集中・環境

ショート動画を見たあと、勉強に集中しにくいのはなぜ?切り替わる刺激と注意の研究(わかったこと・まだわからないこと)

約7分で読めます

テーブルに置かれたスマートフォンとコーヒー
Photo: Maliha Mannan maliha / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

5分だけのつもりでショート動画を見て、そのあと問題集を開いた。でも1問目の文章が頭に入らず、手がまたスマホに伸びる。ショート動画をよく使う人ほど注意の成績が低い関係は、多くの研究でそろっています。ただし「見たから集中力が落ちた」と言い切れる研究は、まだ少ないのが実情です。

3行でわかる

  1. 71の研究・9万8,299人をまとめた分析で、ショート動画をよく使う人ほど注意(相関r=−0.38)や衝動を抑える力(r=−0.41)の成績が低かった。ただし多くは一時点の調査で、原因の向きはわからない。
  2. 大学生72人の実験では、30分のショート動画を見た直後、次の作業に備える準備の時間をうまく使えなかった。著者自身が「予備的な結果」としている。
  3. 一方、ショート動画を見たあとの記憶を調べた別の実験では、グループの平均は落ちなかった。「見たら必ず集中できなくなる」とまでは言えない。

01 悩みの正体ショート動画のあと集中しにくいと感じるのはなぜ?

次々に切り替わる刺激に向く注意と、自分で決めた対象に向け続ける注意は、働き方が違うと考えられています。ショート動画は前者を強く引き出し、勉強は後者を必要とします。

注意には大きく2つの向き方があります。1つは、動きや音など目に飛び込むものに自然に向く注意です。もう1つは、「この問題を解く」と自分で決めて、そこに向け続ける注意です。

ショート動画の実験をした研究者は、ばらばらに切り替わる動画は前者を強く引き出す一方、後者の働きを弱めると解釈しています[5]。数秒ごとに新しい刺激が来る画面から、変化の少ない問題集に移ると、物足りなく感じやすいのも自然なことです。

逆の向きも考えられます。もともと退屈しやすい人や、気分を切り替えたい人ほど、ショート動画をよく見るという関係です。研究のまとめも、この両方向の可能性を指摘しています[2]。スマホに手が伸びる仕組みは勉強中にスマホを見たくなるのはなぜ?で紹介しました。

02 科学的にわかっていることショート動画で集中力が落ちるのは本当?

よく見る人ほど注意の成績が低い関係は、多くの研究でそろっています。ただし大半は一時点の調査で、見たから落ちたのか、集中しにくい人がよく見るのかは区別できていません。

Nguyenら(2025)[1]

71の研究、計9万8,299人のデータをまとめた分析(メタ分析)。ショート動画をよく使う人ほど、注意や記憶などの成績が低い関係があった(全体でr=−0.34、中くらいの強さ)。特に注意(r=−0.38)と衝動を抑える力(r=−0.41)で関係が強かった。若い人でも大人でも、どのアプリでも同じ傾向だった。

対象: 若者と大人を含む71の研究 / 限界: 論文の要旨で確認。関係の強さを示す数字で、原因と結果の向きは示していない。記憶や推論を調べた研究は少ない。

Arouchら(2026)[2]

18〜29歳を対象にした17の研究を整理した(システマティックレビュー)。よく見る人ほど注意がとぎれやすく、自分を抑える力が弱い傾向が報告されていた。一方で、退屈しやすさや現実から離れたい気持ちが、よく見ることにつながっている可能性もあり、関係は両方向かもしれないとまとめている。

対象: 17の研究のうち9つが一時点の調査、5つが実験や脳の測定 / 限界: 自己申告の質問紙が多く、研究の質は全体に限られると著者ら自身が述べている。

Luoら(2025)[3]

大学生72人を、30分のショート動画、30分の落ち着いた教育ドキュメンタリー、30分何も見ない、の3グループにくじで分けた。そのあと、合図に合わせて2種類の判断を切り替える課題をした。ドキュメンタリーと何も見ないグループは、合図から問題までの時間が長いと切り替えが楽になったが、ショート動画のグループではこの準備の効果が見られなかった。

対象: 中国の18〜22歳の大学生(1グループ24人) / 限界: 小規模で、著者自身が「予備的な証拠」としている。準備の時間が短いときの成績には差がなかった。

Liら(2025)[4]

大学生113人が、ショート動画(無作為に流れるもの・自分のおすすめ)か長い動画を見たあと、約20分のドラマを見て内容を思い出した。グループの平均では、ショート動画の2グループの記憶は長い動画のグループより劣っていなかった。ただし無作為に流れるショート動画のグループでだけ、ふだんよく見る人ほど思い出した場面が少なかった(r=−0.42)。

対象: 中国の大学生 / 限界: 15分のショート動画のあとに写真を覚える別の実験(60人)でも、記憶に差は出なかった。強く依存している人は対象に入れていない。

研究の種類わかったこと言えること
多くの調査のまとめよく使う人ほど注意の成績が低い(r=−0.38)[1]関係はある。原因の向きは不明
見た直後の実験(切り替え課題)30分見たあと、準備の時間を生かせなかった[3]短時間の影響の手がかり。予備的
見た直後の実験(記憶)グループの平均では記憶は落ちなかった[4]必ず悪くなる、とは言えない

どの研究も、社会人が自宅で勉強する場面を調べたものではありません。対象の多くは中国などの大学生で、課題も実験室の短い作業です。勉強の成績まで長く追った研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

03 今日からできる小さな一歩ショート動画のあと、勉強に戻るには?

勉強の直前は見ない時間を作り、見てしまった日は最初の1問を書いてから始めます。勉強中はスマホを手の届かない所に置き、自分の集中の変化を2週間記録して確かめます。

1

勉強を始める前の30分は、ショート動画を開かない

見るなら勉強のあとに回します。30分見た直後に、次の作業への準備がうまく使えなかった実験があります[3]。ただし予備的な結果なので、自分で試して確かめる前提です。

所要 見る時刻を決めるだけ

2

見てしまった日は、最初の1問を紙に書いてから始める

「問題集p.24の問3」のように、最初にやることを1行書きます。自分で決めた対象に注意を向け直すための工夫で、研究で効果を確かめた方法ではありません。

所要 1分

3

勉強中は、スマホを別の部屋に置く

見る時刻を決めても、手元に置いたままだと、つい開いてしまう人もいます。置き場所の決め方と研究はスマホを遠ざけて勉強するやり方で紹介しています。

所要 1分

4

2週間、「見た日」と「見なかった日」の集中を比べる

勉強の前にショート動画を見たかどうかと、最初の30分で何問進んだかを1行で書きます。研究の結果は人によって差があるので、自分の記録で判断します。

所要 1日1分

04 続けるためのコツついショート動画を開いてしまうときは、どうする?

意志の強さで止めようとせず、開くまでの手間を増やします。開いてしまった後の戻り方も、先に決めておくと立て直しが早くなります。

05よくある質問

ショート動画を見ると、集中力は落ちる?

よく見る人ほど注意や衝動を抑える力の成績が低い関係は、71の研究をまとめた分析でそろっています。ただし多くは一時点の調査で、見たから落ちたのか、もともと集中しにくい人がよく見るのかは区別できていません。短時間見た直後の実験は小規模で、結果も一貫していません。

ショート動画は1日何分までならいい?

勉強への影響から決めた「何分まで」という目安は、今回調べた研究にはありませんでした。わかっているのは、使う量や使い方と注意の成績に関係があることまでです。勉強の直前を避ける、勉強中は手の届かない所に置く、など時間帯で区切るほうが試しやすい方法です。

勉強の休憩にショート動画を見るのはだめ?

だめとまでは言えません。休憩中に見た直後の勉強への影響を、直接調べた研究は少ないのが現状です。30分のショート動画を見た直後の実験では、次の作業への準備がうまく使えない結果が出ました。著者自身が予備的な結果としています。休憩は時間を決め、目を閉じる・歩くなど画面を見ない過ごし方と比べてみてください。

出典

  1. Nguyen, L., Walters, J., Paul, S., Monreal Ijurco, S., Rainey, G. E., Parekh, N., Blair, G., & Darrah, M. (2025). Feeds, feelings, and focus: A systematic review and meta-analysis examining the cognitive and mental health correlates of short-form video use. Psychological Bulletin, 151(9), 1125-1146. https://doi.org/10.1037/bul0000498
  2. Arouch, S., Edgcumbe, D., Pezaro, S., & Maravic Da Silva, K. (2026). Short-form video, cognitive and mental health outcomes: a systematic review. BMJ Public Health, 4(3), e004086. https://doi.org/10.1136/bmjph-2025-004086
  3. Luo, W., Zhao, X., Jiang, B., Fu, Q., & Zheng, J. (2025). Swiping disrupts switching: Preliminary evidence for reduced cue-based preparation following short-form video exposure. Behavioral Sciences, 15(8), 1070. https://doi.org/10.3390/bs15081070
  4. Li, H., Li, J., Hao, X., & Liu, W. (2025). Behavioral and eye-tracking investigation of event segmentation following short video watching. npj Science of Learning, 10, 86. https://doi.org/10.1038/s41539-025-00378-3
  5. Wei, M., Li, Y., Ni, H., Li, Z., Liu, J., & Dong, G.-H. (2026). Learning via short videos impairs memory accuracy and reduces brain synchrony. Communications Psychology, 4, 120. https://doi.org/10.1038/s44271-026-00476-x