やる気・心

頭を使う勉強が面倒に感じるのはなぜ?「考えることは不快」という研究と、その反論

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本が置かれた勉強机
Photo: ZemplinTemplar / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

動画なら何本でも見られるのに、問題集は開くだけで気が重い。そんな自分を「やる気がない」と責めていませんか。研究から言えるのは、頭を強く使うことは多くの人にとって不快に感じられるということです。そして、その感じ方は少し変えられるかもしれない、ということもわかってきました。

3行でわかる

  1. 170の研究(4,670人)をまとめた分析では、頭を使う量が多い作業ほど、不快感も強かった。人は、負担に気づいていなくても、頭を使わずに済む方を選びやすい。
  2. ただし反論もある。質問票が「難しさ」を測っていた可能性や、自分で選んだ活動では関係が逆になりうることが指摘された。努力にポイントを出すと、その後難しい課題を選びやすくなった実験もある(差は小さめ)。
  3. 手のつけ方は、①面倒に名前をつける ②最初の5分は軽い作業 ③難しい所に取り組んだら印 ④解く問題を自分で選ぶ ⑤何が難しかったかを1行書く、の5つ。

01 悩みの正体頭を使う勉強が面倒に感じるのはなぜ?

頭を強く使うこと自体が、多くの人にとって不快に感じられるからです。170の研究をまとめた分析では、頭を使う量が多い作業ほど、イライラや不快感も強いという関係が国や作業を問わず見られました。

動画を見るのは平気なのに、問題集を開くのは面倒。暗記カードはめくれるのに、記述問題は後回し。こうした差は、やる気や性格だけの問題ではありません。

心理学や神経科学では、頭を使う努力には「コスト(負担)」がある、と考えられてきました。人は、同じ結果が得られるなら、頭を使わずに済む方を選びやすいのです。面倒だと感じるのは、脳がその負担を見積もっている合図と考えられます。

ただし「頭を使うのは、いつでも誰にとっても不快」とまでは言い切れません。この結論には反論もあり、努力が楽しさや価値に変わる場合があることもわかってきました。次の節で両方を紹介します。先延ばし全体の仕組みは勉強を先延ばしにしてしまうのはなぜ?、難しい本で眠くなる理由は専門書を読むとすぐ眠くなるのはなぜ?にまとめています。

02 科学的にわかっていること頭を使う努力は、本当に不快なもの?

多くの作業で、頭を使うほど不快感が強いという関係が確かめられています。人は負担の少ない方を選ぶ傾向もあります。一方で、努力したこと自体が報われる経験を重ねると、難しい課題を選ぶようになるという実験もあります。

Davidら(2024)[1]

2019〜2020年に出た125本の論文から、170の研究(358の作業、4,670人)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。どの研究も同じ質問票で「どれだけ頭を使ったか」と「どれだけイライラ・不快だったか」を聞いていた。頭を使う量が多い作業ほど、不快感も強いというはっきりした関係があった。調べた15の条件のうち、差が出たのは1つだけで、アジアの研究ではヨーロッパや北米より不快感がやや弱かった。

対象: 29か国の医療職・軍人・アスリート・大学生など / 限界: 作業は機器のテストやバーチャル体験などで、自分で選んだ勉強を調べたものではない。

Grundら(2026)[2]

上の分析への反論。分析の中心だった関係の強さ(標準化した係数で0.85)は認めたうえで、2つの問題を挙げた。1つは、質問票の「頭を使った量」は、考えた量よりも「作業の難しさ」を測っている可能性があること。もう1つは、自分で選んで取り組む活動が含まれていたかわからないこと。自分で選んだ活動では、努力と不快感の関係は逆になりうる、と述べている。

種類: 同じ学術誌に載った論評 / 限界: 新しいデータを集めたものではなく、自分で選んだ勉強で関係が逆になるかは、まだ確かめられていない。

Koolら(2010)[3]

6つの実験で、頭を使う量が違う2つのやり方から自由に選ばせると、人は負担の少ない方を選ぶ傾向があった。この傾向は、間違いを避けるためや時間を短くするためだけでは説明できず、負担の違いに本人が気づいていなくても現れた。また、ごほうびの条件によって、負担を避ける強さは変わった。

対象: 実験室の参加者 / 限界: 短いコンピューター課題での選び方で、何か月も続く勉強で同じことが起きるかは調べていない。

Clayら(2022)[4]

記憶の課題で、頑張ったときほどポイントがもらえる組(実験1は心臓の反応、オンライン実験は選んだ難しさで判定)と、ポイントがでたらめに出る組をくらべた。その後、ポイントが出ないと知らせたうえで算数の問題の難しさを自分で選ばせると、努力にポイントが出た組の方が難しい問題を選んだ。5つのオンライン実験(1,457人)をまとめた差は小さめ(d=0.22)だった。

対象: 実験室の121人と、オンライン調査サービス(Amazon Mechanical Turk)の参加者 / 限界: 5つのうち小さな2つの実験では差がはっきりしなかった。選んだ難しさは測ったが、「楽しくなった」かどうかは測っていないと著者ら自身が書いている。

Inzlichtら(2018)[5]

努力は避けられるだけでなく、価値を生むこともあると論じたレビュー。同じ結果でも、努力して得た方がうれしく感じられることがあり、人は努力が必要だからこそ、ある選択肢を選ぶこともある、とまとめた。

種類: 研究のレビュー(論文の整理) / 限界: 新しい実験ではない。どんな条件で努力が価値に変わるかは、まだ研究の途中。

まとめると、頭を使う勉強が面倒に感じられるのは、多くの人に起きる自然な反応です。ただ、それは変えられない性質ではなさそうです。どこまで変えられるかは、実験室の短い課題でしか確かめられていません。何か月も続ける独学で同じように変わるかは、これからの研究を待つ必要があります。

研究の見方わかっていることまだわからないこと
頭を使うと不快?多くの作業で、頭を使うほど不快感が強い[1]自分で選んだ勉強でも同じか[2]
負担を避ける?人は負担の少ない方を選びやすい[3]長い独学でどれくらい影響するか
変えられる?努力が報われると、難しい課題を選びやすくなった[4]効果が何日・何週間続くか

03 今日からできる小さな一歩面倒な勉強に手をつけるには?

「面倒」は怠けではなく負担の合図と受け止め、始めの負担を小さくします。そのうえで、点数ではなく「難しい所に取り組んだこと」を記録して、努力そのものに印をつけます。

1

「面倒だ」と感じたら、名前をつける

「いま面倒なのは、頭を使う量が多いから」と心の中で言います。不快に感じるのは多くの人に起きることだと知っておくと、「自分は勉強に向いていない」と結論を急がずに済みます。

所要 10秒

2

最初の5分は、負担の軽い作業から入る

いきなり記述問題を始めず、前回の答え合わせや用語の確認など、軽い作業から入ります。人は負担の大きい方を避けやすいので[3]、入り口の負担を下げると手をつけやすくなります。軽い作業のまま終わらないよう、5分たったら本題に移ると決めておきます。

所要 5分

3

難しい所に取り組んだら、印をつける

記録表に「解けた数」だけでなく「難しい問題に取り組んだ数」も書き、取り組んだら印をつけます。努力にポイントを出すと、難しい課題を選びやすくなった実験[4]を、自分の記録で小さく試す方法です。

所要 1回10秒

4

何を、どの順で解くかを自分で選ぶ

今日の3問を、問題集の順ではなく自分で選びます。自分で選んだ活動では努力が不快になりにくいのでは、という指摘[2]はまだ確かめられていない考えですが、試してみる手間はほとんどかかりません。

所要 2分

5

終わったら、何が難しかったかを1行書く

「どこで頭を使ったか」を1行で書きます。努力が何につながったかが見えると、次に同じ負担を引き受ける理由になります。

所要 1分

04 続けるためのコツ面倒な気持ちと、どう付き合い続ける?

面倒な気持ちをなくそうとせず、あるものとして予定に組み込みます。頭を強く使う勉強は、元気な時間帯に短く置き、残りの時間は軽い作業に回します。

  • 頭を強く使う勉強は、1日の中で短く置く。記述問題や新しい単元は25分などで区切り、その後に軽い復習を置きます。
  • ごほうびは「結果」より「取り組み」につける。ごほうびがやる気をそぐ場合についてはご褒美で勉強を続けるのは逆効果かで整理しました。
  • 何のための負担かを書いておく。勉強の目的を書く方法は勉強する意味が見えず、やる気が出ないときで紹介しています。
  • 面倒が強すぎて何週間も手がつかないときは、量を見直す。疲れ切っている場合は、気持ちの問題ではなく負担が大きすぎる合図かもしれません。

05よくある質問

勉強が面倒に感じるのは、やる気がないから?

それだけではありません。頭を使う量が多い作業ほど不快に感じやすいことは、多くの研究で確かめられています。面倒に感じるのは多くの人に起きる反応で、性格や意志の弱さだけで決まるものではありません。

頭を使うことが楽しくなることはある?

可能性はあります。難しい課題に取り組んだときほどポイントがもらえる経験をした人は、その後ポイントが出なくても難しい問題を選びやすくなりました。ただし差は小さめで、実験室の短い課題での結果です。

日本人は勉強のつらさを感じにくいの?

そうとは言えません。170の研究の分析では、アジアの研究で不快感がやや弱いという差が出ましたが、日本人だけを調べたものではなく、国や文化の差がどこから来るのかもわかっていません。

楽な勉強ばかりしていてもいい?

楽な作業だけでは、身につく量が限られることがあります。思い出す練習のように、負担を感じる勉強の方が記憶に残りやすいこともわかっています(思い出す練習と読み返しの比較)。軽い作業は入り口に使い、本題の時間を必ず取るのがおすすめです。

出典

  1. David, L., Vassena, E., & Bijleveld, E. (2024). The unpleasantness of thinking: A meta-analytic review of the association between mental effort and negative affect. Psychological Bulletin, 150(9), 1070–1093. https://doi.org/10.1037/bul0000443
  2. Grund, A., Roelle, J., & Schmid, S. (2026). Is thinking inherently unpleasant? A cautionary note on David, Vassena, and Bijleveld (2024). Psychological Bulletin, 152(2), 201–206. https://doi.org/10.1037/bul0000484
  3. Kool, W., McGuire, J. T., Rosen, Z. B., & Botvinick, M. M. (2010). Decision making and the avoidance of cognitive demand. Journal of Experimental Psychology: General, 139(4), 665–682. https://doi.org/10.1037/a0020198
  4. Clay, G., Mlynski, C., Korb, F. M., Goschke, T., & Job, V. (2022). Rewarding cognitive effort increases the intrinsic value of mental labor. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(5), e2111785119. https://doi.org/10.1073/pnas.2111785119
  5. Inzlicht, M., Shenhav, A., & Olivola, C. Y. (2018). The effort paradox: Effort is both costly and valued. Trends in Cognitive Sciences, 22(4), 337–349. https://doi.org/10.1016/j.tics.2018.01.007