記憶・覚え方

大人になると、用語と意味の組み合わせが覚えにくくなるのはなぜ?年齢と「結びつける記憶」の研究

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開いたカード目録の引き出し
Photo: Fuje23 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

資格の勉強を数十年ぶりに再開したら、用語は「見たことがある」のに、それが何を意味していたかが出てこない。条文の番号と中身、人名と出来事、単語と訳。どれも片方は覚えているのに、組み合わせがすっぽり抜ける。若いころの自分と比べて落ち込む人は多いのですが、これには研究で名前がついた理由があります。年齢とともに弱まりやすいのは、記憶全体より「AとBを結びつけておく記憶」だということが、くり返し確かめられています。

3行でわかる

  1. 年齢による記憶の差は、1つ1つの項目より「何と何が組だったか」の記憶で大きく出る。90の研究のメタ分析で確かめられている。
  2. 18〜85歳の278人の研究でも、年齢が上の人ほど組み合わせの記憶が低かった。特に「組ではないのに組だった気がする」思い違いが増えていた。
  3. 差は固定ではない。2つを意味でつなぐやり方を使うと差が縮み、すでに知っていることと結びつく組み合わせでは、年齢の差が見られなかった研究もある。

01 悩みの正体用語は覚えているのに、意味が出てこないのはなぜ?

用語そのもの(項目)の記憶と、用語と意味を結ぶ記憶(組み合わせ)は、年齢による影響の受け方が違う。年齢とともに弱まりやすいのは、後者の「結びつける記憶」だと考えられている。

記憶の研究では、覚えた中身を2種類に分けて調べることがあります。1つは「この単語は見たか」という項目の記憶。もう1つは「この単語は、どの単語と一緒だったか」という組み合わせの記憶(連合記憶)です。

2000年に心理学者のナヴェ=ベンジャミンは、年をとると、1つ1つの項目はある程度覚えていられても、項目どうしを1つのまとまりとして結びつける働きが弱まる、という説を出しました[1]。「連合の欠損仮説」と呼ばれ、4つの実験でこの考えを確かめています。

独学に置きかえると、用語・人名・数字などの「部品」は見覚えがあるのに、「その用語の意味」「その数字は何の基準か」といったつなぎ目が抜けやすい、ということです。試験の選択肢がどれも見覚えがあるのに、正しい組み合わせが選べないのも、この形の忘れ方です。

02 科学的にわかっていること年齢で弱まるのは、本当に組み合わせの記憶?

多くの研究で、年齢による差は項目より組み合わせで大きかった。ただし差の出方は条件で変わり、覚えようとして覚える場合に大きく、意味のつながりがある組み合わせでは小さくなった。

OldとNaveh-Benjamin(2008)[2]

90の研究(若い人3,197人、高齢の人3,192人)をまとめたメタ分析。年齢の影響は、項目の記憶より組み合わせの記憶で大きかった。情報の出どころ、順番、場所、単語どうしの組など、さまざまな組み合わせで同じ傾向が見られた。

対象: 若い成人と高齢者を比べた研究 / 限界: 差がはっきりしたのは「覚えてください」と言われて覚えた場合。覚えるつもりなく見た場合や、再生(思い出して書く)テストで項目を測った場合は、組み合わせだけが特に弱いとは言えなかった。

Benderら(2010)[3]

18〜85歳の健康な成人278人が、26組の単語ペアのリストを2つ覚えた。年齢と項目の記憶の相関はr=−.18、組み合わせの記憶ではr=−.33で、組み合わせの方が年齢との関係が強かった。差の多くは、組み替えたペアを「見た」と答えてしまう思い違いの増加から来ていた。

対象: 米国の大都市圏で募集した、教育年数の長い(平均15.8年)健康な成人 / 限界: ある時点で年齢の違う人を比べた研究で、1人の変化を追ったものではない。著者らは中年期から差が始まっている可能性を挙げたが、慎重に解釈すべきとしている。

Naveh-Benjaminら(2003)[4]

2つの実験で、単語に加えて絵の組み合わせでも、高齢の人の組み合わせの記憶の弱さが再現された。一方、もともと意味のつながりがある組み合わせでは、この弱さが小さくなった。

対象: 若い成人と高齢者 / 限界: 実験室で単語や絵のペアを覚える課題。教科書の内容を何週間もかけて覚える場面とは違う。

Naveh-Benjaminら(2007)[5]

単語ペアを覚えるとき、2つを結びつける工夫(連合方略)を使うよう指示すると、高齢の人の組み合わせの記憶の弱さがはっきり小さくなった。覚えるときに加え、思い出すときにもその工夫をたどるよう指示すると、さらに小さくなった。

対象: 若い成人と高齢者 / 限界: 短い単語ペアの実験。差がどこまで縮んだかの細かい数値は、この記事では要旨の範囲で紹介している。

BenderとRaz(2012)[6]

21〜79歳の100人で、年齢が上の人ほど作業記憶(頭の中に一時的に置いておく力)が小さく、組み合わせの記憶も低かった。また「くり返す」「じっと見る」などの浅いやり方を効くと考える人ほど組み合わせの記憶が低く(r=−.33)、「場面を思い浮かべる」「文を作る」を効くと考える人ほど高かった(r=.30)。

対象: 米国の健康な成人 / 限界: 測ったのは「どのやり方が効くと思うか」という考えで、実際に使ったやり方ではない。相関の研究なので、考えを変えれば記憶がよくなるとまでは言えない。

Castel(2005)[7]

食料品とその値段の組み合わせを覚える実験。相場からかけ離れた値段では若い人の方がよく覚えていたが、相場どおりの値段では年齢の差がなかった。おおよその値段の幅は、どちらの年齢の人も同じくらい正確に覚えていた。

対象: 若い成人と高齢者 / 限界: 値段という日常的な材料での実験。専門用語のような、知識の少ない分野で同じことが起きるかは確かめられていない。

まとめると、大人になって覚えにくく感じるのは「頭が全体的に衰えたから」というより、ばらばらの2つを結びつけておく部分に負担がかかりやすいからだと考えられます。そして、その2つが意味でつながっていたり、すでに知っていることと結びついたりすると、差は小さくなります。

ここで紹介した研究の多くは、若い成人と高齢者を比べた実験室の研究です。30〜50代の社会人が独学で何か月も学ぶ場面で、どれくらいの差になるかは確かめられていません。下の手順は、研究から考えられる工夫として読んでください。

03 今日からできる小さな一歩用語と意味の組み合わせを覚えるには?

2つをそのまま並べてくり返すより、意味でつなぐ。自分の知っている仕事や生活の例に結びつけ、思い出すときも同じつなぎ方をたどる。テストは「組み合わせ」で確かめる。

1

用語と意味を、1文の「場面」でつなぐ

「用語=意味」と並べて書くのではなく、2つが同時に出てくる短い文を自分で作る。仕事や生活で見たことのある場面にすると、すでにある知識とつながりやすい。

所要 1語30秒

2

思い出すときは、まず作った場面を思い浮かべる

用語を見て意味が出てこないときは、答えを見る前に、手順1の場面を思い出してみる。覚えるときと思い出すときの両方で同じつなぎ方を使うと、差が縮んだ実験がある。

所要 1語10秒

3

確かめるときは「組み替え」を混ぜる

用語カードの裏に意味を書くだけでなく、ときどき別の用語の意味をわざと組み合わせ、「この組は正しいか」を判定する。研究で増えていたのは、見覚えのある部品どうしの組を正しいと思ってしまう間違いだった。

所要 10問で5分

自分ごとに結びつけて覚える方法は自分に結びつける覚え方の記事に、似た用語が混ざるときの立て直し方は似た概念が混ざるときの記事にまとめています。

04 続けるためのコツ「年のせいで覚えられない」と思ったら?

年齢の差は、組み合わせの記憶に偏って出やすく、覚え方で縮むこともある。まず自分が抜けているのが「部品」か「つなぎ目」かを分け、つなぎ目を意味で補う。

  • 間違えた問題を「用語を知らなかった」のか「用語と意味の組を取り違えた」のかで分けて記録する。後者が多ければ、この記事の手順が合っている。
  • 覚える量を増やすより、1つの用語につなぐ例を増やす。例が1つ増えるごとに、思い出す手がかりが増える。
  • 年齢の思い込みで自信をなくしたときは、年齢の思い込みと記憶の記事も参考にしてください。

05よくある質問

年をとると、勉強したことは何でも覚えにくくなりますか?

何でも一様に、ではありません。90の研究をまとめたOldとNaveh-Benjamin(2008)のメタ分析では、年齢による差は、1つ1つの項目の記憶より「何と何が組だったか」の記憶で大きく出ていました。用語そのものより、用語と意味・数字・出典などの結びつきが抜けやすいと考えられます。

何歳くらいから、組み合わせの記憶は弱まりますか?

はっきりした年齢はわかっていません。18〜85歳の278人を調べたBenderら(2010)では、年齢が上の人ほど組み合わせの記憶が低い傾向がありました。著者らは中年期から始まっている可能性を挙げましたが、1人の変化を追った研究ではないため、慎重に読むよう書いています。

くり返し声に出して読めば、組み合わせも覚えられますか?

くり返すだけより、2つを意味でつなぐ工夫のほうが研究の結果に合っています。21〜79歳の100人を調べたBenderとRaz(2012)では、「くり返す」などの浅いやり方を効くと信じている人ほど組み合わせの記憶が低く、「場面を思い浮かべる」「文を作る」を効くと考える人ほど高い傾向でした。

出典

  1. Naveh-Benjamin, M. (2000). Adult age differences in memory performance: Tests of an associative deficit hypothesis. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 26(5), 1170–1187. https://doi.org/10.1037/0278-7393.26.5.1170
  2. Old, S. R., & Naveh-Benjamin, M. (2008). Differential effects of age on item and associative measures of memory: A meta-analysis. Psychology and Aging, 23(1), 104–118. https://doi.org/10.1037/0882-7974.23.1.104
  3. Bender, A. R., Naveh-Benjamin, M., & Raz, N. (2010). Associative deficit in recognition memory in a lifespan sample of healthy adults. Psychology and Aging, 25(4), 940–948. https://doi.org/10.1037/a0020595
  4. Naveh-Benjamin, M., Hussain, Z., Guez, J., & Bar-On, M. (2003). Adult age differences in episodic memory: Further support for an associative-deficit hypothesis. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 29(5), 826–837. https://doi.org/10.1037/0278-7393.29.5.826
  5. Naveh-Benjamin, M., Brav, T. K., & Levy, O. (2007). The associative memory deficit of older adults: The role of strategy utilization. Psychology and Aging, 22(1), 202–208. https://doi.org/10.1037/0882-7974.22.1.202
  6. Bender, A. R., & Raz, N. (2012). Age-related differences in recognition memory for items and associations: Contribution of individual differences in working memory and metamemory. Psychology and Aging, 27(3), 691–700. https://doi.org/10.1037/a0026714
  7. Castel, A. D. (2005). Memory for grocery prices in younger and older adults: The role of schematic support. Psychology and Aging, 20(4), 718–721. https://doi.org/10.1037/0882-7974.20.4.718