記憶・覚え方

長い番号や手順の並びが覚えられない。どう覚える?3〜4個ずつの「かたまり」に区切る6つの手順(チャンクと作業記憶の研究と、その限界)

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そろばん
Photo: K.F. / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

条文の番号、年号の並び、製品コード、手順の順番。長い並びを覚えようとして、何度読んでも途中で崩れてしまうことはありませんか。覚える力が弱いのではなく、一度に頭に置ける量に限りがあるからです。この記事では、その限りを「かたまり(チャンク)」で上手に使うやり方を、研究とその限界から6つの手順にまとめました。

3行でわかる

  1. 頭の中に一度に置いておけるのは、若い大人でおよそ3〜5個の「意味のあるかたまり」とされる。昔からいわれる「7±2」は、大まかな目安だった。
  2. 知っている物に結びつけてかたまりにすると、一度に扱える量が増える。数字を走るタイムに置きかえた学生は、230時間以上の練習で数字を79個まで言えるようになった。
  3. ただし、その力は練習した材料にしか広がらない(数字は79個でも、アルファベットは7個のまま)。覚えたい教材そのものを、3〜4個ずつ、毎回同じ区切りで練習する。

01 悩みの正体長い並びが覚えられないのはなぜ?

頭の中で一度に扱える量に限りがあるためです。ばらばらの数字や文字は1つずつが別の「かたまり」として場所をとるので、3〜5個を超えると崩れやすくなります。

覚えている途中の情報を一時的に置いておく頭の働きを、心理学では作業記憶(ワーキングメモリ)と呼びます。Cowan(2001)は多くの実験を見直し、頭の中でくり返し唱えたり、まとめたりできない条件では、置いておける量は平均でおよそ4個のかたまりだと結論しました[2]。

ここで数えるのは「文字の数」ではなく「かたまりの数」です。「1-1-9」は3つの数字ですが、知っている番号として1かたまりで扱えます。長い並びが覚えにくいのは、まだかたまりになっていない部品がたくさんあるからです。

02 科学的にわかっていること「かたまり」にすると、何が変わる?

かたまりにすると、頭の中の負担が減り、残りの情報を覚える余地ができます。ただし、かたまりは自分がすでに知っている物で作られ、練習した材料にしか効きません。

Cowan(2001, 2010) [2][3]

頭の中で唱える練習を止めた条件では、若い大人が一度に覚えておけるのは3〜5個の意味のあるかたまりだった。Miller(1956)の「7個前後」は正確な上限ではなく、大まかな目安として示された数だった。慣用句や短い文のような長いかたまりでも、覚えておけるのは3〜4個だった。

対象: 多くの実験の見直し(レビュー) / 限界: 数秒〜数十秒の短い記憶の実験が中心。年齢や人によって差がある。

Ericssonら(1980) [4]

1人の大学生が230時間以上練習し、すぐに言い返せる数字の数が7個から79個に増えた。長距離走をしていたこの学生は、数字の並びを「走るタイム」などの知っている数に置きかえて、かたまりにしていた。

対象: 1人の事例 / 限界: 1人だけの記録。かたまりにする手がかり(走るタイムの知識)を持っていた人の結果。

Norrisら(2019) [5]

上の学生は、数字の記憶は79個まで伸びたが、アルファベットの並びでは練習の間ずっと7個のままだった。18〜35歳の80人が約20回、数字を覚える練習をした実験でも、数字の記憶は伸びたが、耳で聞く数字やアルファベットには広がらなかった。

対象: 英語を話す18〜35歳の成人80人 / 限界: 2週間ほどの練習。数字と文字の並びだけで調べた。

Thalmannら(2019) [6]

4つの実験で、並びの中に知っているかたまりがあると、そのかたまりだけでなく、一緒に覚えた別の部分も思い出しやすくなった。ただし効いたのは、並びの最初の方にあるかたまりで、最後にあるかたまりでは、ほかの部分の助けにならなかった。

対象: 実験室の参加者(4つの実験) / 限界: 論文の要旨で確認した。すぐに思い出すテストで、数日後の記憶は測っていない。

Musfeldら(2024) [7]

8文字の並びを何度もくり返し覚える6つの実験。くり返し出てくる部分が、空白や色で区切られて目に見えるときは、その部分がまとまって覚えられた。区切りが見えると、くり返す部分の位置が毎回変わっても覚えられた。

対象: 実験室の参加者(6つの実験) / 限界: 論文の要旨で確認した。アルファベットの並びの実験。

どれも数秒〜数十秒の記憶を測った実験室の研究です。何週間もかけて資格試験の番号や手順を覚えるような独学で、同じ大きさの差が出るかは確かめられていません。長く覚えておくには、かたまりを作ったあとに、日をあけて思い出す練習が必要です。

03 今日からできる小さな一歩長い並びは、どう区切って覚える?

3〜4個ずつに区切り、区切りを目に見える形にし、知っている物に置きかえて意味をつけます。毎回同じ区切りでくり返し、最後は隠して通して言えるか確かめます。

1

部品を数え、3〜4個ずつに区切る

覚えたい並びの部品(数字・文字・手順)を数えます。一度に置いておけるのは3〜5個とされるので[3]、12桁なら「4・4・4」、手順10個なら「3・3・4」のように分けます。

所要 1分

2

区切りを、目に見える形で書き直す

ノートやカードに、区切りごとに空白や改行を入れて書き直します。区切りが見えると、くり返すうちにその部分がまとまって覚えられた実験があります[7]。色を変えてもかまいません。

所要 2分

3

かたまりごとに、知っている物を結びつける

「1192」を年号、「0315」を誕生日のように、すでに知っている数・言葉・場面に置きかえます。数字を走るタイムに置きかえた学生は、一度に言える数字が大きく増えました[4]。結びつけられない部分は、そのままの数字でかまいません。

所要 3〜5分

4

毎回、同じ区切り方でくり返す

今日は「4・4・4」、明日は「3・3・3・3」と区切りを変えると、かたまりが育ちにくくなります。くり返し出てくる部分がまとまりとして覚えられるので[7]、最初に決めた区切りを使い続けます。

所要 くり返しのたびに

5

覚えたかたまりを先に置き、新しい部分を後ろに足す

並びの最初にある知っているかたまりは、ほかの部分を覚える余地を空けました[6]。長い並びは、まず先頭の1かたまりを見ずに言えるまで固め、その後ろに次のかたまりを1つずつ足します。

所要 5分

6

隠して、かたまりごと→通しで言う

紙を隠して、かたまりごとに言えるか確かめ、最後に全体を通して言います。詰まったかたまりだけ見直します。翌日と3日後にも、何も見ずに通して言えるか確かめます。

所要 2〜3分

04 続けるためのコツ「かたまり」で覚えるのが、うまくいかないときは?

記憶力そのものを鍛えようとせず、覚えたい教材で直接練習します。かたまりにする力は、練習した材料にしか広がりませんでした。

  • 数字を覚える練習を重ねても、アルファベットや耳で聞く数字には広がりませんでした[5]。数字の記憶トレーニングを別にするより、試験に出る番号や手順そのもので練習する方が近道です。
  • 最初はかたまりを作るのに時間がかかります。初めて学ぶ分野では、知っている物が少ないからです。分野の基本を覚えるほど、新しい並びをまとめる手がかりが増えます[1]。
  • 語呂合わせやイメージで覚える方法とも組み合わせられます。研究は語呂合わせとイメージで覚える研究にまとめています。
  • かたまりを作ったあとは、日をあけて思い出す練習で長く残します。間隔の決め方は復習のタイミング計算機が使えます。
  • 手順のように順番が大事なものは、道順に置いていく場所法のルート表も試せます。

05よくある質問

人が覚えられるのは「7個」ではないの?

Miller(1956)の「7個前後」は、大まかな目安として示された数でした。頭の中で唱えたりまとめたりできない条件で調べ直すと、若い大人が一度に置いておけるのは3〜5個、平均でおよそ4個のかたまりとされています。

記憶力のトレーニングをすれば、一度に覚えられる量は増える?

練習した材料では増えますが、ほかには広がりにくいことがわかっています。数字を79個まで言えるようになった学生も、アルファベットでは7個のままでした。80人が数字を覚える練習をした実験でも、文字や耳で聞く数字には広がりませんでした。

区切り方は、3個ずつと4個ずつのどちらがいい?

研究で決まった答えはありません。一度に置けるのが3〜5個とされるので、どちらでもかまいません。大事なのは、知っている物に結びつけやすい区切りを選び、毎回同じ区切りでくり返すことです。

かたまりで覚えれば、試験の日まで忘れない?

かたまりにする研究の多くは、数秒〜数十秒の記憶を測った実験です。長く覚えておくには、かたまりを作ったあと、翌日・数日後と日をあけて、何も見ずに思い出す練習が必要です。

出典

  1. Gobet, F., Lane, P. C. R., Croker, S., Cheng, P. C.-H., Jones, G., Oliver, I., & Pine, J. M. (2001). Chunking mechanisms in human learning. Trends in Cognitive Sciences, 5(6), 236-243. https://doi.org/10.1016/S1364-6613(00)01662-4
  2. Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87-114. https://doi.org/10.1017/S0140525X01003922
  3. Cowan, N. (2010). The magical mystery four: How is working memory capacity limited, and why? Current Directions in Psychological Science, 19(1), 51-57. https://doi.org/10.1177/0963721409359277
  4. Ericsson, K. A., Chase, W. G., & Faloon, S. (1980). Acquisition of a memory skill. Science, 208(4448), 1181-1182. https://doi.org/10.1126/science.7375930
  5. Norris, D. G., Hall, J., & Gathercole, S. E. (2019). Can short-term memory be trained? Memory & Cognition, 47(5), 1012-1023. https://doi.org/10.3758/s13421-019-00901-z
  6. Thalmann, M., Souza, A. S., & Oberauer, K. (2019). How does chunking help working memory? Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 45(1), 37-55. https://doi.org/10.1037/xlm0000578
  7. Musfeld, P., Dutli, J., Oberauer, K., & Bartsch, L. M. (2024). Grouping in working memory guides chunk formation in long-term memory: Evidence from the Hebb effect. Cognition, 248, 105795. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2024.105795