向きはわからない。

ここで紹介した研究は、ほとんどが実験室での短い課題か、1回の調査です。何か月も一人で勉強する社会人を調べた研究ではありません。下の工夫は、わかっていることを独学に当てはめたものです。

03 今日からできる小さな一歩大事な勉強を先にするには、どうすればいい?

頭の中の「やること」を紙に書き出して負担を軽くし、用事は時間を決めてまとめます。勉強の最初の15分は、大事な課題か苦手な1問に使います。

1

勉強の前に、気になっている用事を紙に書き出す

「メールを返す」「洗い物」など、頭に浮かぶ用事を1行ずつ書きます。書いてあれば、覚えておく必要がなくなります。研究の「頭の負担を減らしたい」という説明を、勉強に当てはめた方法です。

所要 2分

2

用事は、時間を決めてまとめて片付ける

書き出した用事は、勉強の後の15分などにまとめて片付けます。急ぎの連絡だけは先に済ませてかまいません。

所要 決めるだけなら1分

3

最初の15分は、大事な課題に使う

机に向かったら、最初の15分は試験に一番かかわる課題にあてます。「もし〜したら、〜する」と決めておく方法を使い、「机に座ったら、問題集の苦手な章を開く」と1文で決めておくと始めやすくなります。

所要 15分

4

苦手な単元は「最初の1問だけ」先に解く

得意な問題から始めるのをやめる必要はありません。自信のある課題を先に選ぶのは自然なことです[4]。苦手な単元を最初に1問だけ解き、その後に得意な問題へ移ります。

所要 5分

5

1日の終わりに「大事な勉強をしたか」を記録する

片付けた用事の数ではなく、大事な課題に何分使ったかを1行で書きます。1週間続けると、用事に時間を取られている日が見えてきます。

所要 1日1分

04 続けるためのコツ用事に流されない日を増やすには?

完ぺきに順番を守ろうとしないことです。用事を先にした日があっても、次の日の最初の15分を守れば十分です。

  • 勉強道具は前の晩に開いておき、座ったらすぐ大事な課題に取りかかれるようにする。
  • 気になる用事が増える日は、紙に書き出す時間を1分のばす。
  • 計画そのものが崩れたときは、勉強の計画を作り直す方法を見る。
  • 後回しのくせが気になるときは、勉強を後回しにしてしまう理由もあわせて読む。

05よくある質問

すぐ終わる用事から片付けるのは、悪いこと?

悪いとは限りません。早く片付けると頭が軽くなる面もあります。ただ、用事が次々に続くと、大事な勉強の時間がなくなります。用事は時間を決めてまとめ、勉強の最初の15分は大事な課題に使うのがおすすめです。

先延ばし(プロクラスティネーション)とは違うの?

向きが逆です。先延ばしはやることを後回しにすること、プレクラスティネーションは必要以上に早く片付けようとすることです。大事な勉強を後回しにして小さな用事を急ぐと、両方が同時に起きることもあります。

得意な科目から始めるのはやめた方がいい?

やめなくてかまいません。人は自信のある課題を先に選びやすいことが実験でわかっていますが、それで成績が下がるかは調べられていません。苦手な科目の時間がいつも残らないなら、最初に苦手を1問だけ解いてから得意に移る順番を試してください。

こうした研究は、勉強の場面で確かめられている?

ほとんどは確かめられていません。バケツを運ぶ課題や、色の判断の課題など、実験室での短い課題が中心です。研究への参加の記録を使った調査もありますが、勉強の成績は測っていません。

出典

  1. Rosenbaum, D. A., Gong, L., & Potts, C. A. (2014). Pre-crastination: Hastening subgoal completion at the expense of extra physical effort. Psychological Science, 25(7), 1487-1496. https://doi.org/10.1177/0956797614532657
  2. Fournier, L. R., Coder, E., Kogan, C., Raghunath, N., Taddese, E., & Rosenbaum, D. A. (2019). Which task will we choose first? Precrastination and cognitive load in task ordering. Attention, Perception, & Psychophysics, 81(2), 489-503. https://doi.org/10.3758/s13414-018-1633-5
  3. Ma, B., & Zhang, Y. (2023). Precrastination and time perspective: Evidence from intertemporal decision-making. Behavioral Sciences, 13(8), 631. https://doi.org/10.3390/bs13080631
  4. Aguilar-Lleyda, D., Lemarchand, M., & de Gardelle, V. (2020). Confidence as a priority signal. Psychological Science, 31(9), 1084-1096. https://doi.org/10.1177/0956797620925039
  5. Vangsness, L., & Young, M. E. (2020). Turtle, task ninja, or time waster? Who cares? Traditional task-completion strategies are overrated. Psychological Science, 31(3), 306-315. https://doi.org/10.1177/0956797619901267
  6. Gehrig, C., & Herzberg, P. Y. (2025). The dark side of precrastination: Exploring the psychological burdens of being too early. Frontiers in Psychology, 16, 1698978. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1698978