集中・環境

勉強前のマインドフルネス練習表と2週間の集中記録表。気がそれたら責めずに戻す(瞑想と考えごとの研究から)

約8分で読めます

床に置かれた瞑想用のクッション
Photo: Kstigarbha / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

勉強を始めても、いつの間にか別のことを考えている。そんなとき「瞑想で集中力が上がる」と聞くと、試したくなります。研究では、短いマインドフルネスの練習のあとに考えごと(気がそれること)が減った実験がある一方で、56の研究をまとめた分析では効果は小さく、比べる相手によっては差が出ませんでした。この記事では、研究で効いた練習のしかたを表にし、自分に効くかを2週間で確かめる記録表を紹介します。

3行でわかる

  1. 大学生48人の実験では、2週間(45分を8回)のマインドフルネスの講座のあと、試験形式の読解の点が上がり、解いている間の考えごとが減った。
  2. 効いたのは「気がそれたと気づいたら、責めずに戻す」練習。1日20分を3日行った実験では、注意を向けるだけの練習より、受け入れる練習を加えた方が考えごとが少なかった。
  3. ただし、56研究のまとめでは効果は小さく(g=0.15)、ほかの練習と比べると差ははっきりしなかった。表2で、練習した日としない日の集中を自分で比べる。

01 悩みの正体勉強中に気がそれるのは、集中力が弱いから?

弱いからではありません。考えごとは誰にでも起き、長く続く単調な作業ほど増えます。マインドフルネスは、それをなくす方法ではなく、早く気づいて戻る練習です。

文章を読んでいるのに、頭は別のことを考えている。研究では、こうした状態をマインド・ワンダリング(考えごと)と呼びます。時間とともに注意が落ちる仕組みは集中が切れてくる理由の記事で、読書中の立て直し方は読んでいるのに考えごとをしてしまう記事で扱いました。

マインドフルネスは、いま起きていること(呼吸や体の感覚)に注意を向け、気がそれたら評価せずに戻す練習です。この記事では、その練習を勉強の前に入れる使い方に絞ります。

02 科学的にわかっていることマインドフルネスで、勉強中の考えごとは減る?

減った実験はありますが、結果はそろっていません。効いた練習は「責めずに戻す」を含むものでした。多くの研究をまとめると、効果は小さく、ほかの練習と比べると差ははっきりしません。

Mrazekら(2013)[1]

大学生を、2週間のマインドフルネスの講座と、別の内容の講座にくじで分けた。マインドフルネスの組は、試験形式(GRE)の読解の点と、作業記憶(頭の中で情報を保つ力)の点が上がり、解いている間の考えごとが減った。もともと気がそれやすい人では、点が上がったことを考えごとの減少で説明できた。

対象: 大学生48人(平均20.8歳)、1回45分を8回 / 限界: 人数が少ない1つの実験。講座のあと、どれくらい効果が続くかは調べていない。

Rahlら(2017)[2]

瞑想の経験がない若い成人147人を、①注意を向ける+受け入れる練習 ②注意を向けるだけの練習 ③リラックスの練習 ④読書の4組にくじで分け、1日20分を3日行った。そのあと6分の注意の課題で考えごとを測ると、①の組がいちばん少なく、②と④より少なかった。③のリラックスとの差は、はっきりしなかった。

対象: 米国の大学周辺に住む18〜30歳 / 限界: 測ったのは6分の単純な課題で、勉強そのものではない。

Xuら(2017)[3]

不安の強い大学生を、瞑想の組と比べる組にくじで分け、注意の課題を2回行った。瞑想の組では、時間とともに考えごとが増えるのを防げた。著者らは、これまでの研究の結果はそろっておらず、効果は不安の強い人に限られるかもしれないと書いている。

対象: 不安の強い大学生 / 限界: 不安の強い人だけを集めた実験で、ほかの人に同じ効果があるかはわからない。

Whitfieldら(2022)[4]

成人を対象にしたマインドフルネスのランダム化試験56件(2,931人)のメタ分析(多くの研究をまとめる分析)。頭の働き全体への効果は小さかった(g=0.15)。差が確かめられたのは、計画や切り替えに使う力と作業記憶だけで、注意の課題でははっきりしなかった。何もしない組とは差があった(g=0.20)が、ほかの練習をした組とは差がなかった(g=0.07)。

対象: 健康な成人や、病気のある成人の研究 / 限界: 研究の質がはっきりしないものが多く、偏りの少ない研究は一部だった。

03 使える表勉強前のマインドフルネスは、どう試せばいい?

表1の手順で勉強の前に10分練習し、表2に練習した日としない日の集中を記録します。2週間たったら表3で、自分に効いているかを判断します。

表1 勉強前のマインドフルネス練習表。研究で使われた練習をもとに、このサイトがまとめたものです。研究では1回20〜45分でした。10分は始めやすさのための目安で、研究で確かめた長さではありません。

順番やること目安もとになった研究
1 座るいすに座り、スマホを別の部屋に置く。タイマーを10分にする1分-
2 注意を向ける鼻やおなかで、息が出入りする感覚に注意を向ける3分注意を向ける練習[1][2]
3 気づく考えごとをしていたと気づいたら、心の中で「考えごと」と短く名前をつける-気づいて戻る練習[1]
4 責めずに戻す「またそれた」と責めず、そのまま息の感覚に戻る。何回それてもよい6分受け入れる練習を加えた組で考えごとが最少[2]
5 勉強に入るタイマーが鳴ったら、すぐに教材を開く--
勉強中気がそれたと気づいたら、4と同じように責めずに戻る--

表2 2週間の集中記録表(1日1行)。練習する日としない日を、1日おきに交互にします。「それた回数」は、25分の勉強の間に気がそれたと気づいた回数を正の字で数えます。

日付練習(分)勉強したこと25分でそれた回数終わりに要点を3つ書けたかメモ
例 10/18例 10例 簿記 第3章例 4例 2つ例 後半に眠くなった
例 10/19例 0例 簿記 第3章例 6例 1つ例 -

表3 2週間後の判定。練習した日としない日で、「それた回数」と「要点」の平均をくらべます。

記録に出ていること次にすること
練習した日の方が、それた回数が少なく要点も多い続ける。余裕があれば練習を15〜20分にのばす
ほとんど差がない無理に続けなくてよい。休憩や環境を見直す方を先にする
練習中に責める気持ちが強くなる表1の4を意識し、それた回数を数えるのは勉強中だけにする
それた回数がどの日も多い勉強の区切りを短くし、スマホや音など気を散らすものを先に減らす

気を散らすものの洗い出しは集中を切らすものチェック表に、試験前の不安を落ち着ける呼吸は呼吸法の記事にまとめています。

04 続けるためのコツマインドフルネスを勉強の習慣にするには?

勉強を始める合図として、同じ場所・同じ時刻に練習します。効き目は記録で判断し、手ごたえがなければやめてよい方法として扱います。

  • 練習と勉強をつなげる。「机に座ったら10分、タイマーが鳴ったら教材を開く」と決めておきます。
  • うまくできたかを採点しない。気がそれるのは失敗ではなく、気づいて戻る回数がそのまま練習です。
  • 記録は1行で終える。数えるのは「それた回数」と「要点の数」の2つだけにします。

紹介した実験は、大学生や若い成人が短い課題を解いたものです。仕事のあとに何か月も独学する社会人で、勉強の成果がどれだけ変わるかを確かめた研究はまだありません。強い不安や落ち込みが続くときは、ひとりで抱えずに相談してください(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)。

05よくある質問

瞑想をすると集中力は上がるの?

上がった実験はありますが、結果はそろっていません。56研究のまとめでは、頭の働きへの効果は小さく(g=0.15)、注意の課題でははっきりしませんでした。ほかの練習と比べると差がなかったため、自分の記録で確かめるのが確実です。

何分やればいい?

研究で使われたのは、1回20分を3日、または45分を8回などでした。まずは勉強前の10分から始め、2週間の記録で差が見えたら15〜20分にのばします。10分は始めやすさのための目安で、研究で確かめた長さではありません。

気がそれてばかりで、うまくできません。

それで大丈夫です。気がそれたと気づき、責めずに戻すことが練習そのものです。147人の実験では、注意を向けるだけの練習より、気づいたことを受け入れて戻る練習を加えた組の方が、そのあとの考えごとが少なくなりました。

出典

  1. Mrazek, M. D., Franklin, M. S., Phillips, D. T., Baird, B., & Schooler, J. W. (2013). Mindfulness training improves working memory capacity and GRE performance while reducing mind wandering. Psychological Science, 24(5), 776–781. https://doi.org/10.1177/0956797612459659
  2. Rahl, H. A., Lindsay, E. K., Pacilio, L. E., Brown, K. W., & Creswell, J. D. (2017). Brief mindfulness meditation training reduces mind wandering: The critical role of acceptance. Emotion, 17(2), 224–230. https://doi.org/10.1037/emo0000250
  3. Xu, M., Purdon, C., Seli, P., & Smilek, D. (2017). Mindfulness and mind wandering: The protective effects of brief meditation in anxious individuals. Consciousness and Cognition, 51, 157–165. https://doi.org/10.1016/j.concog.2017.03.009
  4. Whitfield, T., Barnhofer, T., Acabchuk, R., Cohen, A., Lee, M., Schlosser, M., ... Marchant, N. L. (2022). The effect of mindfulness-based programs on cognitive function in adults: A systematic review and meta-analysis. Neuropsychology Review, 32(3), 677–702. https://doi.org/10.1007/s11065-021-09519-y