記憶・覚え方

思い出すときの「ど忘れ」はなぜ起きるのか。のどまで出かかる現象の研究

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Photo: Cullen328 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

覚えたはずの単語が、のどまで出かかっているのに出てこない。この「ど忘れ」は、意味はわかっているのに、言葉の音だけが取り出せない状態です。研究では、長く粘るほど同じ単語で繰り返しやすく、思い出せると繰り返しにくくなることがわかっています。

3行でわかる

  1. ど忘れは、意味は思い出せているのに、言葉の音が出てこない状態と考えられている。
  2. 一度ど忘れした単語は、1週間後もど忘れしやすい。粘る時間が長いほど繰り返しやすかった。
  3. 自力やヒントで思い出せると、次は繰り返しにくい。年齢とともに増えるが、記憶力の低下とは一部別の現象。

01「知っているのに出てこない」の正体

ど忘れは、言葉の意味まではたどり着いているのに、その言葉の音につながらない状態です。研究者はこれを「のどまで出かかる現象(TOT)」と呼んでいます。

言葉を話すとき、頭の中では2段階の作業が起きると考えられています。まず「何を言いたいか」を選び、次にその言葉の音を取り出します。

ど忘れは、この2段階目でつまずいた状態だと説明されています[3]。だから、頭文字や似た音の別の単語は浮かぶのに、正解だけが出てきません。

ど忘れは年齢とともに増えることが知られています。19〜88歳の46人を調べたShaftoら(2007)は、有名人の名前のど忘れが年齢とともに増え、音を作る働きに関わる脳の部位の変化と関係していたと報告しました[6]。

02科学的にわかっていること

一度ど忘れした単語は、後日もど忘れしやすくなります。粘る時間が長いほど繰り返しやすく、自力やヒントで思い出せた単語は繰り返しにくい、という結果が出ています。

Warriner・Humphreys(2008)[1]

ど忘れしたときに30秒粘ってから答えを見た単語は、10秒で答えを見た単語に比べて、48時間後に再びど忘れする割合がほぼ2倍だった。

対象: 単語の定義を読んで、その単語を答える実験の参加者 / 限界: 実験室の課題で、粘る時間を10秒と30秒の2通りにしただけの比較。

D'Angelo・Humphreys(2015)[2]

6つの実験で、ど忘れは5分後にも1週間後にも同じ単語で繰り返しやすかった。一方、その場で思い出せた単語は、後でど忘れしにくくなった。綴りのヒントで思い出せた場合も、自力で思い出せた場合とほぼ同じように効いた。

対象: 定義から単語を答える実験の参加者(英語のみ話す人と2言語を話す人を含む) / 限界: 論文の要旨で確認した内容。短い単語課題の結果。

Oliver・Humphreys(2019)[3]

1週間後のテストで、1回目のど忘れの27%が再びど忘れになった。思い出せないまま答えを見た単語は41%が再発し、自力で思い出せた単語は15%だった。どちらも最後に正解を見せていた。

対象: カナダの大学生40人、まれな単語の定義70問 / 限界: 上の2研究と同じ研究グループによる再現。別のグループによる追試は確認できなかった。

Metcalfeら(2017)[4]

雑学の問題82問に答える実験で、ど忘れ中の問題では「後で答えを見たい」と答えた割合が44%と、そうでない問題の18%より高かった。

対象: アメリカの大学生46人 / 限界: 答えを見たい気持ち(好奇心)を調べた研究で、その後の覚えやすさは測っていない。

Salthouse・Mandell(2013)[5]

18〜99歳の718人で、年齢が上がるほど人名や地名のど忘れが多かった。ただし、記憶テストの成績をそろえても、年齢との関係はほとんど変わらなかった(関係の強さを示す係数が0.41から0.35に)。ふつうの単語の定義の問題では、年齢との関係は見られなかった。

対象: アメリカの成人718人 / 限界: 一時点の調査で、同じ人の変化を追ったものではない。

ここで紹介した実験の多くは、大学生が短い単語課題に答えたものです。資格や語学の長い独学で、同じ大きさの差が出るとは限りません。

03今日からできる小さな一歩

問題集や単語カードでど忘れしたら、長く粘らずにヒントを見て、それでも出なければ答えを確認します。そして日をあけて、もう一度その問題を解きます。

1

粘るのは短めにする

10秒ほど考えて出てこなければ、そこで区切ります。出かかった状態のまま長く考え続けるほど、次も同じ単語でつまずきやすいという結果があります。

所要 10秒

2

答えの前に、一部だけ見る

答えをすぐ全部見る前に、頭文字など綴りの一部をヒントにします。実験では、綴りのヒントで思い出せた単語も、自力で思い出せた単語と同じように、次にど忘れしにくくなりました。

所要 数秒

3

ど忘れした問題に印をつけ、翌日に解き直す

ど忘れした単語は、また同じところでつまずきやすい単語です。印をつけて、翌日や数日後に思い出す練習をします。思い出す練習の効果はテスト効果の記事で紹介しています。

所要 5分

04続けるためのコツ

ど忘れは、知っているからこそ起きる現象です。落ち込むより「覚え直す単語が見つかった」と考え、印をつけて復習に回すのが近道です。

  • ど忘れした問題は、知りたい気持ちが強いうちに答えを確認する。
  • 単語カードでは、ど忘れしたカードを外さず、正解できるまで残す。使い方は暗記カードの記事を参考に。
  • 年齢のせいだと決めつけない。大人の学び直しについては年齢と学習の記事で紹介しています。
  • 試験本番で出てこないときは、いったん次の問題へ進み、最後に戻る。

05よくある質問

ど忘れしたら、思い出すまで粘った方がいいですか?

長く粘りすぎない方がよいと考えられます。Warriner・Humphreys(2008)では、30秒粘ってから答えを見た単語は、10秒で答えを見た単語より、2日後に再びど忘れしやすくなりました。少し考えて出なければ、頭文字などのヒントを見て、それでも出なければ答えを確認しましょう。

ど忘れが増えたのは、記憶力が落ちたサインですか?

ど忘れだけで記憶力の低下とは言えません。18〜99歳の718人を調べたSalthouse・Mandell(2013)では、年齢とともに人名や地名のど忘れは増えましたが、記憶テストの成績を考慮しても、その関係はほとんど変わりませんでした。日常生活に支障が出るほど物忘れが気になるときは、かかりつけの医師に相談してください。

同じ単語ばかり何度もど忘れするのはなぜですか?

ど忘れした状態そのものが、間違った思い出し方として残るからだと考えられています。Oliver・Humphreys(2019)では、1回目に思い出せなかったど忘れの41%が、1週間後にも再びど忘れになりました。自力で思い出せたものは15%でした。

勉強中のど忘れは、悪いことですか?

悪いことばかりではありません。Metcalfeら(2017)では、ど忘れ中の問題は、答えを見たいと思う割合が44%と、そうでない問題の18%より高くなりました。答えを知りたい気持ちが強いときに、答えを確認して覚え直す機会になります。

出典

  1. Warriner, A. B., & Humphreys, K. R. (2008). Learning to fail: Reoccurring tip-of-the-tongue states. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 61(4), 535-542. https://doi.org/10.1080/17470210701728867
  2. D'Angelo, M. C., & Humphreys, K. R. (2015). Tip-of-the-tongue states reoccur because of implicit learning, but resolving them helps. Cognition, 142, 166-190. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2015.05.019
  3. Oliver, L. K., & Humphreys, K. R. (2019). Phonological interlopers tend to repeat when tip-of-the-tongue states repeat. Frontiers in Psychology, 10, 341. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00341
  4. Metcalfe, J., Schwartz, B. L., & Bloom, P. A. (2017). The tip-of-the-tongue state and curiosity. Cognitive Research: Principles and Implications, 2, 31. https://doi.org/10.1186/s41235-017-0065-4
  5. Salthouse, T. A., & Mandell, A. R. (2013). Do age-related increases in tip-of-the-tongue experiences signify episodic memory impairments? Psychological Science, 24(12), 2489-2497. https://doi.org/10.1177/0956797613495881
  6. Shafto, M. A., Burke, D. M., Stamatakis, E. A., Tam, P. P., & Tyler, L. K. (2007). On the tip-of-the-tongue: Neural correlates of increased word-finding failures in normal aging. Journal of Cognitive Neuroscience, 19(12), 2060-2070. https://doi.org/10.1162/jocn.2007.19.12.2060